しっかり者がダメ男に惹かれる法則(1)

坂田 零

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ACT3 優柔不断は早々簡単に治らない4

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「なんだよそれ・・・」

「だって、てっちゃん、デビュー前のあおちぃほど、これでもかっ!ていうやる気、全然ないもーん」

 しれっとそっぽを向きながら、きなこは、俺にとってはあまりにも痛すぎる言葉を、あっさりと口にした。

「……」

 俺は、きなこの言葉で、今、まさにKOされた。

 返す言葉もない。

 きなこは、なぜかムーンリバーを一気飲みすると、俺に向かって容赦なく追い討ちをかける。

「てっちゃんがそんなんだからね~彼女さんにフラレるんだよ~もうどうするか決めたの~?」

「い、いや…つか、そんなのおまえには関係ないだろうよ…」

「関係あるよ!てっちゃんほんとわかってないなぁ~
それなのに、よくあんな歌詞書けるよね!なんでわからないのかなぁ?
馬鹿なの?死ぬの?」

 きなこの大きな瞳が、じろっと俺を睨んだ。
 強いカクテルを一気飲みしたせいで、一気に酔いが回ってきたのか、きなこの顔はみるみる赤くなる。
 しかも目が座り始めてるし。

 ああ…きなこがこうなると、もうどうしようもない。

 だけど、さすがの俺もイラっときてる。
  俺は、しかめっ面を作ってきなこに言った。

「わかる訳ないだろうよ!
だいたいなぁ、真奈美のことは、ほんとおまえには関係ねーから!
相当関係ね~から!
俺がどうしようと、そんなの俺が決めることだ、いちいちおまえに口を出される筋合いないだろ」

「あ…そんなこと言うんだ!大事なファンに向かってそんなこと言うんだ!ほんとてっちゃんは…っ」

 きなこが何を言いかけたとき、その不穏な空気を遮るように、Marinが、ぱっと俺ときなこの目の前に両手を突きだした。

「はいはい!もぉ、きぃちゃん絡らんだらダメだよぉ~…てっちゃんも落ち着いて~」

 その言葉にふと我に返った俺。

 Marin、大人だな・・・

 Marinのビスクドールのような大きな瞳が、呆れたようにきなこを見る。
 
 ぱさぱさと音が鳴りそうなほど長いまつげは、多分きっと自前なんだろうな・・・と変なとこに俺は感心した。

 きなこは子供みたいにぷくっと頬っぺたをふくらませると、それこそハリセンボンかフグのような顔になって、じーっとMarinの顔を見た。
 あまりにもきなこの顔が面白かったのか、Marinはぷっと笑いを吹き出す。

「もおおおお!やめなよきぃちゃん!!その変な顔!!真面目な話できなくなっちゃうじゃん!」

「だって!だって!!だってぇぇぇぇ!」

 そこまで言ったきなこがハリセンボンかフグみたいな顔をして、ぶすっとしたまま俺に振り返った。

「てっちゃん!!!おかわり!!!!強いやつ!!」

「ばか・・・おまえヤメロよ~どうせ弱くてすぐつぶれるんだから」

「優柔不断なダメ男のてっちゃんにお説教されたくないです!べぇ~~~だ!!」

「は?w」
 
 小学生っかっていうぐらい派手に舌を出して、きなこはまたしてもじろっと俺をにらんだ。

 ほんとに今日はめちゃくちゃ絡んでくるなこいつwww
 一体この間からなんだなんだとwww

 でもまぁ、優柔不断のダメ男なのは確かに当たってるからな・・・・
 俺は思わずため息をついて、ご希望通り強めのやつをチョイスしてやることにした。

 シェイカーを握った俺と、Marinの目が合う。

 Marinは、ふふふっと可笑しそうに笑った。

「てっちゃんはきぃちゃんに気に入られてんだね?」

 俺のその言葉に思わずきょとんとした。

 え?なにが?
 どこか?
 さんざん暴言吐かれた上に、インポだのなんだのとまで言われるこの俺が、きなこに気に入られてるだと? 
 
「え?なんで?俺いっつもきなこに暴言吐きまくられてるし、めたくそに言われるけど?」

 俺はため息まじりにMarinにそう返した。
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