しっかり者がダメ男に惹かれる法則(1)

坂田 零

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ACT2 ちぐはぐな人生はどうやっても交差なんかしない6

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~哲は、何に対しても本気でやってないよね?

 今更ながら、あの時、真奈美に言われた言葉が、俺の心をブスッと突き刺した。
 殴られたときに、バックの中のコンパクトが当たったらしく、やたらと顔がいてー。
 だけど、気の強い真奈美が、その場に座り込んで泣く姿を見て、顔どころか、心の奥まで痛かった。

 ついでに言えば、駅の構内を歩く通行人達の視線も痛い。
 これはどう見ても、二股かけて、彼女に見つかって、その彼女を泣かしてるようにしか見えない構図だし。

 今夜は、ほんとうにツイてない夜だ。
 別に・・・真奈美のことを嫌いな訳じゃないんだ・・・
 ただ・・・なんか、色々、面倒なだけだった。

 きなこの泣き顔を見たあと、直接原因俺っていう、真奈美の泣き顔まで見るハメになって、かなり複雑な心境だ。

 どうしていいのかわからなくなって、呆然としてる俺に向かって、傍らのきなこが言った。

 「あーあ・・・彼女さん泣かすなんて、てっちゃんサイテー」

 おまえが言うかそれを!?って突っ込みたくなったけど、とりあえず自重して、俺は、座り込んでる真奈美の肩に手を置いた。

「あのさ・・・まぁ、何か誤解してると思うし・・・なんつーか・・・ちゃんと話しよう・・・な?」

 俺は、嗚咽する真奈美を抱えるようにして、その場に立ち上がる。
 そんな俺を、きなこがじーっと、なんだか意味深な視線で見つめていた。

 ああ・・・ほんとにまったく・・・今夜は、本当に、ツイてない夜だ・・・





               *
 駅ビルの横に折れそうな三日月が浮かんでいた。
 コンビニ脇のベンチに座っている真奈美は、まだ嗚咽している。
 この微妙な空気を読んだのか、きなこは、書店に行くとかなんとか言って、その場から消えていた。

 俺は、隣で目をこすっている真奈美に、ちらっと視線を向ける。
 さて…こう言う時って、一体なんて言えば、この場を凌げるのか…?
 足りない頭を絞って、俺は、必死に、今の真奈美にかけるべき言葉を見つけてみる。

 だけど…
 女のコを口説く時には、自分でも驚くほど饒舌なのに、こういう場面では、まったくもって言葉が何もでてこない。
 俺の脳みそは、つくづく、溝が足りない作りなんだなと思って、思わずため息を吐いた。

 そのため息を聞いた真奈美が、いきなり顔を上げて、えらく殺気立った顔で俺を睨み付ける。

「ため息をつきたいのは、あたしの方じゃない?!あたしと話すがそんなに嫌なの!?」

「い!いや!ち、違うって!」

 今夜は、ほんとについてないなと…俺は、苦笑いした。
 
「なんなの?!へらへら笑って!?哲はこの状況がそんなに面白い訳!?」

「いや!だから違うって…っ!」

「あんたは本当に、あたしのことなんか、どうでもいいみたいだね?
別れたいなら別れたいって言えばいいじゃない!?
どうせ、前にあたしが言ったことだって、全部スルーしてるんでしょ?」

「…いや…してないけど…」

「してないって言うなら!あれから一度でも、ハロワとか!ジョブカフェとか行ってみたの!?」

「いや…それは…」

「行ってないでしょ?」

「う…うん…」

 困り果てて、素直にうなずいた俺を見て、真奈美の怒ってた顔が、急に、見てる俺が罪悪感を感じるぐらい、悲しそうな顔になった。 
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