しっかり者がダメ男に惹かれる法則(1)

坂田 零

文字の大きさ
上 下
7 / 37

ACT1 暴言吐きまくり女子だけどなんか可愛いのは何故だろう?7

しおりを挟む
 うん、まぁ、こんな事思ってる時点で、ほんとに、俺は何に対しても、本気になんてなってないんだろうな…

「てっちゃーん?おーい?てっちゃーん?瞳孔開いてるよぉ?」

 きなこのそんな声に、俺は、ハッと我に返る。

 「あ……?」

 きなこの大きな二つの眼が、ぱちぱちと瞬きしながら、さも不思議そうに俺を見ていた。

「どうしたの~?図星付かれ過ぎて、心肺停止??」

「んなことになったら死ぬわっ、あほっ!」

「え?だって瞳孔…」

「やwwwかwwwまwwwしwwwいwww
別におまえには関係ないべ?俺が真奈美と喧嘩しようがしまいが、イチイチ報告する義務なんかない…っ」

「うん…まぁ…それは~、そうなんだけど…
てっちゃん、女癖悪そうだから、あたしも注意しないと…と、思って」

「殺wwwすwwwぞwwwおwwwまwwwえwww」

「いや~!殺さないでぇ~!」

 きなこはそう言うと、ぱっと俺の隣から、ソファのはじっこ辺りまで遠退いて、じとっと疑いの眼差しで俺を見る。
 俺は、銀髪頭に片手を突っ込みながら、ため息まじりに手元のデンモクをいじった。

 まったく…こいつはほんとに…
 きなこの言うことは、いつだって突拍子もない。
 まさに、きなこクオリティだ…

 大体、俺が大遅刻かました今日のこのカラオケだって、そもそも、きなこが「歌の歌いかたを教えてくれ」って言い出したのがきっかけだった訳だし。

 なんで突然そんなこと言い出したのか、俺にはさっぱりわかんねーけど…まぁ、きなこの意味不明な行動や言動は、今に始まったことでもない。
 俺は、ため息を吐き出しながら、未だにソファの端っこにいるきなこに言った。

「んで…歌い方って、どの曲の歌い方知りたい訳?」

「えー?んとね~…!」

 そう言うなり、きなこは、滑るように俺の隣に寄ってきて、デンモクの画面を覗き込むと、遠慮もしないで俺の手からタッチペンをむしり取る。

「これこれ!てっちゃんなら判るんじゃないかな~って思ってさ!
なんか難しくて歌えないんだよね!」

 そう言って、きなこが選曲した曲を見た俺は、思い切り、頭をテーブルにぶつけるハメになった…。

「天城越え~っ!」

 きなこはなんの悪気もなさそうに、タイトルを叫んで無邪気に笑う。
 俺は、真面目に、こいつに対して殺意を覚えた…orz

「お、おまえ…俺のこと舐めてんのか?!」

 やたらとムキってそう叫んだ俺。
 そんな俺を、不思議そうな目で見るきなこ。

「やだ~、てっちゃん…何怒ってんの?」

「普通に怒るだろう!馬鹿かおまえは!?」

「えー…?」

「えー…じゃねーよ!」

「だからぁ、なんで怒るのぉ?だって、なんでも歌えるって言ってたじゃ~ん?」

「あのな!同じジャンルならな、確かになんでも歌えるわぼけ!
だけどな!おま…天城越えって演歌だろ!?」

「えー…?」

「だから!えー…じゃねー!!!どう考えてもジャンルちげーだろ?!」

「そんな小さいことは気にしないで~…教えてよ~♪」

「おまえ…まじで殺すwwwwwwwwwwww」

 俺は、思い切りひきつって笑うと、ジロッときなこを睨み付けた。

「つかさ…なんで演歌なんか歌いたいんだよ?
おまえの彼氏、もしかしておっさんなんか?」

俺がそう言うと、きなこはきょとんとした顔をして、三秒ぐらいフリーズすると、ふるふると首を横に振る。

「違うよ~!あのね、病棟のおじいちゃんがね、あたしに歌って欲しいんだって~天城越え」

「はっ?」

 文字通り俺は、目が点になった。

 どうやら今夜は、違う意味で寝れそうにない。

 俺は遠い目をして天井の上の上を思わず眺めてしまったのは、言うまでもない・・・
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

ダメな君のそばには私

蓮水千夜
恋愛
ダメ男より私と付き合えばいいじゃない! 友人はダメ男ばかり引き寄せるダメ男ホイホイだった!? 職場の同僚で友人の陽奈と一緒にカフェに来ていた雪乃は、恋愛経験ゼロなのに何故か恋愛相談を持ちかけられて──!?

今日の授業は保健体育

にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり) 僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。 その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。 ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。

一夏の性体験

風のように
恋愛
性に興味を持ち始めた頃に訪れた憧れの年上の女性との一夜の経験

完全なる飼育

浅野浩二
恋愛
完全なる飼育です。

ドSな彼からの溺愛は蜜の味

鳴宮鶉子
恋愛
ドSな彼からの溺愛は蜜の味

処理中です...