しっかり者がダメ男に惹かれる法則(1)

坂田 零

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ACT1 暴言吐きまくり女子だけどなんか可愛いのは何故だろう?4

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 男ってのは単純でさ。
 思わせぶりな態度を取られてるなって思うと、思わず、自分でもその気になったりするんだよな・・
 でもさ・・・
 やっぱ、おまえはいろんな意味で特殊だと思う。


 俺の目の前には、駅ビルを背景にして、ふくれっ面のきなこがいる。
 
 中条 希南(なかじょう のぞみ)。

 それが、きなこの本名だった。

 太くもなく細くもなく、適度なふくらみがある身体つき、ちっこい身長。
 セミロングのその髪は、今日は下ろしてるけど、きっといつもは、結ってきっちりナースキャップをかぶってるんだろう。
 いつもの白衣の天使は、ミニスカの悪魔と化して、恐ろしいほどの目つきで俺を睨みつけている。

 まぁ・・・半日以上も待たされたんだから、怒るのも無理ないけど・・・
 つか・・・
 その前に・・・

 半日も同じ場所で待ってるなんて、こいつはどれだけどMなんだと、そのときは俺は思った。

 だが、あえて、それは口に出さない。
 紳士の礼儀ってやつだ。
 思い切り困った顔をしてる俺に向かって、きなこは言った。

「死ねよカス!!!!
忘れて飲んだくれて約束忘れて寝てるなんて、てっちゃんサイテー!!
ばぁか!
ばぁか!」

「いや・・・だから・・・すま・・・」

「足痛いよ!ずっとここに居たんだよ!待ってたんだからね!!」

 たかがカラオケなのに、ここで半日も待ってるなんて、こいつ神経大丈夫かとは思ったけど、本人はいたってまじめそうだった。
 普通ならドン引きするレベルだけど、きなこの元のキャラっていうのか、なんだか、ドン引きまではいかない。
 ただ、なんでそんなに俺を待つ必要があったのか、俺にはまったく理解不能だった。

「あのさ、確かに悪かったけどさ・・・
待ってこなけりゃ帰ればよかったんじゃねーの?
なにも、あんな数のLINEをよこさなくても・・・」

 そんなことを、うかつに口走った俺がいけなかった・・・

 きなこは、俺の目の前で、一瞬、ものすごく切なそうに眉間を寄せた後、大きな瞳に涙を一杯にためるとそのまま、その場に座りこんでしまった。

 そんなきなこの肩が、小刻みに、やけに不自然に揺れはじめる。

「てっちゃん・・・ばぁか・・ばぁか・・・うぅっ、ひっく、ひっく・・・っ」

 卑怯なきなこは、こんな人通りの多い駅前で、それこそ人目もはばからず、小学生みたいに泣き始めた。
 凶悪すぎるぜ、まじ・・・!
 あせった俺は、思わずしゃがみこんで、何故か声を潜めてそんなきなこに言う。

「いや!ちょっ、と・・・待て!別に泣くほどのことでも・・・ないだろうって?」

「うぅっ、せっかくっ・・・ひっく・・・お休みだったのにっ、てっちゃんにっ・・・
歌、教えてもらいたくて・・・あたし、ずっと待ってたのに・・・っ
それなのにっ・・・帰れとかっ・・・
てっちゃん、ばぁか・・・ばぁかぁ・・・うぅっ」

 しゃがみこんで泣くきなこ。
 そんなきなこを同じ目の高さから、おろおろして見てる俺。
 俺の背中には、駅前を行き来する人の冷たい視線が突き刺さってる。

 痛い・・・
 痛すぎる・・・
 この冷たい視線の数々・・・・!

 俺は、片手を自分の銀髪につっこんで、思わずうなった。

「わかった!悪かった!ほんとにごめん!俺が悪かった!だからさ、とりあえず・・・行こう!
立てよ・・・ほら!」

 半分やけを起こして、勢いつけて立ち上がった俺。
 頭につっこんでた手を、いまだにうずくまっているきなこに差し出す。
 するときなこは、ちょっとだけ視線を上げて、睨むように・・・
 だけど、なんだか、してやったりと言うような、なんともしたたかな視線で俺を見あげて、ぎゅっと、俺の手を両手で握り返してきた。

 こいつ・・・
 こえーやつだと、俺は思った。

 orz
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