新宿情火~Flamberge~Ⅰ

坂田 零

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ACT2-1

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     * 

 これはおかしな状況だ・・・

 何故、さっき出逢ったばかりのこの女神のような女が、俺の隣にいるのだろう?

 俺は夢でも見ているのか?

 俺はBARのカウンター席でそんなことを思いながら、隣に座っている女の横顔をまじまじと見つめてしまった。 

 すっと通った鼻筋と長い睫毛。

 まるで彫刻でも見ているかのような、綺麗な横顔。

 芸能人でもモデルでもないだろうこの女・・・

 こんな綺麗な女を、こんなに間近に見ているなんて・・・

 そもそも、何故この女は俺と一緒に来たいなんて言ったんだ?

 考えても答えの出ない疑問が、さっきからずっと俺の頭を回っている。

 俺の中のそんな疑問を知ってか知らずか、不意に、女が俺を振り返った。

 俺は再びどきっとする。

 女の女神のような美しい顔が艶やかな微笑をたたえた。

「そんなに見つめられたら・・・恥ずかしいわ」

「え?あ・・・っ、す、すいません・・・つい!」

「私の顔に何か付いてる??」

「いやいや、そんなことは!ただ・・・」

「ただ・・・?」

「ただ・・・すごい、美人だな・・・と」

 俺が思わずそう答えると、女はほんのりと頬を赤らめて小さく首を横に振る。

「美人だなんて・・・そんな・・・私なんてただの田舎娘よ?」

 この女・・・見た目にそぐわず案外初心(うぶ)なのか?

 女は照れたようにうつむいて、カクテルグラスに唇を寄せ『マンハッタン』を一口飲む。

 その仕草もどこか品があって美しい。

 随分落ち着いて見えたから、俺より少し年上かと思ったけど・・・この女は、思いのほか若いのか? 

 この女のどこが田舎娘なのか・・・?

「あなたのどこが“田舎娘”なのか・・・俺にはさっぱりわからないですよ。
あなたは本当にお綺麗だ」

「お上手ね・・・そんな風に言われると、その気になって舞い上がってしまいますよ?」

 女はそう言って、どこか嬉しそうに、しかし、どこか妖しく微笑する。

 この女のこの言動は、計算なのか・・・本音なのか・・・

 どこをどう見ても、この女は普通の職業に就いてる女ではない・・・
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