しっかり者がダメ男に惹かれる法則(2)

坂田 零

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ACT1 聞いてますかぁ?ちゃんと聞いてますかぁ?ひとの話はちゃんと聞きましょう!5

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「まぁ、気にすんなよあおい
そんな変なメールくるとか、すげー人気ある証拠だろうしさ
人気あるから、変なファンもアンチも多くなるんだよ
それってさ、あおいが頑張ってる証拠だし
何言われたって、余計なこと言ってる連中なんか、どうせあおいのポジションになんて来れないんだから
まじ、気にすんな」

 俺は、あおいの綺麗な顔を真正面に見みつめたままそう言った。
 あおいは、ぴくっと肩を震わすと、なんとなく一瞬泣きそうな顔になって、それでも、何かを堪えるようににっこりと笑った。

「ありがとう・・・っ
なんか、そう言われると、ちょっとだけ・・・
ほっとする・・・っ!」

「あーら、Marin、顔が普通の女の子になってるわよ?
でも、確かにてっちゃんの言う通りね~
脅迫だの嫌がらせだのは、もう運命だから仕方ないわ
あたしも散々そういうの送られてきたわよw」

「そうなんですか!?」

「まじすか!?」

 あおいと俺の言葉が重なった。
 なので、思わず、顔を見合わせて吹き出す。
 マーボさんは、のほほんという表情でマティーニを飲みながら話を続けた。

「そりゃそうよ~
一応、あたしがいたユニットなんて、ミリオン7冠達成したユニットだったし
あたしなんか、当時のマネージャーに、この言葉づかいがバレないようにしろ!って言われてたから
仕方なく黙ってただけなのに・・・
『かっこつけて気取りやがって』とか『おかまみたいで気持ち悪い』とか
散々週刊誌やワイドショーに叩かれたり、誹謗中傷の手紙やメールが来たり、ほんとひどかったわよ~
もぉ!どうせあたしはおかまよ!悪かったわね!!!って言ってやりたかったわ、ほんと!」

 その言葉に実感がこもりすぎてて、俺はうけて笑う。

「すいませwwwちょwwwつぼったwwwまじすいませんwww」

 ってか、あおいの周りにいる大物はなんでこんなに気取らないのか?
 むしろ、本当の大物プロって、自分の経歴なんか自慢したり、鼻にかけたりしないのかもな。
 大御所と呼ばれる人達は、腰が低いって聞いたことあるし、マーボさんはまさにそれなのかも・・・
 笑いながらも、俺は思わすそんなことにも関心する。

「んもぉ!失礼しちゃう!
でも、まぁ、今となってはほんとに笑い話ねw」

 そう言ってマティーニを飲み干して、マーボさんは「おかわりちょーだい!」と言ってきた。
 なので、俺はまた、同じものを作り始める。

 人気があればあるだけリスクがある。
 自由も効かなくなるだろうし、本当の自分も隠さないといけなくなる。
 まぁ、こういう世界って、本当の自分のようで虚像の自分を演じなければいけない、そういう世界なのかもしれない。

 俺にとって、音楽ギョーカイってまだまだ遠い世界だ。
 いくらオーディション受かったといっても、まだこうして、バーテンのバイトしてる訳だしさ。
 やっぱまるで実感ないwww

 そんなことを思いつつ、マティーニのグラスをマーボさんに差し出した俺に、きらきらと目を輝かせたあおいが言う。

「ねぇねぇ、てっちゃん!」

「なんだ?」

「明日さ、凱旋ライブ見に来たら?バックステージパス、大沢さんに頼んでおくからさ!
ね!いいよねマーボさん!?」

 その言葉に、マティーニのグラスを手にとったマーボさんが、あおいをちらっと見る。

「あたしは別にいいけど、とりあえず、大沢くんに聞きいてみなさいよ」

 マーボさんのこの言葉のあと、あおいがマネージャーを読んで、ほぼ無理やり俺のためにバックステージパスを用意させたのは言うまでもないw

 フロントに立って歌唄う人間だから、あおいは行動はえーし、積極的だよな。 
 こうやって頑張ってるやつを見ると、地味に俺もなんとかやってかないとなとか思ってしまう訳だ・・・

 あおいのバックコーラスかぁ・・・
 まだまだ全然実感ないけど・・・
 頑張ってみるか・・・

 俺は、テーブル席からオーダーされた水割りを作りながら、ぼんやりとそんなこと考えていた・・・
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