君は僕の心を殺す〜SilkBlue〜

坂田 零

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【9、感情】

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 その一言は、俺にとって猛毒だった。
 全ての理性も感情も一瞬で吹っ飛ばし、心を狂わせるには十分過ぎるほどの言葉だった。

 一定量を越えた感情は、理性と言う名のダムをその瞬間に決壊させる。

 俺は元から感情的な方じゃない…いや、違う。
 感情的だからこそ、いつもそれを理性でコントロールしてる。
 ただそれだけで、根っから理性的な訳じゃない。

 そんなこと自分が一番よくわかってた。

 リミッターが外れた感情も本能も、まるで止まる事を知らない。
 
 彼女の細い体を強く抱き締めて、言葉の代わりに噛みつくようにキスをする。
 彼女の口から、拒否する言葉が出ないように、何度もキスする。
 吐き出す息すら吸い込むようにして、柔らかな舌を絡め、何度も深くキスをする。
 重なる唇から息が漏れるぐらいに、何度も、何度も。
 
 今、ここで彼女の傍にいるのは彼じゃなく、俺だ。
 彼女が拒否しないなら…
 俺は、このまま彼女とどうなってもかまわない。

 唇だけじゃ足りなくなって、彼女の顎にも、耳にも首すじにもキスをする。
 片手で彼女の肩を抱いたまま、片手を彼女の服の中に突っ込んで、あまり大きくない胸の膨らみをまさぐった、その瞬間だった。
 切羽詰まったような、だけど甘い響きのある彼女の声が、俺の耳に飛び込んでくる。

「んっ……ま、待って、樹くん…っ
ちょっと、待って…っ!」

 キャミソールの下に入れられた手を、彼女は制するようぎゅっと掴んで、潤んだ瞳で俺を見た。

「ここじゃ…嫌…
車の中とかじゃ…嫌…っ
他のとこ……行こう?」

「…………」

 体の芯が熱い。
 一度溢れた感情をどうやって制御するか、とりあえず、一瞬だけ冷静に戻った脳ミソで理性を働かせる。

「わかった……」

 そう言った俺の腕にしがみつきながら、彼女は、躊躇いがちに言う。

 「あのね…」

「うん」

「どうしよう……全然嫌じゃない…
嫌じゃない自分に、びっくりしてる…
どうしよう……」

「…嫌じゃないなら、もう、いいじゃん……」

「いいのかな?」

「俺に聞かないでくれよ…
拒否するなら、俺の脳ミソが冷静なうちにして、さっきみたいになっちゃうから」

「拒否……できないよ、だって…」

「うん」

「あたしが…
そうしたいと思ってる、から…
拒否する必要、ないの…」

「………」

「あたしが……触ってもらいたいの…
迷惑、かな……?」

「そんな訳ないじゃんか……
迷惑とか思ってたら、手なんか出さないし…」

「樹くんて、優しい…
ごめん、なんか……なんか…
あたしなんかで、ごめん……」

「なんで謝るの?」

「謝りたくなったから…」

 そう言って俺の首に抱きついて来た彼女が、唇を近づけてきて、またキスをする。
 
 この時、彼女が何を考えていたかなんて、なんで謝ってたかなんて、俺にはわからない。
 だけど彼女は、きっとこの時、俺という存在を求めてたんだと思う。
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