君は僕の心を殺す〜SilkBlue〜

坂田 零

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【6、転機】

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 そこから俺と里佳子さんは、なんとなく仲良くなっていった。
 なんとなく…あくまでなんとなく程度だ。
 男脳は単純で、俺の歌を褒めてくれた…それが嬉しかったって言うのもあったんだけど、これまで以上になんとなく気になる存在にはなっていた。
 店に来れば普通に話すし、3回に1回ぐらいはライブを見に来てくれる。
 他愛もないLINEをやり取りするし。
 その関係は 普通の女友達…
 いや… ちょっと特別な、女友達だったかもしれない。
 少なくとも、いつも俺の周りにいる女友だちとは、なんとなく感覚が違っていた。

 それはちょうど、7月の終わりの頃だった。
 いつもの様にバイトに行くと、事務所に引きこもっていた店長が、変な奇声を上げながらカウンターに姿を現した。

「あ"あ"あ"あああああ~!!!」

 俺とミキは、思わずぎょっとして振り返る。

「やばい!いつも頭のおかしい店長が、ますますおかしくなっちゃった?!」

「どうしたんすか店長?」

 きょとんとする俺とミキの肩を叩きながら、店長は悲痛の表情をしていた。

「出ちゃった…」

「何が出たんすか?」

「…ザ・辞令!!!」

 まるで、某青い猫型ロボットがポケットから道具を出すみたいに、店長も自分の ポケットから白い紙を取り出して、それを広げると、俺とミキに見せてきた。
 
「うわ…やっべ!
これ県外だ…しかも遠いし!」

「ありがた迷惑なことに、社長直々に電話かけてきて、うちのチェーン店の初の県外進出だから、頑張って務めあげろって…
 だめだ、もう3年は帰ってこれない…
あ"ああああああ~!!」

 「まじすか…で、いつからあっち行くんすか?」

「二週間後…」

「はっ??!」

「その店の店長になることが決まってた同期が!
マイホームを建てたことを理由に逃げやがったんだよ!」

「ああ…」

「あ"あ"あああああ~!」

 この時、頭を抱えてカウンターに突っ伏した店長を横目で見ながら、里佳子さんはどうするのかな…?とぼんやりと考えた。
 そして2週間後、本当に店長は県外の新規の店に転勤になった。

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