君は僕の心を殺す〜SilkBlue〜

坂田 零

文字の大きさ
上 下
7 / 22

【6、転機】

しおりを挟む
 そこから俺と里佳子さんは、なんとなく仲良くなっていった。
 なんとなく…あくまでなんとなく程度だ。
 男脳は単純で、俺の歌を褒めてくれた…それが嬉しかったって言うのもあったんだけど、これまで以上になんとなく気になる存在にはなっていた。
 店に来れば普通に話すし、3回に1回ぐらいはライブを見に来てくれる。
 他愛もないLINEをやり取りするし。
 その関係は 普通の女友達…
 いや… ちょっと特別な、女友達だったかもしれない。
 少なくとも、いつも俺の周りにいる女友だちとは、なんとなく感覚が違っていた。

 それはちょうど、7月の終わりの頃だった。
 いつもの様にバイトに行くと、事務所に引きこもっていた店長が、変な奇声を上げながらカウンターに姿を現した。

「あ"あ"あ"あああああ~!!!」

 俺とミキは、思わずぎょっとして振り返る。

「やばい!いつも頭のおかしい店長が、ますますおかしくなっちゃった?!」

「どうしたんすか店長?」

 きょとんとする俺とミキの肩を叩きながら、店長は悲痛の表情をしていた。

「出ちゃった…」

「何が出たんすか?」

「…ザ・辞令!!!」

 まるで、某青い猫型ロボットがポケットから道具を出すみたいに、店長も自分の ポケットから白い紙を取り出して、それを広げると、俺とミキに見せてきた。
 
「うわ…やっべ!
これ県外だ…しかも遠いし!」

「ありがた迷惑なことに、社長直々に電話かけてきて、うちのチェーン店の初の県外進出だから、頑張って務めあげろって…
 だめだ、もう3年は帰ってこれない…
あ"ああああああ~!!」

 「まじすか…で、いつからあっち行くんすか?」

「二週間後…」

「はっ??!」

「その店の店長になることが決まってた同期が!
マイホームを建てたことを理由に逃げやがったんだよ!」

「ああ…」

「あ"あ"あああああ~!」

 この時、頭を抱えてカウンターに突っ伏した店長を横目で見ながら、里佳子さんはどうするのかな…?とぼんやりと考えた。
 そして2週間後、本当に店長は県外の新規の店に転勤になった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

ナースコール

wawabubu
青春
腹膜炎で緊急手術になったおれ。若い看護師さんに剃毛されるが…

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

処理中です...