儚い雪に埋もれる想い

雪莉月花

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番外編

気付かない恋

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「先輩、好きな人っているんですか」




 中学最後に、先輩と過ごす日、俺はそう尋ねた。




先輩の今まで浮いた話など、一度も耳にしたことはなかった。





だが、十二月二十五日。




つまり、クリスマスの翌日から少し様子がおかしい。







ゆうならば、恋する乙女、という顔を時々匂わせる。





 先輩はその日、俺が誘った約束を断り、どこの野郎とかデートにいったのかもしれない。






そう考えると、悪寒が走る。




 先輩は、ナンパで引っかかったりはしない。





絶対にそうだ。




そう自分に言い聞かせる。



「好きな人‥かぁ」





そう先輩は呟く。



 


 その顔は、今まで見たどの顔よりも美しく、そして儚かった。








「いるよ、とっても愛おしい人。でも、もう会う方法がないんだ。向こうにとってはただの気まぐれで、あの日は一瞬の思い出かもしれない」





 潤んだ瞳が、太陽の光できらりと光る。





「だけど、私にとっては一生の思い出だった。そのくらい、あの人のこと忘れられない。三カ月たった今でもね」






 そう言って、にこっと笑う。 涙をこらえて。





だけど、先輩は絶対に涙を見せることはなかった。





それは自身のプライドを壊さないためか、そんなことは分からない。






 そんな強がってる先輩を、今すぐ抱きしめたかった。






抱きしめて、慰めて、唇を重なり合わせて。






 その先だって、望んでいないといったら嘘になる。




だけど、彼女を汚すことができなかった。





そんな勇気、もてなかった。






「先輩、す‥‥‥」


 直前のところで俺は、飲み込んだ。






すき、の二文字だっていう勇気がなかったことが思い知らされる。






「伽耶。伽耶は好きな人、いるの?」







「いますよ、昔っから好きなやつが。だけどそいつ、いつまで経っても気付かないんですよ」




 半分引きつった顔だったかもしれない。





だけど、先輩のように笑った。





「きっと、もうその子、気付いてるんじゃない? 伽耶がそう思ってないだけで。だからきっといつか、振り向いてくれるよ」




 ふわっと、俺の髪の毛を撫でた。





 一瞬、先輩はもう俺の気持ちに気付いているのかと妄想した。



しかし、よく考えたら絶対ないという答えにたどり着いた。










 だって先輩、世界一っていうほど鈍感なんだから。







「よく言えますね、先輩。根拠でもあるんですか」
















 皮肉たっぷりの言葉を返すと、俺は後ろを向いてそっと雫を落とした。







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