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第一章「逃れられない呪縛」
小説に感情を委ねる
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彼女に抱いた感情は、まぎれもなく現実だったから。
だから私は、小説に全てをぶつけた。
元々、文章を書くのを趣味にしていた私は、楽というだけだった。
これほど便利なものをあるなんて知らなかった。
しかし、今までの明るい文章、小説は書けなくなっていた。
暗く、全てを投げ捨ててしまいたくなるような内容しか、書けなくなった。
その小説を批判する者もいた。が、私は聞く耳を持たず、淡々と描き続けた。
それは機械のように、一日一日、ほぼ休むことなく動き続ける。
それが、人間でたとえると呼吸と同じなるのは、一瞬に過ぎなかった。
しかし、いつかは機械も停止する。それと比例するように、私も小説を書く手が止まった。
それもそうだ。
この年齢まで書いた本たちは約五十冊あまり。
気持ちとしては、半世紀分の文字を書いた気分だ。
だが、一度ついた出版社の火は消えることを知らない。
そして、火の粉を飛ばし続けながら燃え続ける。
自分で言うのもなんだが、私がデビューしてから社の売り上げは徐々に上がり、赤字をひっくり返したのだ。
そこで私がやめてしまったら、
危険なのだろう。
だから、私一人がどうこうして消せるわけがない。
変化のへの字も出てこないと思う。
いうならば、大火事の中、バケツの中の水だけでせっせと火を消すようなものだ。
その火が、私の中……。
心の中まで燃え移らないように、なんとかしなければならない。
信じてよいのだろうか。
伽耶を。その身をゆだねて良いのだろうか。
あの泣き虫だった彼に、頼ってよいのだろうか。
不安に駆られながらも、伽耶を見る。
視線が届いたのか、伽耶と目を合わせた。
その瞳の中には、私の姿がくっきりと映っていた。
あの時のように。
だから私は、小説に全てをぶつけた。
元々、文章を書くのを趣味にしていた私は、楽というだけだった。
これほど便利なものをあるなんて知らなかった。
しかし、今までの明るい文章、小説は書けなくなっていた。
暗く、全てを投げ捨ててしまいたくなるような内容しか、書けなくなった。
その小説を批判する者もいた。が、私は聞く耳を持たず、淡々と描き続けた。
それは機械のように、一日一日、ほぼ休むことなく動き続ける。
それが、人間でたとえると呼吸と同じなるのは、一瞬に過ぎなかった。
しかし、いつかは機械も停止する。それと比例するように、私も小説を書く手が止まった。
それもそうだ。
この年齢まで書いた本たちは約五十冊あまり。
気持ちとしては、半世紀分の文字を書いた気分だ。
だが、一度ついた出版社の火は消えることを知らない。
そして、火の粉を飛ばし続けながら燃え続ける。
自分で言うのもなんだが、私がデビューしてから社の売り上げは徐々に上がり、赤字をひっくり返したのだ。
そこで私がやめてしまったら、
危険なのだろう。
だから、私一人がどうこうして消せるわけがない。
変化のへの字も出てこないと思う。
いうならば、大火事の中、バケツの中の水だけでせっせと火を消すようなものだ。
その火が、私の中……。
心の中まで燃え移らないように、なんとかしなければならない。
信じてよいのだろうか。
伽耶を。その身をゆだねて良いのだろうか。
あの泣き虫だった彼に、頼ってよいのだろうか。
不安に駆られながらも、伽耶を見る。
視線が届いたのか、伽耶と目を合わせた。
その瞳の中には、私の姿がくっきりと映っていた。
あの時のように。
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