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すいません、ここどこですか?①
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「そういえば、さっきは何で魔法が使えたんだ?」
ガルバーンと契約を結んだ際に、俺は確かに魔法を使っていた。
異世界に送られただけで、ただのサラリーマンが魔法を使えるようになるほど、この世は甘く無いはずだ。
返事は無い。たぶん(ボクは暇じゃないのさ~)なんて言って消えたのだろう。
『それは我にも分からん。ただ、お主以外の存在を感じた。それが理由なのではないか?』
ガルバーンが不思議そうに言う。
すごい。やはりドラゴンは閻魔の気配を察知していたのか。
「あぁ、確かに俺の頭の中にはもう1匹いたな」
『しかし、お主が我が領域に入り込んだのはいつなのだ?我の察知能力は然程衰えておらぬと自負しておったのだが』
「あ・・・そういえば、その話をしていなかったな。俺は、何ていうのかな。とりあえず、異世界から来た」
『異世界?』
なるほど、ドラゴンといえども流石に異世界については何も知らないか・・・
「そう。異世界だ。俺は、前にいた世界で死んだんだ。」
「そして俺は、閻魔様みたいな奴に此処に放り出されたというわけ。」
『ほぅ・・・つまり、お主は死んだ後、我の領域で蘇ったというわけだな』
飲み込みが早くて助かる。普通なら、ありえないおとぎ話だと嘲るか、俺を変人だと蔑むだろう。これが、ドラゴンたる者の余裕なのだろうか。
「まぁ、そんなとこだな」
ガルバーンはまだ何か言おうとしていたが、俺には、先ほどから気になって仕方がない事があった。
「それはそうと、《あの大戦》ってのは一体何なんだ?」
『そうか、お主は異世界人故、何も知らぬのだったな』
ちょうど陽が水平線に沈む頃になって、少し寒くなってきた。俺は、ガルバーンの羽織っていたコートを借りて、その場に寝転がる。
ガルバーンは、焚き火を起こしながら静かに語り始めた。
『あれは、遠い遠い昔の事だ。我らがまだ、数多く空を飛んでいた時代。この大陸《バルザール大陸》には、ブリザニア王国というエルフの治める国が存在していた。』
『ブリザニア王国と我らは、互いに干渉せず、平穏に暮らしておった。だが、ある時、ブリザニア王国内で不穏な動きが目立ち始めたのだ。』
『その不穏分子共は、我ら竜族を操る術を研究しておった。そう、大戦が起こる何百年も前からだ』
『そうして、遂に奴らはその術を完成させた。そこからは、語るまでもない。』
「その不穏分子達が、ドラゴンを使って反乱を起こした・・・」
『そうだ。戦いは苛烈を極めた。我のように術に抗う事のできた者達が、ブリザニアの側につき戦ったからだ』
『だが、数が圧倒的すぎた。我らは負けたのだ』
『そうして、この大陸から、ブリザニア王国は姿を消した』
「それで、その不穏分子達は勝利した後どうしたんだ?」
『奴等は国を創った。恐ろしいまでの悪を詰め込んだ国をな。それが今、この大陸を牛耳っているオブリアン帝国と呼ばれる国だ』
オブリアン帝国・・・つまり、この世界を牛耳る悪の根源という事か。
ガルバーンはまだ話を続けようとしたが、俺はそれを制止する。こちらに来たばかりだからか、疲労感が酷い。
何か食事をとって今日は寝ようと提案する。
だが、よく考えたらここは広い草原のど真ん中・・・つまり、もう寝るしかなかった。
また明日続きを頼むと告げ、俺は静かに目を閉じた。
ガルバーンと契約を結んだ際に、俺は確かに魔法を使っていた。
異世界に送られただけで、ただのサラリーマンが魔法を使えるようになるほど、この世は甘く無いはずだ。
返事は無い。たぶん(ボクは暇じゃないのさ~)なんて言って消えたのだろう。
『それは我にも分からん。ただ、お主以外の存在を感じた。それが理由なのではないか?』
ガルバーンが不思議そうに言う。
すごい。やはりドラゴンは閻魔の気配を察知していたのか。
「あぁ、確かに俺の頭の中にはもう1匹いたな」
『しかし、お主が我が領域に入り込んだのはいつなのだ?我の察知能力は然程衰えておらぬと自負しておったのだが』
「あ・・・そういえば、その話をしていなかったな。俺は、何ていうのかな。とりあえず、異世界から来た」
『異世界?』
なるほど、ドラゴンといえども流石に異世界については何も知らないか・・・
「そう。異世界だ。俺は、前にいた世界で死んだんだ。」
「そして俺は、閻魔様みたいな奴に此処に放り出されたというわけ。」
『ほぅ・・・つまり、お主は死んだ後、我の領域で蘇ったというわけだな』
飲み込みが早くて助かる。普通なら、ありえないおとぎ話だと嘲るか、俺を変人だと蔑むだろう。これが、ドラゴンたる者の余裕なのだろうか。
「まぁ、そんなとこだな」
ガルバーンはまだ何か言おうとしていたが、俺には、先ほどから気になって仕方がない事があった。
「それはそうと、《あの大戦》ってのは一体何なんだ?」
『そうか、お主は異世界人故、何も知らぬのだったな』
ちょうど陽が水平線に沈む頃になって、少し寒くなってきた。俺は、ガルバーンの羽織っていたコートを借りて、その場に寝転がる。
ガルバーンは、焚き火を起こしながら静かに語り始めた。
『あれは、遠い遠い昔の事だ。我らがまだ、数多く空を飛んでいた時代。この大陸《バルザール大陸》には、ブリザニア王国というエルフの治める国が存在していた。』
『ブリザニア王国と我らは、互いに干渉せず、平穏に暮らしておった。だが、ある時、ブリザニア王国内で不穏な動きが目立ち始めたのだ。』
『その不穏分子共は、我ら竜族を操る術を研究しておった。そう、大戦が起こる何百年も前からだ』
『そうして、遂に奴らはその術を完成させた。そこからは、語るまでもない。』
「その不穏分子達が、ドラゴンを使って反乱を起こした・・・」
『そうだ。戦いは苛烈を極めた。我のように術に抗う事のできた者達が、ブリザニアの側につき戦ったからだ』
『だが、数が圧倒的すぎた。我らは負けたのだ』
『そうして、この大陸から、ブリザニア王国は姿を消した』
「それで、その不穏分子達は勝利した後どうしたんだ?」
『奴等は国を創った。恐ろしいまでの悪を詰め込んだ国をな。それが今、この大陸を牛耳っているオブリアン帝国と呼ばれる国だ』
オブリアン帝国・・・つまり、この世界を牛耳る悪の根源という事か。
ガルバーンはまだ話を続けようとしたが、俺はそれを制止する。こちらに来たばかりだからか、疲労感が酷い。
何か食事をとって今日は寝ようと提案する。
だが、よく考えたらここは広い草原のど真ん中・・・つまり、もう寝るしかなかった。
また明日続きを頼むと告げ、俺は静かに目を閉じた。
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