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邂逅
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姫:「…………?」
国光:「…………」
姫:「どなたでしょうか?」
国光:「私は髪結いの国光と申します。道中に脚を痛めてしまったのです」
姫:「髪結い……?」
国光:「髪を整えることを生業にしております」
姫:(首をかしげる)「そのような職業があるのですね」
国光:「いつものように、ご贔屓にしてくださっている地主の旦那様の髪を結った帰りに、近道をしようと見知らぬ林道に入ったが最後、いくら歩いても目に映るものは木ばかりで」
姫:「災難でしたね」
国光:「食糧をほんの少しだけで良いので、分けていただけないだろうか」
姫:「この辺りは、病犬のような獣が夜闇に紛れて活発になります」
国光:「…………どうしたものか」
姫:「一人で暮らしていると、誰かに髪を結ってもらう機会もありません」
(間)
国光:「あまり女性の髪を結った経験は多く無いのですが。……泊めていただく代わりに髪を結うというのは、いかがでしょうか?」
姫:「部屋も余分に多いので、ゆっくりしていただけると思いますよ」
国光:「ご厚意にあずからせてもらいます」
姫:「脚、大丈夫なんですか?」
国光:「骨までは折れていない筈……」
姫:「青黒く腫れていますよ」
国光:「足首を挫いたまま、歩き続けたせいですかね」
姫:「水で冷やしましょう。汲んで来ますので、座っていて下さい」
(少しの間)
国光:「改めて……国光と申します」
姫:「国光……様。私は紫です」
国光:「ムラサキさん」
姫:「ふふっ、畏まらず」
国光:「あのまま断られたら、どうしようかと思っていました」
姫:「怪我をした者を無下にはできませんよ」
国光:「素性の知らぬ男です」
姫:「そのような脚では、男性でも無害でしょう?」
国光:「…………痛い!」
姫:「少し冷たいですよ?」
国光:「くおっ!!」
姫:「変な声、あげないで下さい」
国光:「……面目ない」
姫:「寝巻き用に男物の着物もありますので、水風呂で汚れを落としてください」
【国光は言われるがままに水風呂に浸かる】
国光:(N)暮色の迫った空が、窓を通して水面を色付ける。
国光:「回りくどいか……」
国光:(小声で)「最初に襲いかかってくれた方が……」
姫:「国光様、お湯加減はいかがでしょうか?」
【ムラサキが扉を隔て、話しかけてくる】
国光:「ブハッ!!」
姫:「大丈夫ですかッ!」
国光:「はいッ!大丈夫なんで!」
国光:「満身創痍の身ゆえ。とても助かりました」
姫:「泥だらけで、顔色もよろしくありませんでしたから」
国光:「立派なお屋敷を汚さずに済みました」
姫:「そんなつもりで、ご用意したわけではありません」
国光:「はははっ、冗談です。とても気持ち良く堪能させていただいてます」
(少しの間)
姫:「お着物、並べておきます」
国光:「かたじけない」
姫:「歩くのが辛かったら、お手伝いするので遠慮しないでくださいね」
国光:「いえ、そこまで気を遣っていただかなくても」
姫:「……そうですか」
国光:「…………」
姫:「夕餉の支度をいたしますので、菫の間に来て下さい」
国光:「……はいッ!」
(間)
国光:「廊下が長く続いている……」
国光:「すみれ…すみれ……。ここか……」
【国光が襖に手をかける】
国光:「ムラサキさん、開けてもよろしいか?」
姫:(肯定)「ええ」
姫:「開けておくべきでしたね。部屋が多くて、分かりずらかったでしょう?」
国光:「沢山、襖が並んでいましたが、掛け札もあったので」
【2人はムラサキの作った料理を食べる】
(少しの間)
姫:「着物の丈、丁度でしたね、良かった」
国光:「作っていただいた料理も、とても美味しいです」
姫:「お口に合うか心配でしたけど、安心しました」
国光:「ムラサキさんは……普段どなたかと食事を?」
姫:「ずっと一人ですよ」
国光:「…………」
姫:「生まれて五つくらいの時は父のような男性がいたと思うのですが、病で亡くなってしまい……」
国光:「…………」
姫:「でも苦労することは、お掃除くらいですかね」
国光:「一人で、これだけの広さを清潔に保つのは大変そうだ……」
姫:「脚が治ったら、お手伝い頼めますか?」
国光:「是非、任せてください!」
姫:「ふふっ」
(少しの間)
国光:「いつ、髪を結いますか」
姫:「今宵はお疲れでしょ。静養してください」
国光:「それじゃあ、明朝に!」
姫:「ふふっ……」
(少しの間)
姫:「はいッ!……楽しみです」
(間)
国光:(N)畳の端から少しずつ、陽光が迫って来た。
国光:(N)起きなければいけない。
国光:「最期の朝日になるかもしれない」
(少しの間)
国光:(M)両袖を捲り、細い腕で私の着物を干している。
国光:(M)その姿は華に舞い降りる、蝶に似ている。
(少しの間)
国光:「……おはようございます」
姫:「国光様、おはようございます」
国光:「ムラサキさん、何から何まで……」
姫:「見返りとして。……髪、……髪を結って下さるんですよね」
国光:「任されよ!」
姫:「これじゃあ、私が髪の為だけに国光様をお手伝いしているみたいですね」
国光:「違うのですか?」
姫:「足、踏みつけますよ?」
国光:(上のセリフに後半被せても良き)「あいすみません」
(間)
国光:「髪を結っていきますね」
姫:「よろしくお願いします」
国光:「後ろ、整えていきますね」
【チョキチョキ、整えタイム】
姫:「国光様は、女性の髪を結った経験はどの位お有りなんですか?」
国光:「ご贔屓にされている、地主の娘さんと花道の芸妓さんくらいですかね」
姫:「私の髪はどうですか?」
国光:「ムラサキさんの髪、とても綺麗ですよ」
姫:「どうしても伸びていくと、自分で纏めるのが難しくなってきて」
国光:「毛先を揃えるために、少し短くしても良いですか?」
姫:「国光様にお任せします」
国光:「…………」
姫:「どうかしましたか?」
国光:「…………あっ、はい!」
姫:「…………」
国光:「少し持ち上げますね」
姫:「ふふっ」
国光:「……?」
姫:「髪が、首に当たって……くすぐったくて」
国光:「本日はもう少し切ったら、明日も時間をください」
姫:(肯定)「ええ。……?」
国光:「一度、髪を水で濯いでから、また」
姫:「ああ。承知いたしました」
(間)
姫:「ご家族はいらっしゃるのですか?」
国光:「家族ですか?」
国光:「…………幼い頃、親戚からは忌み嫌われて来ました。両親は物心がついた頃には、いませんでしたので」
姫:「…………」
国光:「一人で生きていく為に、とにかく必死で多くの技術を学びました」
姫:「苦労なさったんですね」
国光:「私にも住む家があったので、寝る場所に困らないだけマシでしたよ」
(間)
国光:「ムラサキさん、並んでいる壺には何が入っているのですか?」
姫:「朱夏の間に獲れた野菜を漬物などにしてるのです」
国光:「もうすぐ秋ですもんね」
姫:「秋は多くのものが豊かになるので好きですよ」
国光:「此処らの草木なら、千紫万紅 一変しそうだ」
姫:「秋は一瞬で、すぐに冷たい冬が訪れます」
姫:「冬はどうしても好きになれません」
国光:「……?」
姫:「寒いので、毎年一室だけを温めて凌いでいます」
国光:「縁側から見える銀世界も風情があるんじゃないですか?」
姫:「考えたこともなかったです」
(間)
国光:(N)そんな他愛もない会話を、私と彼女は繰り返した。
国光:(N)髪結いなんぞと偽り、髪結道具を包んだ風呂敷に隠した簡易狩衣と『神刀ムラマサ贋作』。
国光:(呟くように)「明日、私はアレを殺す」
(少しの間)
姫:「国光様、おはようございます!」
国光:「ムラサキさん、おはようございます」
姫:「朝、誰かと顔を合わせられるのってステキなことですね」
国光:「そうですね」
姫:「朝食の品も完成しているので、一緒に食べませんか?」
国光:「はい」
姫:「国光様のケガが治るように、張り切って作ったんですよ」
国光:「楽しみだ」
姫:「昨日、結っていただいたおかげで、櫛がすんなり通りました」
国光:「結う前から、毛先まで新芽のように艶めいてましたよ」
姫:(呟くように)「褒めていただけるのは……髪だけですか」
国光:「…………」
国光:(M)私は、今、彼女の背後に立つ。
国光:(M)無防備で。ヒトとしか思えない華奢で細い首。薄い肌に袖から取り出した刃を翳す。
(間)
姫:「国光様。これからも……国光様と過ぎ行く季節を感じたいです」
国光:(M)「何を言ってるんだ」
姫:「髪結いの奉公の合間でも……」
国光:(M)「来ることのない未来の話なんて……するな」
姫:「私は、国光様を好いて……」
国光:(苦しみ)「…………あ゛ッ!!」
(間)
国光:「何が起こったんだッ!!」
姫:(冷酷に)(N)━━━━男の身体は吹っ飛んだ。
国光:「……ぐッ!」
国光:(M)躊躇った。
国光:(M)躊躇ってしまった。
国光:(M)これまで、造形美の備わった妖怪なんて飽きるほど殺めてきたじゃないか!
国光:(M)どうして、彼女の首を刎ねられなかったんだ。
姫:「髪を整えるにしては、ご立派な刀ですね」
国光:「…………ムラサキ……ッ!」
姫:「そんなに見苦しいですか?」
国光:(M)カラダが引き寄せられるッ!
姫:「私って、そんなに醜いですか?」
国光:(N)ムラサキを名乗った女の下半身が、わずかに浮かび上がった。
国光:「蝶のような大きな翅……。下半身は蜘蛛のような筋張った太い脚が6本━━蟲ノ姫」
姫:「意外と冷静なんですね。糸で国光様のカラダを引き寄せた時、着ている着物……脱げちゃいましたね」
国光:「……」
姫:「中に着ている、お召しものって……狩衣って言うんでしたっけ?」
国光:「そんな大層なモノじゃないですよ」
姫:「もっと近くで見せて欲しいです」
国光:(M)どうする。一度、退散した方がいいのか。
姫:「行ってしまうのですか?」
国光:「ええ。そうさせていただきます」
国光:(呟くように)「骨は再生、水は浄化を意味せし。天文は人を導く指針であれ」
姫:「…………行ってしまうのですね」
国光:(M)彼女の間合いの検討がつかない限り、相手にするのは悪手だ。
姫:「国光様……。貴方になら、良かったのに」
姫:「逝ってしまうのですね」
【林の中を駆ける国光】
国光:(冷静)「どれだけ走っても、雑多に茂った林が続く。端が見えない……」
国光:(M)「……ッ!」
国光:「歩みを進める度に、悍ましい蟲が襲ってくる……」
国光:「刀で斬り、振り払うのは難しくない。危惧すべきは、私の体力か……」
国光:「…………キリがない」
国光:(苦しくも清々しく)「私も終わりか……多くの妖怪を斬り続けた私にはお似合いの最期かもしれない」
(少しの間)
姫:(深くゆっくりと)「「国光様」」
(国光の視界が反転した)
国光:「…………何が起こった?」
姫:「お帰りなさいませ。傷だらけですね」
姫:「それでも……生きているんですね。私の蟲から生還した……」
(少しの間)
姫:「貴方は、お強い」
(間)
国光:(声にならない声)「………………!!」
国光:「瞬く間もなく、屋敷の畳の上にいた」
姫:「桔梗の間へようこそ」
国光:「…………」
姫:「私の糸を部屋中に張り巡らせています」
姫:「桔梗の間を使用した人間は、貴方が初めてです」
国光:「私の正体に……いつから気づいていたんだ?」
姫:「初めてお会いした時からですよ」
国光:(天井を仰ぐ)「………………はぁ」
姫:(穏やかに)「私の屋敷。常人には見つけることすら、できませんから」
国光:「そうか」
姫:「あなたは呪い師か何かなのでしょう?」
国光:「ここの雑木林に踏み入った、刹那から。私は一筋縄ではいかないと覚悟したさ」
姫:「わざわざ、足の骨なんて折らなくても」
国光:「愚かで、泥臭かったか」
姫:「呪い師だからって、あんなに速く走ったり。私の蟲を真っ二つに斬ったりできません」
姫:(独り言のように)「足の一本治すことなど、容易い……ですか」
国光:「もう名前では呼んでくれないんだな」
姫:「名前もどうせ偽名でしょ」
国光:「本名だ」
姫:「貴方達みたいな呪い師は、本名を隠して接触してくる……。でないと名を利用されて……」
国光:「…………」
(間)
姫:「国光様。貴方、死ぬつもりで……」
国光:「名前を呼び直してくれるのか」
姫:「…………」
国光:「死を意識している」
姫:「理解できません」
国光:「私は常に死場所を探している」
姫:「じゃあ、なぜ妖を退治して?」
国光:「さぁ、どうしてだろうな」
姫:「人間はいつもそうです。はぐらかし、軽蔑し、恐怖する」
国光:「私はお前を、恐怖しているように見えるか?」
(少しの間)
(蟲ノ姫が前脚で、国光の手の平を突き刺す)
国光:「ぐっ……!!」
姫:「手の傷も。今から空ける、お腹の穴も。すぐに治してしまうのかしら」
国光:(苦しそうに)「私が着せられた着物も。壺に入った犠牲者の者だろ」
姫:「幻滅しましたか?」
国光:「そういうものだろ。お前たちは」
姫:「人間なんて……大っ嫌い」
(前脚の先が、深く刺さる)
国光:「ぐああッ!」
国光:(M)壺の蓋を開けると、彼女自身の醜悪さが理解できた。
国光:「それでも、私は」
姫:「はい?」
国光:「お前を、何者よりも美しいと思ってしまう」
姫:「…………」
国光:「…………」
姫:「正気ですか?」
国光:「どうだろうな。とっくに、正気なんて失せていたのかもしれない」
姫:(強めに)「国光……貴方の上に立つ女は、禍々しい……バケモノです」
姫:「意識が飛びそうなら、何度だって……教えてあげます」
国光:(前脚が肌の上をなぞる)「ぐッ!」
国光:「これ以上……穴を開けないで欲しいな」
姫:「…………抵抗しなさい」
国光:「……ムラサキさん」
姫:「抵抗しろッ!」
国光:「私も同じだ。出会う者からは残忍なバケモノを見る目で、見られてきた」
国光:「床を汚す『赤』は、私にとって呪いだ」
姫:(冷静に)「国光様」
国光:「蘆屋国光」
(少しの間)
姫:「道摩法師……!」
国光:「何にも濁せない陰陽師としての強烈な『赤』は、決して私の前に人を立たせなかった」
国光:「幾重にも刻まれた、呪符の中で俺は……一人で……ッ!(途中で抱きしめられる)」
姫:「冷たい」
国光:「殺したければ殺せばいい」
姫:「駄目です」
国光:「ムラサキさんになら」
姫:「死なしてなんて、あげません」
国光:「…………」
姫:「死なしてなんて……あげません」
姫:「今の私を見て、ムラサキって呼んでくれたから」
国光:「私には、美しく儚い……一人の女にしか見えないんだ」
(少しの間)
姫:「…………私と一緒にいてください」
(間)
国光:(N)あれから数十日、屋敷の外を雪が降り始めた。
姫:「国光様、離れないでください……寒いです」
国光:「雪が降る前に、私の傷が癒えて良かった。じゃないと、埋葬のための穴が掘れなかった」
姫:「寒いので、はなれないでッ!!」
国光:「薪を取りに行きます」
姫:「じゃあ、離れないで取りに行ってください」
国光:「無茶を言わないで」
姫:「あっ!冬に私をやっつけに来れば良かったんじゃないですか?」
国光:「……確かにッ!!!」
姫:「国光様が俗世に帰らない時点で、私への退治令が取り消されるんでしたっけ?」
国光:「ええ。退治令と言っても、単なる現存するかもしれない妖の区分みたいなものですからね」
国光:「私は最古の陰陽師に最も近い呪い師ですので。私が退治できないモノは誰にも無理な概念。『時間による解決』と判断されます。その時点で、退治令からムラサキさんは除外される」
姫:「意外と……、退治令って……雑なんじゃ?」
(少しの間)
姫:「あっ……雪が積もってます」
国光:「やはり……銀世界が映える庭ですね」
姫:「初めて雪を美しいと感じました」
姫:「誰かと見る雪は、こんなにも美しいだなんて」
国光:「ムラサキさん、まだ寒い?」
姫:「このまま暖めてください……永遠に貴方の鼓動を感じさせて」
国光:「私が死んだら、食って欲しい」
姫:「またそのお話ですか。……考えさせてください」
国光:「そしたら、子を生すことも出来るのでしょう?」
姫:「子を私たちのように、一人にさせるのですか?」
国光:「私の式神を、君の蟲へと受肉させよう」
姫:「まるで、陰陽師のようだわ」
国光:「お褒め預かり光栄です」
姫:「いいえ。私の旦那様だから当然です」
(少しの間)
国光:「私たちの子を孤独なんかにしない」
姫:「…………」
(少しの間)
(十五年後)
姫:「十五しかなのか、十五もなのか。国光様にとっては、長かったですか?短かったですか?」
国光:「…………」
姫:「どうしようもありませんね」
国光:「……本当に君は綺麗だ」
姫:「我が子の顔も見ずに、死のうだなんて。貴方は、どうしようもない人です…………最期まで」
国光:「……君と一つになれる」
姫:「許してなんてあげません」
国光:「……手厳しいな」
姫:「好きって言って」
国光:「好きだ」
姫:「愛してるって言って」
国光:「愛してる」
姫:「貴方が大好きな私です。もっとよく見て」
国光:「ああ」
姫:「ダメです……もっと!」
国光:「ふふ。今までだって、何度も愛し合ったろ?」
姫:「ダメ?」
国光:「今日は、私が離してあげない」
(間)
(姫 詩朗読シーン)
愛に堕ち
桑ば繋がる
繭の中
朱色に滲んだ着物は
紅葉と共に地に帰る
【詩朗読 終了】
(間)
姫:「ただ愛されたかった」
国光:「愛しかたを知りたかった」
姫:「2人が出会う物語━━蟲ノ姫 邂逅」
終わり
国光:「…………」
姫:「どなたでしょうか?」
国光:「私は髪結いの国光と申します。道中に脚を痛めてしまったのです」
姫:「髪結い……?」
国光:「髪を整えることを生業にしております」
姫:(首をかしげる)「そのような職業があるのですね」
国光:「いつものように、ご贔屓にしてくださっている地主の旦那様の髪を結った帰りに、近道をしようと見知らぬ林道に入ったが最後、いくら歩いても目に映るものは木ばかりで」
姫:「災難でしたね」
国光:「食糧をほんの少しだけで良いので、分けていただけないだろうか」
姫:「この辺りは、病犬のような獣が夜闇に紛れて活発になります」
国光:「…………どうしたものか」
姫:「一人で暮らしていると、誰かに髪を結ってもらう機会もありません」
(間)
国光:「あまり女性の髪を結った経験は多く無いのですが。……泊めていただく代わりに髪を結うというのは、いかがでしょうか?」
姫:「部屋も余分に多いので、ゆっくりしていただけると思いますよ」
国光:「ご厚意にあずからせてもらいます」
姫:「脚、大丈夫なんですか?」
国光:「骨までは折れていない筈……」
姫:「青黒く腫れていますよ」
国光:「足首を挫いたまま、歩き続けたせいですかね」
姫:「水で冷やしましょう。汲んで来ますので、座っていて下さい」
(少しの間)
国光:「改めて……国光と申します」
姫:「国光……様。私は紫です」
国光:「ムラサキさん」
姫:「ふふっ、畏まらず」
国光:「あのまま断られたら、どうしようかと思っていました」
姫:「怪我をした者を無下にはできませんよ」
国光:「素性の知らぬ男です」
姫:「そのような脚では、男性でも無害でしょう?」
国光:「…………痛い!」
姫:「少し冷たいですよ?」
国光:「くおっ!!」
姫:「変な声、あげないで下さい」
国光:「……面目ない」
姫:「寝巻き用に男物の着物もありますので、水風呂で汚れを落としてください」
【国光は言われるがままに水風呂に浸かる】
国光:(N)暮色の迫った空が、窓を通して水面を色付ける。
国光:「回りくどいか……」
国光:(小声で)「最初に襲いかかってくれた方が……」
姫:「国光様、お湯加減はいかがでしょうか?」
【ムラサキが扉を隔て、話しかけてくる】
国光:「ブハッ!!」
姫:「大丈夫ですかッ!」
国光:「はいッ!大丈夫なんで!」
国光:「満身創痍の身ゆえ。とても助かりました」
姫:「泥だらけで、顔色もよろしくありませんでしたから」
国光:「立派なお屋敷を汚さずに済みました」
姫:「そんなつもりで、ご用意したわけではありません」
国光:「はははっ、冗談です。とても気持ち良く堪能させていただいてます」
(少しの間)
姫:「お着物、並べておきます」
国光:「かたじけない」
姫:「歩くのが辛かったら、お手伝いするので遠慮しないでくださいね」
国光:「いえ、そこまで気を遣っていただかなくても」
姫:「……そうですか」
国光:「…………」
姫:「夕餉の支度をいたしますので、菫の間に来て下さい」
国光:「……はいッ!」
(間)
国光:「廊下が長く続いている……」
国光:「すみれ…すみれ……。ここか……」
【国光が襖に手をかける】
国光:「ムラサキさん、開けてもよろしいか?」
姫:(肯定)「ええ」
姫:「開けておくべきでしたね。部屋が多くて、分かりずらかったでしょう?」
国光:「沢山、襖が並んでいましたが、掛け札もあったので」
【2人はムラサキの作った料理を食べる】
(少しの間)
姫:「着物の丈、丁度でしたね、良かった」
国光:「作っていただいた料理も、とても美味しいです」
姫:「お口に合うか心配でしたけど、安心しました」
国光:「ムラサキさんは……普段どなたかと食事を?」
姫:「ずっと一人ですよ」
国光:「…………」
姫:「生まれて五つくらいの時は父のような男性がいたと思うのですが、病で亡くなってしまい……」
国光:「…………」
姫:「でも苦労することは、お掃除くらいですかね」
国光:「一人で、これだけの広さを清潔に保つのは大変そうだ……」
姫:「脚が治ったら、お手伝い頼めますか?」
国光:「是非、任せてください!」
姫:「ふふっ」
(少しの間)
国光:「いつ、髪を結いますか」
姫:「今宵はお疲れでしょ。静養してください」
国光:「それじゃあ、明朝に!」
姫:「ふふっ……」
(少しの間)
姫:「はいッ!……楽しみです」
(間)
国光:(N)畳の端から少しずつ、陽光が迫って来た。
国光:(N)起きなければいけない。
国光:「最期の朝日になるかもしれない」
(少しの間)
国光:(M)両袖を捲り、細い腕で私の着物を干している。
国光:(M)その姿は華に舞い降りる、蝶に似ている。
(少しの間)
国光:「……おはようございます」
姫:「国光様、おはようございます」
国光:「ムラサキさん、何から何まで……」
姫:「見返りとして。……髪、……髪を結って下さるんですよね」
国光:「任されよ!」
姫:「これじゃあ、私が髪の為だけに国光様をお手伝いしているみたいですね」
国光:「違うのですか?」
姫:「足、踏みつけますよ?」
国光:(上のセリフに後半被せても良き)「あいすみません」
(間)
国光:「髪を結っていきますね」
姫:「よろしくお願いします」
国光:「後ろ、整えていきますね」
【チョキチョキ、整えタイム】
姫:「国光様は、女性の髪を結った経験はどの位お有りなんですか?」
国光:「ご贔屓にされている、地主の娘さんと花道の芸妓さんくらいですかね」
姫:「私の髪はどうですか?」
国光:「ムラサキさんの髪、とても綺麗ですよ」
姫:「どうしても伸びていくと、自分で纏めるのが難しくなってきて」
国光:「毛先を揃えるために、少し短くしても良いですか?」
姫:「国光様にお任せします」
国光:「…………」
姫:「どうかしましたか?」
国光:「…………あっ、はい!」
姫:「…………」
国光:「少し持ち上げますね」
姫:「ふふっ」
国光:「……?」
姫:「髪が、首に当たって……くすぐったくて」
国光:「本日はもう少し切ったら、明日も時間をください」
姫:(肯定)「ええ。……?」
国光:「一度、髪を水で濯いでから、また」
姫:「ああ。承知いたしました」
(間)
姫:「ご家族はいらっしゃるのですか?」
国光:「家族ですか?」
国光:「…………幼い頃、親戚からは忌み嫌われて来ました。両親は物心がついた頃には、いませんでしたので」
姫:「…………」
国光:「一人で生きていく為に、とにかく必死で多くの技術を学びました」
姫:「苦労なさったんですね」
国光:「私にも住む家があったので、寝る場所に困らないだけマシでしたよ」
(間)
国光:「ムラサキさん、並んでいる壺には何が入っているのですか?」
姫:「朱夏の間に獲れた野菜を漬物などにしてるのです」
国光:「もうすぐ秋ですもんね」
姫:「秋は多くのものが豊かになるので好きですよ」
国光:「此処らの草木なら、千紫万紅 一変しそうだ」
姫:「秋は一瞬で、すぐに冷たい冬が訪れます」
姫:「冬はどうしても好きになれません」
国光:「……?」
姫:「寒いので、毎年一室だけを温めて凌いでいます」
国光:「縁側から見える銀世界も風情があるんじゃないですか?」
姫:「考えたこともなかったです」
(間)
国光:(N)そんな他愛もない会話を、私と彼女は繰り返した。
国光:(N)髪結いなんぞと偽り、髪結道具を包んだ風呂敷に隠した簡易狩衣と『神刀ムラマサ贋作』。
国光:(呟くように)「明日、私はアレを殺す」
(少しの間)
姫:「国光様、おはようございます!」
国光:「ムラサキさん、おはようございます」
姫:「朝、誰かと顔を合わせられるのってステキなことですね」
国光:「そうですね」
姫:「朝食の品も完成しているので、一緒に食べませんか?」
国光:「はい」
姫:「国光様のケガが治るように、張り切って作ったんですよ」
国光:「楽しみだ」
姫:「昨日、結っていただいたおかげで、櫛がすんなり通りました」
国光:「結う前から、毛先まで新芽のように艶めいてましたよ」
姫:(呟くように)「褒めていただけるのは……髪だけですか」
国光:「…………」
国光:(M)私は、今、彼女の背後に立つ。
国光:(M)無防備で。ヒトとしか思えない華奢で細い首。薄い肌に袖から取り出した刃を翳す。
(間)
姫:「国光様。これからも……国光様と過ぎ行く季節を感じたいです」
国光:(M)「何を言ってるんだ」
姫:「髪結いの奉公の合間でも……」
国光:(M)「来ることのない未来の話なんて……するな」
姫:「私は、国光様を好いて……」
国光:(苦しみ)「…………あ゛ッ!!」
(間)
国光:「何が起こったんだッ!!」
姫:(冷酷に)(N)━━━━男の身体は吹っ飛んだ。
国光:「……ぐッ!」
国光:(M)躊躇った。
国光:(M)躊躇ってしまった。
国光:(M)これまで、造形美の備わった妖怪なんて飽きるほど殺めてきたじゃないか!
国光:(M)どうして、彼女の首を刎ねられなかったんだ。
姫:「髪を整えるにしては、ご立派な刀ですね」
国光:「…………ムラサキ……ッ!」
姫:「そんなに見苦しいですか?」
国光:(M)カラダが引き寄せられるッ!
姫:「私って、そんなに醜いですか?」
国光:(N)ムラサキを名乗った女の下半身が、わずかに浮かび上がった。
国光:「蝶のような大きな翅……。下半身は蜘蛛のような筋張った太い脚が6本━━蟲ノ姫」
姫:「意外と冷静なんですね。糸で国光様のカラダを引き寄せた時、着ている着物……脱げちゃいましたね」
国光:「……」
姫:「中に着ている、お召しものって……狩衣って言うんでしたっけ?」
国光:「そんな大層なモノじゃないですよ」
姫:「もっと近くで見せて欲しいです」
国光:(M)どうする。一度、退散した方がいいのか。
姫:「行ってしまうのですか?」
国光:「ええ。そうさせていただきます」
国光:(呟くように)「骨は再生、水は浄化を意味せし。天文は人を導く指針であれ」
姫:「…………行ってしまうのですね」
国光:(M)彼女の間合いの検討がつかない限り、相手にするのは悪手だ。
姫:「国光様……。貴方になら、良かったのに」
姫:「逝ってしまうのですね」
【林の中を駆ける国光】
国光:(冷静)「どれだけ走っても、雑多に茂った林が続く。端が見えない……」
国光:(M)「……ッ!」
国光:「歩みを進める度に、悍ましい蟲が襲ってくる……」
国光:「刀で斬り、振り払うのは難しくない。危惧すべきは、私の体力か……」
国光:「…………キリがない」
国光:(苦しくも清々しく)「私も終わりか……多くの妖怪を斬り続けた私にはお似合いの最期かもしれない」
(少しの間)
姫:(深くゆっくりと)「「国光様」」
(国光の視界が反転した)
国光:「…………何が起こった?」
姫:「お帰りなさいませ。傷だらけですね」
姫:「それでも……生きているんですね。私の蟲から生還した……」
(少しの間)
姫:「貴方は、お強い」
(間)
国光:(声にならない声)「………………!!」
国光:「瞬く間もなく、屋敷の畳の上にいた」
姫:「桔梗の間へようこそ」
国光:「…………」
姫:「私の糸を部屋中に張り巡らせています」
姫:「桔梗の間を使用した人間は、貴方が初めてです」
国光:「私の正体に……いつから気づいていたんだ?」
姫:「初めてお会いした時からですよ」
国光:(天井を仰ぐ)「………………はぁ」
姫:(穏やかに)「私の屋敷。常人には見つけることすら、できませんから」
国光:「そうか」
姫:「あなたは呪い師か何かなのでしょう?」
国光:「ここの雑木林に踏み入った、刹那から。私は一筋縄ではいかないと覚悟したさ」
姫:「わざわざ、足の骨なんて折らなくても」
国光:「愚かで、泥臭かったか」
姫:「呪い師だからって、あんなに速く走ったり。私の蟲を真っ二つに斬ったりできません」
姫:(独り言のように)「足の一本治すことなど、容易い……ですか」
国光:「もう名前では呼んでくれないんだな」
姫:「名前もどうせ偽名でしょ」
国光:「本名だ」
姫:「貴方達みたいな呪い師は、本名を隠して接触してくる……。でないと名を利用されて……」
国光:「…………」
(間)
姫:「国光様。貴方、死ぬつもりで……」
国光:「名前を呼び直してくれるのか」
姫:「…………」
国光:「死を意識している」
姫:「理解できません」
国光:「私は常に死場所を探している」
姫:「じゃあ、なぜ妖を退治して?」
国光:「さぁ、どうしてだろうな」
姫:「人間はいつもそうです。はぐらかし、軽蔑し、恐怖する」
国光:「私はお前を、恐怖しているように見えるか?」
(少しの間)
(蟲ノ姫が前脚で、国光の手の平を突き刺す)
国光:「ぐっ……!!」
姫:「手の傷も。今から空ける、お腹の穴も。すぐに治してしまうのかしら」
国光:(苦しそうに)「私が着せられた着物も。壺に入った犠牲者の者だろ」
姫:「幻滅しましたか?」
国光:「そういうものだろ。お前たちは」
姫:「人間なんて……大っ嫌い」
(前脚の先が、深く刺さる)
国光:「ぐああッ!」
国光:(M)壺の蓋を開けると、彼女自身の醜悪さが理解できた。
国光:「それでも、私は」
姫:「はい?」
国光:「お前を、何者よりも美しいと思ってしまう」
姫:「…………」
国光:「…………」
姫:「正気ですか?」
国光:「どうだろうな。とっくに、正気なんて失せていたのかもしれない」
姫:(強めに)「国光……貴方の上に立つ女は、禍々しい……バケモノです」
姫:「意識が飛びそうなら、何度だって……教えてあげます」
国光:(前脚が肌の上をなぞる)「ぐッ!」
国光:「これ以上……穴を開けないで欲しいな」
姫:「…………抵抗しなさい」
国光:「……ムラサキさん」
姫:「抵抗しろッ!」
国光:「私も同じだ。出会う者からは残忍なバケモノを見る目で、見られてきた」
国光:「床を汚す『赤』は、私にとって呪いだ」
姫:(冷静に)「国光様」
国光:「蘆屋国光」
(少しの間)
姫:「道摩法師……!」
国光:「何にも濁せない陰陽師としての強烈な『赤』は、決して私の前に人を立たせなかった」
国光:「幾重にも刻まれた、呪符の中で俺は……一人で……ッ!(途中で抱きしめられる)」
姫:「冷たい」
国光:「殺したければ殺せばいい」
姫:「駄目です」
国光:「ムラサキさんになら」
姫:「死なしてなんて、あげません」
国光:「…………」
姫:「死なしてなんて……あげません」
姫:「今の私を見て、ムラサキって呼んでくれたから」
国光:「私には、美しく儚い……一人の女にしか見えないんだ」
(少しの間)
姫:「…………私と一緒にいてください」
(間)
国光:(N)あれから数十日、屋敷の外を雪が降り始めた。
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国光:「雪が降る前に、私の傷が癒えて良かった。じゃないと、埋葬のための穴が掘れなかった」
姫:「寒いので、はなれないでッ!!」
国光:「薪を取りに行きます」
姫:「じゃあ、離れないで取りに行ってください」
国光:「無茶を言わないで」
姫:「あっ!冬に私をやっつけに来れば良かったんじゃないですか?」
国光:「……確かにッ!!!」
姫:「国光様が俗世に帰らない時点で、私への退治令が取り消されるんでしたっけ?」
国光:「ええ。退治令と言っても、単なる現存するかもしれない妖の区分みたいなものですからね」
国光:「私は最古の陰陽師に最も近い呪い師ですので。私が退治できないモノは誰にも無理な概念。『時間による解決』と判断されます。その時点で、退治令からムラサキさんは除外される」
姫:「意外と……、退治令って……雑なんじゃ?」
(少しの間)
姫:「あっ……雪が積もってます」
国光:「やはり……銀世界が映える庭ですね」
姫:「初めて雪を美しいと感じました」
姫:「誰かと見る雪は、こんなにも美しいだなんて」
国光:「ムラサキさん、まだ寒い?」
姫:「このまま暖めてください……永遠に貴方の鼓動を感じさせて」
国光:「私が死んだら、食って欲しい」
姫:「またそのお話ですか。……考えさせてください」
国光:「そしたら、子を生すことも出来るのでしょう?」
姫:「子を私たちのように、一人にさせるのですか?」
国光:「私の式神を、君の蟲へと受肉させよう」
姫:「まるで、陰陽師のようだわ」
国光:「お褒め預かり光栄です」
姫:「いいえ。私の旦那様だから当然です」
(少しの間)
国光:「私たちの子を孤独なんかにしない」
姫:「…………」
(少しの間)
(十五年後)
姫:「十五しかなのか、十五もなのか。国光様にとっては、長かったですか?短かったですか?」
国光:「…………」
姫:「どうしようもありませんね」
国光:「……本当に君は綺麗だ」
姫:「我が子の顔も見ずに、死のうだなんて。貴方は、どうしようもない人です…………最期まで」
国光:「……君と一つになれる」
姫:「許してなんてあげません」
国光:「……手厳しいな」
姫:「好きって言って」
国光:「好きだ」
姫:「愛してるって言って」
国光:「愛してる」
姫:「貴方が大好きな私です。もっとよく見て」
国光:「ああ」
姫:「ダメです……もっと!」
国光:「ふふ。今までだって、何度も愛し合ったろ?」
姫:「ダメ?」
国光:「今日は、私が離してあげない」
(間)
(姫 詩朗読シーン)
愛に堕ち
桑ば繋がる
繭の中
朱色に滲んだ着物は
紅葉と共に地に帰る
【詩朗読 終了】
(間)
姫:「ただ愛されたかった」
国光:「愛しかたを知りたかった」
姫:「2人が出会う物語━━蟲ノ姫 邂逅」
終わり
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