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2人の星空

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北部奪還作戦遂行5日前 深夜
JACK隊員セーフハウス 2人部屋

(慈水コウのモノローグ)

コウ:私達は5日後に大規模な作戦が控えています。

コウ:どんなに過酷な作戦でも、第8部隊なら大丈夫です。きっとやり遂げられる。

コウ:敗北の理由が見つかりません。隊員皆んな、一生懸命に頑張っていますから。

コウ:きっと他の隊員の子達もそう考えています。そして、多くの脅威へひるまずに先頭を駆ける━━彼女の姿を想起そうきします。

コウ:私たち全38名をまとめる第8部隊隊長 慈江じこうカイ。カイちゃんが全力で戦えるようにとなりで支えるのが、私の役割。私にしかできない大切な使命。

コウ:カイちゃんは…昔から真面目で真っ直ぐで。周りにいる人や隊員1人1人をよく見ていて、気配りもできます。

コウ:私達は幼い頃から現在に至るまで、ずっと一緒に生活し成長しました。何事にも一生懸命な彼女が差し出した小さな手を、私はしっかりと握りました。

コウ:私はそんなカイちゃんを尊敬しながらも、カイちゃんが唯一ゆいいつ弱音を吐ける存在であろうとしました。
 
(ここからモノローグは(M)と表記します)
 
カイ:「………………」

コウ:(M)隣のベッドで寝ていたカイちゃんが、ゆっくりベッドから降ります。

コウ:(M)カイちゃん……。

コウ:(M)カイちゃんが部屋から出て行きました。

コウ:「あまりにも戻って来るのが遅いと、注意しなければなりませんね」

コウ:「ホットミルクでも淹れておこうかな」

コウ:「カイちゃん、砂糖をしっかり入れないとホットミルク飲めないんですよね」

コウ:「でも、すぐ帰って来るかもしれませんし……」

(間)

コウ:(M)数十分経ちました。長いですね。………何かあったのでしょうか。

コウ:(M)カイちゃんが帰ってきました!

コウ:(M)カイちゃんは私に気づかれないように、ドアをそっと開けます。

コウ:(M)そして、閉め……。

コウ:(M)目が合いました。

カイ:「……あっ」

(間)

コウ:「夜更かしはダメです。寝られないのですか?」

カイ:「なんだ、起きてたのか」

カイ:「散歩だよ」

コウ:「嘘ですね」

コウ:「嘘ですよね?」

カイ:「……うむ」

コウ:「どなたかとお話ししてましたね」

カイ:「見てたのか?」

コウ:「見てませんよ」

カイ:「えぇーーーーーー」

コウ:カイちゃんが、おずおずと私の隣に座りました。

コウ:視線が斜め下を向いています。私に問い詰められて、ねてしまいましたか。

コウ:「手、握りますか?」

カイ:「…………頼む」

コウ:「いつもカイちゃんの手は冷たいんですから」

カイ:「コウの手はいつも温かいな。握っていると安心するよ」

コウ:「このまま横になりますか?」

カイ:「ああ」

コウ:私たちはは同じ布団に入りました。カイちゃんの手が少し震えています。

コウ:「寝られないですか?」

コウ:(M)カイちゃんは重要な作戦の前に、寝つきが悪くなります。他の隊員には決して見せないカイちゃんの姿。

コウ:(M)私は知っています。カイちゃんが震えているのは、おのれの死に対する恐怖じゃない。仲間の死。

コウ:「カイちゃん、大丈夫。大丈夫です」

カイ:「コウは死なないでくれ」

コウ:「はい」

カイ:「……コウ」

コウ:「はい。私だってカイちゃんと一緒に激戦を生き抜いて来たんですから。安心してください」

カイ:「そうだな。コウ、信頼しているぞ」

コウ:「はい」

(間)

コウ:(M)静かにゆっくり流れる空間で、時計の秒針が動く音だけは真実の時間を知らせます。

コウ:「カイちゃん、おやすみなさい」

カイ:「……おう」

コウ:(M)カイちゃんはゆっくりまぶたを閉じました。

コウ:(M)かすかな手の震えは、今宵こよいはいつもより長く続きました。

コウ:(M)私はカイちゃんの手を強く握ります。

コウ:(M)……カイちゃん。今回の作戦……。何か他に不安なことでもありますか?

コウ:(M)カイちゃんのスベスベした頬をなぞります。

カイ:(寝息)「……うぅぅぅ」

コウ:(小声)「カイちゃん、私たちは負けません。だから……いい夢を見てくださいね」

(間)
 
コウ:(M)私も寝ないとですね。明日は作戦ミィーティングですから…………。
 
 
(間)
 
 
コウ:今後もし、私が戦火せんかまれて死す時、最期さいごの時までアナタを想う。

コウ:それが流れる星のようなまたたでも、私の夜空で1番まばゆい光はアナタだったと感じたい。

コウ:静かになった夜闇やあんで、私を照らすのは月光げっこうではない。

コウ:隣で寝息を立てる、いつ消えるかも分からない一番星。……どうか消えないで。
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