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第11章 革命家たち(キャラクター紹介編)
第11章 革命家たち(キャラクター紹介編) 5~Jerry Count(嫉妬深い伯爵イスト)
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第11章 革命家たち(キャラクター紹介編) 4~強欲ドワーフ(鍛冶師ガイウス)
●S-1:過剰評価される種族
ドワーフと言えば最も特徴的なものの一つが鍛冶師だろう。
帝国世界でも名だたる名匠と言えばドワーフの鍛冶師の名が挙がる。
人族には及びもつかない技術を持っているというイメージが強い。
特にミスリルといえばドワーフの代名詞になるほどだ。
帝国の大きな町には彼らの姿が見られることもある。
そして、アレキサンダー男爵領にもドワーフの鍛冶師はいた。
何か特別な伝手で招聘したわけではない。
クローリーが生まれる前から住み着いていたのだ。
これは偶然……ではない。
実は明確な理由があったのだ。
ただしそれは門外不出の秘密によって。
男爵領に住み込んでいたドワーフのガイウスがそれだった。
ドワーフの鍛冶師が移住して来た時、時の領主(クローリーの父)は大変驚いたと同時に喜んだ。
帝国の外れのこんな田舎にドワーフの鍛冶師が来るとは!
理由は何だろう?
気まぐれなのかもしれない。
そう、周囲は捉えていた。
何故なら男爵領は海沿いの町なので豊富な鉱物資源はなかったからだ。
鉄や銅などは全て隣国のカストリア子爵領からの輸入に頼っており、鉄に至っては特に他領からの鉄くずを鋳溶かして再生するのが一般的だった。
当然、出来上がる製品の質はそれなりだ。
そこにドワーフの鍛冶師が来たことは驚きだったはずだ。
ただ、ガイウスはドワーフの鍛冶師としては並以下だった。
人族の鍛冶師でも彼以上の者は幾らでもいるだろう。
製作品は何処かおざなり。
技量に疑問符が付くほどだった。
それでもドワーフというブランドは不思議と住民の信頼を得ていた。
造りが並以下でもドワーフが鍛えたというだけ高く売れる。
ガイウスはそれにあやかってお金を稼いでいたのだ。
彼ははっきり言えば『怠け者』かつ『強欲』だった。
ドワーフのライバルがいない辺境地域ならバレにくい。
殿様商売し放題なのだ。
だが、男爵領に住み着いたのはそれだけが理由ではなかった。
それは偶然の出来事だった
辺鄙な街で鍛冶工房を始めたガイウスだったが、ある時、特に何も考えずに購入した安物の食器に『理由』を発見したのだ。
まったくもって特別なものではない。
庶民が普通に使う陶器だった。
いや、陶器自体が少々贅沢なものではあったが。
その皿の中にほんのりと青みがかった不純物を見つけたのだった。
普通の人間なら安物にありがちなゴミとしか思わなかっただろう。
だが、ドワーフである彼は『それ』が何かに気付いてしまった。
『ミスリル』
ミスリル鉱は帝国世界……というよりも人間たちには何か特殊な鉱石と思われていた。
以前にも記したことだが、ミスリルは鉄や銅の様な鉱石ではない。
粘土のようなものなのだ。
それをドワーフの秘術……それも一部にしか知られていない門外不出の技で精錬することで、鋼より硬く、そしてアルミニウムやマグネシウムのように軽量の、恐るべき金属へと変成する。
ミスリルで作られた武具などは圧倒的に高価で貴重なものになる。
なにより魔素との親和性が高いので、魔法装置や魔法の武具に良く使われる。
結果、ミスリル製品は通常の鉄や鋼の価格の10倍にも20倍にもなる。
しかも素材は粘土状の物質なので加工も楽。
鍛冶というより粘土細工なので時間も手間もあまりかからない。
まさに夢の金属なのだった。
もちろん。
ミスリル鉱床を抑えれば莫大な利益が見込めるだろう。
その断片をガイウスは偶然見つけたのだ。
目の色が変わった。
その皿の産地を特定できれば大儲けできるかもしれない。
しかもミスリル鉱床は他の金属と違い山を掘る必要がない。
その性質故に海に近い平地に多く産出するのだ。
場所が僻地で手付かずであれば独占できる可能性がある。
ガイウスはすぐにも捜索に向かった。
まずは、皿の製作地に聞き込みを始めた。
特に苦労することはない。
粘土が採取できる場所は地形を見れば判るのだ。
水辺に近い……湖や海あるいは川がある平地である。
窯業が行われる土地は決まっているものだ。
そこで辿り着いたのがアレキサンダー男爵領だった。
ガイウスがそこに辿り着いた時、彼は神に感謝した。
小さな窯小屋があるだけで周囲には家がない。
町はすぐ傍なのだが、粘土質の土は地盤が緩いので建物を建てていなかったのだ。
おかげでミスリル鉱床の場所をすぐに特定できた上に、権利者もいないことが判明した。
彼はすぐさま領主であるアレキサンダー男爵に土地の権利の許可を取ることにした。
色んなものが緩い男爵はあっさりと許可を出しした。
ドワーフの鍛冶師が自領に来るのだから大歓迎だったろう。
こうしてガイウスは巨大な金蔓を手にしたのだ。
あまりにも大きな利権だ。
ミスリル製品は引く手数多である。
まもなく彼はここに工房を作った。
ブローカーを通じて高額取引できれば将来安泰だ。
それどころか巨万の富を積み上げることも可能だろう。
怠惰で強欲なガイウスは『勝ち組』になったのだ。
その後も順調だった。
男爵領ではドワーフの鍛冶師というだけで絶大な信頼を寄せられ、ミスリル製品の注文は鰻登りだった。
ドワーフの門弟を数人抱えて、自分からほとんど働かなくても豊かな生活が可能になった。
自分で行うのはミスリル細工くらいのものだ。
こればっかりはノウハウなども自分で独占しないと意味がない。
秘密が漏れればライバルが増え、注文が減ってしまう。
もはや遊んで暮らせるようになった。
しかし。
それは突然に打ち砕かれることになった。
やつらが来たのだ。
よりによってこの土地に。
『異世界召喚者のエルフ』たちが。
●S-2:厄介な奴ら
最初はマスケット銃の注文だった。
火薬自体も未知のものだったが、銃は尚更である。
長い鉄の筒に片方を塞いだものだった。
引き金などの仕組みは弩弓とそう変わらないので製作は難しくはない。
ただ……強度が大問題だったのだ。
銃身は長い筒の片方の端に蓋を付けるだけなのだが、これが大変だった。
塞いだ部分が簡単に吹き抜けてしまうのだ。
火薬の爆発力はそれほどのものだった。
何度作り直して数発も発射すれば、やはり蓋が吹き飛んでしまう。
耐えられるように火薬を減らすと今度は威力が激減してしまい、鎧どころか厚さ3センチの木の板を貫通することもできなくなった。
威力に見合う強度を出すには……ミスリルしかない!と思われた。
ところが異世界召喚者の少女ヒンカが解決策を持ってきた。
「ネジじゃよ。こう、螺旋状の棒を作ってな、それを蓋にするのじゃ。できればというより、強度からすると鍛造が良い」
何を言っているのだろう?
とガイウスは思った。
そもそもネジ自体が判らない。
帝国世界には未だにネジはない。
実を言うと絹の国や砂の国にもなかった。
この世界では未知の技術だったのだ。
ガイウスたちはこれに取り組んだ。
鍛造の金属棒を切り出し、ネジ山を切った。
これ自体がすでに大変な作業だった。
そもそもネジの技術がないのでピッチやリードの関係も判らない。
そもそもドワーフとはいえ、サイズなどをきっちり計って作業などはしない。
勘と目分量で判断していたのに、数学要素が入ってきた。
現代世界では円の計算は中学校までに学んでいるのが普通なのだが、この世界の住人には期待できない。
魔術学院の導師などなら理解できるかもしれないが、鍛冶職人には無理だった。
生来が怠け者なガイウスはこれを無視することもできたはずだった。
だが、これに真面目に取り組んでしまった。
何故か?
技術を独占できればボロ儲けできるという判断からだった。
ガイウスは必死になってヒンカやマーチスから数学を学んだ。
すぐにネジのことを理解した。
いや。強欲さ故にモチベーションになったのかも知れない。
彼は苦労の末に銃身に口径ギリギリのサイズに鍛造したボルトネジを差し込み、ボルトネジの周辺の銃身を叩いて鍛造圧着する方法を編み出した。
鍛造した銃身にメスのネジ山を切ることができなかったからこその苦肉の策であった。
この、銃身の後端にネジを打ち込む方法は現実世界でもそうだった。
21世紀なってさえ、金属同士の最強の接着方法はボルト接合なのだ。
大きなトルクのかかったネジなら火薬燃焼時の爆発力に耐えられるのである。
後に量産化される頃には、メスネジの方もミズリル製の切削工具のタップを作って解決した。
なにより製作のための工具がなかった。
治具が無ければ効率が悪すぎた。
工具は大事だった。
故に工具制作は最優先になった。
この問題が解決するとマスケット銃の量産が可能になり、安定した運用ができるようになった。
治具さえあれば門弟に生産作業をさせて、自分はゆったりとできるだろう。
そう思ったら甘かった。
次にライフルの製造依頼が来たのだった。
最初は、やはり意味が判らなかった。
マスケット銃は射程が100m程度しかない。
これを4~5倍にするためのものだという。
銃身の内側に緩やかな螺旋状にネジを切るというのだ。
大作業だった。
それまでは心棒に鉄の板を巻き付けて接合部が見えなくなるくらいまで叩いて鍛造して筒にするのが主流だったのだが、その後に内部にメスネジを切るというのだ。
数センチの長さなら何とかなるのだが、1m前後の長さとなると難しい作業だった。
止む無く当面はミスリルで作成することにした。
秘術で処理する前ならただの粘土と変わらないので自由自在だからだ。
しばらくは量産というには程遠く、優秀な射手にのみ渡される特殊装備であった。
やがて蒸気機関の動力を用いた旋盤が登場するまで待つしかなかった。
そもそもライフル用の弾丸は従来の丸い鉛玉ではないことも困難な作業になった。
ドングリの実のような形状の専用弾だったのだ。
これが旋条を通過する際に回転することでジャイロ効果により直進性の向上と、空気抵抗軽減によって射程と命中率が格段に向上するのだが……これもガイウスには未知の学問だった。
それでも食らいついた。
将来にわたって自分が独占販売するためだった。
恐るべき強欲さ。
「ふむ。その技術の応用で揚水機を作りまセンカ?」
マーチスが別件の仕事を持ち込んで来た。
この男は良く不思議なことを言い出すのだ。
しかし、それはいつも現在行っている作業に関わるあるいは、その発展のようなもので視点が他とは少し変わっている。
「水を汲み上げるというのか?どうやって?」
ガイウスにはいまいち理解できない。
どう関係するのだろうか。
「大きなネジのようなものを作るのデス。そのネジ山の間に水を入れて回転させると、アラ不思議。ネジの回転に合わせて水が上がったり下がったりするのデスヨ」
「ワケわからねえな」
「具体的に、絵で説明するとこうデス」
マーチスはホワイトボードやノート代わりに使う石盤に石筆でさらさらと描きだした。
男爵領でも絹の国同様の製紙法での紙の生産は始まってはいたが、メモ用に使い捨てにできるほどの余裕はない。
滑石やろう石をペン状に細く削ったもので文字や絵を描くためのスレート板だ。
スポンジや布で拭けば簡単に消せるので男爵領では良く使われる。
要は黒板なのであるが。
「ネジと言ってもこういう大きな扇のようなものをデスナ……こう回転させるノデス」
「ネジとはだいぶ違わねえかな?」
「いえいえ。同じなのデスヨ。螺旋状の回転を利用するという意味では。トルクをかけて摩擦力を利用するか流体を利用するかの違いだけデスナ」
「うーむ」
ガイウスは唸った。
構造的には少し似ている気もするが、大きな羽根の様なものを繋げた軸に見える。
扇風機の扇に近い。
これをたくさん重ねることで何が起きるのだろうか。
「これはネジ式ポンプと言いマシテ。アルキメデス……はどうでも良いでスナ!釣瓶を使うよりもはるかに効率が良いのデス」
「ふううむ」
「人力でも良いのでしょうが、水車や風車の動力を使うとか。開発中の蒸気機関や将来的には魔素機関で作動させるのもアリでスナ」
「……それが何に使えるというんだ?」
ガイウスには今ひとつピンとこない。
なによりそんな面倒なものを作るモチベーションには程遠い。
「あー。ワタクシの世界では最初、鉱山の水を排水するためだったそうデス」
「鉱山の、排水?」
ガイウスの目の色が変わった。
「ええ。鉱石を掘る時に溢れてくる地下水などをデスナ」
電気が走った。
ガイウスにとって排水問題はとても大きいのだ。
ミスリル鉱床は粘土である。
粘土質の地層は水をとても多く含んでいた。
ミスリルの材料を掘れば掘るほど水が湧き出てきて、それがミスリルを大量に掘る時の課題だった。
ましてやガイウスは利権を独占するためにミスリルを掘るのも作るのも彼独りで行っていたのだから切実だ。
あの憎き地下水を自動で外へ汲み出せるとなれば効率は段違いに上がるはずなのである。
怠け者だが強欲がそれに勝るガイウスだからこそだった。
「ポンプだけではなく将来的にはより他の形で利用することになるかと思いますガネ」
「他に?例えば?」
ドワーフは身を乗り出すように食いついた。
「飛行船のプロペラの改良もですが、船を推進させるスクリューもデスナ。蒸気機関よりも遥かに使い道が多いので魔素機関で回す方が良いでショウ」
マーチスは微笑んだ。
何も現実世界通りの段階を踏む必要はない。
飛ばせる過程は飛ばせば良い。
「蒸気機関なら石炭やガスや石油を燃料として積載しなくてはなりませんが、魔素は大気中から回収しますカラナ。無限に回収できる上に燃料タンクが不要になりますシナ」
「帆じゃいかんのか?」
「スクリュー推進だと風向きを無視できマスゾ。風を無視して航路設定できるので航行時間も大きく短縮できるハズ」
「というと……より速く輸送ができるのか」
「ええ。デスカラ、その分だけ儲けも増える計算デス」
「おお!」
儲け。
この言葉にガイウスは弱かった。
「ワクワクしてきまセンカ?」
マーチスがにやりと笑う。
三重スクリーントーンをかけられたような悪人顔だ。
「するぞ!するぞい!」
マーチスはこのドワーフの動かしかたを少し理解した気になった。
この時点でミスリルの秘密には全く気付いていなかったが、『楽をする』『儲かる』という言葉に強く惹かれるらしい。
「現状の魔素機関は出力がそれほどないのが欠点デスガ、開発が進めば魔素ジェットとかを作って高速で空を飛べたりすると儲かり放題でショウナア!」
大きく腕を広げてオペラか何かのように歌いだす。
「技術を独占できると利権は無限大でスナ!」
「お、おう」
ガイウスの眉がぴくぴく動く。
言われていることは半分も理解できないが、かなりの利益が見込める話に聞こえる。
ドワーフの鍛冶師ガイウスという男は鍛冶師としては三流だった。
怠け者で強欲。
数少ない長所がミスリルの秘密を握っていることだった。
それは巨万の富を手に入れるため。
そのためなら努力を惜しまない。
怠け癖よりも強欲が常に勝るのだ。
そして鍛冶師としては並みだったが、利益のためにミスリル細工を頑張った。
その結果、粘土細工の技術は劇的に向上していた。
もしかしたら細工師としての能力は高かったのかもしれない。
新しい仕事が増えるたびにその技量は更なる高みへ行こうとしていた。
複雑な形状ほどミスリルで作りやすいのだ。
鉄を金槌でカンカン叩くよりよほど楽で、そして荒稼ぎできるのだ。
「ワシはやるぞ!やるぞー!」
●S-1:過剰評価される種族
ドワーフと言えば最も特徴的なものの一つが鍛冶師だろう。
帝国世界でも名だたる名匠と言えばドワーフの鍛冶師の名が挙がる。
人族には及びもつかない技術を持っているというイメージが強い。
特にミスリルといえばドワーフの代名詞になるほどだ。
帝国の大きな町には彼らの姿が見られることもある。
そして、アレキサンダー男爵領にもドワーフの鍛冶師はいた。
何か特別な伝手で招聘したわけではない。
クローリーが生まれる前から住み着いていたのだ。
これは偶然……ではない。
実は明確な理由があったのだ。
ただしそれは門外不出の秘密によって。
男爵領に住み込んでいたドワーフのガイウスがそれだった。
ドワーフの鍛冶師が移住して来た時、時の領主(クローリーの父)は大変驚いたと同時に喜んだ。
帝国の外れのこんな田舎にドワーフの鍛冶師が来るとは!
理由は何だろう?
気まぐれなのかもしれない。
そう、周囲は捉えていた。
何故なら男爵領は海沿いの町なので豊富な鉱物資源はなかったからだ。
鉄や銅などは全て隣国のカストリア子爵領からの輸入に頼っており、鉄に至っては特に他領からの鉄くずを鋳溶かして再生するのが一般的だった。
当然、出来上がる製品の質はそれなりだ。
そこにドワーフの鍛冶師が来たことは驚きだったはずだ。
ただ、ガイウスはドワーフの鍛冶師としては並以下だった。
人族の鍛冶師でも彼以上の者は幾らでもいるだろう。
製作品は何処かおざなり。
技量に疑問符が付くほどだった。
それでもドワーフというブランドは不思議と住民の信頼を得ていた。
造りが並以下でもドワーフが鍛えたというだけ高く売れる。
ガイウスはそれにあやかってお金を稼いでいたのだ。
彼ははっきり言えば『怠け者』かつ『強欲』だった。
ドワーフのライバルがいない辺境地域ならバレにくい。
殿様商売し放題なのだ。
だが、男爵領に住み着いたのはそれだけが理由ではなかった。
それは偶然の出来事だった
辺鄙な街で鍛冶工房を始めたガイウスだったが、ある時、特に何も考えずに購入した安物の食器に『理由』を発見したのだ。
まったくもって特別なものではない。
庶民が普通に使う陶器だった。
いや、陶器自体が少々贅沢なものではあったが。
その皿の中にほんのりと青みがかった不純物を見つけたのだった。
普通の人間なら安物にありがちなゴミとしか思わなかっただろう。
だが、ドワーフである彼は『それ』が何かに気付いてしまった。
『ミスリル』
ミスリル鉱は帝国世界……というよりも人間たちには何か特殊な鉱石と思われていた。
以前にも記したことだが、ミスリルは鉄や銅の様な鉱石ではない。
粘土のようなものなのだ。
それをドワーフの秘術……それも一部にしか知られていない門外不出の技で精錬することで、鋼より硬く、そしてアルミニウムやマグネシウムのように軽量の、恐るべき金属へと変成する。
ミスリルで作られた武具などは圧倒的に高価で貴重なものになる。
なにより魔素との親和性が高いので、魔法装置や魔法の武具に良く使われる。
結果、ミスリル製品は通常の鉄や鋼の価格の10倍にも20倍にもなる。
しかも素材は粘土状の物質なので加工も楽。
鍛冶というより粘土細工なので時間も手間もあまりかからない。
まさに夢の金属なのだった。
もちろん。
ミスリル鉱床を抑えれば莫大な利益が見込めるだろう。
その断片をガイウスは偶然見つけたのだ。
目の色が変わった。
その皿の産地を特定できれば大儲けできるかもしれない。
しかもミスリル鉱床は他の金属と違い山を掘る必要がない。
その性質故に海に近い平地に多く産出するのだ。
場所が僻地で手付かずであれば独占できる可能性がある。
ガイウスはすぐにも捜索に向かった。
まずは、皿の製作地に聞き込みを始めた。
特に苦労することはない。
粘土が採取できる場所は地形を見れば判るのだ。
水辺に近い……湖や海あるいは川がある平地である。
窯業が行われる土地は決まっているものだ。
そこで辿り着いたのがアレキサンダー男爵領だった。
ガイウスがそこに辿り着いた時、彼は神に感謝した。
小さな窯小屋があるだけで周囲には家がない。
町はすぐ傍なのだが、粘土質の土は地盤が緩いので建物を建てていなかったのだ。
おかげでミスリル鉱床の場所をすぐに特定できた上に、権利者もいないことが判明した。
彼はすぐさま領主であるアレキサンダー男爵に土地の権利の許可を取ることにした。
色んなものが緩い男爵はあっさりと許可を出しした。
ドワーフの鍛冶師が自領に来るのだから大歓迎だったろう。
こうしてガイウスは巨大な金蔓を手にしたのだ。
あまりにも大きな利権だ。
ミスリル製品は引く手数多である。
まもなく彼はここに工房を作った。
ブローカーを通じて高額取引できれば将来安泰だ。
それどころか巨万の富を積み上げることも可能だろう。
怠惰で強欲なガイウスは『勝ち組』になったのだ。
その後も順調だった。
男爵領ではドワーフの鍛冶師というだけで絶大な信頼を寄せられ、ミスリル製品の注文は鰻登りだった。
ドワーフの門弟を数人抱えて、自分からほとんど働かなくても豊かな生活が可能になった。
自分で行うのはミスリル細工くらいのものだ。
こればっかりはノウハウなども自分で独占しないと意味がない。
秘密が漏れればライバルが増え、注文が減ってしまう。
もはや遊んで暮らせるようになった。
しかし。
それは突然に打ち砕かれることになった。
やつらが来たのだ。
よりによってこの土地に。
『異世界召喚者のエルフ』たちが。
●S-2:厄介な奴ら
最初はマスケット銃の注文だった。
火薬自体も未知のものだったが、銃は尚更である。
長い鉄の筒に片方を塞いだものだった。
引き金などの仕組みは弩弓とそう変わらないので製作は難しくはない。
ただ……強度が大問題だったのだ。
銃身は長い筒の片方の端に蓋を付けるだけなのだが、これが大変だった。
塞いだ部分が簡単に吹き抜けてしまうのだ。
火薬の爆発力はそれほどのものだった。
何度作り直して数発も発射すれば、やはり蓋が吹き飛んでしまう。
耐えられるように火薬を減らすと今度は威力が激減してしまい、鎧どころか厚さ3センチの木の板を貫通することもできなくなった。
威力に見合う強度を出すには……ミスリルしかない!と思われた。
ところが異世界召喚者の少女ヒンカが解決策を持ってきた。
「ネジじゃよ。こう、螺旋状の棒を作ってな、それを蓋にするのじゃ。できればというより、強度からすると鍛造が良い」
何を言っているのだろう?
とガイウスは思った。
そもそもネジ自体が判らない。
帝国世界には未だにネジはない。
実を言うと絹の国や砂の国にもなかった。
この世界では未知の技術だったのだ。
ガイウスたちはこれに取り組んだ。
鍛造の金属棒を切り出し、ネジ山を切った。
これ自体がすでに大変な作業だった。
そもそもネジの技術がないのでピッチやリードの関係も判らない。
そもそもドワーフとはいえ、サイズなどをきっちり計って作業などはしない。
勘と目分量で判断していたのに、数学要素が入ってきた。
現代世界では円の計算は中学校までに学んでいるのが普通なのだが、この世界の住人には期待できない。
魔術学院の導師などなら理解できるかもしれないが、鍛冶職人には無理だった。
生来が怠け者なガイウスはこれを無視することもできたはずだった。
だが、これに真面目に取り組んでしまった。
何故か?
技術を独占できればボロ儲けできるという判断からだった。
ガイウスは必死になってヒンカやマーチスから数学を学んだ。
すぐにネジのことを理解した。
いや。強欲さ故にモチベーションになったのかも知れない。
彼は苦労の末に銃身に口径ギリギリのサイズに鍛造したボルトネジを差し込み、ボルトネジの周辺の銃身を叩いて鍛造圧着する方法を編み出した。
鍛造した銃身にメスのネジ山を切ることができなかったからこその苦肉の策であった。
この、銃身の後端にネジを打ち込む方法は現実世界でもそうだった。
21世紀なってさえ、金属同士の最強の接着方法はボルト接合なのだ。
大きなトルクのかかったネジなら火薬燃焼時の爆発力に耐えられるのである。
後に量産化される頃には、メスネジの方もミズリル製の切削工具のタップを作って解決した。
なにより製作のための工具がなかった。
治具が無ければ効率が悪すぎた。
工具は大事だった。
故に工具制作は最優先になった。
この問題が解決するとマスケット銃の量産が可能になり、安定した運用ができるようになった。
治具さえあれば門弟に生産作業をさせて、自分はゆったりとできるだろう。
そう思ったら甘かった。
次にライフルの製造依頼が来たのだった。
最初は、やはり意味が判らなかった。
マスケット銃は射程が100m程度しかない。
これを4~5倍にするためのものだという。
銃身の内側に緩やかな螺旋状にネジを切るというのだ。
大作業だった。
それまでは心棒に鉄の板を巻き付けて接合部が見えなくなるくらいまで叩いて鍛造して筒にするのが主流だったのだが、その後に内部にメスネジを切るというのだ。
数センチの長さなら何とかなるのだが、1m前後の長さとなると難しい作業だった。
止む無く当面はミスリルで作成することにした。
秘術で処理する前ならただの粘土と変わらないので自由自在だからだ。
しばらくは量産というには程遠く、優秀な射手にのみ渡される特殊装備であった。
やがて蒸気機関の動力を用いた旋盤が登場するまで待つしかなかった。
そもそもライフル用の弾丸は従来の丸い鉛玉ではないことも困難な作業になった。
ドングリの実のような形状の専用弾だったのだ。
これが旋条を通過する際に回転することでジャイロ効果により直進性の向上と、空気抵抗軽減によって射程と命中率が格段に向上するのだが……これもガイウスには未知の学問だった。
それでも食らいついた。
将来にわたって自分が独占販売するためだった。
恐るべき強欲さ。
「ふむ。その技術の応用で揚水機を作りまセンカ?」
マーチスが別件の仕事を持ち込んで来た。
この男は良く不思議なことを言い出すのだ。
しかし、それはいつも現在行っている作業に関わるあるいは、その発展のようなもので視点が他とは少し変わっている。
「水を汲み上げるというのか?どうやって?」
ガイウスにはいまいち理解できない。
どう関係するのだろうか。
「大きなネジのようなものを作るのデス。そのネジ山の間に水を入れて回転させると、アラ不思議。ネジの回転に合わせて水が上がったり下がったりするのデスヨ」
「ワケわからねえな」
「具体的に、絵で説明するとこうデス」
マーチスはホワイトボードやノート代わりに使う石盤に石筆でさらさらと描きだした。
男爵領でも絹の国同様の製紙法での紙の生産は始まってはいたが、メモ用に使い捨てにできるほどの余裕はない。
滑石やろう石をペン状に細く削ったもので文字や絵を描くためのスレート板だ。
スポンジや布で拭けば簡単に消せるので男爵領では良く使われる。
要は黒板なのであるが。
「ネジと言ってもこういう大きな扇のようなものをデスナ……こう回転させるノデス」
「ネジとはだいぶ違わねえかな?」
「いえいえ。同じなのデスヨ。螺旋状の回転を利用するという意味では。トルクをかけて摩擦力を利用するか流体を利用するかの違いだけデスナ」
「うーむ」
ガイウスは唸った。
構造的には少し似ている気もするが、大きな羽根の様なものを繋げた軸に見える。
扇風機の扇に近い。
これをたくさん重ねることで何が起きるのだろうか。
「これはネジ式ポンプと言いマシテ。アルキメデス……はどうでも良いでスナ!釣瓶を使うよりもはるかに効率が良いのデス」
「ふううむ」
「人力でも良いのでしょうが、水車や風車の動力を使うとか。開発中の蒸気機関や将来的には魔素機関で作動させるのもアリでスナ」
「……それが何に使えるというんだ?」
ガイウスには今ひとつピンとこない。
なによりそんな面倒なものを作るモチベーションには程遠い。
「あー。ワタクシの世界では最初、鉱山の水を排水するためだったそうデス」
「鉱山の、排水?」
ガイウスの目の色が変わった。
「ええ。鉱石を掘る時に溢れてくる地下水などをデスナ」
電気が走った。
ガイウスにとって排水問題はとても大きいのだ。
ミスリル鉱床は粘土である。
粘土質の地層は水をとても多く含んでいた。
ミスリルの材料を掘れば掘るほど水が湧き出てきて、それがミスリルを大量に掘る時の課題だった。
ましてやガイウスは利権を独占するためにミスリルを掘るのも作るのも彼独りで行っていたのだから切実だ。
あの憎き地下水を自動で外へ汲み出せるとなれば効率は段違いに上がるはずなのである。
怠け者だが強欲がそれに勝るガイウスだからこそだった。
「ポンプだけではなく将来的にはより他の形で利用することになるかと思いますガネ」
「他に?例えば?」
ドワーフは身を乗り出すように食いついた。
「飛行船のプロペラの改良もですが、船を推進させるスクリューもデスナ。蒸気機関よりも遥かに使い道が多いので魔素機関で回す方が良いでショウ」
マーチスは微笑んだ。
何も現実世界通りの段階を踏む必要はない。
飛ばせる過程は飛ばせば良い。
「蒸気機関なら石炭やガスや石油を燃料として積載しなくてはなりませんが、魔素は大気中から回収しますカラナ。無限に回収できる上に燃料タンクが不要になりますシナ」
「帆じゃいかんのか?」
「スクリュー推進だと風向きを無視できマスゾ。風を無視して航路設定できるので航行時間も大きく短縮できるハズ」
「というと……より速く輸送ができるのか」
「ええ。デスカラ、その分だけ儲けも増える計算デス」
「おお!」
儲け。
この言葉にガイウスは弱かった。
「ワクワクしてきまセンカ?」
マーチスがにやりと笑う。
三重スクリーントーンをかけられたような悪人顔だ。
「するぞ!するぞい!」
マーチスはこのドワーフの動かしかたを少し理解した気になった。
この時点でミスリルの秘密には全く気付いていなかったが、『楽をする』『儲かる』という言葉に強く惹かれるらしい。
「現状の魔素機関は出力がそれほどないのが欠点デスガ、開発が進めば魔素ジェットとかを作って高速で空を飛べたりすると儲かり放題でショウナア!」
大きく腕を広げてオペラか何かのように歌いだす。
「技術を独占できると利権は無限大でスナ!」
「お、おう」
ガイウスの眉がぴくぴく動く。
言われていることは半分も理解できないが、かなりの利益が見込める話に聞こえる。
ドワーフの鍛冶師ガイウスという男は鍛冶師としては三流だった。
怠け者で強欲。
数少ない長所がミスリルの秘密を握っていることだった。
それは巨万の富を手に入れるため。
そのためなら努力を惜しまない。
怠け癖よりも強欲が常に勝るのだ。
そして鍛冶師としては並みだったが、利益のためにミスリル細工を頑張った。
その結果、粘土細工の技術は劇的に向上していた。
もしかしたら細工師としての能力は高かったのかもしれない。
新しい仕事が増えるたびにその技量は更なる高みへ行こうとしていた。
複雑な形状ほどミスリルで作りやすいのだ。
鉄を金槌でカンカン叩くよりよほど楽で、そして荒稼ぎできるのだ。
「ワシはやるぞ!やるぞー!」
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