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第4章 富国弱兵
第4章 富国弱兵~12 火器?柿?カーキ?鉄砲への道
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12 火器?柿?カーキ?鉄砲への道
産業革命という言葉は個人によって響き方が異なる。
それは賢者には特に顕著だった。
彼の本名は「せいじ」である。
ただ、日本風発音のために賢者と聞こえてしまうのだ。
それはそれで都合の良い勘違いだったので、そのままにしてあった。
彼個人の願望としては賢者よりも隠者、あるいは臥竜鳳雛などと呼ばれてみたかったようだ。
でもサックリ死にたくないから臥竜でお願い、と言い出しそうでもあった。
もちろん臥竜と呼ばれたい程なのだから、不思議な発明と無敵の兵法家になりたくもあった。
そこで彼が最初に思い付いたのは、この帝国世界には存在していない火薬と鉄砲だった。
鉄砲は戦争の在り方を変えた、と信じていた。
もちろん、彼の知る歴史的にも鉄砲の登場から戦争を大きく変化させるようになるまでは数百年かかったのだが、先ずは第一歩を踏み出すことが大事だと賢者はは考えた。
ただ、惜しむらくは……彼は実銃の構造使い方も良く知らなかった。
映画や漫画の知識が全てだった。
黒色火薬を作るのは簡単だ。
材料さえ揃えばレシピもわりと適当で良いくらいだ。
配合が余程かけ離れていない限りは、燃焼速度が違ったりするくらいだった。
それを利用して調整するのが打ち上げ花火である。
燃焼速度の差を使って爆発の具合を調整して、華麗な花火を作り出すのだ。
銃器の所持が困難な日本でも花火の技術は世界レベルである。
火薬も大量に製造所持したら捕まってしまうが、極めて少量なら問題はない。
昭和の子供だった賢者は自作したこともあるし、学校で実験が行われていたりもした。
カエルを爆竹で拭き飛ばして遊ぶ子供もいた。
ただ、子供は稀に事故を起こすので危険極まりないことには違いない。
調合するときに湿気を与えてやらないと不意に爆発することは注意だ。
賢者は困ったことに、そういった子供に近い。
火薬の調合にあっさり成功すると鼻息荒く次のステップに進もうとした。
『鉄砲』である。
ドワーフ鍛冶のガイウスにさっそく注文を出した。
金属の筒を作り、片方に蓋をして、火薬を詰めて小石を撃ち出す実験であった。
銃身のつもりの筒を作るのはそれほど難しくはない。
蓋になる部分が吹き飛ばないように、最初から片方の端を塞ぐように鋳造したものだ。
理屈ではそれだけで銃になるはずだった。
着火方法は火縄である。
賢者が雷管を知らないためだった。
薬莢ごと球が飛んでいく絵を描いてしまうほどなので普通の日本人には考えつかなかったのかもしれない。
「グフフブヒィ」
実験は工作用の土台に銃身を括り付け、安全のために紐を引いて着火するように作られた。
10mほど先に、2センチほどの厚さの木の板を立てて的にした。
「発射でござるぅ!」
紐を引くと轟音と共に弾丸である小石が撃ち出され、板に穴が開く。
成功だ。
とても順調に思えたのはそこまでだった。
2発目を装填しようと火薬を入れた瞬間、暴発した。
銃身に残った燃えカスが火薬を着火させてしまったのである。
「こりゃ、いけねえなあ」
ガイウスはのんびりとした口調で感想を漏らした。
「燃えカスが火を点けちまうんだ。撃つごとに中を掃除しねえとあぶねえなあ」
即席で細い木の棒に巻きつけた海綿を濡らして、銃身を掃除する。
この世界のトイレでお尻を拭く方法そのままだ。
スケールが少々小さくなってるだけで、用意するのも作るのも簡単である。
そして、2射目、3射目……今度こそ順調に行きかけたと思ったら、銃身の後ろの蓋が吹き抜けた。
鋳造による一体成型だから問題ないと思ったら、あっさり吹き飛んで穴が開いてしまったのだ。
「むむむ……?」
賢者は首を捻った。
不良品だったのだろうか。
新しい予備の銃身を使ってみたが、結果は変わらなかった。
数発で吹き抜けてしまうのだ。
「反動じゃ」
様子を見ていたヒンカは事も無げに言った。
「反作用じゃぞ。弾を撃ち出せば、同じだけの力が反対側にもかかる。当然といえば当然じゃ」
「むむむ……?」
賢者にはきちんと理解できてはいないが、なんとなくは判った気はした。
なら、世の中の銃はどうやって耐えきれているんだろう。
ヒンカは答えを知っていたが、言うべきかどうか迷った。
銃を完成させてしまうと賢者は使いたがるのではないかと思ったのだ。
「とはいえ……女子には有用な護身用武器だしの……」
自分もそうだが沙那のような非力な女性には剣を振るうのは難しい。
携帯しやすいサイズの銃があれば、かなり安心できるようになる。
なによりヒンカが生まれ育った国は市民が銃を所持することを広く認めており、全世界の銃の3分の1は彼女の国にあるとまでいわれていたのだ。
犯罪にも悪用されやすいが、訓練されていない女性にとっても強力な武器になりえていた。
「尾栓じゃ」
「ブヒィ!?」
「お主は……金属を接合する最強の方法を知っておるか?」
ヒンカの言葉は謎かけの様だった。
「溶接でござるか?」
「違う」
ヒンカは首を振った。
ガチ文系の賢者にはピンとこなかった。
金属を繋ぐのは溶接じゃ?という彼の認識は一般的なイメージによるものだ。
工作を趣味にしてるのなら分かりそうなものだが、多くの人は気づかない。
「んー。それってボルトとナットだよねー?」
ぺんぎんたちを引き連れて見学に来ていた沙那が口を出す。
ミニスカのメイド服がひらひらしている。
中が見えそうになると、ぺんぎんたちがジャンプして隠そうと格闘した。
鰭はこういう時にとても便利だ。
「理科の授業で先生に聞いたことあるー」
「ほう。……正解じゃ」
ヒンカが満足そうに笑った。
「欠点は重量がかさむことじゃが、ネジが最強の接着方法なのは確かじゃ」
もちろんネジ自体の強度にもよるが、強力な摩擦によって恐ろしい抵抗力を生み出すのがネジである。
ネジといっても多種多様で、沙那の言ったボルト・ナットは撃ち込むだけのねじと違って最も接着強度が高い。
このネジの理論すら存在しなかった中世の日本では、火縄銃をコピーするのに大変手間取ったくらいである。
賢者と同じく暴発事故を何度も経験したのだ。
外国人からネジの技術を聞いて初めて実用的な火縄銃を作ったのだが、その秘密を探るために娘を差し出したという逸話まである。
このネジの理論は古代ギリシャにはすであったというから、火薬の発明された東洋ではなく、西洋で銃が実用化された理由の一つなのかもしれない。
火薬の反動に耐えられる方法がなかったのであろう。
「よく漫画にもあるじゃろ?大砲がエシャレットの形をしておるのだが知らんか?」
「エシャ……?ブフゥ」
「らっきょうだよー」
沙那が補足した。
昭和の少年には和風の名前じゃないと通じ難い時がある。
おしゃれな言葉だと判らない!昭和の少年だった。
「あれは後ろの方にくほど分厚い金属になっておるじゃろう?あれだととても重く大きくなるからネジを使うようになったんじゃ」
「ブヒィィ?」
「へー」
最初期の鉄砲のような火器は『笛』のようであったというのはそのためでもある。
尾栓の代わりに太い木の棒を台座として取り付け、反動に耐えるようにしていたからだ。
その形状が笛のようだったのだ。
もちろん火器としてはとてもお粗末だったのだが、使い方によっては活躍することもあった。
それでも火薬の量を抑えないと壊れてしまうために、実用射程距離はせいぜい10mほどで威力も恐ろしく低かった。
ネジ式の尾栓を使うようになっても、その後ろを塞ぐように木製の銃床が伸びる構造が長く続いたのはその名残なのだ。
反動になるガス圧利用の手段が確立するまでの数百年もその形状は維持されたのである。
賢者や沙那がイメージする銃と、初期の銃は性能も形も全く別物だった。
「む?知らんか?昔のライフル銃とかは、こう、がちゃがちゃって手動で回転させておったろ?あれもネジなんじゃ」
賢者はそこでやっと、ボルトアクションライフルをイメージ出来た。
大砲も基本的には同じだ。
ネジの尾栓を用いた閉鎖器がそれを行う。
「はーん。ネジか。なるほどのう」
ドワーフの棟梁のガイウスはなんとなく理解した。
この世界にもネジは存在するのだ。
ただ、雄雌のネジを作ってボルトナットを作るのは困難な作業だ。
雄雌の螺旋がきちっと一致しないと効果が無いからだ。
この世界とヒンカたちの世界では基礎工業力が桁違いだった。
* * *
この世界の技術では機械的にボルトナットを作るのは難しい。
そんな細かい工作機械はあるわけがない。
しかし精錬鍛造はできる。
そこでガイウスは鍛造鉄に鑢でネジ山を切って雄ネジにし、鉄のパイプに差し込み、そこで接合部分周辺を鍛造することにした。
これによってパイプ側にも雄ネジにぴったりの雌ネジの山が作られるのだ。
力技ではあったが確実な方法だった。
何度か試行錯誤を経て、火縄銃の形にはなってきた。
「これはプレス機が欲しいじゃろうなあ……」
ハンマー片手に手で行う鍛造は重労働だ。
機械で鍛造作業を行えるプレス機はあると便利だろう。
賢者は狂喜した。
これで世界のパワーバランスを崩せる、と。
彼の脳裏には武田騎馬軍団を粉砕した織田信長の鉄砲隊が活躍した長篠の戦が浮かんでいた。
「ブヒッブヒヒッ」
ところがその幻想はシュラハトによって打ち砕かれる。
「射程距離が短すぎる」
そう。実用射程距離が100mほどしかなかったのだ。
そして、100m離れていると狙って当てることがほとんど不可能だった。
これはガイウスたちのせいではない。
銃が軍隊の基本装備になった19世紀でもそんなものだったのだ。
「それと準備に時間が掛かりすぎる」
弾丸と装薬の装填に驚くほど時間が掛かる。
1発1発が計らなくてもそのまま使えるように小分けしても発射間隔は20秒前後あった。
手慣れた者でも10数秒はかかる。
つまり……100mの距離で向き合って発砲すると、次の弾丸を準備するまでに……。
人間が100mの距離を走るのには金メダリスト級の速さでなくとも、10数秒あれば行ける。
次弾装填が終わるまでに接近されてしまうのだ。
すなわち、もそもそと弾薬装填してる間に斬り込まれてしまう。、
事実、19世紀どころか20世紀初頭の戦闘ですら初弾発砲後には銃剣突撃が当たり前だった。
銃剣という原始的な装備がなかなか無くならないのはそのためでもあった。
銃剣を取り付けたマスケット銃はそのまま、槍として機能した。
ヒンカは特別に軍事マニアというわけではないが、歴史の授業で普通に得た知識である。
「野戦には使えねえな。城を守るときとかには良いかもしれねえが」
シャラハトはそう断じた。
「弩の方がよほど役に立ちそうだぜ」
取り回しのしやすさは弩の方が優れているくらいだ。
狙いのつけやすさ、射撃のしやすさは同等。
あえて銃を使う必要が感じられない。
これは当たり前だった。
後装ライフル銃ができるまでは弩や弓よりも優れてるとはいえなかった。
ただ一つ『音』以外には。
発射時の轟音は様々な状況で効果がある。
それこそ馬などを怯えさせるに十分だったし、銃の一斉射撃の音と煙は兵士を怯ませるには充分だ。
「ま、何かのために多少はあると役に立つのかも知れねえが」
「ブヒィ……」
ただ、シュラハトは一つ気付いていた。
この武器は『腕力』を必要としないことに。
ヒンカが女性用にという理由が分かる気はした。
* * *
それからしばらくして、ヒンカはクローリーを呼び出してガイウスの工房に来た。
「魔法について、ちょっと相談があるんじゃが」
ヒンカは迷いつつも切り出した。
「高価でもいいから、何か、こう、ものすごく小さいもので火を点ける魔法はないのかのう?」
「火?……どかんと言う感じっスか?」
「違う。小さな火で良いのじゃ。お主も件の鉄砲のことは少し見たじゃろう?」
「まあ、一部始終っスな」
「火薬に火を点けるだけの火ができれば良いんじゃ。ただ……大きさはこのくらいでじゃ」
ヒンカは人差し指と親指で小さい大きさを示した。
「何スかそれは」
「賢者に悪用されると困るのでな。秘密じゃからな?」
「いや。だから何スか」
ヒンカはじっとクローリーを見た。
「沙那は、ほら、剣術とか魔法は使えないじゃろ?だから護身用の武器をじゃな……」
「それと火の魔法がイマイチ繋がらないんスが」
「……なんていうかの。鉄砲を隠し持てるようなものにして、沙那に……いやさ、女性用にいくつか持たせたいって思っておるのじゃ」
「うーん。いまいちわからねーっスなー」
「仕方ないのじゃ……」
ヒンカは懐から何かを取り出した。
鉄?のような材料で作られた細工物だった。
大きさはクローリーの掌ほどだ。
「妾がこの世界に飛ばされた時に持ってきた……鉄砲なのじゃ」
「へ?」
ガイウスの工房で制作している銃とはかけ離れた形状をしている。
火縄を取り付ける場所が見当たらない。
何より小さすぎる。
ブローニングM1910と刻印されていた。
「使う弾からして違うのじゃ。弾自体に着火する機能が付いておる」
「……ほー?」
「雷管はこの世界で作るのはほとんど不可能じゃ。材料もじゃが……それでもこの世界には魔法がある」
クローリーにはいまいち言われていることが判ってはいなかったが、何を伝えようとしているのかは分かる。
火薬に火を付ける効率的で極小さな大きさの魔法による発火システムが欲しいということなのだろう。
「できねーことはないと思うっスが……」
「そうか。それとこれをコピーできれば、なお良いのじゃ」
ヒンカは慣れた手つきで弾倉を外し、銃口のネジ式のリングをくるっと回した。
コイルスプリングが一緒に零れてきた。
遊底をいっぱいまで引いてから反対の手で銃身を半回転させる。
ネジになったロックが外れて、遊底ごと上半分が外れた。
中はスプリングや細かい部品で構成されてはいるが、構造はとても単純のようだった。
「この程度の絡繰り細工はガイウスたちなら作れるじゃろう」
クローリーは息をのんだ。
初めて生で目にする異世界の技術。しかも武器らしい。
「これは……?」
「妾の世界の銃じゃが、主に女性の護身用じゃな。身に付けているときに一緒に飛ばされてきたのじゃ」
ポケットにすら入りそうだった。
沙那ならスカートの中に隠し込むかもしれない。
小さく、全体的に丸みを帯びている。
確かに簡単に隠し持てるような大きさだった。
「こいつはどっかの国の皇太子夫妻を暗殺した銃として有名なものと同じタイプのものじゃ」
本来は警察官の予備の拳銃とされている。
「そいつは使えねーんスか?」
クローリーがもっともな質問をした。
「動作はすると思うんじゃが……弾が問題なのじゃ。火薬がちゃんと動くのか自信がなくての」
「それはどーいうことっスか」
ヒンカが少し寂しそうな顔をした。
「前に言ったはずじゃが。……こいつは100年以上前のものなのじゃ。火薬が反応しない状態になっていても不思議じゃないのじゃよ」
ヒンカが働くようになって万が一のために手に入れ、短くない時を過ごし、そしてこの世界に飛ばされてから100年近い。
彼女自身は転生魔法で若返っているが、銃の方はそうではない。
特に無煙火薬は劣化しやすい。
「そもそも弾丸が手配できぬのじゃ。だから……これを参考に複製品を作って欲しいのじゃ。いや、改良かも知れぬな」
要はドワーフの精密加工技術で何とかリバースエンジニアリングして貰いたいというものだ。
黒色火薬は製造が簡単だが、ヒンカの銃のように無煙火薬は現状では生産不可能だった。
それをなんとか黒色火薬で動作させようというのだから、なかなか困難な課題になるだろう。
なにより雷管を作りようがない。
それを魔法で解決できないかという提案だ。
科学技術と魔法技術の合体が、まさに行われようとしていた。
「ただ、作るのは3つか4つか、そのくらいにして欲しいのじゃ」
ヒンカはクローリーを睨みつける。
「お主を信用していないわけじゃないが、こんなオーバーテクノロジーな祭器をほいほい使われては困るのじゃ」
賢者の火縄銃とは桁違いに危険な代物なのだ。
たぶん、この拳銃自体はどうということはない。
心配しているのはこれを原型に強力な発展した火器を製造されることなのだ。
大型にして長銃身にするだけでも大変なことになる。
セミオートといえど自動装填する銃が登場したら弩や弓を圧倒する。
ヒンカは弾倉から弾丸を抜き取り、クローリーに見せた。
「この形式の弾丸は後ろを小さなハンマーで叩くと発火するようになっている。それで火薬に着火するんじゃ」
金属の筒でできたそれをクローリーは不思議そうに眺めた。
どういう構造かもわからない。
ただ、魔法で着火できないかと訊かれていることだけは判る。
「できると思うんスが。火を点ける魔法は構成要素が驚くほど高いんス」
「そうなのか?」
「砕いた宝石が必要なんス。安上がりにできるモノなら各家庭に置いておくっスよ」
マッチすらないこの世界では点火するのはなかなか大変だ。
それこそクローリーが行っている魔法の研究の一つであった。
手軽に火を起こす方法があれば日常生活はかなり楽になる。
火打石がその辺にごろごろしてる世界ではあるが、確実な一発着火には程遠い。
元々クローリーが目指していたものは、そういった魔法による生活環境の向上なのだ。
むしろ安価にできるものならとっくにやっているだろう。
そもそも、この世界の工業基盤では金属カートリッジの銃弾を作ること自体が困難なので、ヒンカが心配するほど量産できない。
まさに一品ものとして、個人のマニアックで高価な装備になるだろう。
使用済み薬莢も自衛隊のようにマメに回収したり、再利用することになるかもしれない。
「あとはガイウスと要相談で作るだけっスよ」
* * *
1週間ほどで試作品ができた。
いったん全部ばらして、同じ形状のパーツを作り、組み上げたのだ。
ただ……。
台座に設置しての試射で数発撃った後に暴発してバラバラになった。
この世界の鉄では同じ大きさで同じ強度を出すことができなかったのだ。
鉄一つとっても技術レベルが違いすぎたのだ。
強度を確保するにはかなり大きなものになりそうだった。
力のかかる各パーツを原型の1.5倍くらいに作らないと無理そうだったのだ。
火縄銃はともかく、こちらは当面どうしようもないように思えた。
産業革命という言葉は個人によって響き方が異なる。
それは賢者には特に顕著だった。
彼の本名は「せいじ」である。
ただ、日本風発音のために賢者と聞こえてしまうのだ。
それはそれで都合の良い勘違いだったので、そのままにしてあった。
彼個人の願望としては賢者よりも隠者、あるいは臥竜鳳雛などと呼ばれてみたかったようだ。
でもサックリ死にたくないから臥竜でお願い、と言い出しそうでもあった。
もちろん臥竜と呼ばれたい程なのだから、不思議な発明と無敵の兵法家になりたくもあった。
そこで彼が最初に思い付いたのは、この帝国世界には存在していない火薬と鉄砲だった。
鉄砲は戦争の在り方を変えた、と信じていた。
もちろん、彼の知る歴史的にも鉄砲の登場から戦争を大きく変化させるようになるまでは数百年かかったのだが、先ずは第一歩を踏み出すことが大事だと賢者はは考えた。
ただ、惜しむらくは……彼は実銃の構造使い方も良く知らなかった。
映画や漫画の知識が全てだった。
黒色火薬を作るのは簡単だ。
材料さえ揃えばレシピもわりと適当で良いくらいだ。
配合が余程かけ離れていない限りは、燃焼速度が違ったりするくらいだった。
それを利用して調整するのが打ち上げ花火である。
燃焼速度の差を使って爆発の具合を調整して、華麗な花火を作り出すのだ。
銃器の所持が困難な日本でも花火の技術は世界レベルである。
火薬も大量に製造所持したら捕まってしまうが、極めて少量なら問題はない。
昭和の子供だった賢者は自作したこともあるし、学校で実験が行われていたりもした。
カエルを爆竹で拭き飛ばして遊ぶ子供もいた。
ただ、子供は稀に事故を起こすので危険極まりないことには違いない。
調合するときに湿気を与えてやらないと不意に爆発することは注意だ。
賢者は困ったことに、そういった子供に近い。
火薬の調合にあっさり成功すると鼻息荒く次のステップに進もうとした。
『鉄砲』である。
ドワーフ鍛冶のガイウスにさっそく注文を出した。
金属の筒を作り、片方に蓋をして、火薬を詰めて小石を撃ち出す実験であった。
銃身のつもりの筒を作るのはそれほど難しくはない。
蓋になる部分が吹き飛ばないように、最初から片方の端を塞ぐように鋳造したものだ。
理屈ではそれだけで銃になるはずだった。
着火方法は火縄である。
賢者が雷管を知らないためだった。
薬莢ごと球が飛んでいく絵を描いてしまうほどなので普通の日本人には考えつかなかったのかもしれない。
「グフフブヒィ」
実験は工作用の土台に銃身を括り付け、安全のために紐を引いて着火するように作られた。
10mほど先に、2センチほどの厚さの木の板を立てて的にした。
「発射でござるぅ!」
紐を引くと轟音と共に弾丸である小石が撃ち出され、板に穴が開く。
成功だ。
とても順調に思えたのはそこまでだった。
2発目を装填しようと火薬を入れた瞬間、暴発した。
銃身に残った燃えカスが火薬を着火させてしまったのである。
「こりゃ、いけねえなあ」
ガイウスはのんびりとした口調で感想を漏らした。
「燃えカスが火を点けちまうんだ。撃つごとに中を掃除しねえとあぶねえなあ」
即席で細い木の棒に巻きつけた海綿を濡らして、銃身を掃除する。
この世界のトイレでお尻を拭く方法そのままだ。
スケールが少々小さくなってるだけで、用意するのも作るのも簡単である。
そして、2射目、3射目……今度こそ順調に行きかけたと思ったら、銃身の後ろの蓋が吹き抜けた。
鋳造による一体成型だから問題ないと思ったら、あっさり吹き飛んで穴が開いてしまったのだ。
「むむむ……?」
賢者は首を捻った。
不良品だったのだろうか。
新しい予備の銃身を使ってみたが、結果は変わらなかった。
数発で吹き抜けてしまうのだ。
「反動じゃ」
様子を見ていたヒンカは事も無げに言った。
「反作用じゃぞ。弾を撃ち出せば、同じだけの力が反対側にもかかる。当然といえば当然じゃ」
「むむむ……?」
賢者にはきちんと理解できてはいないが、なんとなくは判った気はした。
なら、世の中の銃はどうやって耐えきれているんだろう。
ヒンカは答えを知っていたが、言うべきかどうか迷った。
銃を完成させてしまうと賢者は使いたがるのではないかと思ったのだ。
「とはいえ……女子には有用な護身用武器だしの……」
自分もそうだが沙那のような非力な女性には剣を振るうのは難しい。
携帯しやすいサイズの銃があれば、かなり安心できるようになる。
なによりヒンカが生まれ育った国は市民が銃を所持することを広く認めており、全世界の銃の3分の1は彼女の国にあるとまでいわれていたのだ。
犯罪にも悪用されやすいが、訓練されていない女性にとっても強力な武器になりえていた。
「尾栓じゃ」
「ブヒィ!?」
「お主は……金属を接合する最強の方法を知っておるか?」
ヒンカの言葉は謎かけの様だった。
「溶接でござるか?」
「違う」
ヒンカは首を振った。
ガチ文系の賢者にはピンとこなかった。
金属を繋ぐのは溶接じゃ?という彼の認識は一般的なイメージによるものだ。
工作を趣味にしてるのなら分かりそうなものだが、多くの人は気づかない。
「んー。それってボルトとナットだよねー?」
ぺんぎんたちを引き連れて見学に来ていた沙那が口を出す。
ミニスカのメイド服がひらひらしている。
中が見えそうになると、ぺんぎんたちがジャンプして隠そうと格闘した。
鰭はこういう時にとても便利だ。
「理科の授業で先生に聞いたことあるー」
「ほう。……正解じゃ」
ヒンカが満足そうに笑った。
「欠点は重量がかさむことじゃが、ネジが最強の接着方法なのは確かじゃ」
もちろんネジ自体の強度にもよるが、強力な摩擦によって恐ろしい抵抗力を生み出すのがネジである。
ネジといっても多種多様で、沙那の言ったボルト・ナットは撃ち込むだけのねじと違って最も接着強度が高い。
このネジの理論すら存在しなかった中世の日本では、火縄銃をコピーするのに大変手間取ったくらいである。
賢者と同じく暴発事故を何度も経験したのだ。
外国人からネジの技術を聞いて初めて実用的な火縄銃を作ったのだが、その秘密を探るために娘を差し出したという逸話まである。
このネジの理論は古代ギリシャにはすであったというから、火薬の発明された東洋ではなく、西洋で銃が実用化された理由の一つなのかもしれない。
火薬の反動に耐えられる方法がなかったのであろう。
「よく漫画にもあるじゃろ?大砲がエシャレットの形をしておるのだが知らんか?」
「エシャ……?ブフゥ」
「らっきょうだよー」
沙那が補足した。
昭和の少年には和風の名前じゃないと通じ難い時がある。
おしゃれな言葉だと判らない!昭和の少年だった。
「あれは後ろの方にくほど分厚い金属になっておるじゃろう?あれだととても重く大きくなるからネジを使うようになったんじゃ」
「ブヒィィ?」
「へー」
最初期の鉄砲のような火器は『笛』のようであったというのはそのためでもある。
尾栓の代わりに太い木の棒を台座として取り付け、反動に耐えるようにしていたからだ。
その形状が笛のようだったのだ。
もちろん火器としてはとてもお粗末だったのだが、使い方によっては活躍することもあった。
それでも火薬の量を抑えないと壊れてしまうために、実用射程距離はせいぜい10mほどで威力も恐ろしく低かった。
ネジ式の尾栓を使うようになっても、その後ろを塞ぐように木製の銃床が伸びる構造が長く続いたのはその名残なのだ。
反動になるガス圧利用の手段が確立するまでの数百年もその形状は維持されたのである。
賢者や沙那がイメージする銃と、初期の銃は性能も形も全く別物だった。
「む?知らんか?昔のライフル銃とかは、こう、がちゃがちゃって手動で回転させておったろ?あれもネジなんじゃ」
賢者はそこでやっと、ボルトアクションライフルをイメージ出来た。
大砲も基本的には同じだ。
ネジの尾栓を用いた閉鎖器がそれを行う。
「はーん。ネジか。なるほどのう」
ドワーフの棟梁のガイウスはなんとなく理解した。
この世界にもネジは存在するのだ。
ただ、雄雌のネジを作ってボルトナットを作るのは困難な作業だ。
雄雌の螺旋がきちっと一致しないと効果が無いからだ。
この世界とヒンカたちの世界では基礎工業力が桁違いだった。
* * *
この世界の技術では機械的にボルトナットを作るのは難しい。
そんな細かい工作機械はあるわけがない。
しかし精錬鍛造はできる。
そこでガイウスは鍛造鉄に鑢でネジ山を切って雄ネジにし、鉄のパイプに差し込み、そこで接合部分周辺を鍛造することにした。
これによってパイプ側にも雄ネジにぴったりの雌ネジの山が作られるのだ。
力技ではあったが確実な方法だった。
何度か試行錯誤を経て、火縄銃の形にはなってきた。
「これはプレス機が欲しいじゃろうなあ……」
ハンマー片手に手で行う鍛造は重労働だ。
機械で鍛造作業を行えるプレス機はあると便利だろう。
賢者は狂喜した。
これで世界のパワーバランスを崩せる、と。
彼の脳裏には武田騎馬軍団を粉砕した織田信長の鉄砲隊が活躍した長篠の戦が浮かんでいた。
「ブヒッブヒヒッ」
ところがその幻想はシュラハトによって打ち砕かれる。
「射程距離が短すぎる」
そう。実用射程距離が100mほどしかなかったのだ。
そして、100m離れていると狙って当てることがほとんど不可能だった。
これはガイウスたちのせいではない。
銃が軍隊の基本装備になった19世紀でもそんなものだったのだ。
「それと準備に時間が掛かりすぎる」
弾丸と装薬の装填に驚くほど時間が掛かる。
1発1発が計らなくてもそのまま使えるように小分けしても発射間隔は20秒前後あった。
手慣れた者でも10数秒はかかる。
つまり……100mの距離で向き合って発砲すると、次の弾丸を準備するまでに……。
人間が100mの距離を走るのには金メダリスト級の速さでなくとも、10数秒あれば行ける。
次弾装填が終わるまでに接近されてしまうのだ。
すなわち、もそもそと弾薬装填してる間に斬り込まれてしまう。、
事実、19世紀どころか20世紀初頭の戦闘ですら初弾発砲後には銃剣突撃が当たり前だった。
銃剣という原始的な装備がなかなか無くならないのはそのためでもあった。
銃剣を取り付けたマスケット銃はそのまま、槍として機能した。
ヒンカは特別に軍事マニアというわけではないが、歴史の授業で普通に得た知識である。
「野戦には使えねえな。城を守るときとかには良いかもしれねえが」
シャラハトはそう断じた。
「弩の方がよほど役に立ちそうだぜ」
取り回しのしやすさは弩の方が優れているくらいだ。
狙いのつけやすさ、射撃のしやすさは同等。
あえて銃を使う必要が感じられない。
これは当たり前だった。
後装ライフル銃ができるまでは弩や弓よりも優れてるとはいえなかった。
ただ一つ『音』以外には。
発射時の轟音は様々な状況で効果がある。
それこそ馬などを怯えさせるに十分だったし、銃の一斉射撃の音と煙は兵士を怯ませるには充分だ。
「ま、何かのために多少はあると役に立つのかも知れねえが」
「ブヒィ……」
ただ、シュラハトは一つ気付いていた。
この武器は『腕力』を必要としないことに。
ヒンカが女性用にという理由が分かる気はした。
* * *
それからしばらくして、ヒンカはクローリーを呼び出してガイウスの工房に来た。
「魔法について、ちょっと相談があるんじゃが」
ヒンカは迷いつつも切り出した。
「高価でもいいから、何か、こう、ものすごく小さいもので火を点ける魔法はないのかのう?」
「火?……どかんと言う感じっスか?」
「違う。小さな火で良いのじゃ。お主も件の鉄砲のことは少し見たじゃろう?」
「まあ、一部始終っスな」
「火薬に火を点けるだけの火ができれば良いんじゃ。ただ……大きさはこのくらいでじゃ」
ヒンカは人差し指と親指で小さい大きさを示した。
「何スかそれは」
「賢者に悪用されると困るのでな。秘密じゃからな?」
「いや。だから何スか」
ヒンカはじっとクローリーを見た。
「沙那は、ほら、剣術とか魔法は使えないじゃろ?だから護身用の武器をじゃな……」
「それと火の魔法がイマイチ繋がらないんスが」
「……なんていうかの。鉄砲を隠し持てるようなものにして、沙那に……いやさ、女性用にいくつか持たせたいって思っておるのじゃ」
「うーん。いまいちわからねーっスなー」
「仕方ないのじゃ……」
ヒンカは懐から何かを取り出した。
鉄?のような材料で作られた細工物だった。
大きさはクローリーの掌ほどだ。
「妾がこの世界に飛ばされた時に持ってきた……鉄砲なのじゃ」
「へ?」
ガイウスの工房で制作している銃とはかけ離れた形状をしている。
火縄を取り付ける場所が見当たらない。
何より小さすぎる。
ブローニングM1910と刻印されていた。
「使う弾からして違うのじゃ。弾自体に着火する機能が付いておる」
「……ほー?」
「雷管はこの世界で作るのはほとんど不可能じゃ。材料もじゃが……それでもこの世界には魔法がある」
クローリーにはいまいち言われていることが判ってはいなかったが、何を伝えようとしているのかは分かる。
火薬に火を付ける効率的で極小さな大きさの魔法による発火システムが欲しいということなのだろう。
「できねーことはないと思うっスが……」
「そうか。それとこれをコピーできれば、なお良いのじゃ」
ヒンカは慣れた手つきで弾倉を外し、銃口のネジ式のリングをくるっと回した。
コイルスプリングが一緒に零れてきた。
遊底をいっぱいまで引いてから反対の手で銃身を半回転させる。
ネジになったロックが外れて、遊底ごと上半分が外れた。
中はスプリングや細かい部品で構成されてはいるが、構造はとても単純のようだった。
「この程度の絡繰り細工はガイウスたちなら作れるじゃろう」
クローリーは息をのんだ。
初めて生で目にする異世界の技術。しかも武器らしい。
「これは……?」
「妾の世界の銃じゃが、主に女性の護身用じゃな。身に付けているときに一緒に飛ばされてきたのじゃ」
ポケットにすら入りそうだった。
沙那ならスカートの中に隠し込むかもしれない。
小さく、全体的に丸みを帯びている。
確かに簡単に隠し持てるような大きさだった。
「こいつはどっかの国の皇太子夫妻を暗殺した銃として有名なものと同じタイプのものじゃ」
本来は警察官の予備の拳銃とされている。
「そいつは使えねーんスか?」
クローリーがもっともな質問をした。
「動作はすると思うんじゃが……弾が問題なのじゃ。火薬がちゃんと動くのか自信がなくての」
「それはどーいうことっスか」
ヒンカが少し寂しそうな顔をした。
「前に言ったはずじゃが。……こいつは100年以上前のものなのじゃ。火薬が反応しない状態になっていても不思議じゃないのじゃよ」
ヒンカが働くようになって万が一のために手に入れ、短くない時を過ごし、そしてこの世界に飛ばされてから100年近い。
彼女自身は転生魔法で若返っているが、銃の方はそうではない。
特に無煙火薬は劣化しやすい。
「そもそも弾丸が手配できぬのじゃ。だから……これを参考に複製品を作って欲しいのじゃ。いや、改良かも知れぬな」
要はドワーフの精密加工技術で何とかリバースエンジニアリングして貰いたいというものだ。
黒色火薬は製造が簡単だが、ヒンカの銃のように無煙火薬は現状では生産不可能だった。
それをなんとか黒色火薬で動作させようというのだから、なかなか困難な課題になるだろう。
なにより雷管を作りようがない。
それを魔法で解決できないかという提案だ。
科学技術と魔法技術の合体が、まさに行われようとしていた。
「ただ、作るのは3つか4つか、そのくらいにして欲しいのじゃ」
ヒンカはクローリーを睨みつける。
「お主を信用していないわけじゃないが、こんなオーバーテクノロジーな祭器をほいほい使われては困るのじゃ」
賢者の火縄銃とは桁違いに危険な代物なのだ。
たぶん、この拳銃自体はどうということはない。
心配しているのはこれを原型に強力な発展した火器を製造されることなのだ。
大型にして長銃身にするだけでも大変なことになる。
セミオートといえど自動装填する銃が登場したら弩や弓を圧倒する。
ヒンカは弾倉から弾丸を抜き取り、クローリーに見せた。
「この形式の弾丸は後ろを小さなハンマーで叩くと発火するようになっている。それで火薬に着火するんじゃ」
金属の筒でできたそれをクローリーは不思議そうに眺めた。
どういう構造かもわからない。
ただ、魔法で着火できないかと訊かれていることだけは判る。
「できると思うんスが。火を点ける魔法は構成要素が驚くほど高いんス」
「そうなのか?」
「砕いた宝石が必要なんス。安上がりにできるモノなら各家庭に置いておくっスよ」
マッチすらないこの世界では点火するのはなかなか大変だ。
それこそクローリーが行っている魔法の研究の一つであった。
手軽に火を起こす方法があれば日常生活はかなり楽になる。
火打石がその辺にごろごろしてる世界ではあるが、確実な一発着火には程遠い。
元々クローリーが目指していたものは、そういった魔法による生活環境の向上なのだ。
むしろ安価にできるものならとっくにやっているだろう。
そもそも、この世界の工業基盤では金属カートリッジの銃弾を作ること自体が困難なので、ヒンカが心配するほど量産できない。
まさに一品ものとして、個人のマニアックで高価な装備になるだろう。
使用済み薬莢も自衛隊のようにマメに回収したり、再利用することになるかもしれない。
「あとはガイウスと要相談で作るだけっスよ」
* * *
1週間ほどで試作品ができた。
いったん全部ばらして、同じ形状のパーツを作り、組み上げたのだ。
ただ……。
台座に設置しての試射で数発撃った後に暴発してバラバラになった。
この世界の鉄では同じ大きさで同じ強度を出すことができなかったのだ。
鉄一つとっても技術レベルが違いすぎたのだ。
強度を確保するにはかなり大きなものになりそうだった。
力のかかる各パーツを原型の1.5倍くらいに作らないと無理そうだったのだ。
火縄銃はともかく、こちらは当面どうしようもないように思えた。
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