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番外編:異国にて僕らは③
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「前って……」
泉の手に掴まれた自身の手で、反応を示す場所を握らされる。解放の時を待ちわびてピクピクと血管を浮かせた性器を、射精を禁じるため輪を作るように握らされて、要は薄い腹を上下させた。
絶望を叩きつけられたような心地に、要の背筋が冷えていく。
「だって、泉、触ってくれるって……」
「ああ、そうだな……」
つい情けない声を漏らした要の大事な場所、その裏筋を泉はつつつ、となぞり上げる。それだけで電流のような快感が走り奥歯を噛み合わせた要の顔を存分に眺めながら、泉は綺麗に微笑んだ。
「触ってやったろ? でも前でイかせてやるなんて言ってない」
「……じゃ、じゃあ、どうすれば……」
「前でイかないようにちゃんと握ってろよ。大丈夫、後ろだけでイかせてやるから」
並びのよい歯の隙間から、残酷な命令が返ってくる。
「縛ったらさすがに可哀想だからな。イかないようにちゃんと自分で握ってられるよな? 要」
赤く充血し、てらてらと先走りを零す先端に爪を立てられて要は喘ぐ。くすぐるように先端に触れる泉の手つきは叫びだしたいほど優しい。泉の言葉を聞いた要は、大粒の瞳に涙を滲ませ、とうとうしゃくりあげた。
「あ、んぅ……っ。あ、ゃ、んぁっ」
細切れの声が、ホテルの寝室に木霊する。絶命が近い小動物のように弱々しい影が、大きな肉食動物にのしかかられている。そんな様子が間接照明によって照らしだされていた。
浅い息と湿っぽい悲鳴が、室内をみだらに染めあげる。
枕を重ねたベッドのサイドボードにもたれた要は、小さな子供のように足を大きく開いた状態で秘所を泉にさらけ出していた。白い太ももにはベッタリとローションが散っている。泉によって散々ほぐされた尻の穴は、指を抜かれてもパクパクと口を開いていた。
普段は慎ましやかに閉じられたそこが、泉のものを待ちわびて色づいているのを一瞥し、泉は口の端を吊り上げる。要は過ぎた快感に涙を零していた。
「も、無理、泉……っくるし」
「そんなに泣くなよ。いじめてる気分になる」
(いじめてるだろ!!)
そう叫びたいのに、後ろの刺激だけで限界まで張りつめた身体は気力も失せてしまった。
尖りきった胸の飾りも散々指や舌でなぶられ、背骨を撫でられ下腹を舐められ、性器から尻の粘膜に続く場所を指で優しく押し揉まれて、もう身体は精気を搾り取られたようにクタクタだ。
ただ、決定的な快感を得られなくて、長時間弱火で煮こまれているような感覚が苦しかった。
「イきたい……よぉ……。泉、お願……」
涎を垂らした唇から泣き言を漏らすと、泉は要の背中に腕を回し、胡坐をかいた自身の上へ導いた。要の太ももに、立ちあがった泉の性器が触れる。興奮して十分な硬さと太さを持つそれが触れるだけで、要は興奮から腰をくねらせてしまった。
「ほら、後ろでイかせてやるから、腰を落とせ」
「あ、う……んうっ」
目をギュッと閉じると、また一筋涙が頬を伝う。それを泉に舐められているのを感じながら、要は恐る恐る腰を落とした。ひくつく尻の粘膜に泉のものが触れただけで、火傷しそうな熱を感じる。
泉に腰を支えてもらいながら、片手で自身の性器を握ったまま、もう一方の手で泉の性器に触れる。泉の性器の張りだした部分が柔らかくなった尻のすぼまりをくぐるだけで、要は子犬のような声を上げた。
「ふ、え……ん、んんんっ」
湿り気を帯びた要の前髪を掻き分け、泉の唇があやすように額に口付ける。剛直が内臓を押しあげる感覚に要は喘いだ。その気はなくとも焦らすように腰を落としていくと、耐えかねたのか泉が要の薄い腹へ腰を打ちつける。
すっかり泉の形を覚えた内壁がいきなり奥まで彼の性器を受け入れ、要の眼前に星が散った。
「あえ……っ!?」
奥を穿たれた衝撃で、つい自身の性器を握っていた手が緩む。その瞬間、要の先端からピュクッと熱い飛沫が放たれた。
「あ……っあ……?」
何が起きたのか分からなくて、呆然とするしかできない。
大きく息を吸う度に、腹の底でひどい体積を占める泉の一物をキュウキュウと締めつけてしまう。喉元まで迫っているような泉の杭を感じて初めて、要は挿入されただけで達してしまったのだと悟った。
「ごめ……っ。泉、ご……」
怒られるかもしれないと肩を竦めたが、泉は要の後頭部をなだめるように撫でただけだった。意地悪さと優しさを交互に与えられて、要の思考は溶かされていく。
「そんなに気持ちよかったか?」
耳たぶを食まれながら優しく囁かれ、要は涙で濡れた瞳を歪めた。
「う……。ごめ、なさ……」
「次は我慢しろよ?」
熱を持った項をスリスリと撫でられて、要は泉の肩に額を押しつけながら頷く。それから再び、精のこびりついた自身の性器を握りしめた。
「いい子だな」
甘やかすように言われ、腰に両手を添えられる。それからはもう、要は溺れるような嬌声を上げるしかなくなった。
抜けるギリギリまで引きだされた泉の性器が、再び直腸をえぐり奥まで押しこまれる。トントンと奥に叩きつけられる度、要は気持ちのよさで歯が浮く気がした。
耳元で浅くなっていく泉の息すら、麻薬のように甘美に感じられる。汗ばんだ泉は凄絶な色気を孕んでおり、自分とのセックスで彼がこうなったのだと思えば、要の熱が上がった。
「あ、そこ……っ」
キスの合間に腹の中を抉る角度を変えられ、要は身もだえる。前立腺を雁首で刺激され、もう一度射精したくなった。
「好きだろ?」
要の感じる場所を知り尽くしている泉にそう言われ、愛しさが湧く。しかし要は、空いた手で泉の背中に手を回し懇願した。
「好き、だけど……っでも、奥、欲し……っ」
「要」
「奥、きてよ……いず……っ」
「だからお前は何でそう……ああ、もう……壊れるなよ!」
若干苛立ったような口調で、泉が要を抱え直す。浅いところをトントンと突かれる優しい刺激から打って変わり、泉にのしかかられながら最奥をゴチュゴチュと突かれ始めた。
結合部からローションが漏れ出てみだらな音が室内を満たす。乱暴なくらいの刺激に目を回しつつも、要は奥を満たされる感覚に喘いだ。
「き、もち……あ、イっちゃう、イッちゃう、ダメ」
「今更ダメなんて聞けるかよ、ちゃんと奥で受け止めろ……っ」
「あ、あ、あぁあぁあぁぁぁっ」
一際強く奥を突かれた瞬間、最奥で熱が放たれる。同時に、要も自身の性器を握ったまま達してしまった。
ぞわぞわとした甘い痺れが背中から脳までを駆けあがり視界を真っ白に染めたが、要の性器からは白濁とした液が出ていない。しかし脳天に火花を散らす感覚は紛れもなく絶頂だった。
「お、ぁ……ぁう……?」
腹に叩きつけられる熱の多さに要が動けないでいると、腰を回し、腹の中に存分に精を擦りつけられた。まるで孕めと言われているみたいだ。
ビクビクと痙攣し、泉のものをきつく締めつけたままでいる要。そんな要の上唇を、泉は愛しそうに食んだ。
「ちゃんと後ろだけでイけたな。偉いぞ、要」
「うし、ろ……」
まだ炙られているような快感が続き、要は弱々しい声で言った。
全身の皮膚が敏感になっている。ようやく射精を終えた泉が身体の中から抜け出ていく感覚にさえ気持ちよさを覚え、要は小さく喘いだ。
「オレ、もう、泉でしか感じられない気がする……」
秘所から泉の精を零しながら、要はまだ快感の波間を彷徨いつつ零す。その言葉を聞いた泉は嬉しそうに要を抱きしめた。
「当たり前だろ、そうするために抱いたんだ」
もう美作のことなんて思い出さない。もう他の男性でも、異性でもダメだ。泉としかセックスできない。そう痛感させられるほど気持ちのよさに、要は恐怖さえ覚えた。
しかし大好きな泉の腕の中に収まると、それでいいと思えてくる。そうだ、これから一生、泉としか身体を繋がないし、この先、泉以外を愛する予定もないのだから。
翌日、撮影現場へ遅れて顔を出した要を出迎えたのは、オーウェンとスリだった。
結局夜明けまで泉に求められた要は、朝になっても起きられなかった。泉に「今日は一日部屋にいろ」と言われたが、そこは腐ってもマネージャーの要だ。腰の痛みを押して起きあがり、日が高くなってからとはいえ現場へ顔を出したのだが……。
ちょうど撮影中の泉ではなく休憩中の主演二人に絡まれ、要のミジンコのように小さいメンタルは決壊しそうになった。
「あああああああああああの、その……っ」
「ほらよ、眼鏡だ」
昨日撮影現場に忘れてきてしまった眼鏡をオーウェンにかけ直してもらう。視界がクリアになるなり、世界的スター二人の輝きが目に染みて、自身が燃えて消し炭になるような感覚を要は覚えた。
慌てふためく要を知ってか知らずか、オーウェンはスリと目を見合わせ、しみじみと頷く。それから首元までしっかりと留められた要のシャツを指さし、オーウェンは苦笑した。
「そんな第一ボタンまで留めていても見える場所にキスマークをつけるなんて泉の執着ぶりが窺えるなぁ」
「え……えっ!?」
要は急いで首元を手で隠すが、自分ではどうなっているのか見えない。両手に首をかけたまま死にそうな顔をしている要に、オーウェンは両手を上げて天を仰いだ。
「放蕩にふけって演技に支障をきたすなら、君を攫ってしまうのもアリだと思ったけど……どうやら泉は、君と甘い日々を過ごしている方が演技に磨きがかかるようだ」
「みたいねぇ。ざーんねん。昨日までの泉も最高にクールだと思っていたけど、今日の泉は別格だわ」
そう言うスリの視線の先では、泉が生き生きと演技をしている。その様子に、スタジオの監督を始め多くのスタッフが惹きつけられていた。
「貴方、彼に溺愛されてるみたいね」
からかうような口調でスリに言われ、要は真っ赤になる。まさかアメリカに来てまで、彼に溺愛されていることがバレてしまうとは。
「二人が幸せなら、いいことだと思うわ」
そして、泉と要の関係を受け入れてもらえるとは。
要は瓶底眼鏡をグイと押し上げると、照れ隠しをするようにはにかむ。その笑顔の破壊力に、世界的なスターの二人は驚いたように息を飲んだ。
こののち、泉が出演したハリウッド映画が全世界で大ヒットを記録し、主役を食うほどの演技力で泉が話題を攫っていったというのは、また別のお話。
泉の手に掴まれた自身の手で、反応を示す場所を握らされる。解放の時を待ちわびてピクピクと血管を浮かせた性器を、射精を禁じるため輪を作るように握らされて、要は薄い腹を上下させた。
絶望を叩きつけられたような心地に、要の背筋が冷えていく。
「だって、泉、触ってくれるって……」
「ああ、そうだな……」
つい情けない声を漏らした要の大事な場所、その裏筋を泉はつつつ、となぞり上げる。それだけで電流のような快感が走り奥歯を噛み合わせた要の顔を存分に眺めながら、泉は綺麗に微笑んだ。
「触ってやったろ? でも前でイかせてやるなんて言ってない」
「……じゃ、じゃあ、どうすれば……」
「前でイかないようにちゃんと握ってろよ。大丈夫、後ろだけでイかせてやるから」
並びのよい歯の隙間から、残酷な命令が返ってくる。
「縛ったらさすがに可哀想だからな。イかないようにちゃんと自分で握ってられるよな? 要」
赤く充血し、てらてらと先走りを零す先端に爪を立てられて要は喘ぐ。くすぐるように先端に触れる泉の手つきは叫びだしたいほど優しい。泉の言葉を聞いた要は、大粒の瞳に涙を滲ませ、とうとうしゃくりあげた。
「あ、んぅ……っ。あ、ゃ、んぁっ」
細切れの声が、ホテルの寝室に木霊する。絶命が近い小動物のように弱々しい影が、大きな肉食動物にのしかかられている。そんな様子が間接照明によって照らしだされていた。
浅い息と湿っぽい悲鳴が、室内をみだらに染めあげる。
枕を重ねたベッドのサイドボードにもたれた要は、小さな子供のように足を大きく開いた状態で秘所を泉にさらけ出していた。白い太ももにはベッタリとローションが散っている。泉によって散々ほぐされた尻の穴は、指を抜かれてもパクパクと口を開いていた。
普段は慎ましやかに閉じられたそこが、泉のものを待ちわびて色づいているのを一瞥し、泉は口の端を吊り上げる。要は過ぎた快感に涙を零していた。
「も、無理、泉……っくるし」
「そんなに泣くなよ。いじめてる気分になる」
(いじめてるだろ!!)
そう叫びたいのに、後ろの刺激だけで限界まで張りつめた身体は気力も失せてしまった。
尖りきった胸の飾りも散々指や舌でなぶられ、背骨を撫でられ下腹を舐められ、性器から尻の粘膜に続く場所を指で優しく押し揉まれて、もう身体は精気を搾り取られたようにクタクタだ。
ただ、決定的な快感を得られなくて、長時間弱火で煮こまれているような感覚が苦しかった。
「イきたい……よぉ……。泉、お願……」
涎を垂らした唇から泣き言を漏らすと、泉は要の背中に腕を回し、胡坐をかいた自身の上へ導いた。要の太ももに、立ちあがった泉の性器が触れる。興奮して十分な硬さと太さを持つそれが触れるだけで、要は興奮から腰をくねらせてしまった。
「ほら、後ろでイかせてやるから、腰を落とせ」
「あ、う……んうっ」
目をギュッと閉じると、また一筋涙が頬を伝う。それを泉に舐められているのを感じながら、要は恐る恐る腰を落とした。ひくつく尻の粘膜に泉のものが触れただけで、火傷しそうな熱を感じる。
泉に腰を支えてもらいながら、片手で自身の性器を握ったまま、もう一方の手で泉の性器に触れる。泉の性器の張りだした部分が柔らかくなった尻のすぼまりをくぐるだけで、要は子犬のような声を上げた。
「ふ、え……ん、んんんっ」
湿り気を帯びた要の前髪を掻き分け、泉の唇があやすように額に口付ける。剛直が内臓を押しあげる感覚に要は喘いだ。その気はなくとも焦らすように腰を落としていくと、耐えかねたのか泉が要の薄い腹へ腰を打ちつける。
すっかり泉の形を覚えた内壁がいきなり奥まで彼の性器を受け入れ、要の眼前に星が散った。
「あえ……っ!?」
奥を穿たれた衝撃で、つい自身の性器を握っていた手が緩む。その瞬間、要の先端からピュクッと熱い飛沫が放たれた。
「あ……っあ……?」
何が起きたのか分からなくて、呆然とするしかできない。
大きく息を吸う度に、腹の底でひどい体積を占める泉の一物をキュウキュウと締めつけてしまう。喉元まで迫っているような泉の杭を感じて初めて、要は挿入されただけで達してしまったのだと悟った。
「ごめ……っ。泉、ご……」
怒られるかもしれないと肩を竦めたが、泉は要の後頭部をなだめるように撫でただけだった。意地悪さと優しさを交互に与えられて、要の思考は溶かされていく。
「そんなに気持ちよかったか?」
耳たぶを食まれながら優しく囁かれ、要は涙で濡れた瞳を歪めた。
「う……。ごめ、なさ……」
「次は我慢しろよ?」
熱を持った項をスリスリと撫でられて、要は泉の肩に額を押しつけながら頷く。それから再び、精のこびりついた自身の性器を握りしめた。
「いい子だな」
甘やかすように言われ、腰に両手を添えられる。それからはもう、要は溺れるような嬌声を上げるしかなくなった。
抜けるギリギリまで引きだされた泉の性器が、再び直腸をえぐり奥まで押しこまれる。トントンと奥に叩きつけられる度、要は気持ちのよさで歯が浮く気がした。
耳元で浅くなっていく泉の息すら、麻薬のように甘美に感じられる。汗ばんだ泉は凄絶な色気を孕んでおり、自分とのセックスで彼がこうなったのだと思えば、要の熱が上がった。
「あ、そこ……っ」
キスの合間に腹の中を抉る角度を変えられ、要は身もだえる。前立腺を雁首で刺激され、もう一度射精したくなった。
「好きだろ?」
要の感じる場所を知り尽くしている泉にそう言われ、愛しさが湧く。しかし要は、空いた手で泉の背中に手を回し懇願した。
「好き、だけど……っでも、奥、欲し……っ」
「要」
「奥、きてよ……いず……っ」
「だからお前は何でそう……ああ、もう……壊れるなよ!」
若干苛立ったような口調で、泉が要を抱え直す。浅いところをトントンと突かれる優しい刺激から打って変わり、泉にのしかかられながら最奥をゴチュゴチュと突かれ始めた。
結合部からローションが漏れ出てみだらな音が室内を満たす。乱暴なくらいの刺激に目を回しつつも、要は奥を満たされる感覚に喘いだ。
「き、もち……あ、イっちゃう、イッちゃう、ダメ」
「今更ダメなんて聞けるかよ、ちゃんと奥で受け止めろ……っ」
「あ、あ、あぁあぁあぁぁぁっ」
一際強く奥を突かれた瞬間、最奥で熱が放たれる。同時に、要も自身の性器を握ったまま達してしまった。
ぞわぞわとした甘い痺れが背中から脳までを駆けあがり視界を真っ白に染めたが、要の性器からは白濁とした液が出ていない。しかし脳天に火花を散らす感覚は紛れもなく絶頂だった。
「お、ぁ……ぁう……?」
腹に叩きつけられる熱の多さに要が動けないでいると、腰を回し、腹の中に存分に精を擦りつけられた。まるで孕めと言われているみたいだ。
ビクビクと痙攣し、泉のものをきつく締めつけたままでいる要。そんな要の上唇を、泉は愛しそうに食んだ。
「ちゃんと後ろだけでイけたな。偉いぞ、要」
「うし、ろ……」
まだ炙られているような快感が続き、要は弱々しい声で言った。
全身の皮膚が敏感になっている。ようやく射精を終えた泉が身体の中から抜け出ていく感覚にさえ気持ちよさを覚え、要は小さく喘いだ。
「オレ、もう、泉でしか感じられない気がする……」
秘所から泉の精を零しながら、要はまだ快感の波間を彷徨いつつ零す。その言葉を聞いた泉は嬉しそうに要を抱きしめた。
「当たり前だろ、そうするために抱いたんだ」
もう美作のことなんて思い出さない。もう他の男性でも、異性でもダメだ。泉としかセックスできない。そう痛感させられるほど気持ちのよさに、要は恐怖さえ覚えた。
しかし大好きな泉の腕の中に収まると、それでいいと思えてくる。そうだ、これから一生、泉としか身体を繋がないし、この先、泉以外を愛する予定もないのだから。
翌日、撮影現場へ遅れて顔を出した要を出迎えたのは、オーウェンとスリだった。
結局夜明けまで泉に求められた要は、朝になっても起きられなかった。泉に「今日は一日部屋にいろ」と言われたが、そこは腐ってもマネージャーの要だ。腰の痛みを押して起きあがり、日が高くなってからとはいえ現場へ顔を出したのだが……。
ちょうど撮影中の泉ではなく休憩中の主演二人に絡まれ、要のミジンコのように小さいメンタルは決壊しそうになった。
「あああああああああああの、その……っ」
「ほらよ、眼鏡だ」
昨日撮影現場に忘れてきてしまった眼鏡をオーウェンにかけ直してもらう。視界がクリアになるなり、世界的スター二人の輝きが目に染みて、自身が燃えて消し炭になるような感覚を要は覚えた。
慌てふためく要を知ってか知らずか、オーウェンはスリと目を見合わせ、しみじみと頷く。それから首元までしっかりと留められた要のシャツを指さし、オーウェンは苦笑した。
「そんな第一ボタンまで留めていても見える場所にキスマークをつけるなんて泉の執着ぶりが窺えるなぁ」
「え……えっ!?」
要は急いで首元を手で隠すが、自分ではどうなっているのか見えない。両手に首をかけたまま死にそうな顔をしている要に、オーウェンは両手を上げて天を仰いだ。
「放蕩にふけって演技に支障をきたすなら、君を攫ってしまうのもアリだと思ったけど……どうやら泉は、君と甘い日々を過ごしている方が演技に磨きがかかるようだ」
「みたいねぇ。ざーんねん。昨日までの泉も最高にクールだと思っていたけど、今日の泉は別格だわ」
そう言うスリの視線の先では、泉が生き生きと演技をしている。その様子に、スタジオの監督を始め多くのスタッフが惹きつけられていた。
「貴方、彼に溺愛されてるみたいね」
からかうような口調でスリに言われ、要は真っ赤になる。まさかアメリカに来てまで、彼に溺愛されていることがバレてしまうとは。
「二人が幸せなら、いいことだと思うわ」
そして、泉と要の関係を受け入れてもらえるとは。
要は瓶底眼鏡をグイと押し上げると、照れ隠しをするようにはにかむ。その笑顔の破壊力に、世界的なスターの二人は驚いたように息を飲んだ。
こののち、泉が出演したハリウッド映画が全世界で大ヒットを記録し、主役を食うほどの演技力で泉が話題を攫っていったというのは、また別のお話。
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ハッピーエンドになるのでしょうかm(__)m
月島のせいで(*_*)要と泉が心配すぎて胸が苦しいです!!泣
かなこさん、読んでくださってありがとうございます(*´꒳`*)
楽しみにしていただけてると知り、とても嬉しく思います。
現在は月島に苦しめられている2人ですが、ハッピーエンドを予定しておりますので、是非最後までお付き合いください˚✧₊⁎