100均で始まる恋もある

三森のらん

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8.クリスマスツリー

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 平日は山本さんは忙しいらしい。
 年末に向けてという、時期的なものらしいけれど、普段から比較的遅いらしい。言われてみれば、金曜日もけっこう閉店時間近くに来ることが多かった気がする。
 山本さんから『また、週末にでも、飯でも食いに行こう』というメールを貰って、一人で浮足立ってたけれど、もしかして、山本さんと会わないでいた時期というのは、実は僕に会うために無理して店まで来てたんじゃないのか、と今更ながら、申し訳なく思った。
 だけど、それと同時に、そんな忙しい中、僕に会おうとしてくれたことが、やっぱり嬉しかった。

 あれから、週末に会って、食事をして、ちょっと話をして、僕のアパートまで送ってもらう、これをデートと言えるのなら、こんなデートを僕たちは週末ごとに繰り返した。
 その度に、山本さんは、頭を撫でては僕のおでこにキスをして、にっこりと微笑んで帰っていく。
 それは、それで嬉しいのだけれど、僕も一応、二十歳を過ぎた男なわけで、ちょっと物足りないとか、思いだしてしまう。

 ――僕のことを子供みたいに思ってる? それとも、やっぱり、男の僕じゃダメなのかな……。

 僕の中でジリジリとした焦りと不安を感じ始めたのは、街中に流れるクリスマスソングを聞き飽きた頃。そう、クリスマスも目前、という頃だった。
 今年のクリスマスイブは運がいいことに日曜日。バイトが入ってるのが確定なのは仕方がないけれど、夕方にはあがれる。だから、その日は、僕がお店を選んで、山本さんとお食事をして、で、できればお酒とか飲んで……ちょっとは僕たちの関係が先に進めたらいいなって、思ってた。
 ……これでも、実は僕なりに一応、調べたりしたのだ。

 冬休みが始まっていた僕は、クリスマス商戦で忙しいからと、店長の矢島さんにガッツリバイトの予定を入れられてしまっていた。金曜日も、あっちの店舗よりも売上が伸びそうだから、と、駅ビルのこっちの店に戻されてしまったし。まぁ、自分から言いださなくても戻してもらえただけ、ラッキーなのかもしれない。

「今日も結構クリスマスグッズの動き、いいよ」

 ちょうど僕がシフトに入るタイミングで入れ替わる、パートの中村さんが声をかけてきた。

「へぇ。パーティグッズとかですか?」

 僕が思いついたのは、その程度。実際、ミニスカサンタの衣装とか、トナカイの角のカチューシャとかが動きが良くて、今までも何度も補充をしていたのだ。


「そうね、あとはツリーに飾る、なんだっけ? オーナメントってやつ? あれも出てるね。気が付くと棚が空になってるから、気を付けて」
「わかりました。ちょっと気を付けてみてみます」

 フロアに出てみると、平日だというのに、週末並みの混雑が始まっていて、僕は慌てて店内を巡回してまわった。中村さんが言ってた通り、店頭の在庫が残り少ない棚や、ぐちゃぐちゃにされたまま整理できていない棚がいくつもあって、補充にみんなが回れていないのが、あからさまにわかる。

「ヤバイな……」

 レジのほうは長蛇の列になってはいるものの、人は足りているようだったので、僕はカゴを持つと倉庫に向かう。
 何度も往復するけれど、なかなかペースが追いつかない。昼間の時間帯は比較的、主婦層や子供たちが多かったのが、夕方になってきて、会社帰りの人らしい姿が増えてきた。
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