100均で始まる恋もある

三森のらん

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8.クリスマスツリー

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 駅ビルの中の本屋で、僕と山本さんは待ち合わせをした。

「お疲れ様」
「お、お疲れ様です」

 あまり広くもない店の中だから、山本さんを見つけるのは簡単だった。だから、僕から声をかけようとしたのに、山本さんも僕に気づいたみたいで、先に声をかけられてしまった。
 昨日の今日で、こうして山本さんと会って、あれは本当に夢じゃなかったんだ、と実感する。

「今日は何を食おうか」

 手にしていた文庫を本棚に返しながら山本さんが、僕に聞いてきた。

「え、あ……えと……」

 こうして会えることだけで、嬉しすぎて、どこに行くとか考える余裕なんかなかった。だから、ちゃんと答えられないことに、焦ってしまう。

「ん~、なんでもいいんだったら、ここの駅ビルの店でもいい?」
「は、はいっ」

 僕たち男二人が食事をするだけだから、どんな店でもいいと思ったけど、駅ビルの中のレストラン街は、時間帯のせいか、意外に混んでいた。クリスマスソングが繰り返される中、幸せそうな家族連れやカップルの姿が目に入る。こうして一緒に歩いている僕たちは、他の人から見たらどう見えるんだろうか。

「混んでるなぁ」
「は、はい……」
「……あ、あの店……」

 一番奥のほうにあったイタリアンのお店を見て、山本さんの表情が少し曇ったように見えた。だけど、他の店に比べると、あそこは待っている人もいないみたいだった。

「あの店にしますか?」
「……そうだね」

 一瞬、困ったような顔をした山本さんだったけれど、そのまま店のほうへと向かっていく。僕は少しだけ不安に思いながらも後をついていった。

「いらっしゃいませ。お二人様ですか?」

 店に入ってすぐ、白いシャツに腰からの黒のロングエプロンをつけた綺麗なお姉さんが声をかけてきた。僕たちは小さく頷くと、窓際の席に案内された。
 あまり大きくはない街とはいえ、駅ビルの上から見える夜景は、思ってたよりも美しい。外の景色に目を向けていると、水の入ったグラスを持ってお姉さんが注文をとりにやってきたから、慌ててメニューを見た。
 値段を見てびっくり。駅ビルに入ってる店だから、そんなに高くないと思ったのに。僕は焦って山本さんを見ると、山本さんは気にせずに何か注文している。

「濱田くんは、決まった?」

 眉間に皺を寄せながら、メニューとにらめっこしてる僕に声をかける山本さん。

「え、えと、ミ、ミートソースのパスタをお願いします……」

 一番安そうなのがそれだったので、それを頼む。今日の僕のお財布では、それ以上のものを食べちゃだめだ、と頭の中の警報が鳴っている。
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