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7.オーナメント
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駅前には、いくつかの飲食店が並んでいるけれど、一人だと滅多に食べにいったことがなかった。僕が行くのは、せいぜい、牛丼屋かドーナツ屋くらい。山本さんが連れてきてくれたのは、同じ並びにあった少し古い感じの中華料理の店だった。
「濱田くんは、何がいい?」
ビニールでカバーされ使い古された赤いメニューを開きながら、山本さんはメニューを見ている。僕はそんな山本さんに見惚れてたから、声をかけられて、慌ててメニューに目を向けた。
「俺、ここの蒸し鶏のネギソースかけが好きなんだよね」
「そ、そうなんですか」
店の中は、僕たち以外のお客さんはあまりいなくて、奥の方でおじさんが一人、テレビを見ながら食事をしていた。
「決まったか?」
メニューから目を離すと、山本さんの視線とぶつかった。
「は、はい」
慌てて再びメニューに目を戻してしまう。
山本さんは、手をあげて店員さんを呼んで、ポンポンと注文していく。僕は野菜たっぷりの塩ラーメンを頼んだ。
店員さんが注文の確認をして離れてしまうと、僕たちの間には、会話がなくなる。テレビの音と、店の奥で調理している音。何を話していいのかわからない僕は、テーブルの上に置かれた水の入ったグラスに手を伸ばした。
「濱田くんさ」
山本さんの声に、思わずビクッとしてしまう。でも、言葉は続かなくて、僕はグラスの水をコクコクと飲み干す。テーブルにグラスを置くと、山本さんがテーブルに置かれていた水の入った透明なポットを持って、新しい水を注いでくれた。
「す、すみません」
「俺、そんなに怖いかなぁ」
山本さんが、困ったような声で呟いた。その声を聞いて、ハッとする。
「そ、そんなこと……」
「……あるから、君は逃げてるんじゃないのか?」
真剣な眼差しの山本さんが、腕を組みながら僕を見ていた。
端からみたら、先生に叱られてる生徒か、僕は上司に叱られてる部下にでも見えるかもしれない。
そして、山本さんに言われてる通り、僕は自分が傷つくと思ってる現実から逃げている。微かにあった希望も、店について落ち着いてみれば、現実はそんなに甘くないって思えてくる。
僕が答えられずに、テーブルを見つめてると、頼んだ料理が出てきた。
「とりあえず、食べて」
テーブルのところに置かれている黒い箸の入った箱から、2膳取り出すと、僕に1膳差し出した。
「あ、ありがとうございます」
目の前に置かれたのは前菜の蒸し鶏。そして瓶ビールとグラスが2つ。
「あ、勝手に頼んじゃったけど」
そう言って、グラスにビールを注いでる。
「ん……」
「す、すみません……」
差し出されたグラスを受け取ると、山本さんは自分のグラスを僕のに軽くぶつけ、カチンと小さく音をたてた。
「乾杯」
「あ、はい」
一気に飲み干す山本さん。一々、その姿に見惚れてる僕。
飲み終えた山本さんの視線に、僕は慌ててグラスに口をつける。普段から、あまりビールなんて飲みつけないから、苦いなって思う。だけど、そんなこと素振りも見せないようにしたつもりだったのに。
「もしかして、あんまりビール飲まない?」
……なんか、簡単にバレてしまった。
「じ、実は……」
「でも、前に酔いつぶれてた時は」
「あ、あの時は、ビールだけじゃなかったんで……」
山本さんは蒸し鶏の皿を僕の方に差し出した。
「い、いただきます」
少しだけ小皿に取り分けると、口に運ぶ。あ、美味しい。思わず、目を見張ってしまう。
「意外に、旨いだろ」
「え、あ……は、はい」
嬉しそうに微笑む山本さんの顔を直視できなかった。
「濱田くんは、何がいい?」
ビニールでカバーされ使い古された赤いメニューを開きながら、山本さんはメニューを見ている。僕はそんな山本さんに見惚れてたから、声をかけられて、慌ててメニューに目を向けた。
「俺、ここの蒸し鶏のネギソースかけが好きなんだよね」
「そ、そうなんですか」
店の中は、僕たち以外のお客さんはあまりいなくて、奥の方でおじさんが一人、テレビを見ながら食事をしていた。
「決まったか?」
メニューから目を離すと、山本さんの視線とぶつかった。
「は、はい」
慌てて再びメニューに目を戻してしまう。
山本さんは、手をあげて店員さんを呼んで、ポンポンと注文していく。僕は野菜たっぷりの塩ラーメンを頼んだ。
店員さんが注文の確認をして離れてしまうと、僕たちの間には、会話がなくなる。テレビの音と、店の奥で調理している音。何を話していいのかわからない僕は、テーブルの上に置かれた水の入ったグラスに手を伸ばした。
「濱田くんさ」
山本さんの声に、思わずビクッとしてしまう。でも、言葉は続かなくて、僕はグラスの水をコクコクと飲み干す。テーブルにグラスを置くと、山本さんがテーブルに置かれていた水の入った透明なポットを持って、新しい水を注いでくれた。
「す、すみません」
「俺、そんなに怖いかなぁ」
山本さんが、困ったような声で呟いた。その声を聞いて、ハッとする。
「そ、そんなこと……」
「……あるから、君は逃げてるんじゃないのか?」
真剣な眼差しの山本さんが、腕を組みながら僕を見ていた。
端からみたら、先生に叱られてる生徒か、僕は上司に叱られてる部下にでも見えるかもしれない。
そして、山本さんに言われてる通り、僕は自分が傷つくと思ってる現実から逃げている。微かにあった希望も、店について落ち着いてみれば、現実はそんなに甘くないって思えてくる。
僕が答えられずに、テーブルを見つめてると、頼んだ料理が出てきた。
「とりあえず、食べて」
テーブルのところに置かれている黒い箸の入った箱から、2膳取り出すと、僕に1膳差し出した。
「あ、ありがとうございます」
目の前に置かれたのは前菜の蒸し鶏。そして瓶ビールとグラスが2つ。
「あ、勝手に頼んじゃったけど」
そう言って、グラスにビールを注いでる。
「ん……」
「す、すみません……」
差し出されたグラスを受け取ると、山本さんは自分のグラスを僕のに軽くぶつけ、カチンと小さく音をたてた。
「乾杯」
「あ、はい」
一気に飲み干す山本さん。一々、その姿に見惚れてる僕。
飲み終えた山本さんの視線に、僕は慌ててグラスに口をつける。普段から、あまりビールなんて飲みつけないから、苦いなって思う。だけど、そんなこと素振りも見せないようにしたつもりだったのに。
「もしかして、あんまりビール飲まない?」
……なんか、簡単にバレてしまった。
「じ、実は……」
「でも、前に酔いつぶれてた時は」
「あ、あの時は、ビールだけじゃなかったんで……」
山本さんは蒸し鶏の皿を僕の方に差し出した。
「い、いただきます」
少しだけ小皿に取り分けると、口に運ぶ。あ、美味しい。思わず、目を見張ってしまう。
「意外に、旨いだろ」
「え、あ……は、はい」
嬉しそうに微笑む山本さんの顔を直視できなかった。
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