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3.エアプランツ
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微かに田舎の懐かしいような匂いがする、と思った。ああ、ばあちゃんの家の匂いか。そこで、僕はゆっくりと目を開けた。
見たことがない天井が見えた。板張りの感じから、どこかの和室、かな、とぼんやり思った。そして、ばあちゃんの家の匂いと思ったのは、微かに残っていた線香の匂いだと気が付いた。
僕は改めて、ここがどこなのかわからなくて、慌てて身体を起こす。お腹の上にタオルケットだけがかけられていた僕は、昨夜と同じ格好で寝ていたらしい。
「イテッ……」
頭にズキンと痛みが走る。額に手をあてて、目を閉じる。夕べは、完全に尾賀さんに、自分のリミッターを思い切り振りきるほどに飲まされた。あの人、みんな自分と同じくらいに飲めるとでも思っているんだろうか。それから……店を出て、海老原さんが途中まで気にかけてくれていたのは覚えてる。
サッと襖が開く音がした。
「あ、起きたかい?」
え?
僕はその声に身体が固まった。
一度しか聞いたことがない山本さんの声がしたような気がしたのだ。
「頭痛いのかい? 二日酔いかな」
淡々とした声が段々と近づいて、布団に寝かされていた僕のそばで止まった。そこに一人の男の人が膝をついて座ったのだ。
僕は恐る恐る、男の人のほうに顔を向けると、その声の主……山本さんが、少しばかり心配そうな顔で僕を見つめていた。
「……え?」
――なんで? なんで? なんで?
この現状にこの言葉が頭の中を渦巻いている。
「起きられるかい?」
「あ、はい……」
「じゃぁ、起きてきなさい。朝飯用意してあるから」
無表情のまま立ち上がる山本さんが部屋から出て行った。その背中を呆然と見送るしかない僕。というか、頭も痛いし、状況が全然把握できなくて、なかなか布団から立ち上がれない。
しばらくして、ここでのんびりしてる場合ではない、ということに思い至って、急いで腰をあげようとした時、僕の視野に入ってきたのは、小さな仏壇だった。
ばあちゃんの家の匂い、と思ったのは、ここで焚かれていただろう仏壇に供えられた線香の匂いなのだとわかった。
そして、そこで目に入ったのは小さな写真立てに綺麗な女の人と小さな女の子が写っていた。
見たことがない天井が見えた。板張りの感じから、どこかの和室、かな、とぼんやり思った。そして、ばあちゃんの家の匂いと思ったのは、微かに残っていた線香の匂いだと気が付いた。
僕は改めて、ここがどこなのかわからなくて、慌てて身体を起こす。お腹の上にタオルケットだけがかけられていた僕は、昨夜と同じ格好で寝ていたらしい。
「イテッ……」
頭にズキンと痛みが走る。額に手をあてて、目を閉じる。夕べは、完全に尾賀さんに、自分のリミッターを思い切り振りきるほどに飲まされた。あの人、みんな自分と同じくらいに飲めるとでも思っているんだろうか。それから……店を出て、海老原さんが途中まで気にかけてくれていたのは覚えてる。
サッと襖が開く音がした。
「あ、起きたかい?」
え?
僕はその声に身体が固まった。
一度しか聞いたことがない山本さんの声がしたような気がしたのだ。
「頭痛いのかい? 二日酔いかな」
淡々とした声が段々と近づいて、布団に寝かされていた僕のそばで止まった。そこに一人の男の人が膝をついて座ったのだ。
僕は恐る恐る、男の人のほうに顔を向けると、その声の主……山本さんが、少しばかり心配そうな顔で僕を見つめていた。
「……え?」
――なんで? なんで? なんで?
この現状にこの言葉が頭の中を渦巻いている。
「起きられるかい?」
「あ、はい……」
「じゃぁ、起きてきなさい。朝飯用意してあるから」
無表情のまま立ち上がる山本さんが部屋から出て行った。その背中を呆然と見送るしかない僕。というか、頭も痛いし、状況が全然把握できなくて、なかなか布団から立ち上がれない。
しばらくして、ここでのんびりしてる場合ではない、ということに思い至って、急いで腰をあげようとした時、僕の視野に入ってきたのは、小さな仏壇だった。
ばあちゃんの家の匂い、と思ったのは、ここで焚かれていただろう仏壇に供えられた線香の匂いなのだとわかった。
そして、そこで目に入ったのは小さな写真立てに綺麗な女の人と小さな女の子が写っていた。
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