100均で始まる恋もある

三森のらん

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3.エアプランツ

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 一人暮らしの僕の部屋には、あまり多くの物が置かれていない。強いて言えば、本棚の本だけは一杯になってて、床にまで積まれているものもあるくらい。家に一人でいる時は、本を読んでるくらいだし、その時間もけして多くはない。だいたいが大学か、バイト先くらいだ。
 そんな僕の部屋にある唯一のグリーンがエアプランツだ。
 サボテンすら枯らしてしまう僕が、唯一、枯らさずに済んでいる。

「誕生日プレゼントね」

 なんて、バイト先の人たちから貰ったのは、3種類のエアプランツと、それを置くための白くて少し深さのあるい長い皿と、白い石。

「こんな風に配置するように」

 そう指示してきたのは、このセットを考えたという主任の尾賀さん。得意気にスマホに写るエアプランツの画像を見せられた。確かに、その画像を見る限り、オシャレに見える。しかし。

「僕にできると思ってるんですか?」

 少しばかり眉をひそめながら、尾賀さんに言うけれど、そんな言葉は完全に無視された。

「ちゃんと設置したら、その画像、グループLINEで流しなさいよ」

 有無を言わさず、店内で売っているラッピングバックに入ったプレゼントを押し付けられたのを、今でも覚えている。
 全部、店のもので賄われたというのは、微妙な気分ではあったけれど、けして友達が多いとは言えない僕にとってみれば、プレゼントをもらえるだけでもありがたかった。

 そんな僕は、今日も家を出る時に、窓際に飾られたエアプランツに声をかける。

「行ってくるな」

 返事をしてくれるわけでもない。それでも自然と言葉が出てしまう。
 僕は静かにドアを閉めた。

 今年は空梅雨だったせいか、いつの間にかに梅雨明けしていた。ジメジメした時期が短かったのはよかったけれど、暑いのはあまり特ではない僕には、早くも夏が始まったのかと思うと、少しばかりげんなりしてしまう。
 店内はエアコンが効いてて涼しいようにみえて、実はレジの背面がライトアップされているせいで、熱がこもっていたりする。実はこれ、季節に関係なく暑いから、僕はいつもポロシャツを着ている。一応、年中、扇風機が置いてあるものの、僕がよく入るレジのほうにはあまり風がこない。

「濱田くん、汗かかないよね」

 羨ましそうに言う中村さんは、扇風機の風をガッツリ背中に浴びている。その割に、額にじっとり汗が滲んでる。
 確かに、僕はあまり汗をかかない。
 それがいいのか、悪いのか、わからないけれど、そう羨ましそうに言われると、きっといいことなんだろう、と勝手に解釈してしまう。
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