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8.クリスマスツリー
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家に着くと、俺はさっそく真っ暗なリビングへと向かい、クリスマスツリーの電飾の電気をつける。部屋の中が青い光で満たされる。
「テルくん」
「あ、はいっ」
いつも通りに仏壇に線香をあげてたのだろう。俺の呼ぶ声に慌てたように返事を返してくる。パタパタと足音をたててリビングのドアから顔を覗かせる。
「えっ。すごいっ」
驚いた顔のテルくんの顔が青白く光る。ツリーの傍に立っていた俺の近くに寄ってくると、優しい微笑みを浮かべる。
「……久しぶりに、出してみたんだよ」
「素敵ですね。これじゃ、娘さんが欲しがるわけだ」
テルくんの言葉に、俺も嬉しくなる。
そうだ。初めてライトを点けた時、静流も今のテルくんのように、驚いた顔をしたと思ったら、すぐに嬉しそうな顔でツリーを見つめ続けていたっけ。
「これを見たら、色々思い出して、少し辛いかもしれない、と、思ったんだけど。なぜだか、テルくんの嬉しそうな顔のほうが思い浮かんでね」
隣に立つテルくんの腰に腕をまわす。少し細いそれが、心もとない。抱きよせたい、と痛烈に思う。
「今年も、いつも通り、クリスマスらしいことをせずに年末を迎えるんだろうな、と思ってた」
そうだ。テルくんと出会わなければ、また一人、静かに時間が過ぎるのを耐えるだけだった。俺は隣にいるテルくんを背中から強く抱きしめた。彼の華奢な肩に額をのせる。彼から伝わる体温に、俺の孤独に凍った思いが溶けていく。
「一人で過ごすクリスマスの夜は、嫌だった……だけど、だからといって、パーティだとかに行く気にもならなかった……だから、この日は、いつも一人で酒を飲んでさっさと寝てたんだ……情けないことに」
「崇さん……?」
「今年は、テルくんがいてくれる」
「えっ」
細い首筋、少し赤らんだ頬、同じように色づいた耳たぶ。その愛らしさに唇をよせ、俺は優しく食んだ。
「あっ」
テルくんの甘い吐息に、俺の欲望が理性を抑え込む。テルくんのシャツをめくり、滑らかな肌触りを味わう。
「ちょっと、崇っさっ、んっ」
「昨日、シなかったから」
「えっ」
「今すぐに、君が欲しいんだ」
自分でも情けないけれど、夕飯なんかよりも、テルくんのほうが欲しい。
俺の腕の中をくるりと周り、目の前にテルくんの顔がくる。その表情はいつものどこか照れたような幼い顔ではなくて、もっとずっと色気に満ちた表情で、その大きな黒い瞳は欲情に濡れた眼差しで俺を見つめ返している。
テルくんの唇が俺の唇に重なる。小さな赤い舌が、俺の唇を確かめるように舐めては、俺を見つめる。今まで、こんな風に求めてきたことなどなかった。その喜びに、俺の下半身は容易に応えようと勃ちあがる。
テルくんが俺の下唇を優しく食み、プルンと離れ、俺の腕の中でグッと抱きしめてきた。この幸せを味わっていたいと思った矢先、静寂を切り裂くように家の電話が鳴り響く。俺が在宅しているときに滅多に鳴らない電話に、一瞬、ドキリとする。それはテルくんも同じのようで、ビクッと俺の身体を抱きしめた。
「……大丈夫。留守番電話になるから」
留守電に変わるまでの数コールの間に、俺はテルくんのシャツを脱がしにかかる。テルくんも夢中で俺の唇に優しい口づけを繰り返す。
そして甲高い機械音がピーっと鳴った。
『あー、遠藤でーす。小島がうるさいから電話だけしてまーす』
『うるさいってなんですかっ』
『とりあえず、パーティやってますけど、無理してこなくていいんでー』
『ちょ、ちょっと』
『お幸せにー』
『えっ! 何、それっ!どういうっ』
騒ぎ立てる小島に変わることなく、すぐに電話は切れてしまった。
グッジョブ、遠藤。
テルくんに意地悪をしてたことを帳消しには出来ないが、それでも俺は思わずニヤリと笑う。テルくんも俺と目を合わせると、嬉しそうに微笑んだ。
「パーティ、行かないから、このまま続けてもいいかな」
「……はい」
テルくんが求めるように、優しく唇を重ねる。俺はテルくんを抱きしめたまま、ソファへと身体を押し倒した。
「テルくん」
「あ、はいっ」
いつも通りに仏壇に線香をあげてたのだろう。俺の呼ぶ声に慌てたように返事を返してくる。パタパタと足音をたててリビングのドアから顔を覗かせる。
「えっ。すごいっ」
驚いた顔のテルくんの顔が青白く光る。ツリーの傍に立っていた俺の近くに寄ってくると、優しい微笑みを浮かべる。
「……久しぶりに、出してみたんだよ」
「素敵ですね。これじゃ、娘さんが欲しがるわけだ」
テルくんの言葉に、俺も嬉しくなる。
そうだ。初めてライトを点けた時、静流も今のテルくんのように、驚いた顔をしたと思ったら、すぐに嬉しそうな顔でツリーを見つめ続けていたっけ。
「これを見たら、色々思い出して、少し辛いかもしれない、と、思ったんだけど。なぜだか、テルくんの嬉しそうな顔のほうが思い浮かんでね」
隣に立つテルくんの腰に腕をまわす。少し細いそれが、心もとない。抱きよせたい、と痛烈に思う。
「今年も、いつも通り、クリスマスらしいことをせずに年末を迎えるんだろうな、と思ってた」
そうだ。テルくんと出会わなければ、また一人、静かに時間が過ぎるのを耐えるだけだった。俺は隣にいるテルくんを背中から強く抱きしめた。彼の華奢な肩に額をのせる。彼から伝わる体温に、俺の孤独に凍った思いが溶けていく。
「一人で過ごすクリスマスの夜は、嫌だった……だけど、だからといって、パーティだとかに行く気にもならなかった……だから、この日は、いつも一人で酒を飲んでさっさと寝てたんだ……情けないことに」
「崇さん……?」
「今年は、テルくんがいてくれる」
「えっ」
細い首筋、少し赤らんだ頬、同じように色づいた耳たぶ。その愛らしさに唇をよせ、俺は優しく食んだ。
「あっ」
テルくんの甘い吐息に、俺の欲望が理性を抑え込む。テルくんのシャツをめくり、滑らかな肌触りを味わう。
「ちょっと、崇っさっ、んっ」
「昨日、シなかったから」
「えっ」
「今すぐに、君が欲しいんだ」
自分でも情けないけれど、夕飯なんかよりも、テルくんのほうが欲しい。
俺の腕の中をくるりと周り、目の前にテルくんの顔がくる。その表情はいつものどこか照れたような幼い顔ではなくて、もっとずっと色気に満ちた表情で、その大きな黒い瞳は欲情に濡れた眼差しで俺を見つめ返している。
テルくんの唇が俺の唇に重なる。小さな赤い舌が、俺の唇を確かめるように舐めては、俺を見つめる。今まで、こんな風に求めてきたことなどなかった。その喜びに、俺の下半身は容易に応えようと勃ちあがる。
テルくんが俺の下唇を優しく食み、プルンと離れ、俺の腕の中でグッと抱きしめてきた。この幸せを味わっていたいと思った矢先、静寂を切り裂くように家の電話が鳴り響く。俺が在宅しているときに滅多に鳴らない電話に、一瞬、ドキリとする。それはテルくんも同じのようで、ビクッと俺の身体を抱きしめた。
「……大丈夫。留守番電話になるから」
留守電に変わるまでの数コールの間に、俺はテルくんのシャツを脱がしにかかる。テルくんも夢中で俺の唇に優しい口づけを繰り返す。
そして甲高い機械音がピーっと鳴った。
『あー、遠藤でーす。小島がうるさいから電話だけしてまーす』
『うるさいってなんですかっ』
『とりあえず、パーティやってますけど、無理してこなくていいんでー』
『ちょ、ちょっと』
『お幸せにー』
『えっ! 何、それっ!どういうっ』
騒ぎ立てる小島に変わることなく、すぐに電話は切れてしまった。
グッジョブ、遠藤。
テルくんに意地悪をしてたことを帳消しには出来ないが、それでも俺は思わずニヤリと笑う。テルくんも俺と目を合わせると、嬉しそうに微笑んだ。
「パーティ、行かないから、このまま続けてもいいかな」
「……はい」
テルくんが求めるように、優しく唇を重ねる。俺はテルくんを抱きしめたまま、ソファへと身体を押し倒した。
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