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8.クリスマスツリー
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正直、遠藤を連れて入ってしまったことを非常に後悔している。なぜなら、目の前にいる濱田くんの表情を見たら、失敗だったってことくらい、誰だってわかるだろう。
相手が濱田くんだとわかったのだから、遠藤はさっさと戻るなり、帰ればいいのに、さっきの店でもかなり食べたはずなのだが、なぜか料理まで注文しだした。
他愛無い会話の中、遠藤の視線が濱田くんに向けられているのが、俺でもわかった。その視線はけして優しいものではなく、言葉とは裏腹に冷ややかで鋭いものだった。遠藤がこんなにも拒否反応をすることが不思議でならず、内心、俺の中ではモヤモヤした感情が渦巻いていた。
濱田くんはけっこう早めに来てたせいか、すでにラーメンの丼はからになっていた。それに気が付いた遠藤が「あれ、もう食べ終わってるの? だったら、さっさと帰ったら?」などという暴言を吐いた。
あまり怒らない俺でも、遠藤のこの言葉には苛立ちを隠せなかった。
「遠藤、いい加減にしろ」
俺の言葉に、遠藤も濱田くんも顔を強張らせた。濱田くんを怖がらせたいわけではなかったんだが、つい、厳しい声になってしまった。
「ハイ、ビールト、バンバンジーサラダネー」
そんな俺たちの様子など気にもせず、店のスタッフが料理を運んできた。おかげで、その場の雰囲気が少し緩む。
ここの料理は、一品一品がかなり多めに盛られてくる。目の前に置かれている棒棒鶏サラダも同様で、すでに1軒寄ってきている俺が一人で食べるには、少しばかり量が多かった。濱田くんにも差し出すと、恥ずかしそうに箸をつけた。チラッと隣の遠藤を見ると、納得がいかない、という顔をしている。
「遠藤も、食うか」
声をかけると無言で頷き、箸を伸ばした。黙々と食べていると、今度は遠藤が頼んだ料理が目の前に置かれていく。
「……おい、マジでこれ全部食う気か?」
「か、課長も食べてくださいよぉ」
目の前のボリュームに、さすがの遠藤も顔を引きつらせている。
もともと食の細そうな濱田くんには無理な話で、俺だってすでに腹はいっぱいだ。
「俺は、もう腹いっぱいだから」
「そ、そんな」
「じゃ、俺たちは先に帰るな。あ、ここの金は俺が払っとくから、ゆっくり食べていけ」
「か、課長っ」
俺はにっこりと笑って席を立ち上がる。もう、後をついてくるなよ、という思いを込めて遠藤を見る。その視線に、さすがの遠藤も顔を強張らせる。
「ほら、濱田くん、行こうか」
「あ、え、は、はい……」
テーブルの上の伝票を手にして出口へと向かう。
店の外に出て夜空を見上げた。吐く息が白く立ち上がる。濱田くんがすぐについてくるかと思ったが、なかなか出てこなかった。少し心配してドアを見つめていると、やっと濱田くんが出てきた。何があったのか、困惑とでもいうのか、少し不思議そうな顔をしながら出てきた。その可愛らしい表情に、俺は思わず笑みが零れた。
相手が濱田くんだとわかったのだから、遠藤はさっさと戻るなり、帰ればいいのに、さっきの店でもかなり食べたはずなのだが、なぜか料理まで注文しだした。
他愛無い会話の中、遠藤の視線が濱田くんに向けられているのが、俺でもわかった。その視線はけして優しいものではなく、言葉とは裏腹に冷ややかで鋭いものだった。遠藤がこんなにも拒否反応をすることが不思議でならず、内心、俺の中ではモヤモヤした感情が渦巻いていた。
濱田くんはけっこう早めに来てたせいか、すでにラーメンの丼はからになっていた。それに気が付いた遠藤が「あれ、もう食べ終わってるの? だったら、さっさと帰ったら?」などという暴言を吐いた。
あまり怒らない俺でも、遠藤のこの言葉には苛立ちを隠せなかった。
「遠藤、いい加減にしろ」
俺の言葉に、遠藤も濱田くんも顔を強張らせた。濱田くんを怖がらせたいわけではなかったんだが、つい、厳しい声になってしまった。
「ハイ、ビールト、バンバンジーサラダネー」
そんな俺たちの様子など気にもせず、店のスタッフが料理を運んできた。おかげで、その場の雰囲気が少し緩む。
ここの料理は、一品一品がかなり多めに盛られてくる。目の前に置かれている棒棒鶏サラダも同様で、すでに1軒寄ってきている俺が一人で食べるには、少しばかり量が多かった。濱田くんにも差し出すと、恥ずかしそうに箸をつけた。チラッと隣の遠藤を見ると、納得がいかない、という顔をしている。
「遠藤も、食うか」
声をかけると無言で頷き、箸を伸ばした。黙々と食べていると、今度は遠藤が頼んだ料理が目の前に置かれていく。
「……おい、マジでこれ全部食う気か?」
「か、課長も食べてくださいよぉ」
目の前のボリュームに、さすがの遠藤も顔を引きつらせている。
もともと食の細そうな濱田くんには無理な話で、俺だってすでに腹はいっぱいだ。
「俺は、もう腹いっぱいだから」
「そ、そんな」
「じゃ、俺たちは先に帰るな。あ、ここの金は俺が払っとくから、ゆっくり食べていけ」
「か、課長っ」
俺はにっこりと笑って席を立ち上がる。もう、後をついてくるなよ、という思いを込めて遠藤を見る。その視線に、さすがの遠藤も顔を強張らせる。
「ほら、濱田くん、行こうか」
「あ、え、は、はい……」
テーブルの上の伝票を手にして出口へと向かう。
店の外に出て夜空を見上げた。吐く息が白く立ち上がる。濱田くんがすぐについてくるかと思ったが、なかなか出てこなかった。少し心配してドアを見つめていると、やっと濱田くんが出てきた。何があったのか、困惑とでもいうのか、少し不思議そうな顔をしながら出てきた。その可愛らしい表情に、俺は思わず笑みが零れた。
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