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6.ジャック・オー・ランタン

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「なんだ、お前んとこも、ここで飲んでたのか」

 小笠原のほうに、そう声をかけると、空になっているグラスを片手であげて「おお」と返事が返ってきた。あいつも八巻さん絡みで苦労してるのか、どこか諦めたような顔でため息をついている。
 俺はチラリと遠藤のほうを見ると、ヘロヘロになっている八巻さんが、完全に遠藤をホールドしていた。

「おい、葛木、なんで、ここまで飲ませたんだよ」

 渋い顔をした遠藤は、葛木に文句を言うが、葛木のほうも同じくらい渋い顔をして答える。

「ここまでも何も、ビール、コップ一杯です。俺たち、ついさっき、ここに着いたばっかなんですよ。それに、今日はずれにずれ込んだ歓迎会だったのに、これですから」

 彼女がここまでお酒に弱いとは知りませんでした、と、口を尖らせながら文句を言う。そう言われたら遠藤のほうも、文句のいいようもなく、抱き着いている八巻さんを剥がしにかかった。

「おら、いい加減にしろ」
「いやぁぁぁぁ」
「ちょ、八巻さん、俺たちはこっちなんで」
「葛木さぁぁぁぁん」
「うおぉっ」

 遠藤に強引に放されたところ、葛木が八巻さんの両脇を抱えて自分たちの部屋へと、連れ戻そうとした時、今度は葛木のほうに抱き着いた。それを見て、ホッとした遠藤は、後先考えずに勢いよく襖を閉じた。最後に断末魔のような叫び声が聞こえたような気がしたが、気のせいだろうか。

「お騒がせしました」

 疲れ切った顔でそう言うと、遠藤はビール瓶に手を伸ばした。それに気づいた小島が慌てて「私が」といって瓶を奪い取り、空になっていたグラスに注ぐ。いつになく気を使ってる様子に、小島も少しは大人になったということだろうか。
 隣の部屋からは八巻さんの嘆きが聞こえてくるし、見るからに疲れ果てている遠藤の姿に、さすがの小島もおとなしくなった。
 結局、隣の(特に八巻さんの)騒々しさにいたたまれなくなった俺たちは、テーブルにあったものを平らげると、そそくさとその店を出た。小島たちは遠藤を励ますとか言って、別の店で飲みなおしに駅とは反対方向へと向かっていき、俺と丹野さんの二人だけが駅へと向かった。

「遠藤くん、なんか大変そうですねぇ」
「まぁ、ねぇ。こればっかりは本人たち次第だからなぁ」

 俺たちは顔を見合わせながら、互いに苦笑いを浮かべる。丹野さんとは駅の改札の前で別れると、俺はため息をつき、腕時計を見る。まだ百均の店はやってるか、と思ったら、自然と店の方へと足が向いていた。
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