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4.花火

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 けして仲が悪いわけではないだろうから、半分以上が冗談だろう。だから、ついつい、俺の方もからかい気味に答えてしまう。

「葛木、いいのか、そんなこと言って。一応、同期だろ」
「いいっす、いいっす。山本課長も大変ですよね。わかります」

 うんうん、と頷く葛木は、もう、少し酔っているようで、顔が赤くなっている。

「最近、山本課長に何かと絡んでるじゃないですか。遠藤さんが、なんとか死守してるみたいですけど。そのたびに俺が呼ばれて面倒くさいんですけど」

 葛木が言う通り、確かに、最近、小島たちに飲みに誘われる機会が増えた。俺自身、飲みに行くよりも、家で飲む方が好きだから、断っている。でも、その誘いが来る前に遠藤が防いでくれていたことがあったとは、知らなかった。
 小笠原たちと話をしていると、俺に気が付いたのか、小島たちが俺の名前を呼びだした。

「課長~! こっちです~っ!」

 小島が立ち上がると、子供のように手を振っている。それに俺は片手をあげて返事だけをする。中には遠藤の姿も見えたが、ヤツも苦笑いしながら俺の方を見ている。

「人気者は大変だねぇ」

 ニヤニヤと笑いながら、小笠原がイカの燻製をつまんでいる。それにならって俺も手を伸ばそうとしたが、何やら小島がこっちにやってこようとしているのが目の端に入った。遠藤が何か声をかけていたようだが、小島はそれに気づかないのか、無視してこっちに向かっているようだ。捕まったら面倒なことになりそうだ。

「俺、そろそろ逃げるな」
「あはは、気を付けて帰れよ」
「お疲れ様ですっ!」
「ああ、ご馳走様」

 空になった缶を手にしたまま、俺はドアを開けてビルの中へと逃げ込んだ。


 会社の裏口にいた警備員に小さく挨拶をしてドアを開けた。この辺は、あまり高くはないものの、いくつかのビルに囲まれているから、花火の様子を垣間見ることが出来ない。そのせいか、会社周辺を歩いている人はまばらだった。俺は途中にある小さなコンビニで空き缶を捨てると、駅に向かう。
 駅前の大きな通りに出た途端、人が一気に増えた。まだドンドンと花火は上がっているせいか、その会場に向かうのか、見やすい場所に向かうのか、人の流れが止まらない。中には浴衣姿の男女もいたり、見ている俺のほうも、すっかりお祭り気分だ。

 俺はその中を逆行するように歩いていく。
 屋上で飲んだ発泡酒じゃ、物足りない気がした。家でも一杯やるつもりで、いつものように百均でつまみを買って帰ろうと、腕時計を見る。この時間なら、まだ、店はやっているだろう。
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