ぬるいミルクに、熱いハチミツ

三森のらん

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 どうやってショッピングモールまで無事に到着したのかわからないが、今の俺は、なんと、ちゃんと警備員の制服を着ている。自分でもびっくりだ。
 防災センターは、すでに夜勤のメンバーが揃っている。

「上原くん、大丈夫?」

 伝達事項を聞き終えて、ショッピングモールの出入り口のドアへと向かって俺の隣を歩くのは木村さんで、すっかり夜勤チームに馴染んでる。

「え? あ、ああ。大丈夫ですよ」

 そう言われて、笑顔を返す。このままではいかん、と、俺は顔をパシリと両手で叩いて気合を入れる。

「お、気合入ってんな」
「すんません」

 苦笑いして返事をすると、俺と木村さんはドアを開けると二手に分かれる。
 いつものように、チェックしながら歩いているつもりなのだけれど、時々、頭の中にホワイトさんの顔が浮かぶ。

 本当に母さんと結婚するんだろうか。
 というか、どこで二人は知り合ったんだろう。
 母さんとホワイトさんじゃ、年齢差が結構ある気がするんだけど、ホワイトさんは年上の女性が好みだったのだろうか。
 そりゃ、化粧すれば、少しは若くは見えるかもしれないけど、俺のような、今年、ニ十三にもなる子供がいるんだよ? その相手に求婚するとかって、よっぽどの気合がなけりゃ、無理だろう。
 母さんがホワイトさんのことを話している時の顔は、なんだか幸せそうで、俺なんかが反対しちゃいけない気がした。

「仕方ねぇか……母さんのためだもの」

 そう声に出したけれど、なぜか胸の奥がツキンと痛む。その痛みに、頭を傾げながら、いつものように巡回していくと、いつものようにカフェ・ボニータに着いてしまう。

 今日も電気が消えているかな、と見ていると、なんとまた、厨房スペースに電気が点いている。まだ、誰かが残ってたんだろうか。俺は周囲をキョロキョロ見回すけれど、誰もいないみたい。
 俺はチェック用のクリップボードを手に、チェック項目に目を向けながら、厨房スペースの方へと向かう。

「失礼しまーす」

 誰もいないと思っても、ついつい、声を出して挨拶をする。ドアを開けてみれば、案の定、誰もいない。
「駄目ですよぉ。ちゃんと電気を消さないと~」

 そう言いながら、電気のスイッチに手を伸ばした時。

「あ、すみませんっ」

 その聞き覚えのある声に、ドキリとした。まるで油を差し忘れた機械みたいに、音が出るなら、まさに『ギギギッ』ってしそうな感じで、振り向いた俺。

「上原くん?」
「ホ、ホワイトさん」

 まさか、まさかのホワイトさんだった。
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