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4杯目
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カウンターの中では、ホワイトさんがスタッフの誰かに指示をしている。いつになく厳しい感じなのには、ちょっとだけ驚いた。ショッピングモールの店では、穏やかそうな顔でいるのが常だからだ。だけど、そんな凛々しい感じのホワイトさんもカッコいいな、と思った俺は目が離せなくなっていた。
「上原くん、知り合いでもいたの?」
しばらくカウンターの方を見つめ続けてた俺に、訝し気に『ナミちゃん』が声をかけてきた。俺がその声に反応しないでいると、少しして『ナミちゃん』の、ハッ、と息をのむ音が聞こえた。俺はその反応に、すぐに振り返った。だって、それは彼女がホワイトさんの存在に気付いたからに違いないから。
そこには案の定、目を爛々と輝かせてカウンターの方を見ている『ナミちゃん』。明らかに、ホワイトさんを見つめてるのが俺でもわかる。当然、その様子に気付いた隣の席にいた男二人は、一気に不機嫌そうになった。
彼女のターゲットロックオン、みたいな様子を見れば、彼らが不機嫌になるのもわかる。完全に自分たちの存在が完全に忘れられている、と感じるだろう。男たちの舌打ちでもしそうな雰囲気に、俺だって居心地悪く感じる。
「ねぇ、知り合いなら紹介してよぉ」
ホワイトさんを見つめたままの彼女の強請るような声。俺的には大した知り合いでもない『ナミちゃん』に、どうしてホワイトさんを紹介しなきゃいけないんだ、と苛立たしく思う。俺は、残ってたホットミルクを一気に飲み干した。
「ねぇ、上原くってばっ」
少し声高になった彼女の言葉を無視して、ムッとしながら食べ終えたトレーを手にして立ち上がった時。
「上原くん?」
少し驚いたようなホワイトさんの声が聞こえた。俺は、ああ、とため息をつきそうになる。
俺が一人の時だったら、声をかけられたことを素直に嬉しいと感じただろう。それなのに、今、目の前にいるこいつらとともにいることが残念でならない。
トレーを持って振り向くと、ホワイトさんはカウンターから出てきていた。颯爽と歩み寄る姿は、まるでモデルみたいだ。俺の背後まで来るのは、あっという間。さっきまでの厳しい雰囲気とは違い、俺と目があうと、嬉しそうに微笑むホワイトさん。久しぶりに見るせいか、反則的にカッコいいのって、ズルいなぁ。男の俺でも、なんだか顔が熱くなる。
「こ、こんにちは」
俺はなんとか笑顔で挨拶ができたと思う。
「こんにちは。お友達?」
少し声を抑えながら聞いてくるホワイトさんが、チラリと『ナミちゃん』たちに目を向ける。その言葉に俺は口元を歪めそうになる。正直、「違います」と喉まで出かかった。
「そうなんです。大学の友人でぇ」
彼女の声が俺の背後から被せるように聞こえてくる。俺は堪らず、大きくため息をついた。
「上原くん、知り合いでもいたの?」
しばらくカウンターの方を見つめ続けてた俺に、訝し気に『ナミちゃん』が声をかけてきた。俺がその声に反応しないでいると、少しして『ナミちゃん』の、ハッ、と息をのむ音が聞こえた。俺はその反応に、すぐに振り返った。だって、それは彼女がホワイトさんの存在に気付いたからに違いないから。
そこには案の定、目を爛々と輝かせてカウンターの方を見ている『ナミちゃん』。明らかに、ホワイトさんを見つめてるのが俺でもわかる。当然、その様子に気付いた隣の席にいた男二人は、一気に不機嫌そうになった。
彼女のターゲットロックオン、みたいな様子を見れば、彼らが不機嫌になるのもわかる。完全に自分たちの存在が完全に忘れられている、と感じるだろう。男たちの舌打ちでもしそうな雰囲気に、俺だって居心地悪く感じる。
「ねぇ、知り合いなら紹介してよぉ」
ホワイトさんを見つめたままの彼女の強請るような声。俺的には大した知り合いでもない『ナミちゃん』に、どうしてホワイトさんを紹介しなきゃいけないんだ、と苛立たしく思う。俺は、残ってたホットミルクを一気に飲み干した。
「ねぇ、上原くってばっ」
少し声高になった彼女の言葉を無視して、ムッとしながら食べ終えたトレーを手にして立ち上がった時。
「上原くん?」
少し驚いたようなホワイトさんの声が聞こえた。俺は、ああ、とため息をつきそうになる。
俺が一人の時だったら、声をかけられたことを素直に嬉しいと感じただろう。それなのに、今、目の前にいるこいつらとともにいることが残念でならない。
トレーを持って振り向くと、ホワイトさんはカウンターから出てきていた。颯爽と歩み寄る姿は、まるでモデルみたいだ。俺の背後まで来るのは、あっという間。さっきまでの厳しい雰囲気とは違い、俺と目があうと、嬉しそうに微笑むホワイトさん。久しぶりに見るせいか、反則的にカッコいいのって、ズルいなぁ。男の俺でも、なんだか顔が熱くなる。
「こ、こんにちは」
俺はなんとか笑顔で挨拶ができたと思う。
「こんにちは。お友達?」
少し声を抑えながら聞いてくるホワイトさんが、チラリと『ナミちゃん』たちに目を向ける。その言葉に俺は口元を歪めそうになる。正直、「違います」と喉まで出かかった。
「そうなんです。大学の友人でぇ」
彼女の声が俺の背後から被せるように聞こえてくる。俺は堪らず、大きくため息をついた。
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