5 / 58
2杯目
05
しおりを挟む
いつもは夜勤の俺が、急遽、昼の勤務を三日間だけ頼まれた。
昼勤務の先輩の1人がインフルエンザにかかってしまったというのだ。夜勤のほうは、シフトに余裕があったのと、バイトの俺のほうが動きやすい、ということもあって、1日休みをもらった次の日の朝から行くことになった。
夜勤は館内の巡回が主だけど、昼間は従業員出入口の受付作業もあったり、館内でのお客さんの対応もあるらしい。バイトを始めて半年で、初めてのことに挑戦だ。早朝から自転車をこいできたのと、初めてのことで少し緊張もあるせいか、眠気も吹っ飛んでる。
「おはようございますっ」
いつもなら帰る時間に、俺は受付のところに立って、入館証を見せて入ってくる人たちに挨拶をする。こんなにたくさんの人が入っていくんだ、などと、帰り際には呑気に見てたけど、実際、その場に立ったら、そんな余裕などない。
「あのぉ、初めてなんですけどぉ」
「あ、はい。そこに名前と、行く場所、あと連絡先書いてください」
入館証を渡したり、質問に答えたりしている間に、時間はどんどん過ぎていく。入館のピークが過ぎ、ポツポツとしか人が入って来なくなった頃、巡回の時間がやってくる。
「上原くんは、初めてだったよね」
昼間の警備のリーダーの手塚さんが、クリップボードに挟んだ書類を手に、パイプ椅子に座るように促した。ここの警備の人の共通点なのかもしれないが、手塚さんもけっこう大柄な人で、ちょっといかつい感じがするけれど、実際話をしてみると、ずいぶんと物腰の柔らかいおじさんだった。
手塚さんからは、巡回の経路や、チェック項目、気になったところがあったら、必ずその店のスタッフに確認してサインをもらうこと、など、色々なことを教えてもらった。
「まず1回目の巡回では、木村くんと一緒に、この書類に書いてある項目のをチェックしてきてください。2回目以降は、書類なしでの巡回になります。その時は上原くん一人で回ってもらいます」
「は、はい」
「木村くん、いいかな」
「あ、はーい」
のほほんとした返事をした木村さんは、夜勤仲間の西山さんの大学の柔道部の後輩だったらしい。昼間の代打の話をしたら、木村さんのことを教えてくれたのだ。西山さんに比べると、木村さんは、本当に柔道部?と思うようなスラリとした爽やか系イケメン。警備員よりも、むしろショップの店員さんとかのほうが似合いそうだ。
「平日だし、そんなに混んでもいないだろうけど、気を付けていってくるように」
「はいっ」
「はーい」
俺たちは防災センターから出て、ショッピングモール内へと向かった。
昼勤務の先輩の1人がインフルエンザにかかってしまったというのだ。夜勤のほうは、シフトに余裕があったのと、バイトの俺のほうが動きやすい、ということもあって、1日休みをもらった次の日の朝から行くことになった。
夜勤は館内の巡回が主だけど、昼間は従業員出入口の受付作業もあったり、館内でのお客さんの対応もあるらしい。バイトを始めて半年で、初めてのことに挑戦だ。早朝から自転車をこいできたのと、初めてのことで少し緊張もあるせいか、眠気も吹っ飛んでる。
「おはようございますっ」
いつもなら帰る時間に、俺は受付のところに立って、入館証を見せて入ってくる人たちに挨拶をする。こんなにたくさんの人が入っていくんだ、などと、帰り際には呑気に見てたけど、実際、その場に立ったら、そんな余裕などない。
「あのぉ、初めてなんですけどぉ」
「あ、はい。そこに名前と、行く場所、あと連絡先書いてください」
入館証を渡したり、質問に答えたりしている間に、時間はどんどん過ぎていく。入館のピークが過ぎ、ポツポツとしか人が入って来なくなった頃、巡回の時間がやってくる。
「上原くんは、初めてだったよね」
昼間の警備のリーダーの手塚さんが、クリップボードに挟んだ書類を手に、パイプ椅子に座るように促した。ここの警備の人の共通点なのかもしれないが、手塚さんもけっこう大柄な人で、ちょっといかつい感じがするけれど、実際話をしてみると、ずいぶんと物腰の柔らかいおじさんだった。
手塚さんからは、巡回の経路や、チェック項目、気になったところがあったら、必ずその店のスタッフに確認してサインをもらうこと、など、色々なことを教えてもらった。
「まず1回目の巡回では、木村くんと一緒に、この書類に書いてある項目のをチェックしてきてください。2回目以降は、書類なしでの巡回になります。その時は上原くん一人で回ってもらいます」
「は、はい」
「木村くん、いいかな」
「あ、はーい」
のほほんとした返事をした木村さんは、夜勤仲間の西山さんの大学の柔道部の後輩だったらしい。昼間の代打の話をしたら、木村さんのことを教えてくれたのだ。西山さんに比べると、木村さんは、本当に柔道部?と思うようなスラリとした爽やか系イケメン。警備員よりも、むしろショップの店員さんとかのほうが似合いそうだ。
「平日だし、そんなに混んでもいないだろうけど、気を付けていってくるように」
「はいっ」
「はーい」
俺たちは防災センターから出て、ショッピングモール内へと向かった。
1
お気に入りに追加
313
あなたにおすすめの小説
Sweet☆Sweet~蜂蜜よりも甘い彼氏ができました
葉月めいこ
BL
紳士系ヤクザ×ツンデレ大学生の年の差ラブストーリー
最悪な展開からの運命的な出会い
年の瀬――あとひと月もすれば今年も終わる。
そんな時、新庄天希(しんじょうあまき)はなぜかヤクザの車に乗せられていた。
人生最悪の展開、と思ったけれど。
思いがけずに運命的な出会いをしました。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
虐げられている魔術師少年、悪魔召喚に成功したところ国家転覆にも成功する
あかのゆりこ
BL
主人公のグレン・クランストンは天才魔術師だ。ある日、失われた魔術の復活に成功し、悪魔を召喚する。その悪魔は愛と性の悪魔「ドーヴィ」と名乗り、グレンに契約の代償としてまさかの「口づけ」を提示してきた。
領民を守るため、王家に囚われた姉を救うため、グレンは致し方なく自分の唇(もちろん未使用)を差し出すことになる。
***
王家に虐げられて不遇な立場のトラウマ持ち不幸属性主人公がスパダリ系悪魔に溺愛されて幸せになるコメディの皮を被ったそこそこシリアスなお話です。
・ハピエン
・CP左右固定(リバありません)
・三角関係及び当て馬キャラなし(相手違いありません)
です。
べろちゅーすらないキスだけの健全ピュアピュアなお付き合いをお楽しみください。
***
2024.10.18 第二章開幕にあたり、第一章の2話~3話の間に加筆を行いました。小数点付きの話が追加分ですが、別に読まなくても問題はありません。

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
切なくて、恋しくて〜zielstrebige Liebe〜
水無瀬 蒼
BL
カフェオーナーである松倉湊斗(まつくらみなと)は高校生の頃から1人の人をずっと思い続けている。その相手は横家大輝(よこやだいき)で、大輝は大学を中退してドイツへサッカー留学をしていた。その後湊斗は一度も会っていないし、連絡もない。それでも、引退を決めたら迎えに来るという言葉を信じてずっと待っている。
そんなある誕生日、お店の常連であるファッションデザイナーの吉澤優馬(よしざわゆうま)に告白されーー
-------------------------------
松倉湊斗(まつくらみなと) 27歳
カフェ・ルーシェのオーナー
横家大輝(よこやだいき) 27歳
サッカー選手
吉澤優馬(よしざわゆうま) 31歳
ファッションデザイナー
-------------------------------
2024.12.21~
ヤンキーDKの献身
ナムラケイ
BL
スパダリ高校生×こじらせ公務員のBLです。
ケンカ上等、金髪ヤンキー高校生の三沢空乃は、築51年のオンボロアパートで一人暮らしを始めることに。隣人の近間行人は、お堅い公務員かと思いきや、夜な夜な違う男と寝ているビッチ系ネコで…。
性描写があるものには、タイトルに★をつけています。
行人の兄が主人公の「戦闘機乗りの劣情」(完結済み)も掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる