52 / 92
8.お嬢の我儘と貞操の危機
38
しおりを挟む
結局、若頭たちはは牛丼を食べ終えても、しばらく俺をダシに居座り続けた。さすがに、店長たちも相手が相手だからか、注意出来なかったし、入って来た新しいお客さんたちも、そそくさと出ていく始末。それでもオッサンがいい加減しびれをきらして立ち上がったからか、ようやっと若頭たちも立ち上がってくれた。
……本当に、よかったよ。
「じゃぁな、マサト」
「あ、ありがとうございました~」
「また来るな~」
若頭の楽しそうな声に、内心、来なくていいっ! と叫びそうになった。叫ばなかったけど。綺麗に食べてくれたのはよかったけど。片付けながらホッとする。
若頭たちが出ていってから、オッサンも後を追うようにドアに向かう。
「ありがとうございましたっ」
俺の声に片手を上げる後ろ姿に、やっぱ、カッケェなって見送る。そんな俺を、店長たちはやっぱり生温い目で見ていたわけで。
「……どうかしましたか?」
下げてきた食器類を置くと、答えたのは原さん。なんぜだか、残念そうな顔してる。
「マジであの人と付き合ってんの?」
「ないっ! それはないですっ!」
どこをどうなったら、そうなるんですかっ!
「だって、ねぇ?」
「ねぇ?」
そこ、二人でなんで会話が成立してるっ!?
「あの人のオンナなんでしょ?」
「ぎゃぁぁぁぁぁっ!」
二人同時に同じことを言われ、思わず恥ずかしくて叫ぶけど、店長から「うるさい」と注意されて、すぐに声を抑えるべく両手で口を塞ぐ。
「まぁ、そういうの、俺は気にしないけどさ」
「仕事に支障をきたさなければ構わないよ」
「だからっ、違いますからっ」
必死に否定すればするほど、二人には「大丈夫」「偏見ないから」と繰り返され、俺は結局、ノーマルだってことを説得することは出来なかった。
バイトが終わった俺は、仕事よりも説得することに力を使い果たした感じになってしまい、ほとんど干物のように枯れ果てた感じで店を出る。
「はぁぁぁっ」
従業員出口の壁に手を置き、大きくため息をはく。
「……終わったか」
「ふぇっ!?」
そう言って現れたのは、なぜかいつもならいないはずのオッサン。
「え、えと、何かありましたか」
意外すぎて、ちょっと頭が回らない。
「何も。とりあえず、帰るぞ」
「え、えぇぇぇ」
昨日の今日というのもあるし、散々、店長たちにも揶揄われた(と思いたい)こともあるしで、今の状況についていけない。オッサンはどんどん駅のあるほうに歩いていく。それに反応が遅れる俺。
「ほら、急がねぇと終電なくなんぞ」
「あっ! そうだった」
オッサンが振り向いて、そう声をかけてきた。
まさかのオッサンの出待ちとか驚いている場合ではなく、さすがにタクシーで帰るなんて余裕はない。俺は慌てて走り出す。オッサンを追い越して駅に向かおうとしたけれど、予想外にオッサンが俺と並走してる。というか、単純に早足にしかなってない。
――すげぇ、ショック。
駅についてみれば、全然息きれてないし。一方の俺は、完全に肩で息してる。
「間に合うか?」
「は、はひっ、だ、大丈夫っす」
俺はなんとか改札を抜ける。
「気を付けて帰れよ」
「えっ」
オッサンは改札の向こう側。普通に一緒に電車に乗るのか、と思ってた俺。そんなわけないのに。自分の思考回路が、幾分不安になる。
「ほら、アナウンス」
オッサンの言葉に、再び慌てる。
「あ、ありがとうございました」
何に感謝なのか、よくわからなかったけど。とりあえず、俺はペコリと頭を下げると、電車のホームへと向かった。
……本当に、よかったよ。
「じゃぁな、マサト」
「あ、ありがとうございました~」
「また来るな~」
若頭の楽しそうな声に、内心、来なくていいっ! と叫びそうになった。叫ばなかったけど。綺麗に食べてくれたのはよかったけど。片付けながらホッとする。
若頭たちが出ていってから、オッサンも後を追うようにドアに向かう。
「ありがとうございましたっ」
俺の声に片手を上げる後ろ姿に、やっぱ、カッケェなって見送る。そんな俺を、店長たちはやっぱり生温い目で見ていたわけで。
「……どうかしましたか?」
下げてきた食器類を置くと、答えたのは原さん。なんぜだか、残念そうな顔してる。
「マジであの人と付き合ってんの?」
「ないっ! それはないですっ!」
どこをどうなったら、そうなるんですかっ!
「だって、ねぇ?」
「ねぇ?」
そこ、二人でなんで会話が成立してるっ!?
「あの人のオンナなんでしょ?」
「ぎゃぁぁぁぁぁっ!」
二人同時に同じことを言われ、思わず恥ずかしくて叫ぶけど、店長から「うるさい」と注意されて、すぐに声を抑えるべく両手で口を塞ぐ。
「まぁ、そういうの、俺は気にしないけどさ」
「仕事に支障をきたさなければ構わないよ」
「だからっ、違いますからっ」
必死に否定すればするほど、二人には「大丈夫」「偏見ないから」と繰り返され、俺は結局、ノーマルだってことを説得することは出来なかった。
バイトが終わった俺は、仕事よりも説得することに力を使い果たした感じになってしまい、ほとんど干物のように枯れ果てた感じで店を出る。
「はぁぁぁっ」
従業員出口の壁に手を置き、大きくため息をはく。
「……終わったか」
「ふぇっ!?」
そう言って現れたのは、なぜかいつもならいないはずのオッサン。
「え、えと、何かありましたか」
意外すぎて、ちょっと頭が回らない。
「何も。とりあえず、帰るぞ」
「え、えぇぇぇ」
昨日の今日というのもあるし、散々、店長たちにも揶揄われた(と思いたい)こともあるしで、今の状況についていけない。オッサンはどんどん駅のあるほうに歩いていく。それに反応が遅れる俺。
「ほら、急がねぇと終電なくなんぞ」
「あっ! そうだった」
オッサンが振り向いて、そう声をかけてきた。
まさかのオッサンの出待ちとか驚いている場合ではなく、さすがにタクシーで帰るなんて余裕はない。俺は慌てて走り出す。オッサンを追い越して駅に向かおうとしたけれど、予想外にオッサンが俺と並走してる。というか、単純に早足にしかなってない。
――すげぇ、ショック。
駅についてみれば、全然息きれてないし。一方の俺は、完全に肩で息してる。
「間に合うか?」
「は、はひっ、だ、大丈夫っす」
俺はなんとか改札を抜ける。
「気を付けて帰れよ」
「えっ」
オッサンは改札の向こう側。普通に一緒に電車に乗るのか、と思ってた俺。そんなわけないのに。自分の思考回路が、幾分不安になる。
「ほら、アナウンス」
オッサンの言葉に、再び慌てる。
「あ、ありがとうございました」
何に感謝なのか、よくわからなかったけど。とりあえず、俺はペコリと頭を下げると、電車のホームへと向かった。
1
お気に入りに追加
357
あなたにおすすめの小説
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
身分差婚~あなたの妻になれないはずだった~
椿蛍
恋愛
「息子と別れていただけないかしら?」
私を脅して、別れを決断させた彼の両親。
彼は高級住宅地『都久山』で王子様と呼ばれる存在。
私とは住む世界が違った……
別れを命じられ、私の恋が終わった。
叶わない身分差の恋だったはずが――
※R-15くらいなので※マークはありません。
※視点切り替えあり。
※2日間は1日3回更新、3日目から1日2回更新となります。
英国紳士の熱い抱擁に、今にも腰が砕けそうです
坂合奏
恋愛
「I love much more than you think(君が思っているよりは、愛しているよ)」
祖母の策略によって、冷徹上司であるイギリス人のジャン・ブラウンと婚約することになってしまった、二十八歳の清水萌衣。
こんな男と結婚してしまったら、この先人生お先真っ暗だと思いきや、意外にもジャンは恋人に甘々の男で……。
あまりの熱い抱擁に、今にも腰が砕けそうです。
※物語の都合で軽い性描写が2~3ページほどあります。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは
竹井ゴールド
ライト文芸
日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。
その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。
青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。
その後がよろしくない。
青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。
妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。
長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。
次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。
三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。
四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。
この5人とも青夜は家族となり、
・・・何これ? 少し想定外なんだけど。
【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】
【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】
【2023/6/5、お気に入り数2130突破】
【アルファポリスのみの投稿です】
【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】
【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】
【未完】
Take On Me
マン太
BL
親父の借金を返済するため、ヤクザの若頭、岳(たける)の元でハウスキーパーとして働く事になった大和(やまと)。
初めは乗り気でなかったが、持ち前の前向きな性格により、次第に力を発揮していく。
岳とも次第に打ち解ける様になり…。
軽いノリのお話しを目指しています。
※BLに分類していますが軽めです。
※他サイトへも掲載しています。
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる