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第3章-2
しおりを挟む「陣矢?あいつがどうかしたのか?」
我聞と話を終えた佐恵は手早く昼食を食べ、さっそく2年C組で聞きこむ。
「笠松君、彼がどういう人物か教えてくれるだけでいいの。例えば授業中にスマホを弄っていたとかそんな感じでいいからさ」
この笠松と呼ばれる生徒は2年C組で学級委員長をしている。成績は勉学、運動共に並だが結構周りを見ているため、必然的に学級委員長に選ばれたそうだ。本人は非常に不服そうだったらしいが。
「いや、知ってんじゃん。そうだよ、アイツ授業中や休み時間にずっとスマホを弄って何かやってた」
「へぇ・・・!」
適当に言ったことが当たると妙な高揚感が湧いてくるが、今はそんな場合ではない。佐恵はスマホのメモ帳を使おうとして、
(おっと)
手をピタリと止める。SNSの通知がいくつも来ていたのだ。
(見るな、が条件だったからこれの通知は切っておこう。おじいの捜査が済むまではミュートだけにしとけばいいし)
スマホに『安谷陣矢はスマホを弄っていた』ということを記録する。
「ありがとうね、笠松君」
「別に構わないが・・・何かあったんか?陣矢、最近学校来てない感じだけど」
何も知らないということは先生の方で情報が止まっている可能性がある。警察も、我聞が独断で動いている線もあるが、今回のことは表沙汰にしてないみたいだ。
「私は何も知らないよ。ただちょっと近所で見かけたのに学校休んでるから不登校の可能性があるかなーって思っただけで」
「あー・・・アイツはそうなりやすい見た目をしてるからなー・・・」
うんうんと笠松が頷いているのを見るにそういうきらいはあったと佐恵は考える。聞きたい情報は手に入ったので佐恵は2年C組を後にする。
(おじいから聞いた病院の位置はここだから・・・うん)
学校から病院への距離はかなりある。往復すると戻ってくるまで数時間はかかる位置にあった。戻ってきたとしても確実に日が暮れているだろう。
(学校にいるタイミングでおじいが電話をかけてきたってことは相当切羽詰まった状況のはず。規模は分からないけど、ここで動かないと迷宮入りが確定するかも)
色々考えた結果、とはいえ初めから結論は出ていたが、佐恵は学校をサボることにした。
佐恵が時計を見ると昼休みがそろそろ終わりそうな時間だった。下駄箱に猛ダッシュして靴を取り、学校の裏口に向かう。
「お待たせしました!」
そこにはヘルメットを被ってスーパーフォアに跨っている女がいた。先程トイレにいた協力者、秋野華音の姉、秋野華乃である。
「いい、今着いたところだ」
ジーパンに黒いTシャツの上に皮のジャケットを着ている。格好を見るにどうやら今日は休日のようだ。
「お騒がせして申し訳ないです。おじいからのご指名でして」
「分かっている。華音から大体は聞いた。今回はデカいヤマなんだろう?」
華音ちゃん、どんな言い方したんだろう。ヘルメットを装着している佐恵の心配を他所に華乃はエンジンを吹かせる。いいか、と聞かれて無言で彼女の腰に手を回した。
「しっかり捕まってろ」
言い終わる前に彼女のフォアがけたたましく唸り声を上げた。
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