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終章 ギサキ
第42話 天然火廼禽VS科学模造品
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オレの名はギサキ、ちょっと姉との溝を埋めれたうら若き改造女子だ。
今、自分は寝起きだ…ヨレヨレパジャマで髪はボサボサ、目の周りには目ヤニが引っ付いている…がそんな問題、着替えて髪を梳かして顔を洗えば済む話。
髪の毛をぶった斬りたいが…オレは改造人間、一度斬ったらもう生えん。
そう思うと躊躇してしまう、まぁシスターに言えば元に戻してくれそうだけど。
(ところで目ヤニを分泌し無くしてもらう事は可能だろうか…)
「ギサキ、今日も頼んだわよ。そろそろ私はあの2体の仕上げに入るわ。」
「分かりました……あのシスター。」
「なにか?」
「もしチサキが生きてたら…どうしましょう…アイツ、頑丈だから…」
「別に、生きてたら殺せば良いじゃない。貴女ならやれるわ。」
そう言ってシスターは研究所へ戻った。
チサキは生きている…昨日出会ったアレは幻では無く本物だろう。
あんな言い方をしたのはシスターに感付かれない為だ…通じたかは不明だが。
「あ、忘れてた…ギサキ、ミサキに睡眠薬追加しといて。」
「……分かりました。」
「よろしくねー。」
戻って来たシスターの要件を了承すると今度こそ研究室へ戻って行った。
棚から注射器を取り出し、薬品保管棚の瓶の中から特殊睡眠薬を吸うと、それを持ってミサキの寝ている部屋…と言うより牢屋へ向かう。
そこにはすぅすぅと寝息を立てているミサキが居る…オレは…
「……ミサキ、聞こえていると思うけど…オレ達は敵同士だ。」
特殊睡眠薬は改造人間専用の薬だ。
睡眠薬と書いてあるが、これは飽くまでも身体を寝かせるものである。
脳は覚醒しているので…意識が寝ていなければ聞こえているハズだ。
だが…これはオレの憶測であり、本当に聞こえているかは分からない。
「だけど…戦いたくない…睡眠薬は注入し無いから目が覚めたら逃げてくれ…ミサキは1人では勝てない、シスターは強い。」
自分は注射器の中身を窓から押し出すと、部屋を後にした。
注入しているタイミングからしてオレが出ている間に目覚めているだろう…もし逃げればミサキとはもう会えない…だけどそれで良い…
自分でもワケ分かんないけど、オレはシスターに歯向かっている。
これは…そうだ、邪魔者の排除だ…ミサキが居なくなれば計画は遅れず、オレ1人でこなせる…間違いない。
「……行くか…」
そんな事を考えながら自分は十三番街を目指して飛んで行った。
・・・
「やっぱり近いな此処は…直ぐに着いたぞ。」
今回の標的は右腕の暗示を持つ「マジコ」と言う輩だ…種族は宇宙人だったかな…?どんなツラをしているのかすげぇ気になる…きっとヤバイんだろうな。
ところで13番街へは来たくなかった…だって病気だらけだもん。
何が悲しくてそんな所に行かなくてはならないのだろうか…まぁオレは病気に対する免疫があるので楽勝!改造人間で本当に良かったと思う。
「やっぱりバタバタしてるんだなぁ…」
十三番街の至る所には忙しそうに駆け回るスタッフたちが見れる。
積み上げられた納体袋も目に付くし…此処は本当に居心地の悪い場所だ…早くマジコという奴を探さなくては…
「ちょっとすまない。」
【はい?何か用ですか?今、忙しんですけど…】
「煩わせるようだが聞きたい。マジコと言う奴は居るか?」
【あぁマジコさんね。あの人ならそこで項垂れてる人だよ。】
「アレか…すまない、ありがとう。」
職員の指さす方にはベンチに座って項垂れる悪魔が居た…なんだ、宇宙人って言うくらいだから真っ白な奴が出てくると思ったんだけど…悪魔じゃないか。
内心勝手に期待しときながら勝手にガッカリしつつもマジコへ話しかける。
「ちょっと良いか、アンタがマジコか?」
「あぁ?そうだけど…ほっといてくれ、今ちょっと悩んでんだ…」
「悩みか…聞いてやるよ。(どうせ死ぬんだ、聞いといてやろう)」
「……まぁ良いか…それがよぉ…」
マジコの悩みというのは…何と言うか、複雑なものであった。
知り合いが知り合いを殺して姿を消してしまったらしい…闇が深いと言うか何と言うか…とてもじゃないが宇宙人の悩みとは思えない。
だけど…考えてみれば宇宙に住んでるだけでオレ達と同じなんだよなぁ…
だったら不思議じゃないか。
「すまんな…その…なんて言えば良いか…」
「どうしよう…アイツ、元気してると良いんだけどなぁ…」
「してると思うぜ。きっと元気な奴なんだろ?直ぐには変われないさ人ってのは。」
「そうか…そうだと良いんだが………ところでお前は?」
そうだったそうだった…本題を忘れてはいけない…オレはコイツを殺しに来たんだ。
「オレはギサキ。お前を殺しに来た。」
「(ミサキみたいな名前だなぁ…)面白い、気晴らしやってやるよ。」
「話が早くて助かるぜ。んじゃ始めるか…」
「待て、場所を変えよう。此処は破壊してはいけないものが多すぎる。」
「それもそうだな。」
オレとマジコは戦う場所を変えることにした…と言っても此処からそう遠くない山中の開けた場所だ、ここなら遠慮なしにぶっ飛ばせるだろう。
さて…この宇宙人はどのくらい持つかな?
「力を開放するからな。後悔しても遅いぞ。」
「力を開放?」
「こういう事さ!!」
「!?」
マジコは全身へ力を溜めて一気に開放すると、突如として姿を変える!
背は伸び、髪は炎のように真っ赤に光る…そして声も変わっている…宇宙人はこんなことが出来るのか!凄いな…超サ○ヤ人的なアレか?
しかし、こちらも負けるわけにはいかない、負けられないのだ。
「来いよ。下等生物…お前には遺灰も残さないよ。」
「それはこっちも言えるぜ!マジコ!!」
右手の人差し指から溜めた光線を一気に放出する!しかしマジコは上へ飛んで躱すと、辺りに火の粉をまき散らすと…それは鋭い槍のような形へ変わる!
「矢化火箸!貫かれろ!!」
「喰らうかッ!ハァァァ!!」
「な!?う、打ち消した!」
奴の飛ばす火の槍を衝撃波で打ち消すと、奴と同じ様に槍状にエネルギーを溜める…お前の技を使わせてもらおう…炎と違い!科学の力の槍だ!!
思い知れ!!名付けてエネルギースピア!!(そのまんま)
「ダルァアアア!!」
「ずおッ!?は、腹が…」
エネルギースピアはマジコの腹部を貫いた!!や、やった!思ったより早く肩が付いた……いや、待て!おかしい!アッサリし過ぎている!それに奴もまだ普通に飛んでいる!
中々しぶとい野郎だ…やはり、長期戦は不可避か…
「…ッ!!消えた!?」
「後ろだバカ野郎!もらったぁ!!…!?」
「だったらオレはそのさらに後ろだ!!」
「ぐあッ!!」
奴が後ろへ回ってきたのを察知すると直ぐにまた奴の後ろへ回り込み、上へ蹴り上げた!!そして上の奴目掛けてエネルギー波をぶち込む!!
「火粉旋風!!お返しだッ!!」
「あがぁぁああ!!あ、熱い!!お、おのれ…」
だが奴も負けじとこちらへ火の粉の竜巻を起こして肌を焼く!!熱と痛みに怯んだせいで攻撃を中断してしまった…思ったよりダメージを与えられていない!
チックショウ!服も焦げてしまったじゃねぇか!!このクソ野郎!!
一旦…薬を吸って……はぁ…よし!こうなりゃローブは脱ぎ捨ててしまえ!
こっちの方が動きやすい!
「マジでやる気になったのか?面白い!こっちも力を開放するのは久しい!存分に相手してやるよ!ありがたく思え!!」
マジコの腹部が再生すると、奴の周りには大量の火の粉が舞い始め、熱くなっていく…マズイ!何かを始める気だ!何としてでも食い止めなければ!!
「ハァァァァ……」
「クソが!!この!!この!!」
何度も殴って蹴って奴の動きを何としてでも防ごうとする!!が!
「ナノミクロン超新星爆発ッ!!」
「ッ!!ッギャァァアアアアアアアアア!!!」
「はぁ…はぁ…」
抵抗虚しく、近づいたのを良い事にオレはマジコの爆発を至近距離で喰らってしまった…
凄まじい程の熱量と衝撃が全身に走る!!まるで溶岩の中に突き落とされたかのような感覚だ!!周囲の木々は燃え尽き!地面は焦げ!自分も丸焦げだ…
や、ヤバイ…本格的にヤバイ…内部の装甲がむき出しになっている…
『ぐはぁ!!はぁ…がはぁ!!』
「な、なんだ…お前…機械だったのか…いや……生き物か?」
『ぐぅ…おおおおおお!!!や、野郎!!ぶっ殺してやる!!』
「ウソだろ…まだ立つのか…(もう体力が無い…)」
焦げ焦げで立ち上がりながらも、ノッシノッシと奴の元へ歩いて行く…
アイツも体力をかなり消耗している様だ…隙は今しか無い!!
全身にエネルギーを限界まで溜めると…一気に解き放った!!奴と似たような技だが!気にしない!
『ハァアアアアアッ!!』
「この威力は…!?あがかああ!!!」
『はぁ…ど、どうだ…』
残っているエネルギー全てを放出してやったぞ…我ながら…素晴らしい威力だ…
だが!奴め…ピクピクとまだ動いているじゃないか!!何としぶとい野郎だ!
携帯食料を食べたいが…しまった…奴の攻撃で一瞬にして消し飛んだか…おのれ!爆発にも耐えるパッケージごと吹き飛ばすとは…ま、マズい…フラフラして来た…
「お前…中々やるな…」
『チクショウ…お前もな…悔しいけどオレの負けだ…』
「いや…お前の勝ちで良い…アタシの…負けだよ。……さてと…」
そう言うと、マジコは普通に立ち上がった…コイツ、もう回復したのか…
「アタシは特別な身体をしてるから不老不死なんだ。だから殺せないよ。」
『ちくしょう…じゃあ此処に来た意味って…』
「でも、死ぬことならできる…真似事に過ぎないけど…」
『…はぁ?』
マジコは右手へ炎を溜めると…それを自身の顔へ放出する!!奴の頭部は一瞬にして燃え尽き、焦げたしゃれこうべが地面に転がり、奴の身体はドサッと倒れた…う、嘘だろ?
死んだのか…?だったら…オレの勝ち?……はぁ…
『ま、マジかよ…意味が分かんねぇよ…』
状況を整理するより、今はこの焦げた森から脱出する事に専念しよう…
今の容態は最悪だ…内部装甲版に32%の損傷、発音装置の故障、光線放出機能停止、エネルギー残量0.7%…幸いにも飛行に必要な最低限の機能は動いている。
速く帰らなくては…
・・・
「うーん……がッ!!はぁ…はぁ…こ、此処は…」
ど、何処だ此処…私は確か……そうだった!あのクソ女に変な物を飲まされたんだった!チクショウ…あの女、ぶっ殺してやる…いや、それよりも…ここ何処なの?
私は目が覚めると全く見覚えの無い…病院っぽい部屋の中に居た…
凄く最先端な牢屋とも見れるかもしれない。
ちなみに私の名はミサキだ、今回は自己紹介したっけ?
「此処から出ないと…だけど……やっぱり鍵は掛かってるわよね…」
分厚い金属製の扉の鍵はやはり閉まっている…がしかし、締め出し出来るのは精々ゾンビや結膜炎患者ぐらいだ、私の前ではただの壁に過ぎない。
扉のド真ん中へ拳を突き立てると、そのままグシャリと掴んでもぎ取った。
「ふぅ…良かった、力は健在ね。」
自分の怪力が健在なのは良いが…武器と道具類を全て没収されている。
鉢巻きや銃、白鞘とポーチまでもが無い…何処かに隠しているのだろうか……と言うか此処は教会だったか…こんな部屋があったんだな…
「もう…あのクソ女2人組、絶対にぶっ殺してやるわ…」
「へぇー…じゃあやってみせなさい。」
「!?い、いきなり来たわね…」
私の後ろから話しかけて来たのはあのクソッタレシスターだった…コイツだけは絶対に生かしておけない…だが…もしコイツの本当なら…
私はこの女の娘でギサキとは姉妹になる…ウソだと思うけど…そう信じたい。
とにかく…コイツ1人だけなら勝てるだろう。
「戦うのは私じゃないわ…ギサキ、行きなさい。」
「はい。」
「ギサキ…止めて、何故か貴女とは戦いたくないわ…」
「無駄よ。もうギサキはギサキじゃ無いの。ただの兵器よ。」
シスターの後ろから出て来たギサキはいつものローブを羽織っているものの…仮面は被っていない…しかし、明らかに表情が変だ…
何と言うべきか…死んでいると言えば良いのか…表情筋が動いていない。
まるで人形のように突っ立っている。
「新型制御装置のプロトタイプを付けておいたの…もう話しかけても無駄よ。」
「な!ギサキはアンタの娘でしょ!なんでそんな事をするの!?」
「例え娘だろうと私は容赦しないわ…貴方にもね。さぁギサキ、壊さない程度にミサキを痛めつけなさい。」
「はい。」
指示されたギサキは私の方へ蹴りをかまし!一気に外まで蹴り飛ばした!!
やるしか無いみたいだ…ギサキとは敵対したくなかったけど…降伏よりも殺しを私は選ぶ!!
「この…ドアホがッ!!」
「こかッ!?」
蹴り飛ばした私へさらに追撃を喰らわせようと近づいて来たギサキを蹴り上げるとさらにその上に回り込んで殴り落とした!が、ギサキも黙っているわけでは無い!
両手に光を溜めると私の方へレーザービームのように撃ち込む!
咄嗟に躱せたが…あ、危なかった…そう言えばあんな技を持っていた…
「ハァァアッ!!」
「ッチ…危ないわね!!」
「ダヤァ!!」
「ッキャァアアア!?」
2発目も躱したが、ギサキは近づいた瞬間にビームでは無く、衝撃波を放つ!!
これだけは躱せなかったが!すぐさま腕で防ぎ、出来るだけ被害を最小限に留めた…しかし、数メートルは吹き飛ばされ、服も殆ど吹っ飛んでしまった…
まぁ服は再生するから良いだろう。
「やってくれるわね!」
「…ッ!?」
「捕まえた!!さぁて…どうしてくれようか…」
「ぐぅう!」
瞬間的に最高速度でギサキの後ろへ回り込むと、後ろから腕ごと抱きしめるように拘束した!流石のギサキもこれには敵わない様だ…必死に振り解こうとするが……!?
な、なんだこの馬鹿力は!コイツ…力が強すぎる!マズい…振り解かれる前にこちらからやるしかない!
私はギサキを抱きしめながら上へと飛ぶと、そのまま空中で方向転換し、頭から地面に突っ込んだ!!私の負担もヤバいが!それ以上にギサキが喰らっただろう!
「ぐぁあああ!?あ、頭が…痛い……?み、ミサキ?」
「よく分かんないけど…戻ったみたいね…がは…」
頭を打ち付けたからなのかどうなのかは分からないが…ギサキの意識が戻ったようだ…良かった良かった…
「オレ、何やって…シスター…コレは一体…」
「ッチ…(プロトタイプはマズかったか…)ギサキ、ミサキを始末しなさい。」
「な!?そ、そんな事…」
「ギサキ!耳を貸しちゃダメよ!」
マズイ…今はマズイ…急に全身へ力が入らなくなった…凄くお腹が空いてるし…もう身体も動かない…今の状態でギサキにやられたら一溜まりも無い…
いくら頑丈だからと言っても…これ以上はマズい!
「早くミサキをやりなさい!早く!」
「そ、そんな事…で、出来ません…嫌です…したくないです…」
「ギサキ!従いなさい!私は貴方の母親なのよ!」
「うっ…うぅ…うわぁあああああ!!」
どうすれば良いのか分からないギサキは頭を抱えて蹲ってしまった。
身体の調子は少しだけ良くなったが…それでも声を出すのが精一杯で身体は動かせない…ここはギサキに任せたいが…ダメだ、あの様子じゃどうにもならない。
しかもシスターはカツカツとこちらへ近付き…
「このバカ娘が!!」
「かぁッ!!い、痛いです…や、止めてください…」
「止めろ!ギサキに手を出すな!!」
「黙れ!まったく…お前等娘たちはいつも私の手を煩わせて…この!!」
「うぐぅぁあッ!う、うぅうううう…」
ギサキは何度もシスターに顔を蹴られた…片目は潰れ、歯は折れ、血が滴る…私は何度も「止めろ!」と叫んだが上げた声も虚しく、ギサキはボッコボコにされた。
そしてギサキの次は私へ狙いを定め…
「がうっはぁッ!?ごっは!?」
「(こうなりゃ双方のコアを潰して壊すしかない…コアごと換える!)」
今度は自分の腹部に足を突き立て、私を攻撃する!何度も!何度も!
一発ぶち込まれる度に鈍い痛みと衝撃が走る…い、痛い…このままだと本当に…
「めろ…やめろ………止めろォ!!」
「クッジャッ!?」
「ギ、ギサキ!…がふッ…」
だがその時、ギサキがシスターを後ろから蹴り飛ばした!!飛ばされたシスターは墓石を破壊しながら奥へ行ってしまった…
「姉ちゃん…ごめん…オレ、オレ…うぅ…」
「がっはぁ!私の事は良いわ…だけど…アイツの事を…」
ギサキに蹴り飛ばされたシスターは足を引き摺りながらこちらへやって来る…意外と耐久性は低いみたいだ…
ここから生還するにはあの女を何とかするしかない。
だが、今の私は起き上がるのがやっとだ…戦える状態ではない。
「はぁ…ぎ、ギサキ…私に歯向かうとは…」
「シスター…もう貴女は…オレの母親じゃない。ただの機械だ。」
「(こうなりゃ仕方ない…)イサキ!リサキ!起動だ!!」
「なんだとッ!?くっ………ハァァアアアアアッ!!」
奴がリモコンを取り出したのを見たギサキはすぐさま光線を射出する!だがしかし…光線が行き届く瞬間に…ボタンは押されてしまった。
「ぐわぁあ!!ガギャァアアアアアアッッ!!」
もうそこに…あの女の姿は無かった……「やった…」と思ったのも束の間!
教会からは2つの人影が姿を現す!1人は歩兵隊の服装をしていてもう1人はインカムを付けた女…マズイ…もしこの2人が私達と同じ様なタイプだと勝てるかどうか分からない!
ギサキも警戒している…私もやっとの思いで立ち上がると向かい合った…クソ…お腹が空いたわね…
「………旧式、此処で何が起きたのですか?」
「きゅ、旧式…?もしかしてオレか?」
「はい。貴女の登録名称は旧式で統一されています。」
「指揮官の姿が見えませんが…何処ですか?」
だがこの2人は…危害を加えるようなことはせず、あの女を探し回る…
「指揮官…シスターなら死んだよ…」
「……そうですか。残念ながら私のデータベースには死後の計画は記録されていません。青い旧式、計算の結果、貴女は次の指揮官に選ばれました。指揮を。」
「指揮を。」
「指揮って言われてもなぁ…お前等2人、とにかく休憩しろ。」
「了解しました。休憩を始めます。」「始めます。」
どうしたものかと私達は頭を悩ませた…あの女は死に、もう居ない。
残ったこの2人の面倒も見ないといけないのだろうか?とにかく…色んな事が急に起こり過ぎだ…今は直ぐにでも休みたい…
つづく
今、自分は寝起きだ…ヨレヨレパジャマで髪はボサボサ、目の周りには目ヤニが引っ付いている…がそんな問題、着替えて髪を梳かして顔を洗えば済む話。
髪の毛をぶった斬りたいが…オレは改造人間、一度斬ったらもう生えん。
そう思うと躊躇してしまう、まぁシスターに言えば元に戻してくれそうだけど。
(ところで目ヤニを分泌し無くしてもらう事は可能だろうか…)
「ギサキ、今日も頼んだわよ。そろそろ私はあの2体の仕上げに入るわ。」
「分かりました……あのシスター。」
「なにか?」
「もしチサキが生きてたら…どうしましょう…アイツ、頑丈だから…」
「別に、生きてたら殺せば良いじゃない。貴女ならやれるわ。」
そう言ってシスターは研究所へ戻った。
チサキは生きている…昨日出会ったアレは幻では無く本物だろう。
あんな言い方をしたのはシスターに感付かれない為だ…通じたかは不明だが。
「あ、忘れてた…ギサキ、ミサキに睡眠薬追加しといて。」
「……分かりました。」
「よろしくねー。」
戻って来たシスターの要件を了承すると今度こそ研究室へ戻って行った。
棚から注射器を取り出し、薬品保管棚の瓶の中から特殊睡眠薬を吸うと、それを持ってミサキの寝ている部屋…と言うより牢屋へ向かう。
そこにはすぅすぅと寝息を立てているミサキが居る…オレは…
「……ミサキ、聞こえていると思うけど…オレ達は敵同士だ。」
特殊睡眠薬は改造人間専用の薬だ。
睡眠薬と書いてあるが、これは飽くまでも身体を寝かせるものである。
脳は覚醒しているので…意識が寝ていなければ聞こえているハズだ。
だが…これはオレの憶測であり、本当に聞こえているかは分からない。
「だけど…戦いたくない…睡眠薬は注入し無いから目が覚めたら逃げてくれ…ミサキは1人では勝てない、シスターは強い。」
自分は注射器の中身を窓から押し出すと、部屋を後にした。
注入しているタイミングからしてオレが出ている間に目覚めているだろう…もし逃げればミサキとはもう会えない…だけどそれで良い…
自分でもワケ分かんないけど、オレはシスターに歯向かっている。
これは…そうだ、邪魔者の排除だ…ミサキが居なくなれば計画は遅れず、オレ1人でこなせる…間違いない。
「……行くか…」
そんな事を考えながら自分は十三番街を目指して飛んで行った。
・・・
「やっぱり近いな此処は…直ぐに着いたぞ。」
今回の標的は右腕の暗示を持つ「マジコ」と言う輩だ…種族は宇宙人だったかな…?どんなツラをしているのかすげぇ気になる…きっとヤバイんだろうな。
ところで13番街へは来たくなかった…だって病気だらけだもん。
何が悲しくてそんな所に行かなくてはならないのだろうか…まぁオレは病気に対する免疫があるので楽勝!改造人間で本当に良かったと思う。
「やっぱりバタバタしてるんだなぁ…」
十三番街の至る所には忙しそうに駆け回るスタッフたちが見れる。
積み上げられた納体袋も目に付くし…此処は本当に居心地の悪い場所だ…早くマジコという奴を探さなくては…
「ちょっとすまない。」
【はい?何か用ですか?今、忙しんですけど…】
「煩わせるようだが聞きたい。マジコと言う奴は居るか?」
【あぁマジコさんね。あの人ならそこで項垂れてる人だよ。】
「アレか…すまない、ありがとう。」
職員の指さす方にはベンチに座って項垂れる悪魔が居た…なんだ、宇宙人って言うくらいだから真っ白な奴が出てくると思ったんだけど…悪魔じゃないか。
内心勝手に期待しときながら勝手にガッカリしつつもマジコへ話しかける。
「ちょっと良いか、アンタがマジコか?」
「あぁ?そうだけど…ほっといてくれ、今ちょっと悩んでんだ…」
「悩みか…聞いてやるよ。(どうせ死ぬんだ、聞いといてやろう)」
「……まぁ良いか…それがよぉ…」
マジコの悩みというのは…何と言うか、複雑なものであった。
知り合いが知り合いを殺して姿を消してしまったらしい…闇が深いと言うか何と言うか…とてもじゃないが宇宙人の悩みとは思えない。
だけど…考えてみれば宇宙に住んでるだけでオレ達と同じなんだよなぁ…
だったら不思議じゃないか。
「すまんな…その…なんて言えば良いか…」
「どうしよう…アイツ、元気してると良いんだけどなぁ…」
「してると思うぜ。きっと元気な奴なんだろ?直ぐには変われないさ人ってのは。」
「そうか…そうだと良いんだが………ところでお前は?」
そうだったそうだった…本題を忘れてはいけない…オレはコイツを殺しに来たんだ。
「オレはギサキ。お前を殺しに来た。」
「(ミサキみたいな名前だなぁ…)面白い、気晴らしやってやるよ。」
「話が早くて助かるぜ。んじゃ始めるか…」
「待て、場所を変えよう。此処は破壊してはいけないものが多すぎる。」
「それもそうだな。」
オレとマジコは戦う場所を変えることにした…と言っても此処からそう遠くない山中の開けた場所だ、ここなら遠慮なしにぶっ飛ばせるだろう。
さて…この宇宙人はどのくらい持つかな?
「力を開放するからな。後悔しても遅いぞ。」
「力を開放?」
「こういう事さ!!」
「!?」
マジコは全身へ力を溜めて一気に開放すると、突如として姿を変える!
背は伸び、髪は炎のように真っ赤に光る…そして声も変わっている…宇宙人はこんなことが出来るのか!凄いな…超サ○ヤ人的なアレか?
しかし、こちらも負けるわけにはいかない、負けられないのだ。
「来いよ。下等生物…お前には遺灰も残さないよ。」
「それはこっちも言えるぜ!マジコ!!」
右手の人差し指から溜めた光線を一気に放出する!しかしマジコは上へ飛んで躱すと、辺りに火の粉をまき散らすと…それは鋭い槍のような形へ変わる!
「矢化火箸!貫かれろ!!」
「喰らうかッ!ハァァァ!!」
「な!?う、打ち消した!」
奴の飛ばす火の槍を衝撃波で打ち消すと、奴と同じ様に槍状にエネルギーを溜める…お前の技を使わせてもらおう…炎と違い!科学の力の槍だ!!
思い知れ!!名付けてエネルギースピア!!(そのまんま)
「ダルァアアア!!」
「ずおッ!?は、腹が…」
エネルギースピアはマジコの腹部を貫いた!!や、やった!思ったより早く肩が付いた……いや、待て!おかしい!アッサリし過ぎている!それに奴もまだ普通に飛んでいる!
中々しぶとい野郎だ…やはり、長期戦は不可避か…
「…ッ!!消えた!?」
「後ろだバカ野郎!もらったぁ!!…!?」
「だったらオレはそのさらに後ろだ!!」
「ぐあッ!!」
奴が後ろへ回ってきたのを察知すると直ぐにまた奴の後ろへ回り込み、上へ蹴り上げた!!そして上の奴目掛けてエネルギー波をぶち込む!!
「火粉旋風!!お返しだッ!!」
「あがぁぁああ!!あ、熱い!!お、おのれ…」
だが奴も負けじとこちらへ火の粉の竜巻を起こして肌を焼く!!熱と痛みに怯んだせいで攻撃を中断してしまった…思ったよりダメージを与えられていない!
チックショウ!服も焦げてしまったじゃねぇか!!このクソ野郎!!
一旦…薬を吸って……はぁ…よし!こうなりゃローブは脱ぎ捨ててしまえ!
こっちの方が動きやすい!
「マジでやる気になったのか?面白い!こっちも力を開放するのは久しい!存分に相手してやるよ!ありがたく思え!!」
マジコの腹部が再生すると、奴の周りには大量の火の粉が舞い始め、熱くなっていく…マズイ!何かを始める気だ!何としてでも食い止めなければ!!
「ハァァァァ……」
「クソが!!この!!この!!」
何度も殴って蹴って奴の動きを何としてでも防ごうとする!!が!
「ナノミクロン超新星爆発ッ!!」
「ッ!!ッギャァァアアアアアアアアア!!!」
「はぁ…はぁ…」
抵抗虚しく、近づいたのを良い事にオレはマジコの爆発を至近距離で喰らってしまった…
凄まじい程の熱量と衝撃が全身に走る!!まるで溶岩の中に突き落とされたかのような感覚だ!!周囲の木々は燃え尽き!地面は焦げ!自分も丸焦げだ…
や、ヤバイ…本格的にヤバイ…内部の装甲がむき出しになっている…
『ぐはぁ!!はぁ…がはぁ!!』
「な、なんだ…お前…機械だったのか…いや……生き物か?」
『ぐぅ…おおおおおお!!!や、野郎!!ぶっ殺してやる!!』
「ウソだろ…まだ立つのか…(もう体力が無い…)」
焦げ焦げで立ち上がりながらも、ノッシノッシと奴の元へ歩いて行く…
アイツも体力をかなり消耗している様だ…隙は今しか無い!!
全身にエネルギーを限界まで溜めると…一気に解き放った!!奴と似たような技だが!気にしない!
『ハァアアアアアッ!!』
「この威力は…!?あがかああ!!!」
『はぁ…ど、どうだ…』
残っているエネルギー全てを放出してやったぞ…我ながら…素晴らしい威力だ…
だが!奴め…ピクピクとまだ動いているじゃないか!!何としぶとい野郎だ!
携帯食料を食べたいが…しまった…奴の攻撃で一瞬にして消し飛んだか…おのれ!爆発にも耐えるパッケージごと吹き飛ばすとは…ま、マズい…フラフラして来た…
「お前…中々やるな…」
『チクショウ…お前もな…悔しいけどオレの負けだ…』
「いや…お前の勝ちで良い…アタシの…負けだよ。……さてと…」
そう言うと、マジコは普通に立ち上がった…コイツ、もう回復したのか…
「アタシは特別な身体をしてるから不老不死なんだ。だから殺せないよ。」
『ちくしょう…じゃあ此処に来た意味って…』
「でも、死ぬことならできる…真似事に過ぎないけど…」
『…はぁ?』
マジコは右手へ炎を溜めると…それを自身の顔へ放出する!!奴の頭部は一瞬にして燃え尽き、焦げたしゃれこうべが地面に転がり、奴の身体はドサッと倒れた…う、嘘だろ?
死んだのか…?だったら…オレの勝ち?……はぁ…
『ま、マジかよ…意味が分かんねぇよ…』
状況を整理するより、今はこの焦げた森から脱出する事に専念しよう…
今の容態は最悪だ…内部装甲版に32%の損傷、発音装置の故障、光線放出機能停止、エネルギー残量0.7%…幸いにも飛行に必要な最低限の機能は動いている。
速く帰らなくては…
・・・
「うーん……がッ!!はぁ…はぁ…こ、此処は…」
ど、何処だ此処…私は確か……そうだった!あのクソ女に変な物を飲まされたんだった!チクショウ…あの女、ぶっ殺してやる…いや、それよりも…ここ何処なの?
私は目が覚めると全く見覚えの無い…病院っぽい部屋の中に居た…
凄く最先端な牢屋とも見れるかもしれない。
ちなみに私の名はミサキだ、今回は自己紹介したっけ?
「此処から出ないと…だけど……やっぱり鍵は掛かってるわよね…」
分厚い金属製の扉の鍵はやはり閉まっている…がしかし、締め出し出来るのは精々ゾンビや結膜炎患者ぐらいだ、私の前ではただの壁に過ぎない。
扉のド真ん中へ拳を突き立てると、そのままグシャリと掴んでもぎ取った。
「ふぅ…良かった、力は健在ね。」
自分の怪力が健在なのは良いが…武器と道具類を全て没収されている。
鉢巻きや銃、白鞘とポーチまでもが無い…何処かに隠しているのだろうか……と言うか此処は教会だったか…こんな部屋があったんだな…
「もう…あのクソ女2人組、絶対にぶっ殺してやるわ…」
「へぇー…じゃあやってみせなさい。」
「!?い、いきなり来たわね…」
私の後ろから話しかけて来たのはあのクソッタレシスターだった…コイツだけは絶対に生かしておけない…だが…もしコイツの本当なら…
私はこの女の娘でギサキとは姉妹になる…ウソだと思うけど…そう信じたい。
とにかく…コイツ1人だけなら勝てるだろう。
「戦うのは私じゃないわ…ギサキ、行きなさい。」
「はい。」
「ギサキ…止めて、何故か貴女とは戦いたくないわ…」
「無駄よ。もうギサキはギサキじゃ無いの。ただの兵器よ。」
シスターの後ろから出て来たギサキはいつものローブを羽織っているものの…仮面は被っていない…しかし、明らかに表情が変だ…
何と言うべきか…死んでいると言えば良いのか…表情筋が動いていない。
まるで人形のように突っ立っている。
「新型制御装置のプロトタイプを付けておいたの…もう話しかけても無駄よ。」
「な!ギサキはアンタの娘でしょ!なんでそんな事をするの!?」
「例え娘だろうと私は容赦しないわ…貴方にもね。さぁギサキ、壊さない程度にミサキを痛めつけなさい。」
「はい。」
指示されたギサキは私の方へ蹴りをかまし!一気に外まで蹴り飛ばした!!
やるしか無いみたいだ…ギサキとは敵対したくなかったけど…降伏よりも殺しを私は選ぶ!!
「この…ドアホがッ!!」
「こかッ!?」
蹴り飛ばした私へさらに追撃を喰らわせようと近づいて来たギサキを蹴り上げるとさらにその上に回り込んで殴り落とした!が、ギサキも黙っているわけでは無い!
両手に光を溜めると私の方へレーザービームのように撃ち込む!
咄嗟に躱せたが…あ、危なかった…そう言えばあんな技を持っていた…
「ハァァアッ!!」
「ッチ…危ないわね!!」
「ダヤァ!!」
「ッキャァアアア!?」
2発目も躱したが、ギサキは近づいた瞬間にビームでは無く、衝撃波を放つ!!
これだけは躱せなかったが!すぐさま腕で防ぎ、出来るだけ被害を最小限に留めた…しかし、数メートルは吹き飛ばされ、服も殆ど吹っ飛んでしまった…
まぁ服は再生するから良いだろう。
「やってくれるわね!」
「…ッ!?」
「捕まえた!!さぁて…どうしてくれようか…」
「ぐぅう!」
瞬間的に最高速度でギサキの後ろへ回り込むと、後ろから腕ごと抱きしめるように拘束した!流石のギサキもこれには敵わない様だ…必死に振り解こうとするが……!?
な、なんだこの馬鹿力は!コイツ…力が強すぎる!マズい…振り解かれる前にこちらからやるしかない!
私はギサキを抱きしめながら上へと飛ぶと、そのまま空中で方向転換し、頭から地面に突っ込んだ!!私の負担もヤバいが!それ以上にギサキが喰らっただろう!
「ぐぁあああ!?あ、頭が…痛い……?み、ミサキ?」
「よく分かんないけど…戻ったみたいね…がは…」
頭を打ち付けたからなのかどうなのかは分からないが…ギサキの意識が戻ったようだ…良かった良かった…
「オレ、何やって…シスター…コレは一体…」
「ッチ…(プロトタイプはマズかったか…)ギサキ、ミサキを始末しなさい。」
「な!?そ、そんな事…」
「ギサキ!耳を貸しちゃダメよ!」
マズイ…今はマズイ…急に全身へ力が入らなくなった…凄くお腹が空いてるし…もう身体も動かない…今の状態でギサキにやられたら一溜まりも無い…
いくら頑丈だからと言っても…これ以上はマズい!
「早くミサキをやりなさい!早く!」
「そ、そんな事…で、出来ません…嫌です…したくないです…」
「ギサキ!従いなさい!私は貴方の母親なのよ!」
「うっ…うぅ…うわぁあああああ!!」
どうすれば良いのか分からないギサキは頭を抱えて蹲ってしまった。
身体の調子は少しだけ良くなったが…それでも声を出すのが精一杯で身体は動かせない…ここはギサキに任せたいが…ダメだ、あの様子じゃどうにもならない。
しかもシスターはカツカツとこちらへ近付き…
「このバカ娘が!!」
「かぁッ!!い、痛いです…や、止めてください…」
「止めろ!ギサキに手を出すな!!」
「黙れ!まったく…お前等娘たちはいつも私の手を煩わせて…この!!」
「うぐぅぁあッ!う、うぅうううう…」
ギサキは何度もシスターに顔を蹴られた…片目は潰れ、歯は折れ、血が滴る…私は何度も「止めろ!」と叫んだが上げた声も虚しく、ギサキはボッコボコにされた。
そしてギサキの次は私へ狙いを定め…
「がうっはぁッ!?ごっは!?」
「(こうなりゃ双方のコアを潰して壊すしかない…コアごと換える!)」
今度は自分の腹部に足を突き立て、私を攻撃する!何度も!何度も!
一発ぶち込まれる度に鈍い痛みと衝撃が走る…い、痛い…このままだと本当に…
「めろ…やめろ………止めろォ!!」
「クッジャッ!?」
「ギ、ギサキ!…がふッ…」
だがその時、ギサキがシスターを後ろから蹴り飛ばした!!飛ばされたシスターは墓石を破壊しながら奥へ行ってしまった…
「姉ちゃん…ごめん…オレ、オレ…うぅ…」
「がっはぁ!私の事は良いわ…だけど…アイツの事を…」
ギサキに蹴り飛ばされたシスターは足を引き摺りながらこちらへやって来る…意外と耐久性は低いみたいだ…
ここから生還するにはあの女を何とかするしかない。
だが、今の私は起き上がるのがやっとだ…戦える状態ではない。
「はぁ…ぎ、ギサキ…私に歯向かうとは…」
「シスター…もう貴女は…オレの母親じゃない。ただの機械だ。」
「(こうなりゃ仕方ない…)イサキ!リサキ!起動だ!!」
「なんだとッ!?くっ………ハァァアアアアアッ!!」
奴がリモコンを取り出したのを見たギサキはすぐさま光線を射出する!だがしかし…光線が行き届く瞬間に…ボタンは押されてしまった。
「ぐわぁあ!!ガギャァアアアアアアッッ!!」
もうそこに…あの女の姿は無かった……「やった…」と思ったのも束の間!
教会からは2つの人影が姿を現す!1人は歩兵隊の服装をしていてもう1人はインカムを付けた女…マズイ…もしこの2人が私達と同じ様なタイプだと勝てるかどうか分からない!
ギサキも警戒している…私もやっとの思いで立ち上がると向かい合った…クソ…お腹が空いたわね…
「………旧式、此処で何が起きたのですか?」
「きゅ、旧式…?もしかしてオレか?」
「はい。貴女の登録名称は旧式で統一されています。」
「指揮官の姿が見えませんが…何処ですか?」
だがこの2人は…危害を加えるようなことはせず、あの女を探し回る…
「指揮官…シスターなら死んだよ…」
「……そうですか。残念ながら私のデータベースには死後の計画は記録されていません。青い旧式、計算の結果、貴女は次の指揮官に選ばれました。指揮を。」
「指揮を。」
「指揮って言われてもなぁ…お前等2人、とにかく休憩しろ。」
「了解しました。休憩を始めます。」「始めます。」
どうしたものかと私達は頭を悩ませた…あの女は死に、もう居ない。
残ったこの2人の面倒も見ないといけないのだろうか?とにかく…色んな事が急に起こり過ぎだ…今は直ぐにでも休みたい…
つづく
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