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終章 ギサキ
第38話 全ての事実、恐ろしき復讐
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私の名はミサキ、世界最強で間違いない女の子だ。
自分は現在、教会に向けて最高速度でぶっ飛んでいる…理由は簡単だ、仕事である暗示を持つ者の始末が全て終わったからだ…もうこれで仕事は終わり…
少々腑に落ちないが…それでも良い、自分はコレが終わったら少し休んでから修行に出よう…もっと強くなってから術を学び、トロイダをぶっ殺しに行くためだ。
「今、戻ったわよ。」
「ミサキ!心配したよ…今回は長かったら…」
「ホラ。受け取りなさい。」
「受け取るって紙を……え?これ…」
「終わったわ。全部ね。」
私はギサキに全ての色が付いた六芒星の紙を手渡した。
ギサキは「え…」と蚊の鳴くような声で言ったが…「こっちに来て」と私を中まで案内した…シスターに報告もするらしい…ここまでやったんだ、報酬は高くないと気が済まない。
「シスター…ミサキがやりました。」
「へぇえ…やるじゃないの…良いわ、ミサキご苦労。茶を淹れるわ。」
「まぁ頂くわ。」
私は茶を頂くことにした…ここまでやったんだ、此処で少し休んでも罰は当たらない。
ギサキの淹れてくれた茶を啜ると、私は話を聞いた…こんな事を何に使うのかと。
イカれた宗教のきちがい行事に興味が有るわけでは無いが…少しだけ気になる、これは純粋なる知的好奇心である。
「実はね…暗示を持つ者には特徴があるのよ。何かわかる?」
「人間じゃ無いとか?」
「いいえ。彼ら彼女は人間よ全員。奴等はね…外国人なのよ。」
シスターが言うには奴らの国籍が関係あるらしい…奴らの国籍は…
1人目燭台バダル・マシンザ・チェーンハットはイギリス人、2人目彫刻レーナルダ・ヴィンスはフランス人、3人目聖書は病伝・キジハラ(偽)は日本人、4人目十字架ザスタリアン・ムナポトスはロシア人、5人目聖杯リンケル・シュガージャムはアメリカ人、そして最後の人形トロイダ・リッスンは中国人。
よってイギリス、フランス、日本、ロシア、アメリカ、中国…これは…?
「この6つの国は…かつて我々ナチスに反逆した国家だ。」
「ナチス?アンタ等ってドイツ人なの?」
「まぁね、けどミサキ…貴方も同じドイツ人よ。」
「…はぁ?私が?」
待て…私ってドイツ人なの?そうだとしたら…なぜアジア系の顔を?
それに私が仮にそうだとしても…何故、私の事を知っている…?
「ミサキ…ようやく貴方に会えた…そして貴女はテストをクリアした…」
「テスト?…一体何を…か、身体が…」
私は怖くなり、立ち上がろうとしたが身体が動かず、椅子から転げ落ちた。
コイツ…茶になんか盛やがったな!!くっそぅ…私に毒は効かないハズ…麻酔だって痺れ薬だって効かなかった…それなのになぜ…
「暗示を持つ者の始末は計画の遂行に必須…貴方のテストにもなる。」
「け、計画って…」
「ミサキ!貴方の力を使って6つの国を潰すのよ!!虐げられ!屈辱に埋もれる日は終わりを告げる!これからは我々逆卍…ハーケンクロイツが世界を手に入れる!!」
「そ、そんな計画の為に…このクソ野郎…」
「そんな計画?クソ野郎?なんて口の利き方をするの?お母さんに向かって…」
「は、はぁ?母親…?」
それを言い残して私は意識を手放した…
・・・
オレの名はギサキ、「ジャーマンロイド2C1」が本名の女の子だ。
ミサキはシスターの案を断り、牢屋にぶち込まれた…だがシスターは交渉する気らしい。
「ギサキ、いざと言う時は貴方が戦いなさい。」
「はい。」
ミサキの本名は美咲…そして「ジャーマンロイド1O1」という改造人間。
私の姉でシスターの娘だ…だがもうミサキはオレの事を覚えていなかった。
シスターは彼女を「交渉に応じなかった場合は改造する」と言っている…最初は情なんて湧かなかった…しかし、あの時…ミサキはオレへ土産を持ってきたとき…少し嬉しかった…
ウジウジしていていつも情けなかった姉の姿はもう無い、そこに居たのは…
最強の女だ。
「ギサキ、私はイサキとリサキの研究に戻るわ。貴方はチサキを探して。」
「はい。(サキサキうるせぇな…)」
シスターはナチスの科学者でドイツ軍が考案した最強兵士計画の責任者だ。
当初はロボットを一から作ると言うものだったが、コストパフォーマンスを考えた結果、人間を改造する事が良いという結果となった。
そしてその第1号がミサキ、第2号がオレだ…ミサキはよく出来過ぎていた。
後から開発されたオレでも…力と光線放出能力は高くとも、スペックでは負けている。
「(チサキ…何処に居るの…帰って来てよ…)」
第3号である「ジャーマンロイド3C2」のチサキ姉ちゃんは此処を出たっきり戻らない。
きっと逃げたのだろう…このままで良いのだろうか…オレは復讐なんて望んでいない…そんな事をしても過去は戻らないんだ…
だがシスターは止めない…自分の故郷であるドイツが敗戦し、汚名を被った事を研究が遅れた自分のせいだと思っているからだ…実際そうなのだが。
『あ!ギサキ―!』
「はい!何でしょう!」
『ミサキに睡眠薬を追加しといて!』
「分かりました!」
扉越しにシスターと会話すると、オレは牢屋に行き、ミサキへ特殊睡眠薬を追加で注入しようとした…が、手を止めた…良いのか?こんな事をして?
このまま行けばすべてが終わる…何も残らない…復讐は何も生まない。
「う、うぅん…ふぁぁ…」
「(マズイ!)」
「んぁ…」
ミサキが目を覚ましそうになったので、睡眠薬を追加注入した…
もし彼女が目を覚ませばオレとシスターは殺される…そっちの方が良いのかもしれない…だが…オレはまだ死にたくない…いっそのこと、自分も逃げてしまおうか?
そうすれば…いや…ミサキは地の果てでも追いかけて来る…怖い。
オレは自分の部屋へと戻った…
「どうすれば…どうすれば…良いんだ…」
【どうでも良いけどさぁ…ギサキ、自分の意見をはっきり言ったら?】
「そんな事を言ったら殺される…」
この生首はキュブーゲ…ミサキがお土産に持ってきた生首だ…コイツは信頼できる。
エサ代も掛からないのでシスターも飼う事を許可している。
【そのままウジウジしてるってのもどうかと思うけどなぁ。】
「はぁ…どうすれば……!?」
その時、教会に凄まじい音が響き、激しく揺れた!!
なんだ!?と思い、1人で共に慌てて外へ出てみると…そこには…
「ハロー!お久しぶり!」
「ト、トロイダ…貴様、何故ここに…ミサキが始末したハズ…」
そこに居たのは憎き宿敵トロイダの野郎だ…どうしてだ!?ミサキが始末したハズなのに…何故生きている…しかも誰かを連れているぞ…
どうやら計画の阻止に全力を出して来たようだな…やるしかない。
「色々と事情が有るのよ。チサキ、相手してあげなさい。」
「久しぶりだな。アンリ…いや、ギサキ。」
「チサキ!?何故お前がソイツと…まさか!!」
「私はトロイダの部下になったのさ。まぁ一時的なものだが。」
ちくしょう…このボンクラ生ゴミめが!!シスターを裏切るなんて許せねぇ!!
やっぱりぶっ殺してやる!!塵一つ残さずな!!
オレは右手から熱射線を放出すると、すぐに奴の後ろへ回り込んだ!!
「ぐふぉあ!!い、いきなり…」
「だりゃぁああ!!」
熱線は躱されたが、後ろへ回り込み、直ぐに蹴り上げると上へ回って蹴り落とした!!
チサキは戦闘用では無く、水中作業用!一方で自分は万能戦闘用!光線放出機能に宇宙捜索用の高速ジェットと強力な力!!
お前など敵などでは無い!!
「死ねやァ!!チサキ!!」
「こ、このパワーは…うぉおおお!!」
「遅い!!」
地面へ着地したチサキの脳天に踵落としを喰らわせ!背中を思い切り蹴り飛ばす!
そして瞬間的に奴の飛ばされた方へ回り込むと、両拳を組んで横へ振った!バッギィ!!と音を立ててチサキは飛ばされ、奥の木々を粉砕しながら飛んで行く!
トドメに奴が飛んで行った方向に光線を放出すると、トロイダと向き合った。
「中々やるじゃない。正直感心したわ。」
「黙れ、殺してやる…」
「それは良いけど…ふふ、これが必要じゃない?」
「そ、それは…紙!」
トロイダが持っていたのは暗示を持つ者が描かれている紙…だが!!
全て白紙に戻っている…何故だ…色が付いていない…
「ワタシに会いたくば、この紙の色を集めなさい。6つよ。」
「おのれ!逃げる気か!!」
「戦略的撤退ってね…ふふふ…バイバーイ!」
「あぁ!!待て!!」
奴は緑色の亀裂を創り出し、その中へ飛び込み、姿を消してしまった。
直ぐに追い打ちで光線を何発も放出したが…そこに残るは無傷の紙のみ…チクショウ…逃げられたか…
「ギサキ!何があった!」
「シスター…奴が…トロイダが生きてました…」
「そんな…」
「あとコレを…紙ですが…」
オレはシスターに紙とトロイダ、チサキが来たことを話した。
「チサキも来たのか!奴はどこに!」
「すみません…トロイダには逃げられまして…チサキはついカッとなって…」
「そう…なら良いわ。よくやったわね。アイツはクズよ。」
「はい。」
トロイダが残した紙には暗示を指す言葉が書いてあったが…私達の物より異なっている。
書かれている暗示は右腕、右足、左腕、左足、胴体、頭…だ。
それぞれには名前と居場所も書いてある…アイツに会いたきゃ全員やれって事か…
「どうします…シスター…」
「ギサキ、お願いできる?コイツ等をやるって。」
「…はい。できます…いや、やらせてください。」
「良い返事よ。」
オレはコイツ等6人の暗示を持つ者を葬り去ることにした…まずは1人目、左足の場所…
此処よりそう遠くない十七番街、敵の名はリタイル…爬虫類獣人と書いてある。
ご丁寧に書きやがってチクショウ!!オレの力を舐めるなよ…直接的な力はミサキより強いんだ…オレならやれる…殺せる…
「すみません、シスター…オレはもう行きます!」
「え、ええ…分かったわ!」
上へ飛び上がると、最高速度で十七番街へと向かった!!あそこは確か…前にミサキがヤクザ組織をぶっ壊していたハズ…前より直ぐに終わりそうだ…
・・・
「言え!リタイルは何処に居る!!」
【し、知らねぇ!!俺はもうヤクザじゃねぇんだ!勘弁してくれ!!】
「ッチ…使えん奴だ…」
【ふぁぐぁ!?】
街へ着くや否や、オレは近くのヤクザに尋問した…がしかし、どいつもこいつも使えないクズばかり…殺しても殺しがいの無い奴等ばかりだ。
下っ端を消し飛ばしたオレは奴が以前、働いていたというマッサージ店、狂気賛歌に訪れた。
だが…丸焦げだ…闘争でも起きたのか?
「なんだこの街には…ゴミしか無いのか…」
飛んだ無駄足だった…どれ、外に出てこのビルごと消し飛ばすか…
そんな冗談でも思い浮かべて店から出ようとしたその時、誰かがオレの後ろに居た。
何の変哲もない小娘だ…オレの姿を見てビビっている。
確かにオレの姿はいつもの青いローブに仮面…ビックリするのも無理はない。
「あ、あの…此処は…」
「おい女、リタイルという奴を知らないか?お前は此処で働いていたんだろう?」
「何故その事を…知って…」
「やっぱりか…こんなボロクズに来る奴なんて従業員意外にあり得ん。」
従業員の女にリタイルの事を聞いたが…「知らない」と答えられた。
コイツ、嘘をついているな…此処で働いているのなら知らないはずが無い…クソゥ…ミサキの生気探知があればすぐに分かるんだろうなぁ…羨ましい…
「ウソをつくな…舐めてんのか?殺すぞ?」
「ひぃぃ…」
【おいテメェ…アナに何してやがる?】
「あぁ?」
女を掴み、右手の握り拳で脅していると、さらに奥から誰かがやって来た。
コイツ…爬虫類だ、爬虫類獣人だ…バカめ、自分から姿を現すとは…
オレは奴から離れ、アナとか言う女を地面に伏せさせると、そのうなじへ足を置いた。
【おい…今のうちに止めんと…殺すぞ?】
「るせんだよ、頭カスカスのかまぎっちょが。テメェ殺しに来てんだよ。」
「に、逃げてリタイル君…この人…貴方を…ぐぁ!!」
【止めろ!!】
「止めてもらいたきゃ大人しくしてろ。」
リタイルがオレに近付こうとすれば首に置いた足に力を入れて威嚇した。
このまま力を入れ続ければ…首はいとも簡単に折れて、この女は死ぬだろう。
好都合だ…この女が死ぬのはリタイルにとっては心底嫌らしい…良い脅し道具と来たもんだ…さて、冗談はさておき、殺すか。
「…大人しくしとけよ。」
【クソ…止め…!?ぐぉおおあああ!!う、腕がぁ!!】
「ッキャァァアア!?」
手始めに指先から高圧光線を放ち、右腕を肩の位置から切断した。
血は出ていない…なんたって高温の光線で焼き斬ったんだ、傷口なんて斬った瞬間に焼かれて塞がる。
ついでにこのうるさい女は首を折って殺した。
「がッ!!」
【アナ!!よくも…よくもやりやがったな!!甲羅展開!!】
「おぉ…魔法か…」
【お前はもう許さん…絶対に殺してやる!!】
奴の全身は甲羅のような六角形の模様が付いた鎧に変わる!!そして瞬間的に後ろへ回り込んだ奴はオレを外へ蹴り飛ばした!!防御力は低いんだよな…
だが…良いぞ!骨のある奴だ!!…がぁ…ちょっと興奮し過ぎてしまった…
く、薬を吸わないと…マスクのボタンを押して………
「すぅ……はぁ……ふぅ、落ち着いた落ち着いた…」
【(な、なんだ?奴の構えが変わったぞ…)だが!死ねい!!】
「危ねぇ!?ちょ、ちょっと待て!今は薬を吸っていて…」
【訳の分からんことを言うな!!殺してやる!!ぶっ殺してやる!!】
ダメだ、完全にキレている…どのくらいキレているかって言うと木端微塵にされた玉ねぎより切れている…
しばらく奴の攻撃を躱すと、お返しに光線を右手に溜め…
「ゼロ距離爆破ァッ!!」
【ごふあ!?お、おのれ!!】
「まだ来るか…」
奴の腹部に手の平を押し当て、ゼロ距離で光線を爆裂させた…しかし!
リタイルは耐えており、こちらへ攻撃を続ける!今度は右手に軽い光線を溜めると…奴の顔面へ投げつける!!小ぶりな分、素早い弾だ!!
光速バレット砲を喰らえ!!
【うごぉ!…ふん!速いだけでこんな技…!?】
「ダリャァァアア!!」
それはただの攻撃では無い!お前の目つぶしも兼ねている!奴の顔面の煙が晴れる前に両手に光線を溜めると、両脇腹へ手を当て…思いっきり放出した!!
高圧電流よりも強い衝撃と熱がリタイルの全身に走る!!つま先から脳天までも!
【イグアァアアアアアアアア!!?】
「トドメだ!!消えて無くなれ!リタイル!!」
【ヂ、ヂクショウ!!俺は…オレは!!】
「ハァァァァッ!!」
痺れて動けない奴の真上へ飛ぶと、最もオーソドックスな光線を真上から放出した。
地面は抉れ、周りの建造物の窓は割れて散り、リタイルは塵一つ残らなかった。
よし…勝った!!はぁ…勝ったはいいけど…少し力を使い過ぎた…お、お腹が空いたよぉ…早く戻ってシスターに食べ物を貰わないと…
オレは教会目掛けて素早く…だが行きよりかなり遅くだ…光線技は非常に強力だが体内に溜めたエネルギーを使用しているので、使い過ぎるとバテる。
あと5体か…ミサキもこんな気持ちだったのかなぁ…ちょっと悪い事したな…
つづく
自分は現在、教会に向けて最高速度でぶっ飛んでいる…理由は簡単だ、仕事である暗示を持つ者の始末が全て終わったからだ…もうこれで仕事は終わり…
少々腑に落ちないが…それでも良い、自分はコレが終わったら少し休んでから修行に出よう…もっと強くなってから術を学び、トロイダをぶっ殺しに行くためだ。
「今、戻ったわよ。」
「ミサキ!心配したよ…今回は長かったら…」
「ホラ。受け取りなさい。」
「受け取るって紙を……え?これ…」
「終わったわ。全部ね。」
私はギサキに全ての色が付いた六芒星の紙を手渡した。
ギサキは「え…」と蚊の鳴くような声で言ったが…「こっちに来て」と私を中まで案内した…シスターに報告もするらしい…ここまでやったんだ、報酬は高くないと気が済まない。
「シスター…ミサキがやりました。」
「へぇえ…やるじゃないの…良いわ、ミサキご苦労。茶を淹れるわ。」
「まぁ頂くわ。」
私は茶を頂くことにした…ここまでやったんだ、此処で少し休んでも罰は当たらない。
ギサキの淹れてくれた茶を啜ると、私は話を聞いた…こんな事を何に使うのかと。
イカれた宗教のきちがい行事に興味が有るわけでは無いが…少しだけ気になる、これは純粋なる知的好奇心である。
「実はね…暗示を持つ者には特徴があるのよ。何かわかる?」
「人間じゃ無いとか?」
「いいえ。彼ら彼女は人間よ全員。奴等はね…外国人なのよ。」
シスターが言うには奴らの国籍が関係あるらしい…奴らの国籍は…
1人目燭台バダル・マシンザ・チェーンハットはイギリス人、2人目彫刻レーナルダ・ヴィンスはフランス人、3人目聖書は病伝・キジハラ(偽)は日本人、4人目十字架ザスタリアン・ムナポトスはロシア人、5人目聖杯リンケル・シュガージャムはアメリカ人、そして最後の人形トロイダ・リッスンは中国人。
よってイギリス、フランス、日本、ロシア、アメリカ、中国…これは…?
「この6つの国は…かつて我々ナチスに反逆した国家だ。」
「ナチス?アンタ等ってドイツ人なの?」
「まぁね、けどミサキ…貴方も同じドイツ人よ。」
「…はぁ?私が?」
待て…私ってドイツ人なの?そうだとしたら…なぜアジア系の顔を?
それに私が仮にそうだとしても…何故、私の事を知っている…?
「ミサキ…ようやく貴方に会えた…そして貴女はテストをクリアした…」
「テスト?…一体何を…か、身体が…」
私は怖くなり、立ち上がろうとしたが身体が動かず、椅子から転げ落ちた。
コイツ…茶になんか盛やがったな!!くっそぅ…私に毒は効かないハズ…麻酔だって痺れ薬だって効かなかった…それなのになぜ…
「暗示を持つ者の始末は計画の遂行に必須…貴方のテストにもなる。」
「け、計画って…」
「ミサキ!貴方の力を使って6つの国を潰すのよ!!虐げられ!屈辱に埋もれる日は終わりを告げる!これからは我々逆卍…ハーケンクロイツが世界を手に入れる!!」
「そ、そんな計画の為に…このクソ野郎…」
「そんな計画?クソ野郎?なんて口の利き方をするの?お母さんに向かって…」
「は、はぁ?母親…?」
それを言い残して私は意識を手放した…
・・・
オレの名はギサキ、「ジャーマンロイド2C1」が本名の女の子だ。
ミサキはシスターの案を断り、牢屋にぶち込まれた…だがシスターは交渉する気らしい。
「ギサキ、いざと言う時は貴方が戦いなさい。」
「はい。」
ミサキの本名は美咲…そして「ジャーマンロイド1O1」という改造人間。
私の姉でシスターの娘だ…だがもうミサキはオレの事を覚えていなかった。
シスターは彼女を「交渉に応じなかった場合は改造する」と言っている…最初は情なんて湧かなかった…しかし、あの時…ミサキはオレへ土産を持ってきたとき…少し嬉しかった…
ウジウジしていていつも情けなかった姉の姿はもう無い、そこに居たのは…
最強の女だ。
「ギサキ、私はイサキとリサキの研究に戻るわ。貴方はチサキを探して。」
「はい。(サキサキうるせぇな…)」
シスターはナチスの科学者でドイツ軍が考案した最強兵士計画の責任者だ。
当初はロボットを一から作ると言うものだったが、コストパフォーマンスを考えた結果、人間を改造する事が良いという結果となった。
そしてその第1号がミサキ、第2号がオレだ…ミサキはよく出来過ぎていた。
後から開発されたオレでも…力と光線放出能力は高くとも、スペックでは負けている。
「(チサキ…何処に居るの…帰って来てよ…)」
第3号である「ジャーマンロイド3C2」のチサキ姉ちゃんは此処を出たっきり戻らない。
きっと逃げたのだろう…このままで良いのだろうか…オレは復讐なんて望んでいない…そんな事をしても過去は戻らないんだ…
だがシスターは止めない…自分の故郷であるドイツが敗戦し、汚名を被った事を研究が遅れた自分のせいだと思っているからだ…実際そうなのだが。
『あ!ギサキ―!』
「はい!何でしょう!」
『ミサキに睡眠薬を追加しといて!』
「分かりました!」
扉越しにシスターと会話すると、オレは牢屋に行き、ミサキへ特殊睡眠薬を追加で注入しようとした…が、手を止めた…良いのか?こんな事をして?
このまま行けばすべてが終わる…何も残らない…復讐は何も生まない。
「う、うぅん…ふぁぁ…」
「(マズイ!)」
「んぁ…」
ミサキが目を覚ましそうになったので、睡眠薬を追加注入した…
もし彼女が目を覚ませばオレとシスターは殺される…そっちの方が良いのかもしれない…だが…オレはまだ死にたくない…いっそのこと、自分も逃げてしまおうか?
そうすれば…いや…ミサキは地の果てでも追いかけて来る…怖い。
オレは自分の部屋へと戻った…
「どうすれば…どうすれば…良いんだ…」
【どうでも良いけどさぁ…ギサキ、自分の意見をはっきり言ったら?】
「そんな事を言ったら殺される…」
この生首はキュブーゲ…ミサキがお土産に持ってきた生首だ…コイツは信頼できる。
エサ代も掛からないのでシスターも飼う事を許可している。
【そのままウジウジしてるってのもどうかと思うけどなぁ。】
「はぁ…どうすれば……!?」
その時、教会に凄まじい音が響き、激しく揺れた!!
なんだ!?と思い、1人で共に慌てて外へ出てみると…そこには…
「ハロー!お久しぶり!」
「ト、トロイダ…貴様、何故ここに…ミサキが始末したハズ…」
そこに居たのは憎き宿敵トロイダの野郎だ…どうしてだ!?ミサキが始末したハズなのに…何故生きている…しかも誰かを連れているぞ…
どうやら計画の阻止に全力を出して来たようだな…やるしかない。
「色々と事情が有るのよ。チサキ、相手してあげなさい。」
「久しぶりだな。アンリ…いや、ギサキ。」
「チサキ!?何故お前がソイツと…まさか!!」
「私はトロイダの部下になったのさ。まぁ一時的なものだが。」
ちくしょう…このボンクラ生ゴミめが!!シスターを裏切るなんて許せねぇ!!
やっぱりぶっ殺してやる!!塵一つ残さずな!!
オレは右手から熱射線を放出すると、すぐに奴の後ろへ回り込んだ!!
「ぐふぉあ!!い、いきなり…」
「だりゃぁああ!!」
熱線は躱されたが、後ろへ回り込み、直ぐに蹴り上げると上へ回って蹴り落とした!!
チサキは戦闘用では無く、水中作業用!一方で自分は万能戦闘用!光線放出機能に宇宙捜索用の高速ジェットと強力な力!!
お前など敵などでは無い!!
「死ねやァ!!チサキ!!」
「こ、このパワーは…うぉおおお!!」
「遅い!!」
地面へ着地したチサキの脳天に踵落としを喰らわせ!背中を思い切り蹴り飛ばす!
そして瞬間的に奴の飛ばされた方へ回り込むと、両拳を組んで横へ振った!バッギィ!!と音を立ててチサキは飛ばされ、奥の木々を粉砕しながら飛んで行く!
トドメに奴が飛んで行った方向に光線を放出すると、トロイダと向き合った。
「中々やるじゃない。正直感心したわ。」
「黙れ、殺してやる…」
「それは良いけど…ふふ、これが必要じゃない?」
「そ、それは…紙!」
トロイダが持っていたのは暗示を持つ者が描かれている紙…だが!!
全て白紙に戻っている…何故だ…色が付いていない…
「ワタシに会いたくば、この紙の色を集めなさい。6つよ。」
「おのれ!逃げる気か!!」
「戦略的撤退ってね…ふふふ…バイバーイ!」
「あぁ!!待て!!」
奴は緑色の亀裂を創り出し、その中へ飛び込み、姿を消してしまった。
直ぐに追い打ちで光線を何発も放出したが…そこに残るは無傷の紙のみ…チクショウ…逃げられたか…
「ギサキ!何があった!」
「シスター…奴が…トロイダが生きてました…」
「そんな…」
「あとコレを…紙ですが…」
オレはシスターに紙とトロイダ、チサキが来たことを話した。
「チサキも来たのか!奴はどこに!」
「すみません…トロイダには逃げられまして…チサキはついカッとなって…」
「そう…なら良いわ。よくやったわね。アイツはクズよ。」
「はい。」
トロイダが残した紙には暗示を指す言葉が書いてあったが…私達の物より異なっている。
書かれている暗示は右腕、右足、左腕、左足、胴体、頭…だ。
それぞれには名前と居場所も書いてある…アイツに会いたきゃ全員やれって事か…
「どうします…シスター…」
「ギサキ、お願いできる?コイツ等をやるって。」
「…はい。できます…いや、やらせてください。」
「良い返事よ。」
オレはコイツ等6人の暗示を持つ者を葬り去ることにした…まずは1人目、左足の場所…
此処よりそう遠くない十七番街、敵の名はリタイル…爬虫類獣人と書いてある。
ご丁寧に書きやがってチクショウ!!オレの力を舐めるなよ…直接的な力はミサキより強いんだ…オレならやれる…殺せる…
「すみません、シスター…オレはもう行きます!」
「え、ええ…分かったわ!」
上へ飛び上がると、最高速度で十七番街へと向かった!!あそこは確か…前にミサキがヤクザ組織をぶっ壊していたハズ…前より直ぐに終わりそうだ…
・・・
「言え!リタイルは何処に居る!!」
【し、知らねぇ!!俺はもうヤクザじゃねぇんだ!勘弁してくれ!!】
「ッチ…使えん奴だ…」
【ふぁぐぁ!?】
街へ着くや否や、オレは近くのヤクザに尋問した…がしかし、どいつもこいつも使えないクズばかり…殺しても殺しがいの無い奴等ばかりだ。
下っ端を消し飛ばしたオレは奴が以前、働いていたというマッサージ店、狂気賛歌に訪れた。
だが…丸焦げだ…闘争でも起きたのか?
「なんだこの街には…ゴミしか無いのか…」
飛んだ無駄足だった…どれ、外に出てこのビルごと消し飛ばすか…
そんな冗談でも思い浮かべて店から出ようとしたその時、誰かがオレの後ろに居た。
何の変哲もない小娘だ…オレの姿を見てビビっている。
確かにオレの姿はいつもの青いローブに仮面…ビックリするのも無理はない。
「あ、あの…此処は…」
「おい女、リタイルという奴を知らないか?お前は此処で働いていたんだろう?」
「何故その事を…知って…」
「やっぱりか…こんなボロクズに来る奴なんて従業員意外にあり得ん。」
従業員の女にリタイルの事を聞いたが…「知らない」と答えられた。
コイツ、嘘をついているな…此処で働いているのなら知らないはずが無い…クソゥ…ミサキの生気探知があればすぐに分かるんだろうなぁ…羨ましい…
「ウソをつくな…舐めてんのか?殺すぞ?」
「ひぃぃ…」
【おいテメェ…アナに何してやがる?】
「あぁ?」
女を掴み、右手の握り拳で脅していると、さらに奥から誰かがやって来た。
コイツ…爬虫類だ、爬虫類獣人だ…バカめ、自分から姿を現すとは…
オレは奴から離れ、アナとか言う女を地面に伏せさせると、そのうなじへ足を置いた。
【おい…今のうちに止めんと…殺すぞ?】
「るせんだよ、頭カスカスのかまぎっちょが。テメェ殺しに来てんだよ。」
「に、逃げてリタイル君…この人…貴方を…ぐぁ!!」
【止めろ!!】
「止めてもらいたきゃ大人しくしてろ。」
リタイルがオレに近付こうとすれば首に置いた足に力を入れて威嚇した。
このまま力を入れ続ければ…首はいとも簡単に折れて、この女は死ぬだろう。
好都合だ…この女が死ぬのはリタイルにとっては心底嫌らしい…良い脅し道具と来たもんだ…さて、冗談はさておき、殺すか。
「…大人しくしとけよ。」
【クソ…止め…!?ぐぉおおあああ!!う、腕がぁ!!】
「ッキャァァアア!?」
手始めに指先から高圧光線を放ち、右腕を肩の位置から切断した。
血は出ていない…なんたって高温の光線で焼き斬ったんだ、傷口なんて斬った瞬間に焼かれて塞がる。
ついでにこのうるさい女は首を折って殺した。
「がッ!!」
【アナ!!よくも…よくもやりやがったな!!甲羅展開!!】
「おぉ…魔法か…」
【お前はもう許さん…絶対に殺してやる!!】
奴の全身は甲羅のような六角形の模様が付いた鎧に変わる!!そして瞬間的に後ろへ回り込んだ奴はオレを外へ蹴り飛ばした!!防御力は低いんだよな…
だが…良いぞ!骨のある奴だ!!…がぁ…ちょっと興奮し過ぎてしまった…
く、薬を吸わないと…マスクのボタンを押して………
「すぅ……はぁ……ふぅ、落ち着いた落ち着いた…」
【(な、なんだ?奴の構えが変わったぞ…)だが!死ねい!!】
「危ねぇ!?ちょ、ちょっと待て!今は薬を吸っていて…」
【訳の分からんことを言うな!!殺してやる!!ぶっ殺してやる!!】
ダメだ、完全にキレている…どのくらいキレているかって言うと木端微塵にされた玉ねぎより切れている…
しばらく奴の攻撃を躱すと、お返しに光線を右手に溜め…
「ゼロ距離爆破ァッ!!」
【ごふあ!?お、おのれ!!】
「まだ来るか…」
奴の腹部に手の平を押し当て、ゼロ距離で光線を爆裂させた…しかし!
リタイルは耐えており、こちらへ攻撃を続ける!今度は右手に軽い光線を溜めると…奴の顔面へ投げつける!!小ぶりな分、素早い弾だ!!
光速バレット砲を喰らえ!!
【うごぉ!…ふん!速いだけでこんな技…!?】
「ダリャァァアア!!」
それはただの攻撃では無い!お前の目つぶしも兼ねている!奴の顔面の煙が晴れる前に両手に光線を溜めると、両脇腹へ手を当て…思いっきり放出した!!
高圧電流よりも強い衝撃と熱がリタイルの全身に走る!!つま先から脳天までも!
【イグアァアアアアアアアア!!?】
「トドメだ!!消えて無くなれ!リタイル!!」
【ヂ、ヂクショウ!!俺は…オレは!!】
「ハァァァァッ!!」
痺れて動けない奴の真上へ飛ぶと、最もオーソドックスな光線を真上から放出した。
地面は抉れ、周りの建造物の窓は割れて散り、リタイルは塵一つ残らなかった。
よし…勝った!!はぁ…勝ったはいいけど…少し力を使い過ぎた…お、お腹が空いたよぉ…早く戻ってシスターに食べ物を貰わないと…
オレは教会目掛けて素早く…だが行きよりかなり遅くだ…光線技は非常に強力だが体内に溜めたエネルギーを使用しているので、使い過ぎるとバテる。
あと5体か…ミサキもこんな気持ちだったのかなぁ…ちょっと悪い事したな…
つづく
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