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第陸章 兎ヤ露ツ異の堕ショ李ウ都タ棲イ无は…人形篇
第参拾伍話 シリニレカテト
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私の名はミサキ、キツネと睨み合っている世界最強の女の子だ。
ケイオスタワーまでの道中にある竹林「ショウケイ」を抜ける私達はタヌキとキツネの住む町までやって来た…此処を抜ければ直ぐに竹林から出られるが、そうはいかない。
トロイダの差し金と思われる、左腕の無いキツネが私達へ勝負を仕掛けて来た。
【俺の名はミョッキ…お前を捕まえれば報酬は弾むと言われてな…】
「アイツも変な事するわね。私が直接出向くというのに。」
「嫌がらせのつもりでしょう…或いは体力の」
「私がやるわ。アンタはそこに居なさい。」
【自身が有るようだな…この姿を見ても同じことをほざけるかな!!】
ミョッキと名乗るキツネはボフンッ!!と煙に巻かれ…大きな蟹の怪物へ変身した!
シオマネキの様に右のハサミが大きく、左のハサミは(一般的な蟹に比べれば大きいが)小さい…そして口の辺りからはブクブクと泡を垂らす…
【はっはは!真っ二つに挟み切ってやる!!】
「だったらこっちは茹でガニにしてあげるわよ!!」
奴がブンブン!と振り回すハサミを躱すと、上へ飛んで奴を見下ろした…
蟹の弱点なんて分からない…しかし…構造からして背中の甲羅には手が届かないだろう!私は奴の後ろへ回り込むと、ストレートパンチをぶち込んだ!!
しかし!流石は蟹…あんまり効いていない…
【背中なら手が届かないと思ったか?そうはいかんぞ!!】
「うわ!?トゲが!!」
【串刺しにしてやる!!どうだ!!】
「くぅおお!!」
全身に鋭いトゲを生やしたカニは勢いよく飛び上がり、甲羅で押し潰すように私の上へのしかかって来た!!お、重い!コイツには質量保存の法則は通用しないのか!!
【ふはははは!!どぉれ…グチャグチャのジャムに…】
「この…カニ野郎…」
【も、持ち上げられ…うぉお!!】
私は潰れずに奴を両手で持ち上げると…上に向かって投げた!!そして奴に向かって飛び上がると…奴の腹部の辺りを狙って頭から突っ込む!!
いくらカニと言えども…この一撃を耐えきれるはずが無い!!
【うっがぁああ!!】
「かふッ…ど、どうよ…」
奴と同時に地面へ降り立つと、仰向けに泡をブクブク噴きながら倒れる奴の腹部に追撃に白鞘をぶっ刺す!!流石はキジハラの刀…ズブリとケーキに入刀する様に入った!
【っぎゃぁぁあああ!!は、腹がぁぁ!!】
「まだまだぁ!!」
【ぐっぶあぁあああ!がはぁ!】
「内臓を抉り取ってやる!!」
カニの腹へ突き立てた刀をズブッシュ!!と横へ強引にスライドさせる!!
斬り裂いた奴の腹からは湯気と共に内臓が飛び出す!カニの物とは思えない腸等だ…やっぱりカニ味噌までは再現不可能なのね…
このまま潜り込んで内臓をグチャグチャにしてやろうと思ったが、奴は変化を解いた。
だが変化を解いても腹から血が噴き出し、奴は内蔵が出ないように必死に抑えている…
「もう死んどいた方が身の為よ。大人しくくたばりなさい。」
【お生憎様…しつこさが売りなんでね……こうなりゃ…この町ごとぶっ潰してやる!!】
「なんですって!?チックショウ!本当にやる気!?」
【更地になってしまえッッ!!】
ミョッキは凄まじい速さで上へ飛ぶと、町よりも大きな岩石へと姿を変える!!
もはや岩山としか言いようの無い巨大さだ!!逃げても間に合わない…だとすれば…受け止めるしかない!!
「ミサキ!アレを受け止める気ですか!!」
「やるっきゃ無いでしょ!!失敗しても逃げても!全員仲良くパニーニよ!!」
【俺の変化は重さをも変えるぞ!!】
ハッキリ言って馬鹿かもしれない…だけどやるしかない!!私は上空へ飛び上がると、両手を上にして…受け止める体制になる…言っておくが元○玉では無い。
落ちて来る岩山…めちゃくちゃ重そうだけど…イケる!私なら!!
【ぶっ潰れろ!!ミサキィ!!】
「うぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおッ!!」
「ヒィィ!?もう見てられません!!」
「ぐぁああ!!」
当たり前だが!!私個人の力で完璧に受け止める事は不可能だった!!想像を絶する圧倒的質量に私は押し落とされそうになる!!…が!
「チック……ショォォウウ!!」
【な、なんだとッ!?】
「う、受け止めたぁ!?あの岩山を!!」
「伊達に…最強を自称して無いのよッ!私は!!」
全身がバキバキ音を立てても!!何としてでも下へ落下せずに持ち上げた!!
自分でも訳が分からないぐらいに無理やり力を振り絞った結果…なんと以外にも上手く行った!!やっぱり私って最強なのかもしれない!!
そのまま岩山を持ち上げた私は…
「飛んで行きやがれ!!」
【うわぁああ!?へ、変化を解かなくては…!この………はッ!?】
「………死ね。」
【はっぐぁぁあああッ!!】
別の場所へと投げ捨てた!!…が、奴は直ぐに変身を解く…それを待っていた!!
白鞘を抜くと奴の目と鼻の先にまで近付き…容赦なく真っ二つに断ち切る!
横にでは無く、縦でも無い…今回は斜めに斬ってみせた…
【お、おのれ…俺を殺しても…追手は来るぞ…この先も…】
「そん時はアンタに会わせてやるわよ…死んでたらの話だけどね。」
私はその言葉と共に奴を空中でバラバラに斬り崩した…ここまでやれば流石に死ぬだろう。
スタッ…と地面に降り、白鞘を仕舞うと…一気に疲れが全身に響く…
今回はやり過ぎたかもしれない…全身が酷く痛い…やはり無理は禁物か…
「ミサキ…大丈夫ですか…?」
「ちょっと疲れてるだけよ…休憩したら…直ぐに行くわよ…」
「あぁ!ちょっと…」
建物に寄り掛かり、瞼を閉じると…そのまま意識を手放した…
・・・
「んん…うぅん……」
「ミサキ、気が付きましたか?」
「まぁね…」
目が覚めると、自分はどこかの和室で横になっていた…此処は?
「…此処は?」
「竹林のお宿です。地面はマズいと思いまして…」
「そうなの…ふぁぁ~…」
あくびをして眠気を覚ますと…やけに香ばしい匂いが鼻を突いた。
「コレ何の匂い?」と問いかけるとチゥワナは焼き鳥の入った箱を指さす…
コイツ、私が寝ている横で焼き鳥を食っていたのか…でも、いつの間に?
(まぁどうせ寝ている間に買ったのだろう…気にする必要は無い)
「どうです?砂肝とレバー…あとハツがございますよ。」
「内臓系ばっかじゃない…まぁ貰うわ。」
起き抜けの食事には向いていないが…贅沢は言えない。
聞いてみたところ、私は5時間ほど眠っていたらしい…相変わらず外は暗いまま…もしかして昼夜と言う概念が無いのだろうか?
私はチゥワナに「アンタは寝ないの?」と聞いたが…睡眠は必要ないらしい。
「ウチは一応トロイダです…睡眠なんて必要ありません。」
「気になってたんだけど…トロイダって何者なの?元人間よね?」
「元人間の道士です…今はただの妖怪のなれの果てですが…」
聞くところによると、トロイダは元々道教を信仰する道士であったが…仙人に頼み込んで神通力や術、不老不死について学んだらしい。
彼女は目的の力を手に入れると仙人たちを皆殺しにし、さらに力を極めた。
だが決して…大変な騒ぎを起こす事などはしなかった…そうなれば自分が注目され、面倒くさい事になると知っていたからだ…
「トロイダは…ケイオプレイスの存在を知るや否や…カオス極まりない土地へと変えてしまいました…」
ケイオプレイスも…元は美しく、自然の溢れる場所であった…しかし、トロイダはそれを面白くないと感じたのか、様々な世界からしっちゃかめっちゃかに物を取り寄せてはケイオプレイスへぶち込んだ。
それを繰り返した結果…こんな最悪な土地が生まれてしまったのだ…
今や此処はカオスと矛盾に満ちた世界…
「ウチは早く、アイツの中へ入って止めたいんです!」
「抑止力ね…案外、そんな物が無くなったら人間ってあんなんになっちゃうのね。」
トロイダはどうやってチゥワナを引き離したのだろうか…それは謎。
聞いてみても「自分でも分からない」とのこと…トロイダも真面目だった頃があると…そんな姿を見てみたいなぁ…と思ってしまう…
「まぁ良いわ…もう先へ進みましょう。」
「分かりました、急ぎましょう。」
私はもう疲れが取れたのでもう行こう…あまり無駄に時間を喰うとヤバイ。
チゥワナ曰く、バグ人へ変わるには此処にやって来て最低でも3日でその予兆が見え始めるらしい…最初に身体の至る所に四角い斑点が出来る…そして次に声が歪み…最後には全身が透けたり千切れたり…
完全なバグ人へ変わるまでのタイムリミットは…1週間だ。
「予兆が見え始めると一気に全身が蝕まれます…」
「だったら尚更ね。本当に眠くない?ほとんどノンストップよ?」
「大丈夫です。疲労の概念も無いので。」
トロイダも便利な身体をしているなぁ…と思いながら私達は先へ急ぐことに。
チェックアウトした時に…受付と客から変な目で見られた…そりゃ短時間で宿から女が2人だけで出て来るなんて怪しいしかない…
(ちょっとだけ潰しとけば良かったと思ってしまった…)
「この先は何があるの?」
「確か…クリスカーブリッジという橋を越えればコソラグタウンです。そこにケイオスタワーがあります。」
「なるほど…その橋はどのくらいあるの?」
「2キロ半です。」
「結構長いわね…」
クリスカーブリッジは約2キロ半の巨大な吊り橋…2キロ半ってことは2500メートルか…飛べば直ぐに渡れるが、飛ぶのは危険だと何度も言われたので止めた。
飛び過ぎると変な生物に喰われたり、クリスカー川には凶暴な生物が居るらしい。
ダンクルオステウスやメガロドン、ダゴンというよく分からない生物の名を聞いて頭に「?」を浮かべたが…何となくヤバイというのはよく分かった。
「その橋って…変なのとか待ってたりしないわよね?」
「変なのとは…?橋姫とかですか?居ないと思いますけど。」
「そっかぁ…なら良いわ。」
「問題は橋を渡った先のコソラグタウンです。」
コソラグタウンには先ほどもチゥワナが言ったように目的地のケイオスタワーがある。
となれば…当然、トロイダからの攻撃も激しくなるだろう。
その街はトロイダが最初に支配した場所であり、最も変な奴らが集う混沌に満ちた場所になっている…奴による支配も酷く、直属の部下もウロウロしているらしい。
「トロイダには彼女を信仰する者が6人居ます…どれも手練れです。」
「衝突は不可避ね。どんな奴が居るの?」
「それが…分からなくて…全員、姿を隠しているんです…」
トロイダ信仰6人衆…情報は6人で全員が手練れの戦士、そして化け物。
もし奴の所に行くなら必ず対峙する事となる…それだけじゃない、街には奴の部下だって居る…もちろん追手も…
「アイツは私を捕まえてキョンシーにでもするのかしら…」
「ミサキは強いから殺せないので…洗脳するのかもしれません…」
「うげぇ…そんな事もするのね。」
「神通力の類は得意なので…ウチは使いませんけど。」
そう言えば…なぜかこのタイミングで思い出した…暗示の紙を確認していなかったな。
ちゃんと色は…うん、付いている…六芒星の一角、聖杯にはオレンジ色が付いている…これで付いていなかったらマジで切れる所だったよ…
「その紙…とても…邪悪な気を感じます…」
「目的が目的だからしょうがないわ。やっぱり恨まれてるのかしら…」
この紙はどうやっても破けない…穴も開かない、捨てれない。
無くす心配が無いのが良い…コレを懐に仕舞っておけな防弾チョッキになるかな?
やってみる価値はあるわよね…
私は紙を畳むと懐に忍ばせておいた…防弾チョッキなんて必要無いけど。
「……ようやく竹林ともおさらばね…長いような短いような…」
「敵が少なくて良かったです…ですがこの先は…もっと激しくなると思います。」
「チゥワナ、アンタにも戦ってもらうわよ?」
「…戦闘は好きではありませんが…戦わせてもらいます…」
チゥワナはトロイダの抑止力だ…言い換えればトロイダの分身でもある。
なので強大な術などは使えないが、充分この世界で生きて行けるほど強い。
得意分野は神通力の他心通を使った先読み攻撃と格闘である。
他心通とは六神通の1つであり、相手の心を読む能力だ…他に使える力は相手の過去を覗ける宿命通と未来を覗ける天眼通。
「ですけど…無許可に心を読んだり、過去を見たりする事はしません。」
「へぇ………ねぇ、私の過去とか…見れる?」
「出来ますけど…良いんですか?」
「気になるの…自分がどんな奴なのか。」
私が亡国にて気が付いたのは15年前…はたして自分はどんな人生を送っていたのか気になっている。
もしかしたら自分の生まれや両親について分かるかもしれない。
私は彼女に頼んで橋を渡る前に自分の過去を見てもらうことにした。
「そ、それでは…行きますよ?」
「別に痛かったりしないんでしょ?勝手にやって。」
「はい…では…」
チゥワナは私の額に手を当て、目を瞑ると「う~ん…」唸り始めた…
「なんか…谷の幽霊が何とかって…あと、マフィア…神?」
「そうね。間違いないわね…」
「そして…吹雪と化け物…異界からのロボット…うっぷ!チョコ稲荷!」
「順調に戻っているようね。」
彼女はその後も海底での作業や岩山の爆破作業など…私の過去の仕事を見た。
次第に仕事は地味になって行き…リンヤとの出会い、ミサキと名付けてもらった瞬間、そして…亡国にて目覚め…
「この先は………ッ!?な、なんという…」
「ど、どうかしたの!?何が見えたの!」
チゥワナは過去を読むのを止め…黙りこくってしまった。
直ぐに私は何回も「教えて!教えないと扼殺するわよ!」と言ったが…ダメだった。
過去の事を記憶する事は出来ないらしい……なら…良いかな…
世の中には知らなくて良い事がある…過去なんてたまに振り返るのが良い…感傷に浸るのは無しと言うものだ…うん、そう言う事にしておこう…
「すいません…その…役に立たなくて…」
「世の中は広いのよ。アンタみたいな奴が居ても大丈夫なの。」
「そうなんですかね…」
「ウジウジする暇があるならさっさと橋を渡るわよ。」
「…はい!」
過去よりも今だ…今は急がなくてはならない…一刻も早く奴の元へ行かなければ…
果たして、この先に待ち受ける敵とは一体どんな奴らなのだろう…
天眼通でも使わない限りは分からないだろう…
つづく
ケイオスタワーまでの道中にある竹林「ショウケイ」を抜ける私達はタヌキとキツネの住む町までやって来た…此処を抜ければ直ぐに竹林から出られるが、そうはいかない。
トロイダの差し金と思われる、左腕の無いキツネが私達へ勝負を仕掛けて来た。
【俺の名はミョッキ…お前を捕まえれば報酬は弾むと言われてな…】
「アイツも変な事するわね。私が直接出向くというのに。」
「嫌がらせのつもりでしょう…或いは体力の」
「私がやるわ。アンタはそこに居なさい。」
【自身が有るようだな…この姿を見ても同じことをほざけるかな!!】
ミョッキと名乗るキツネはボフンッ!!と煙に巻かれ…大きな蟹の怪物へ変身した!
シオマネキの様に右のハサミが大きく、左のハサミは(一般的な蟹に比べれば大きいが)小さい…そして口の辺りからはブクブクと泡を垂らす…
【はっはは!真っ二つに挟み切ってやる!!】
「だったらこっちは茹でガニにしてあげるわよ!!」
奴がブンブン!と振り回すハサミを躱すと、上へ飛んで奴を見下ろした…
蟹の弱点なんて分からない…しかし…構造からして背中の甲羅には手が届かないだろう!私は奴の後ろへ回り込むと、ストレートパンチをぶち込んだ!!
しかし!流石は蟹…あんまり効いていない…
【背中なら手が届かないと思ったか?そうはいかんぞ!!】
「うわ!?トゲが!!」
【串刺しにしてやる!!どうだ!!】
「くぅおお!!」
全身に鋭いトゲを生やしたカニは勢いよく飛び上がり、甲羅で押し潰すように私の上へのしかかって来た!!お、重い!コイツには質量保存の法則は通用しないのか!!
【ふはははは!!どぉれ…グチャグチャのジャムに…】
「この…カニ野郎…」
【も、持ち上げられ…うぉお!!】
私は潰れずに奴を両手で持ち上げると…上に向かって投げた!!そして奴に向かって飛び上がると…奴の腹部の辺りを狙って頭から突っ込む!!
いくらカニと言えども…この一撃を耐えきれるはずが無い!!
【うっがぁああ!!】
「かふッ…ど、どうよ…」
奴と同時に地面へ降り立つと、仰向けに泡をブクブク噴きながら倒れる奴の腹部に追撃に白鞘をぶっ刺す!!流石はキジハラの刀…ズブリとケーキに入刀する様に入った!
【っぎゃぁぁあああ!!は、腹がぁぁ!!】
「まだまだぁ!!」
【ぐっぶあぁあああ!がはぁ!】
「内臓を抉り取ってやる!!」
カニの腹へ突き立てた刀をズブッシュ!!と横へ強引にスライドさせる!!
斬り裂いた奴の腹からは湯気と共に内臓が飛び出す!カニの物とは思えない腸等だ…やっぱりカニ味噌までは再現不可能なのね…
このまま潜り込んで内臓をグチャグチャにしてやろうと思ったが、奴は変化を解いた。
だが変化を解いても腹から血が噴き出し、奴は内蔵が出ないように必死に抑えている…
「もう死んどいた方が身の為よ。大人しくくたばりなさい。」
【お生憎様…しつこさが売りなんでね……こうなりゃ…この町ごとぶっ潰してやる!!】
「なんですって!?チックショウ!本当にやる気!?」
【更地になってしまえッッ!!】
ミョッキは凄まじい速さで上へ飛ぶと、町よりも大きな岩石へと姿を変える!!
もはや岩山としか言いようの無い巨大さだ!!逃げても間に合わない…だとすれば…受け止めるしかない!!
「ミサキ!アレを受け止める気ですか!!」
「やるっきゃ無いでしょ!!失敗しても逃げても!全員仲良くパニーニよ!!」
【俺の変化は重さをも変えるぞ!!】
ハッキリ言って馬鹿かもしれない…だけどやるしかない!!私は上空へ飛び上がると、両手を上にして…受け止める体制になる…言っておくが元○玉では無い。
落ちて来る岩山…めちゃくちゃ重そうだけど…イケる!私なら!!
【ぶっ潰れろ!!ミサキィ!!】
「うぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおッ!!」
「ヒィィ!?もう見てられません!!」
「ぐぁああ!!」
当たり前だが!!私個人の力で完璧に受け止める事は不可能だった!!想像を絶する圧倒的質量に私は押し落とされそうになる!!…が!
「チック……ショォォウウ!!」
【な、なんだとッ!?】
「う、受け止めたぁ!?あの岩山を!!」
「伊達に…最強を自称して無いのよッ!私は!!」
全身がバキバキ音を立てても!!何としてでも下へ落下せずに持ち上げた!!
自分でも訳が分からないぐらいに無理やり力を振り絞った結果…なんと以外にも上手く行った!!やっぱり私って最強なのかもしれない!!
そのまま岩山を持ち上げた私は…
「飛んで行きやがれ!!」
【うわぁああ!?へ、変化を解かなくては…!この………はッ!?】
「………死ね。」
【はっぐぁぁあああッ!!】
別の場所へと投げ捨てた!!…が、奴は直ぐに変身を解く…それを待っていた!!
白鞘を抜くと奴の目と鼻の先にまで近付き…容赦なく真っ二つに断ち切る!
横にでは無く、縦でも無い…今回は斜めに斬ってみせた…
【お、おのれ…俺を殺しても…追手は来るぞ…この先も…】
「そん時はアンタに会わせてやるわよ…死んでたらの話だけどね。」
私はその言葉と共に奴を空中でバラバラに斬り崩した…ここまでやれば流石に死ぬだろう。
スタッ…と地面に降り、白鞘を仕舞うと…一気に疲れが全身に響く…
今回はやり過ぎたかもしれない…全身が酷く痛い…やはり無理は禁物か…
「ミサキ…大丈夫ですか…?」
「ちょっと疲れてるだけよ…休憩したら…直ぐに行くわよ…」
「あぁ!ちょっと…」
建物に寄り掛かり、瞼を閉じると…そのまま意識を手放した…
・・・
「んん…うぅん……」
「ミサキ、気が付きましたか?」
「まぁね…」
目が覚めると、自分はどこかの和室で横になっていた…此処は?
「…此処は?」
「竹林のお宿です。地面はマズいと思いまして…」
「そうなの…ふぁぁ~…」
あくびをして眠気を覚ますと…やけに香ばしい匂いが鼻を突いた。
「コレ何の匂い?」と問いかけるとチゥワナは焼き鳥の入った箱を指さす…
コイツ、私が寝ている横で焼き鳥を食っていたのか…でも、いつの間に?
(まぁどうせ寝ている間に買ったのだろう…気にする必要は無い)
「どうです?砂肝とレバー…あとハツがございますよ。」
「内臓系ばっかじゃない…まぁ貰うわ。」
起き抜けの食事には向いていないが…贅沢は言えない。
聞いてみたところ、私は5時間ほど眠っていたらしい…相変わらず外は暗いまま…もしかして昼夜と言う概念が無いのだろうか?
私はチゥワナに「アンタは寝ないの?」と聞いたが…睡眠は必要ないらしい。
「ウチは一応トロイダです…睡眠なんて必要ありません。」
「気になってたんだけど…トロイダって何者なの?元人間よね?」
「元人間の道士です…今はただの妖怪のなれの果てですが…」
聞くところによると、トロイダは元々道教を信仰する道士であったが…仙人に頼み込んで神通力や術、不老不死について学んだらしい。
彼女は目的の力を手に入れると仙人たちを皆殺しにし、さらに力を極めた。
だが決して…大変な騒ぎを起こす事などはしなかった…そうなれば自分が注目され、面倒くさい事になると知っていたからだ…
「トロイダは…ケイオプレイスの存在を知るや否や…カオス極まりない土地へと変えてしまいました…」
ケイオプレイスも…元は美しく、自然の溢れる場所であった…しかし、トロイダはそれを面白くないと感じたのか、様々な世界からしっちゃかめっちゃかに物を取り寄せてはケイオプレイスへぶち込んだ。
それを繰り返した結果…こんな最悪な土地が生まれてしまったのだ…
今や此処はカオスと矛盾に満ちた世界…
「ウチは早く、アイツの中へ入って止めたいんです!」
「抑止力ね…案外、そんな物が無くなったら人間ってあんなんになっちゃうのね。」
トロイダはどうやってチゥワナを引き離したのだろうか…それは謎。
聞いてみても「自分でも分からない」とのこと…トロイダも真面目だった頃があると…そんな姿を見てみたいなぁ…と思ってしまう…
「まぁ良いわ…もう先へ進みましょう。」
「分かりました、急ぎましょう。」
私はもう疲れが取れたのでもう行こう…あまり無駄に時間を喰うとヤバイ。
チゥワナ曰く、バグ人へ変わるには此処にやって来て最低でも3日でその予兆が見え始めるらしい…最初に身体の至る所に四角い斑点が出来る…そして次に声が歪み…最後には全身が透けたり千切れたり…
完全なバグ人へ変わるまでのタイムリミットは…1週間だ。
「予兆が見え始めると一気に全身が蝕まれます…」
「だったら尚更ね。本当に眠くない?ほとんどノンストップよ?」
「大丈夫です。疲労の概念も無いので。」
トロイダも便利な身体をしているなぁ…と思いながら私達は先へ急ぐことに。
チェックアウトした時に…受付と客から変な目で見られた…そりゃ短時間で宿から女が2人だけで出て来るなんて怪しいしかない…
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「この先は何があるの?」
「確か…クリスカーブリッジという橋を越えればコソラグタウンです。そこにケイオスタワーがあります。」
「なるほど…その橋はどのくらいあるの?」
「2キロ半です。」
「結構長いわね…」
クリスカーブリッジは約2キロ半の巨大な吊り橋…2キロ半ってことは2500メートルか…飛べば直ぐに渡れるが、飛ぶのは危険だと何度も言われたので止めた。
飛び過ぎると変な生物に喰われたり、クリスカー川には凶暴な生物が居るらしい。
ダンクルオステウスやメガロドン、ダゴンというよく分からない生物の名を聞いて頭に「?」を浮かべたが…何となくヤバイというのはよく分かった。
「その橋って…変なのとか待ってたりしないわよね?」
「変なのとは…?橋姫とかですか?居ないと思いますけど。」
「そっかぁ…なら良いわ。」
「問題は橋を渡った先のコソラグタウンです。」
コソラグタウンには先ほどもチゥワナが言ったように目的地のケイオスタワーがある。
となれば…当然、トロイダからの攻撃も激しくなるだろう。
その街はトロイダが最初に支配した場所であり、最も変な奴らが集う混沌に満ちた場所になっている…奴による支配も酷く、直属の部下もウロウロしているらしい。
「トロイダには彼女を信仰する者が6人居ます…どれも手練れです。」
「衝突は不可避ね。どんな奴が居るの?」
「それが…分からなくて…全員、姿を隠しているんです…」
トロイダ信仰6人衆…情報は6人で全員が手練れの戦士、そして化け物。
もし奴の所に行くなら必ず対峙する事となる…それだけじゃない、街には奴の部下だって居る…もちろん追手も…
「アイツは私を捕まえてキョンシーにでもするのかしら…」
「ミサキは強いから殺せないので…洗脳するのかもしれません…」
「うげぇ…そんな事もするのね。」
「神通力の類は得意なので…ウチは使いませんけど。」
そう言えば…なぜかこのタイミングで思い出した…暗示の紙を確認していなかったな。
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「目的が目的だからしょうがないわ。やっぱり恨まれてるのかしら…」
この紙はどうやっても破けない…穴も開かない、捨てれない。
無くす心配が無いのが良い…コレを懐に仕舞っておけな防弾チョッキになるかな?
やってみる価値はあるわよね…
私は紙を畳むと懐に忍ばせておいた…防弾チョッキなんて必要無いけど。
「……ようやく竹林ともおさらばね…長いような短いような…」
「敵が少なくて良かったです…ですがこの先は…もっと激しくなると思います。」
「チゥワナ、アンタにも戦ってもらうわよ?」
「…戦闘は好きではありませんが…戦わせてもらいます…」
チゥワナはトロイダの抑止力だ…言い換えればトロイダの分身でもある。
なので強大な術などは使えないが、充分この世界で生きて行けるほど強い。
得意分野は神通力の他心通を使った先読み攻撃と格闘である。
他心通とは六神通の1つであり、相手の心を読む能力だ…他に使える力は相手の過去を覗ける宿命通と未来を覗ける天眼通。
「ですけど…無許可に心を読んだり、過去を見たりする事はしません。」
「へぇ………ねぇ、私の過去とか…見れる?」
「出来ますけど…良いんですか?」
「気になるの…自分がどんな奴なのか。」
私が亡国にて気が付いたのは15年前…はたして自分はどんな人生を送っていたのか気になっている。
もしかしたら自分の生まれや両親について分かるかもしれない。
私は彼女に頼んで橋を渡る前に自分の過去を見てもらうことにした。
「そ、それでは…行きますよ?」
「別に痛かったりしないんでしょ?勝手にやって。」
「はい…では…」
チゥワナは私の額に手を当て、目を瞑ると「う~ん…」唸り始めた…
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「そうね。間違いないわね…」
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彼女はその後も海底での作業や岩山の爆破作業など…私の過去の仕事を見た。
次第に仕事は地味になって行き…リンヤとの出会い、ミサキと名付けてもらった瞬間、そして…亡国にて目覚め…
「この先は………ッ!?な、なんという…」
「ど、どうかしたの!?何が見えたの!」
チゥワナは過去を読むのを止め…黙りこくってしまった。
直ぐに私は何回も「教えて!教えないと扼殺するわよ!」と言ったが…ダメだった。
過去の事を記憶する事は出来ないらしい……なら…良いかな…
世の中には知らなくて良い事がある…過去なんてたまに振り返るのが良い…感傷に浸るのは無しと言うものだ…うん、そう言う事にしておこう…
「すいません…その…役に立たなくて…」
「世の中は広いのよ。アンタみたいな奴が居ても大丈夫なの。」
「そうなんですかね…」
「ウジウジする暇があるならさっさと橋を渡るわよ。」
「…はい!」
過去よりも今だ…今は急がなくてはならない…一刻も早く奴の元へ行かなければ…
果たして、この先に待ち受ける敵とは一体どんな奴らなのだろう…
天眼通でも使わない限りは分からないだろう…
つづく
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