26 / 45
第5章 十三番街は聖杯の手中篇
第26話 恐怖の万病山
しおりを挟む
新章に突入したのでリンヤのプロフィールでも書くことにする。
名前:リンヤ・スパキズム、身長:149㎝、体重:聞けない、知らない
画力:非常に独特である、誕生日:2月15日、髪の色:バイオレット
本人からのコメント『鉛筆は食べても美味しくないよ?ミサキ?』
私の名はミサキ、世界最強の名を取り戻した活気あふれるナイスな女の子。
六芒星の暗示を4つ集めた私は次なる者の居場所を聞くために教会へ向かっていた…その道中でリンヤを家へと送り届けもした。
ギサキは……お、居た居た…
「よっこらしょっと…おはよう、元気にしてるわね。」
「まぁな。ミサキ、此処へ来たって事は…?」
「ええ。なんとか…十字架もゲットよ。シスターは居る?」
「居るんだけど…ちょっと今は手が離せないって。」
ギサキ曰く、シスターは大事なお研究中なので今は会えないと。
その代わりにちゃんと伝言は預かっており、次の暗示『聖杯』の居場所が分かったらしい。
奴の居場所とは…
「万病山の十三番街だな。そこに居るらしいけど。」
「うっげぇ…あそこって病人だらけで気持ち悪いから嫌なのよね…」
「ミサキ、病気と闘っている人を気持ち悪いなんて言っちゃダメだよ。」
「へいへい。かーちゃんかよ。で、そこに行けばいいのね?」
万病山と言うのは十三番街があるお山の事だ…見た目は良い。
特に今の時期なんて紅葉が綺麗で紅葉狩りに行けば、さぞかし楽しいだろう。
だが…問題は名にある万病という単語だ…この単語が付いたのは十三番街と言う街のせいである。
この亡国には日夜、世界から爪弾きモノが流れ着く…本、文化、生物、人間…それは病気も例外では無い。
十三番街は病気の流れ着く場所であり、住人は変な病気と日夜闘っている。
それも過去に流行った伝染病が主だ…当たり前だがワクチンなんて無い、作るか仕入れるしかない…その為、滅多矢鱈に近づけば奇病に罹って死…がオチだ。
「そんなところに行けっての?」
「そんなところって……まぁ行ってもらう事になるけど。」
「…良いわ。私、病気には罹らないから打って付けね。」
「そうなの?でも一応、預かった荷物を渡しとくぞ。」
ギサキが差し出したのは無骨な防毒マスクと黒い手甲と足甲。
とりあえず、マスクは腰にぶら下げておくとして…いやぁー助かった、手甲と足甲は今、この場で換えてしまおう。
新しい防具は着け心地が良く、フィットする感じだ。
指もガードされているので安心感がある…殴っても強そう。
交換と言えば…
「ギサキ、白鞘を預かってくれない?」
「刀を?……あぁ…折れちゃったのか…」
「流石にこればっかりはね…他ので代用ってにも行かないし。」
私はギサキへ折れた白鞘と刃先を布に包んで渡した…コイツはよく頑張ってくれた。
せめて…墓でも作ってやりたいが…
「だったらキジハラに依頼しておくよ。」
「えぇ!?そ、そんな事が?って…キジハラってまだ生きてるの!?」
「正確にはキジハラの息子だな。知り合いなんだよ。」
「そうなの…言っておくけど…偽物じゃ無いわよね?」
「そんな事は無いと思うけど…」
なら依頼しておいてと私は安心して白鞘を託した。
さてと…準備も済んだのでギサキと少し話すと挨拶を済ませ、勢いよく気持ちのいい秋の空へと飛び立った。
余談だが、キュブーゲとは上手くやってるようだ…魔族と?
とにかく…万病山は最悪な事に近くにある…直ぐに着くな……確かマジコも行くと行っていたが…会えるだろうか?だとしたら会ってみたい。
いや別に!好きだからとかじゃなくて!神は病気になるのかどうかだ気になるだけだ!
「(誰に言い訳をしてるの私は………もう行きましょう!!)」
私は遠くに見える綺麗な万病山を目指してカッ飛んで行った…
・・・
「ラララ~♪楽しい紅葉狩り♪だけど♪街にゃ病人共が♪うじゃうじゃ居るよ~♪」
つい楽しくなって歌ってしまったが…無事に私は万病山の麓にまで到着した。
登山道には誰1人と居らず、ただただ赤い葉が石畳を埋め尽くしていた。
まだまだ陽が高く、時間に余裕がある私は楽しく登山する事に…いやー!とても綺麗で美しい山だ!まるで私が住んでる鬱蒼とした山とは大違い!
道の脇に流れる川にはモミジが浮き、上からも降って来る。
とても静かで…周囲には水が流れる音、木々が揺れる音、野鳥の鳴き声が響く。
「とてもいい雰囲気で落ち着くわね…空気も新鮮で気持ちが良いわ。」
こんな綺麗で良い所なのに……いや、良い所だからこそ人が居ないんだ…
例えどんなに綺麗で神聖な場所でも人が寄れば金の動く場所でしかない。
本当の自然とは見るものであり、金を払うものでは無いのだ。
「ん~……お、茶屋じゃない。人なんて寄るのかしら…」
しばらく静かな道を進むと、ぽつりと建っている茶屋を見つけた。
なんとも古い造りで日本家屋を思わせる…古臭さだ。
今もやっているのだろうか…と思い、中へ入ると…
【いらっしゃいませ、お1人様でよろしいですか?】
「え、ええ…まぁ使わせてもらうわ。(やってるんだ…)」
【どうぞこちらに…】
なんと茶屋はやっており、悪魔の店員が2階の席まで案内してくれた。
此処の席は靴を脱ぐタイプか…足甲を外すのが面倒くさいが…まぁ良いだろう。
メニューを受け取ると、開き、中を見る…メニューは多種多様だ。
茶屋なので茶はある…紅茶や日本茶、中国茶も…コーヒーだってある。
食事もライス、パスタ、パン…各国の料理も揃っている…良い品揃えだ。
「クリームソーダとオムライスを貰うわ。」
【かしこまりました。では少々お待ちを。】
店員はメニューを持って下の階まで降りて行き…よく分からない言語で話しているのが分かった…何語なんだアレは…
「(良い所ね………ッ!?)」
な!なんだと…今さっきまで私は外を見ていた…そして店内に視線を戻せば…
あそこの奥に誰かが座っている!
さっきまで居たか?いいや、居なかった…(自問自答)
「(肌を見るに…人間では無いわね…)」
見知らぬ客は白衣を着ており、隙間から覗く肌は草のような緑だった。
ポニーテールなので女だろう…彼女はこちらに背を向けるように座り、何かを食していた…ふと彼女の横に視線を移せば食べ終えた細長い容器が2つ、その逆には青いパフェが置いてある…
容器の形状が同じのを見るからに…あの空の容器は食べ終えたパフェか…と言う事は、彼女は合計4つのパフェを注文したのか!?
同じ味を?4つも?そんな奴が居たとは…
「(って…何を熱くなっているのかしら…)」
【ふぅ…口の中が甘ったるいや…店員さん!ブラックコーヒー追加ね!】
彼女がそう言うと下から『かしこまりましたー!!』と薄く聞こえた…
空の容器が3つに増えると、白衣の女は4つ目へ取り掛かる前にお手洗いへと向かった。
行きでは向きの都合で顔が見えなかったが、帰りに目を合わせることに。
【あれ?さっきまで居ましたっけ?】
「(そりゃこっちのセリフよ!)…ええ、まぁね。」
【珍しいですね!こんなクソみたいな所に人間風情が!】
「随分と失礼な事を言うじゃない。やる気?」
【いえ…別に喧嘩を売ったワケでは無いので…あっしは弱いですし。】
この女…顔を見てもやはり悪魔では無い、魔族の類か…
それにしてもこんな綺麗な所でやり合う展開にならなくて良かった。
【此処で会ったが百年目!同席してもよろしくて?】
「別に良いわよ。」
【へへへ!健康な人間に出会うのは久しぶりだなぁ!】
どうやら彼女は十三番街からやって来た医者をやらされている薬剤師であり、息抜きで此処まで逃げ…散歩しに来たらしい。
十三番街は相変わらずの惨状のようだ。
死ぬほどブルーなパフェを食べながら彼女は教えてくれた。
【あ、自己紹介がまだでしたね。あっしはリンケル・シュガージャムと申します。】
「リンケルね。私はミサキよ。」
【ミサキさんすね…にしても度胸ありまっしね?此処まで来るとは。】
「ちょっとね…十三番街まで人探しに来てるの。」
リンケルはふーん…と興味無さそうに返事をして青いパフェの青いゼリーを食べる…
なんで肌が青にならないのだろうか…?
「そのパフェ好きなの?随分と気に入っているようだけど。」
【この茶屋で最高に不味い!サファイアパフェですよ!これは!】
【不味くて悪ぅござんしたね。】
【うっ…店員殿…】
店員は私の注文した物とリンケルのコーヒーを置くと不機嫌そうに行ってしまった。
というか…不味いんかい…不味いのに沢山食べるの?
不味い、もう一杯って感じなのかしら…(アレもある意味青ね。)
【このパフェは!素晴ダしきスイーツの層で構成されているんです!下からかさましのコーンフレーク、大して美味くも無い青いゼリー、市販のソーダグミ、特に言う事無しの青いクリーム、歯磨き粉味のチョコミントアイス、青いビスケットを挟んでラムネ味の水色ソフトクリーム…上にはトッピングにブルーケーキ、名前繋がりの青りんご!その他青い菓子類…どれを取っても…最悪!】
「最悪なの…」
【けれど!不味さと不味さが合わさり!ちょっと美味しいんでっす!】
「ふーん…」
私は興味無さそうにクリームソーダを飲みながら適当に返事をした。
見ているだけで一生分の青を見た気分だ…私は私の黄色と緑に視線を戻そう。
やっぱりオムライスは…この良く焼いた卵に包んだチキンライスよね、ケチャップを程よくかけて、その部分を崩して食べれば…うん!これは!美味しい!
「ちょっと不安だったけど…普通に食事は美味しいわね。」
【もちろんですよ。だっておゲロ不味いのはこのパフェくらいですし。】
「じゃあ何でわざわざ不味い物を?ちょっとなら…別に…ね?」
【このちょっとさが良いんです、これだけでしか出せないちょっと味が!】
ちょっと味って何だ…と思いながらも食べ進め、食べ終わると、少し休んでからリンケルと一緒に十三番街へ行くことにした。
街を抜け出して、此処へ来てるのがバレたらマズいのでは?と聞いたが…
【元々、薬の材料を取りに来てるんで言い訳は無用ですね。】
「薬の材料?それってどんなの?」
【ヤスデとか根っこ、草食動物のフンとか。】
「そんな物を薬にするのね…」
【漢方薬というモノですよ。漢方薬は薬や民間療法の王様です。】
人によってその効能は大差が付くが…それでも大半は効果が有るらしい。
プラシーボ効果や化学的に云々…私には付いて行けない話だ。
【ところで、人探しとおっしゃってましたよね?どんな人をお探しで?】
「うーん…それが…何かしら特別な力を持っている人よ。」
【いくら顔が広い私でもそんな限定的な情報は………1つだけ心当たりが。】
リンケルは心当たりがあるようで、私はどんな些細な事でも良いから教えてと頼み込んだ。
【十三番街には時々、変な奴らが来るんです。】
「変な奴ら?それってどんな?」
【4人組なんですけどね。それが…】
リンケルの言う4人組は悪魔、キョンシー、馬頭、化け狐の4人組で十三番街に来ては病人を面白半分に痛めつけたり、攫った挙句に酷い姿で返したりしているらしい。
キョンシーに私は少し引っかかったが、そいつ等を殺害するのを引き受けた。
【さ、殺害!?殺すんですか…】
「ええ。そーゆう化け物共を殺すのが仕事なのよ。」
【まずは…あっしの上司に報告しましょう。割と立場はあるので…】
「話が早くて助かるわ。そうとなれば早く行きましょう。」
私達は個別に会計を済ませ、十三番街へ向かうことにした。
しかし、時間が掛かる上に道は結構険しいと言うので、リンケルを抱えて私が飛んで行くことに。
だが!!小柄なリンヤと違い、彼女はかなりのナイスバディだ!重い!
「ぐっうぅう…お、重い…」
【すいません…なにせデスクワークが多いので…】
「もう!謝るくらいなら…今ここで痩せてよ!」
【んな無茶な!】
重いのはあまり問題では無い…だが、如何せんバランスが乱れてしょうがない。
私は道中でバランスを崩しかけながらもなんとか飛び進めた。
見えて来たのは十三番街…活気と言うか怪しい雰囲気漂う十七番街とは違い、殺伐とした…死と絶望の空気が漂っており、野戦病院のようにテント等が設置されている。
建物もボロボロで暗い…なんとも嫌な街だ。
「ホラ、着いたわよ。アンタの上司んトコに案内しなさい。」
【良いですよ、付いて来てくださいね。逸れちゃダメですよ?】
「もうそんな歳じゃ無いわよ。」
十三番街には大きな建物がある…それは白塗りの四角い建物…病院だ。
ひとたび院内へ足を踏み入れれば外の暗い雰囲気とは別に殺伐とした空気が流れていた、鳴り止まぬコール音、運ばれる担架、ゲッソリした医者と看護師たち。
病院内にはベッドが足りないのか、受付の座席に布を掛けた物に寝かされている人も居た。
患者は人間と悪魔がほとんどだ。
【先にあっしのオフィスに行きましょう。連絡を行いますので。】
「良いわよ。」
リンケルはかなりの立場に居るようで、彼女を見た医者と看護師たちは彼女へ助けを求めた…だが、リンケルは断って私の腕を掴むと走ってオフィスの入り口まで走った。
【はぁ…すいませんね。急に。】
「貴方も結構頼られているのね。」
【良いように使われているだけですよ。あ、此処が私のオフィスです。】
「ここね……うぅ!?」
私はオフィスの中を見て絶句した…オフィス内は書類やファイルで散らかっており、床にもプリントが積まれて山になっている。
殆どが死亡届や封筒という大事そうなものだ。
彼女は椅子の上に置かれた大量のファイルを床へ置くと椅子へもたれかかった。
机の上の灰皿にも大量のタバコが盛られている。
【あ゛ー………すいません、少し散らかってますよね。】
「少し?かなりの間違いじゃなくて?」
【個人で感覚は違うんですよ。今、上司にアポ取るんで。】
「そこら辺に座って」と言われたので私は冷たい石の床へ座る。
部屋にはインクと紙、たばこの匂いが混じって…会社みたいな匂いが充満している。
リンケルは煙草を吸おうと箱を取り出したが、中身が空だと分かるとそこら辺に投げ捨てると、机から新しいカートンを取り出し、1箱取り出すと吸い始めた。
【コレ、薬用の特別な奴です。吸いますか?】
「私、そういうのはやらない主義だから。」
【そうですか…】
私はこんな奴を頼りにして良いのだろうか…そんな事を思いながら待った…
扉の外からはガヤガヤと嫌な騒ぎが聞こえている…此処は恐ろしそうだ。
つづく
名前:リンヤ・スパキズム、身長:149㎝、体重:聞けない、知らない
画力:非常に独特である、誕生日:2月15日、髪の色:バイオレット
本人からのコメント『鉛筆は食べても美味しくないよ?ミサキ?』
私の名はミサキ、世界最強の名を取り戻した活気あふれるナイスな女の子。
六芒星の暗示を4つ集めた私は次なる者の居場所を聞くために教会へ向かっていた…その道中でリンヤを家へと送り届けもした。
ギサキは……お、居た居た…
「よっこらしょっと…おはよう、元気にしてるわね。」
「まぁな。ミサキ、此処へ来たって事は…?」
「ええ。なんとか…十字架もゲットよ。シスターは居る?」
「居るんだけど…ちょっと今は手が離せないって。」
ギサキ曰く、シスターは大事なお研究中なので今は会えないと。
その代わりにちゃんと伝言は預かっており、次の暗示『聖杯』の居場所が分かったらしい。
奴の居場所とは…
「万病山の十三番街だな。そこに居るらしいけど。」
「うっげぇ…あそこって病人だらけで気持ち悪いから嫌なのよね…」
「ミサキ、病気と闘っている人を気持ち悪いなんて言っちゃダメだよ。」
「へいへい。かーちゃんかよ。で、そこに行けばいいのね?」
万病山と言うのは十三番街があるお山の事だ…見た目は良い。
特に今の時期なんて紅葉が綺麗で紅葉狩りに行けば、さぞかし楽しいだろう。
だが…問題は名にある万病という単語だ…この単語が付いたのは十三番街と言う街のせいである。
この亡国には日夜、世界から爪弾きモノが流れ着く…本、文化、生物、人間…それは病気も例外では無い。
十三番街は病気の流れ着く場所であり、住人は変な病気と日夜闘っている。
それも過去に流行った伝染病が主だ…当たり前だがワクチンなんて無い、作るか仕入れるしかない…その為、滅多矢鱈に近づけば奇病に罹って死…がオチだ。
「そんなところに行けっての?」
「そんなところって……まぁ行ってもらう事になるけど。」
「…良いわ。私、病気には罹らないから打って付けね。」
「そうなの?でも一応、預かった荷物を渡しとくぞ。」
ギサキが差し出したのは無骨な防毒マスクと黒い手甲と足甲。
とりあえず、マスクは腰にぶら下げておくとして…いやぁー助かった、手甲と足甲は今、この場で換えてしまおう。
新しい防具は着け心地が良く、フィットする感じだ。
指もガードされているので安心感がある…殴っても強そう。
交換と言えば…
「ギサキ、白鞘を預かってくれない?」
「刀を?……あぁ…折れちゃったのか…」
「流石にこればっかりはね…他ので代用ってにも行かないし。」
私はギサキへ折れた白鞘と刃先を布に包んで渡した…コイツはよく頑張ってくれた。
せめて…墓でも作ってやりたいが…
「だったらキジハラに依頼しておくよ。」
「えぇ!?そ、そんな事が?って…キジハラってまだ生きてるの!?」
「正確にはキジハラの息子だな。知り合いなんだよ。」
「そうなの…言っておくけど…偽物じゃ無いわよね?」
「そんな事は無いと思うけど…」
なら依頼しておいてと私は安心して白鞘を託した。
さてと…準備も済んだのでギサキと少し話すと挨拶を済ませ、勢いよく気持ちのいい秋の空へと飛び立った。
余談だが、キュブーゲとは上手くやってるようだ…魔族と?
とにかく…万病山は最悪な事に近くにある…直ぐに着くな……確かマジコも行くと行っていたが…会えるだろうか?だとしたら会ってみたい。
いや別に!好きだからとかじゃなくて!神は病気になるのかどうかだ気になるだけだ!
「(誰に言い訳をしてるの私は………もう行きましょう!!)」
私は遠くに見える綺麗な万病山を目指してカッ飛んで行った…
・・・
「ラララ~♪楽しい紅葉狩り♪だけど♪街にゃ病人共が♪うじゃうじゃ居るよ~♪」
つい楽しくなって歌ってしまったが…無事に私は万病山の麓にまで到着した。
登山道には誰1人と居らず、ただただ赤い葉が石畳を埋め尽くしていた。
まだまだ陽が高く、時間に余裕がある私は楽しく登山する事に…いやー!とても綺麗で美しい山だ!まるで私が住んでる鬱蒼とした山とは大違い!
道の脇に流れる川にはモミジが浮き、上からも降って来る。
とても静かで…周囲には水が流れる音、木々が揺れる音、野鳥の鳴き声が響く。
「とてもいい雰囲気で落ち着くわね…空気も新鮮で気持ちが良いわ。」
こんな綺麗で良い所なのに……いや、良い所だからこそ人が居ないんだ…
例えどんなに綺麗で神聖な場所でも人が寄れば金の動く場所でしかない。
本当の自然とは見るものであり、金を払うものでは無いのだ。
「ん~……お、茶屋じゃない。人なんて寄るのかしら…」
しばらく静かな道を進むと、ぽつりと建っている茶屋を見つけた。
なんとも古い造りで日本家屋を思わせる…古臭さだ。
今もやっているのだろうか…と思い、中へ入ると…
【いらっしゃいませ、お1人様でよろしいですか?】
「え、ええ…まぁ使わせてもらうわ。(やってるんだ…)」
【どうぞこちらに…】
なんと茶屋はやっており、悪魔の店員が2階の席まで案内してくれた。
此処の席は靴を脱ぐタイプか…足甲を外すのが面倒くさいが…まぁ良いだろう。
メニューを受け取ると、開き、中を見る…メニューは多種多様だ。
茶屋なので茶はある…紅茶や日本茶、中国茶も…コーヒーだってある。
食事もライス、パスタ、パン…各国の料理も揃っている…良い品揃えだ。
「クリームソーダとオムライスを貰うわ。」
【かしこまりました。では少々お待ちを。】
店員はメニューを持って下の階まで降りて行き…よく分からない言語で話しているのが分かった…何語なんだアレは…
「(良い所ね………ッ!?)」
な!なんだと…今さっきまで私は外を見ていた…そして店内に視線を戻せば…
あそこの奥に誰かが座っている!
さっきまで居たか?いいや、居なかった…(自問自答)
「(肌を見るに…人間では無いわね…)」
見知らぬ客は白衣を着ており、隙間から覗く肌は草のような緑だった。
ポニーテールなので女だろう…彼女はこちらに背を向けるように座り、何かを食していた…ふと彼女の横に視線を移せば食べ終えた細長い容器が2つ、その逆には青いパフェが置いてある…
容器の形状が同じのを見るからに…あの空の容器は食べ終えたパフェか…と言う事は、彼女は合計4つのパフェを注文したのか!?
同じ味を?4つも?そんな奴が居たとは…
「(って…何を熱くなっているのかしら…)」
【ふぅ…口の中が甘ったるいや…店員さん!ブラックコーヒー追加ね!】
彼女がそう言うと下から『かしこまりましたー!!』と薄く聞こえた…
空の容器が3つに増えると、白衣の女は4つ目へ取り掛かる前にお手洗いへと向かった。
行きでは向きの都合で顔が見えなかったが、帰りに目を合わせることに。
【あれ?さっきまで居ましたっけ?】
「(そりゃこっちのセリフよ!)…ええ、まぁね。」
【珍しいですね!こんなクソみたいな所に人間風情が!】
「随分と失礼な事を言うじゃない。やる気?」
【いえ…別に喧嘩を売ったワケでは無いので…あっしは弱いですし。】
この女…顔を見てもやはり悪魔では無い、魔族の類か…
それにしてもこんな綺麗な所でやり合う展開にならなくて良かった。
【此処で会ったが百年目!同席してもよろしくて?】
「別に良いわよ。」
【へへへ!健康な人間に出会うのは久しぶりだなぁ!】
どうやら彼女は十三番街からやって来た医者をやらされている薬剤師であり、息抜きで此処まで逃げ…散歩しに来たらしい。
十三番街は相変わらずの惨状のようだ。
死ぬほどブルーなパフェを食べながら彼女は教えてくれた。
【あ、自己紹介がまだでしたね。あっしはリンケル・シュガージャムと申します。】
「リンケルね。私はミサキよ。」
【ミサキさんすね…にしても度胸ありまっしね?此処まで来るとは。】
「ちょっとね…十三番街まで人探しに来てるの。」
リンケルはふーん…と興味無さそうに返事をして青いパフェの青いゼリーを食べる…
なんで肌が青にならないのだろうか…?
「そのパフェ好きなの?随分と気に入っているようだけど。」
【この茶屋で最高に不味い!サファイアパフェですよ!これは!】
【不味くて悪ぅござんしたね。】
【うっ…店員殿…】
店員は私の注文した物とリンケルのコーヒーを置くと不機嫌そうに行ってしまった。
というか…不味いんかい…不味いのに沢山食べるの?
不味い、もう一杯って感じなのかしら…(アレもある意味青ね。)
【このパフェは!素晴ダしきスイーツの層で構成されているんです!下からかさましのコーンフレーク、大して美味くも無い青いゼリー、市販のソーダグミ、特に言う事無しの青いクリーム、歯磨き粉味のチョコミントアイス、青いビスケットを挟んでラムネ味の水色ソフトクリーム…上にはトッピングにブルーケーキ、名前繋がりの青りんご!その他青い菓子類…どれを取っても…最悪!】
「最悪なの…」
【けれど!不味さと不味さが合わさり!ちょっと美味しいんでっす!】
「ふーん…」
私は興味無さそうにクリームソーダを飲みながら適当に返事をした。
見ているだけで一生分の青を見た気分だ…私は私の黄色と緑に視線を戻そう。
やっぱりオムライスは…この良く焼いた卵に包んだチキンライスよね、ケチャップを程よくかけて、その部分を崩して食べれば…うん!これは!美味しい!
「ちょっと不安だったけど…普通に食事は美味しいわね。」
【もちろんですよ。だっておゲロ不味いのはこのパフェくらいですし。】
「じゃあ何でわざわざ不味い物を?ちょっとなら…別に…ね?」
【このちょっとさが良いんです、これだけでしか出せないちょっと味が!】
ちょっと味って何だ…と思いながらも食べ進め、食べ終わると、少し休んでからリンケルと一緒に十三番街へ行くことにした。
街を抜け出して、此処へ来てるのがバレたらマズいのでは?と聞いたが…
【元々、薬の材料を取りに来てるんで言い訳は無用ですね。】
「薬の材料?それってどんなの?」
【ヤスデとか根っこ、草食動物のフンとか。】
「そんな物を薬にするのね…」
【漢方薬というモノですよ。漢方薬は薬や民間療法の王様です。】
人によってその効能は大差が付くが…それでも大半は効果が有るらしい。
プラシーボ効果や化学的に云々…私には付いて行けない話だ。
【ところで、人探しとおっしゃってましたよね?どんな人をお探しで?】
「うーん…それが…何かしら特別な力を持っている人よ。」
【いくら顔が広い私でもそんな限定的な情報は………1つだけ心当たりが。】
リンケルは心当たりがあるようで、私はどんな些細な事でも良いから教えてと頼み込んだ。
【十三番街には時々、変な奴らが来るんです。】
「変な奴ら?それってどんな?」
【4人組なんですけどね。それが…】
リンケルの言う4人組は悪魔、キョンシー、馬頭、化け狐の4人組で十三番街に来ては病人を面白半分に痛めつけたり、攫った挙句に酷い姿で返したりしているらしい。
キョンシーに私は少し引っかかったが、そいつ等を殺害するのを引き受けた。
【さ、殺害!?殺すんですか…】
「ええ。そーゆう化け物共を殺すのが仕事なのよ。」
【まずは…あっしの上司に報告しましょう。割と立場はあるので…】
「話が早くて助かるわ。そうとなれば早く行きましょう。」
私達は個別に会計を済ませ、十三番街へ向かうことにした。
しかし、時間が掛かる上に道は結構険しいと言うので、リンケルを抱えて私が飛んで行くことに。
だが!!小柄なリンヤと違い、彼女はかなりのナイスバディだ!重い!
「ぐっうぅう…お、重い…」
【すいません…なにせデスクワークが多いので…】
「もう!謝るくらいなら…今ここで痩せてよ!」
【んな無茶な!】
重いのはあまり問題では無い…だが、如何せんバランスが乱れてしょうがない。
私は道中でバランスを崩しかけながらもなんとか飛び進めた。
見えて来たのは十三番街…活気と言うか怪しい雰囲気漂う十七番街とは違い、殺伐とした…死と絶望の空気が漂っており、野戦病院のようにテント等が設置されている。
建物もボロボロで暗い…なんとも嫌な街だ。
「ホラ、着いたわよ。アンタの上司んトコに案内しなさい。」
【良いですよ、付いて来てくださいね。逸れちゃダメですよ?】
「もうそんな歳じゃ無いわよ。」
十三番街には大きな建物がある…それは白塗りの四角い建物…病院だ。
ひとたび院内へ足を踏み入れれば外の暗い雰囲気とは別に殺伐とした空気が流れていた、鳴り止まぬコール音、運ばれる担架、ゲッソリした医者と看護師たち。
病院内にはベッドが足りないのか、受付の座席に布を掛けた物に寝かされている人も居た。
患者は人間と悪魔がほとんどだ。
【先にあっしのオフィスに行きましょう。連絡を行いますので。】
「良いわよ。」
リンケルはかなりの立場に居るようで、彼女を見た医者と看護師たちは彼女へ助けを求めた…だが、リンケルは断って私の腕を掴むと走ってオフィスの入り口まで走った。
【はぁ…すいませんね。急に。】
「貴方も結構頼られているのね。」
【良いように使われているだけですよ。あ、此処が私のオフィスです。】
「ここね……うぅ!?」
私はオフィスの中を見て絶句した…オフィス内は書類やファイルで散らかっており、床にもプリントが積まれて山になっている。
殆どが死亡届や封筒という大事そうなものだ。
彼女は椅子の上に置かれた大量のファイルを床へ置くと椅子へもたれかかった。
机の上の灰皿にも大量のタバコが盛られている。
【あ゛ー………すいません、少し散らかってますよね。】
「少し?かなりの間違いじゃなくて?」
【個人で感覚は違うんですよ。今、上司にアポ取るんで。】
「そこら辺に座って」と言われたので私は冷たい石の床へ座る。
部屋にはインクと紙、たばこの匂いが混じって…会社みたいな匂いが充満している。
リンケルは煙草を吸おうと箱を取り出したが、中身が空だと分かるとそこら辺に投げ捨てると、机から新しいカートンを取り出し、1箱取り出すと吸い始めた。
【コレ、薬用の特別な奴です。吸いますか?】
「私、そういうのはやらない主義だから。」
【そうですか…】
私はこんな奴を頼りにして良いのだろうか…そんな事を思いながら待った…
扉の外からはガヤガヤと嫌な騒ぎが聞こえている…此処は恐ろしそうだ。
つづく
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説

ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ドマゾネスの掟 ~ドMな褐色少女は僕に責められたがっている~
桂
ファンタジー
探検家の主人公は伝説の部族ドマゾネスを探すために密林の奥へ進むが道に迷ってしまう。
そんな彼をドマゾネスの少女カリナが発見してドマゾネスの村に連れていく。
そして、目覚めた彼はドマゾネスたちから歓迎され、子種を求められるのだった。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる