【R18作品】善悪虐殺伝「ミサキ」

蛾脳シンコ

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第2章 エンジャラスバレーに眠る彫刻篇

第9話 恐怖が支配させる街、エンジャラス・バレー

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「ギサキィィ!!」
「うわぁぁぁあああ!?」

私の名はミサキ、現在ギサキへ突っ込む途中の世界最強の女の子。
燭台の暗示を持つ者、バダル・マシンザ・チェーンハットを殺した私は次なるターゲットの場所を聞くためにボロッちい教会までやって来た。

「受け止めてぇ!!」
「そ、そんな急に……ぐぅぅ!!」
「…中々やるわね。」
「伊達に教団の幹部やって無いんでね…」

ハッキリ言って無理かと思ったが、なんとギサキは素早く飛ぶ私を受け止めた。
ちょっと後ろへズレただけで済ませるとは…さてはコイツ、結構強いな?
それはさておき…私は自信満々にギサキへ最初の者は始末したと報告した。

「ちょうど良かった!シスターが新たに暗示を持つ者を見つけたんだ。」
「それはそれは…これまた都合のいい。」
「中へ来ると良い、シスターに報告しよう。」

私とギサキはボロボロの教会の中へ入ると、初めてシスターと顔を合わせた。
相手は…ちょっと…恐ろしげのある若い女性だった…美しいと言えばそうなのだが…何故だろう、私は少し恐怖を感じている。
こんな女に…やっぱりこのシスターはタダ者では無いな。

「あぁいらっしゃい、貴方に会いたかったわミサキ。」
「気安く抱くな。ババ臭い匂いが染みつく。」
「ひっどーい!ねぇ聞いた?ギサキ、ババ臭いって!」
「否定はしません。」

だが…シスターは話してみると意外と…良い感じの人間っぽい?恐怖は薄まった。
私はお茶を飲みながらシスターの話を聞くことに。
お茶と言っても…アイスティーだ、変な物は入れてなさそうなので安心。
3人でお茶と言うのも…何故か…少し良いかも。

「2つの暗示を見つけたわ。どっちから先に行く?彫刻?聖書?」
「近い方で。」
「彫刻ね。どうやら彫刻はエンジャラス・バレーと言う街にあるらしいわ。」
「ある…?居るの間違いじゃ無くて?」

自分がそう言うと彼女はフシシ…と不思議な笑う…

「良い質問ね、実は彫刻からは命を感じないの…だから死んでるってこと。」
「じゃあやる必要はあるの?」
「紙を見ればわかるでしょ?破壊しないと駄目みたいね。」
「ふーん…分かったわ。じゃ、行くから。」

「(結局、オレ…何も言えなかったな…)」

私はアイスティーをチューっとストローを使い、飲み干すと、席を立った。
シスターの挨拶を返しながら、そのまま外へ行き、飛ぼうとした…が。
またしてもギサキに呼び止められた…茶はしたじゃない。

「ミサキ、聞いてくれ。」
「何よ?一目惚れした!なんてのはお断りよ。」
「そんなんじゃない。今日の事…覚えててくれるか?忘れないでくれるか?」
「…?まぁ覚えとくけど。」
「なら良かった。ほら、これは旅の足しにしてくれ。」

ギサキは封筒に入ったお金を渡してきた…かなりの金額だ、分厚い。
しかし、自分はその中から入り切る量を取り、後は返した…こんなに要らない。
財布に入れない金なんて、持ち歩く意味が無いからだ。

「ありがと、行ってくるわ。残りは次に来るときまで取っときなさい。」
「分かった。くたばんなよ、面倒くさいから。」
「へ!じゃあな!!直ぐに戻って来ると思うけど!!」

私はそう言いながら…ドッヒュン!!と上空へ飛び上がった!もう飛んで行こう!
このままエンジャラスバレーとやらに行きたいが…ホテルのチェックアウトを済ませないと。
・・・

「(うぅ…ちょい寒くなってきたわね…)」

十七番街へ寄った私はエンジャラスバレーへ向けてカッ飛んでいる途中だ。
ここら辺は飛ぶと寒くなるのか…気のせいか、雪まで降り始めている…秋なのに?
しかも…吹雪まで吹き始め、前が見えにくくなってきた…それにバランスも…

「だ、ダメ!バランスが保てない…降りるしかない!!」

このまま上を飛んで行くのは危険と判断した私はとりあえず地面へ降り立った。
地面…と言うか下には深い雪が積もっており、とても歩きにくい…
こんな秋のド真ん中に八甲田山を味わう事になるとは…なんだ本当に此処は。
亡国にこんな場所があったなんて知らなかった…

「し、しめた…あそこに……建物の光が見える…」

遠目に見えるは複数の光…きっと集落か何かがあるのだろう!
吹雪が収まるまで何処かに匿ってもらおう…別に寒かったり死ぬことは無いが…こんな所では真面目な思考が働かない…いつもそうかもしれないけど。
私はザックザックと膝上まである深雪を踏みにじって集落まで歩いた…
やがてそこへ着くと、酒場らしき場所へ入店した…ふぅ、温かい。

【…】
「(なんか静かね…)」

入った酒場は…ジメジメした雰囲気が漂う…なんとも陰気な所であった。
客は居らず、カウンターでマスターと思わしき人物がスッ…と無言で立っている。
別に接客を期待しているワケでは無いが…ここまで静かだと不気味だな。
そう思いながら私はカウンターに座る。

「その………酷い吹雪ね!いつまで続くのかしら?」
【………】
「なんか温まる飲み物無い?」
【………】

な、なんだよ…偽物やデコイでは無いよね?瞬きもしてるし…生気も感じる。
私はその後も何度も…「おい」や「ねぇちょっと」と声を掛けたが…返って来るのは長い沈黙であった。

「……ホットミルクが飲みたいな!」
【……ゥ…】
「へ?なんて?」

マスターは聞き取れぬ程、小さい声で何かを発すると…棚を漁り出した。
なんだ注文すれば良かったのか…なんて思っていたが、明らかに様子がおかしい。
このマスター、ガタガタと震えながらグラスを取り出して私の前へ置く…

「おいおいおい!アル中なの?ちょっと変よ…」
【ア飛…ひゃ賀がララがぎ疑義!!御ぎょ魚!!】
「な…気でも狂ったか!このおやじ…」
【ぐあぁぁああ!!ぉぉぉぉおおおおおお!!】

狂ったようにマスターは意味が分からない事を口走りながら…目と口から血を流す!
私はドン引きしながら椅子から立ち、ドアの前まで退避すると…その男は全身をもぞもぞと変形し始める!手と足は変な方向へ曲がり、舌は伸びて行く…
そしてソレは異形の者へと成り下がると…こちらを向く…

「ッチ!コイツ、人間じゃ無かったのか…」
【酒!酒!注文!ホイル焼き!!あぐががががが!!】
「聞こえてるなら良い?それ以上近付くと…殺すわよ?」
【みんなオレをバカにしやがってぇぇぇ!!】
「くっ…しょうがない!!」

ベキベキと曲がり続ける腕と脚で回りながら近づいてくる相手へ…拳をぶち込んだ。
正確には相手の顔面辺りだ…本当はキモいからやりたくなかったけどしょうがない。
顔面へ突き刺さった拳と腕に舌がグルグル巻き付いて来たが…直ぐにグテッと下へ落ち…動かなくなってしまった…
何なんだ此処は本当に…気持ちが悪い。
私は気分が悪くなったので、外へ出ようとした…が扉の先には…

「うわぁぁ!?」
「…いったぁ!!?」

扉の先には銃を持った人間が立っており、私が出た瞬間へ顔面に向かって発砲してきた。
弾丸は眉間で弾いたが…痛い!死ななくてもメチャクチャ痛い!

「うぅぅ…痛いわね!何すんのよ!!」
「すまん、化け物と間違えて…ってアンタ誰だ…此処のマスターは…」
「それはこっちのセリフよ…なんなの此処は…」

変な化け物には襲われる!額を銃弾で撃たれる!今日は厄日だ!!
私は怒りながらも突っ立っている男に今の状況をザッと話した。
寒くて此処に寄ったら襲われて発砲されたと。

「マ、マスターが!?そんな……マスターまで…化け物になるなんて…」
「えーっと?話が見えないんだけど?此処は何処なの?これは何なの?」
「はぁ……此処はエンジャラス・バレー…これは…天使の副産物だ…」

なんだ此処がエンジャラスバレーだったのか…
いつの間にか晴れていた吹雪…外へ出てみて街の看板を見れば確かに…そこにはエンジャラス・バレーへようこそ!と書かれた木製の鮮やかな看板が目に入る。
あんなに積もっていた雪は無くなっており、くすんだ天気の街が広がっている。

「旅人さん、悪い事は言わない、直ぐに此処から出ると良い。」
「そういうワケにはいかないのよ。とある者の首を破壊しないといけないの。」
「く、首?」
「意味わかんないでしょ?それが普通よ。」
「いや…首だろう?何処でそんな情報を仕入れたんだ?」
「知ってるの?」

どうやらこの男は知っている様だ…首の事を…驚いたな、コイツも教団の奴か?

「詳しい話は俺の家でしよう。…俺の名はアッツォ…人間だ。」
「そう…私の名はミサキ。人間かどうかは分からないわ。」
「ミサキだな。ちょっと待ってろ、直ぐに荷物を…」

そう言うとアッツォは店内にある酒やら食料やらを当たり前の様にぶら下げているバッグへ入れ始める…別に自分の物では無いので良いのだが…

「ねぇ、大丈夫なの?勝手に持ってって…」
「マスターは死んだだろ?早くしないと他の奴が来る。」
「他の奴?化け物のこと?」
「そうかもな。……さぁ行こう。俺の家はちょっと遠いぞ。」

バッグへパンパンに荷物を入れたアッツォは猟銃に弾を込めると…外へ出た。
私もその後をついて行くのだが…この街は明らかに変だ…
あらゆる建物の窓からは暗い顔の住人が私と彼の事を見つめる…野生動物を見る目で。
しばらく彼について行くと…街はずれの一軒家へと着いた…木造のまぁまぁ大きい家だ。
アッツォは扉を5回、間を開けて4回叩くと…扉が開く。

「自分の家なのにノック?」
「ちょっと訳ありなもんでね。さぁ中へ入って。紹介するよ。」

彼の家には…女性が居た…顔中に血が滲んだ包帯を巻いたもの静かな人だ。
彼女が家の扉を中から開けたのだろう。
アッツォは彼女を抱きしめると、包帯越しに額へキスをする。

「紹介する、妹のルミゼント…ルミリィだ。」
『ごきげんよう…』
「こ、こんにちわ…」
「ルミリィ、彼女はミサキ。旅人で化け物化したマスターを撲殺したらしい。」

それを聞いたルミリィは『そう…』と静かに呟くと、杖を使い、ぎこちない足取りで椅子へ座る。
アッツォは上着をコートハンガーに掛け、帽子も取ると、猟銃とバッグを奥の部屋へ持って行った…よく見てみれば玄関の扉の横にも…散弾銃が置いてある。
物騒な家だ。

「待たせたねミサキ…で、何処から話そうか?」
「この街はなんなの?あの化け物って?」
「此処はエンジャラス・バレー…さっきも言ったけど。で…あの化け物もこれまたさっきも言ったように天使の副産物だ。」

その天使と言うのは…ある日街で発掘された…女性の頭部らしい。
当初は誰もが不気味がっていたが、2週間前その頭部は喋り始め…こう言ったらしい。
『ゲームをやりましょう』と…その突拍子もない言葉に街の皆は呆れた。
だがその日から…吹雪が吹く度、何処かの家の人が化け物に成り代わり、人を襲い始めたらしい。

「初めて化け物が出て来た時は…非常に大変だった。」
「そりゃ当たり前よね。」
「人を幾人も襲い…私の父が猟銃で撃ち殺した時には…その家の家族全員と数人は…もう既に犠牲になっていた。」

始めて化け物が出た日の翌朝、この街の人々は悟った…逃げられないと。
何故かは分からないが、街の人々は全てを理解したらしい…まるで脳内に説明書をぶち込まれた様に…

「ルールもある、その1化け物が出たら殺すべし。」

化け物は2日に1度訪れる一瞬の吹雪が吹く間にランダムで街の人が変貌する。
変貌した人間は家族他人関係なしに殺す…なので早く殺さなければならない。
その2は…ただ生き残るべし…残り1家族になったら…このゲームとやらは終わるらしい。

「今はどのくらい?バカっぽいけど付き合ってあげるわ。」
「そうか…今残っているのは5家族…お前を含めて15人だ。」

残っている人物は…私を含め5家族15人。

アルツォ家 長男アルツォ、長女ルミリィ、旅人ミサキ

ガッデマン家 父ガッデマン、母ジェルス、長女ムニマジア、次女ヤン

ボンデベラ家 夫ボンデベラ、妻ラブンダー、夫の母ナーグス

ジョゴン家 夫ジョゴン、夫の伴侶カクマク

ナジィード家 父ナジィード、母ズルマン、長男ニヤムル

生存者残り、5家族、15人。
本日の変貌、酒場のマスター。
本日の死者、マスター(変貌)。

「マスターが死んだからマスターの家は壊滅だ。」
「家族って…全員が死んだら壊滅なの?」
「ああ、例えば俺が変貌してもルミリィやミサキが家に残ってれば…我がアルツォ家は無事だ。」

私は…どうやら奇妙な場所へ迷い込んでしまった様だ。
きっとこのゲームに勝てば天使の首とやらに会えるだろう…それが暗示を持つ者なら付き合ってやろう。
ご対面したらすぐに…破壊だ。

つづく
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