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第1章 十七番街の主、燭台篇
第4話 十七番街の狂気賛歌
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私の名はミサキ、世界最強の力を持つ巫女服を着て、白鞘を携えた女の子。
今は十七番街にて燭台の暗示を持つ者の行方を追っている。
適当に聞き込みでもしたいのだが…あまり派手に行くとマズい。
悟られると逃げられるかもしれないので、そこら辺で始めよう。
あの小汚い屋台なんて良さそうじゃないか、泥みたいな物を茹でてるし。
「ここ、開いてるよね。」
「ええどうぞ、客が居ないもんでね。」
店主が幽霊のこの屋台は…煮込み?とか言う料理を提供するらしい。
とりあえずそんな話は置いといて、さりげなく聞いてみるか。
「店主さ、私って人を探してるんだよね。」
「奇遇ですね。私も探しているんですよ、とある人を。」
「へぇ…それってどんな人?」
「お客様って言うんです。冷やかさない人ですよ。」
「ご、ごめん…じゃあ適当に見繕って…」
私がそう言うと店主は「はい」と答え、ドロドロした汁の中から串に刺さった何かを数本、皿に盛りつけ、こちらへ出した。
「飲み物は?」とも聞かれたのでリンゴジュースと答えた。
こんな真昼間から酒を飲むつもりは無い。
「それで…お客さんが探してるって人は…見当が付きますけどね。」
「え?分かるの?」
「此処で人を聞く理由なんて大体がソレですから。」
流石は十七番街の住人と言うワケか…そう言う事は分かる様だ。
「この街の北にある接骨院、そこにとある按摩が居るんです。」
「按摩?なぜそんな人を…」
「彼にはとある力が有る。それ以外は分かりません。」
「ほう…(按摩ね…もしかしたらゴッドハンドとか?)」
知らない人の為に説明すると、按摩と言うのは腰や肩などを揉んで治す人だ。
その行為自体も按摩と言うのだが、この場合は職業の事を指す。
北の接骨院「狂気賛歌」にその按摩は居ると店主は言った。
「ところでお客さん…冷めてしまいますよ?折角の煮込みが。」
「そうだったそうだった…えーっと…これは何の串?」
「牛スジですね。牛さんのスジが入った部分…アキレス腱とかです。」
「アキレスか。足が速くなりそう。」
牛スジは不思議な食感をしてるが、独特の旨味があって美味しい。
串はあと2本…1つはビロビロの何か、もう1つは…肉?みたいな串だ。
私は前者のビロビロの方を取り、聞いてみた。
「これは?もしかして内臓系?」
「はい。牛の大腸です。」
「大腸か…草食動物の腸は長いと聞いた事があるよ。」
「ええ、そうですよ。一部を除いてですがね。」
この大腸は…とてもトロトロで食べやすい…けど、煮込み汁の味しかしないな。
そして残ったのが…なんだろう本当に…肉だろうけど…?内臓では無い。
豚の角煮を薄く切ったみたいな感じだ、四角い肉。
私は少し…恐れながらも店主へ聞いた。
「店主、これは…なんの肉?」
「……すみません、忘れてしまいました。」
「忘れた?店主が仕込んだんじゃないのか?」
「どうも最近、物忘れが激しくてですね…豚か牛か人間です。」
に、人間…人間の肉…なのか?これは…人間ってこんな感じに加工されるのか?
いやけど、豚か牛の可能性だってある、一概に決めるのは失礼だ。
「人間って…売って良いの?」
「ははは、お客さん。バカ言っちゃいけません。此処は十七番街…」
「………」
「人間を食わない奴の方が少ないですよ。貴方だって…そうでしょ?」
そうだった…此処は亡国の十七番街…マナーや常識なんて一切通用しないのだ。
悪魔の中には人間を食す者が居る、面倒くさい呪いによって、仕方なしに。
だけど人間はマズイ…なので味を濃く料理するのが基本である。
そういう点ではこの煮込みは理にかなっているな。
「私は悪魔じゃ無いわ。けど…人間でも無いわ。」
「そうでしょう。で、食べてみてくださいよ。分かりますか?」
「えーっと………これは…牛ね。この噛み心地は牛だと思う。」
「へへへ、ご名答。今朝の事でしたので忘れていました。」
確かにその串は牛肉だ、黒くて硬くて慣れ浸しんだ味。
私は煮込みを平らげるとジュースを飲み干し、会計した。
少し、お腹は重たいが…今すぐにでも北の接骨院へ行かなければ。
「お客さん、最後に1つ…」
「はぁ…何か?」
「この街に入ってから見られなかった者は居ない…貴方もね。」
「肝に銘じておくわ。」
「へい。またのご利用をお待ちしております。」
私は透けて怪しげな店主が営む店から離れ、例の接骨院を目指した。
しかしまぁ…この街は入り組んで歩きづらいったらありゃしない。
飛ぼうにも上は電線や洗濯物が張り巡らされているので上手く飛べない。
なので歩きで行くしか無い…けど目のやり場には困らないな。
「(アクセサリーにガラス細工…綺麗なものが多いなぁ。)」
他にも水槽が並んだ魚屋や、無骨な鉄の檻に入れられた動物が陳列されているペットショップ…一応刃物等を売っている武器屋もある。
ガンショップは流石に少ないようだが。
「なぁ…お嬢さん、巫女服のお嬢さん。」
「はん?私?私に何か御用でも。」
道中で突如として声を掛けて来たのは怪しい風貌の女性であった。
この世にインチキと言う言葉があるが、この人はまるでそれを具現化しようだ。
凄く怪しい…薬やマルチ商法の勧誘じゃ無いだろうな?
私は警戒しながらも話を聞くことにした。
「お嬢さん、占ってみないかい?今ならタダにするよ。」
「それはそれは気前の良いこと。良いよ、占って欲しいな。」
「ならそこにお座り。今から水晶に聞こう。」
どうやら占い師だった様だ、彼女は何処からか水晶を取り出すと机の上に置く。
そして…ザ・占い師と言った感じの手の動きをさせ、私を占う。
だが水晶は依然として何も変わらず、辺りの風景を反射しているだけ。
こんな道の端っこで座るというのも…中々恥ずかしい。
「おお!これはこれは…なんと不運な…」
「へぇー…で?壺や水でも買わそうっての?」
「いいえそんな事ではございません。水晶に出ているのは……貴方の死です!」
「………死?」
その瞬間、占い師の机の下からはガトリングガンが飛び出し!私を滅多打ちにし始める!辺りからは絶叫が聞こえ、まさに阿鼻叫喚!
それにしても…チックショウ!コイツ、これが目当てで…
「キャハハハハ!見えます!見えます!貴方がボロボロになって死ぬ運命が!!」
「………」
「どれ…流石にもう死んだだろう…」
「……おい。」
「!?」
服がボロボロだ…よくも私の事を殺そうとしてくれたな…痛いじゃないか。
もう許せないからな?そっちから始めたんだぞ?正当防衛だからな?
「な、なんで…生きて…」
「げっふ…アンタの占い、半々で当たってるわよ。」
「え?は、半々…?」
「そう。ボロボロになって死ぬのは……アンタってね。」
「うわぁぁああああ!!」
私は席を立ち、逃げようとする占い師の右腕を掴むと…
「ドウラァアアアア!!」
「キャァァ!?ばびゃ………」
無理やり一本背負いの様に硬い地面へ叩き付けた!!
占い師はなんとも間の抜けた断末魔で生き途絶え…地面へ色々飛び散らせる。
全く…油断も隙もありゃしない…誰の差し金だコイツは?
きっと以前の仕事で殺した奴の部下か何かだろうが…はぁ…疲れるよ。
「(胸の辺りが丸見えだ…これじゃ変態だよ…トホホ…)」
私は道の端っこで胸の辺りを抑え、服が再生するのを待った。
だが…その姿が乞食と間違われたのか…
「可哀想に…こんな歳の子供が…」
「ママー!見て!物乞いだよ!新しい女の物乞いだよ!」
【その歳で乞食とは…ロクな人間じゃ無いね。】
「じゃかぁしい!!ほっとけバカヤロー共!!」
クソぅ…あそこでくたばってるクソ占い師め…よくも私に恥を掻かせてくれたな…
ぶっ殺してるから責任を取らせられないのが残念だ。
それはさておき…服はまだ完全にでは無いが、最低限は再生した。
もう行こう…騒ぎで感付かれるとマズい。
もっとも…暗示を持つ者が私の事を知っているかどうかが疑問だがな。
「接骨院、狂気賛歌…此処か。」
遂に見つけたりは目的の接骨院、狂気賛歌…小さいビルの3階にあるのがそうか。
エレベーターは無いので茶色いタイルの階段を昇り、ガラスの扉を開けて入店した。
一応接骨院なので入店だ…受付の女性は…普通の人間だ、なんの変わりも無い。
「いらっしゃいませ。」
「残念だけど客じゃない。人を探してる…分かるよね?」
「………店長を読んで来ます。」
「悪いね、助かるよ。」
受け付けは何かを察したのか、奥へ行った。
荒い事をする前に分かってもらえて何よりだ…関係ないヤツは出来るだけ殺すのは控えよう…あくまでも自分に危害を加えたり、機嫌を損ねたりする奴には容赦しないけど。
そして数分後、それらしき大柄な男が現れた…悪魔じゃない、人間だ。
「お客さん…私の事を…お探しで?」
「アンタが店長ね。すごい力を持っている奴を探してる…知らない?」
「それはそれは…どうぞ奥で話をしましょうや…」
「そう。じゃあお邪魔させてもらうわ。」
「フッ……隙あり!!」
店長は私の首を後ろから強く掴み、そのまま上へ持ち上げる!
ビキビキと鳴りながら指は首へめり込んで行く…
「どこで俺の事を嗅ぎつけやがった…それとも組織の使いか?」
「そ、組織…?何を言って…」
「とぼけるなぁ!!」
店長は大声を上げ、私を奥の硬いベッドへうつ伏せさせると、激しい猛攻で私の背中や肩、うなじの辺りを強打する!!これが…按摩の力…
だが…これは…治すのではない…殺すつもりだ!私を!
「どうだ!!地獄の関節外しは!これで動けまい!!」
「……アンタ、意外と良いマッサージするのね。」
「動ける…だと!ええい!こうなりゃ俺の拳を喰らいな!!」
「ア、アレは店長の必殺技!ストレートハンマーパンチ!数々の野生動物を葬り!岩をも砕き、山をも削る最強の拳!」
「丁寧な解説だこと。」
「死ねい!!」
店長のストレートハンマーパンチは私の顔面へクリーンヒット!
私はぶっ飛ばされ、カーテンを突っ切り、受付のカウンターまで飛んで行った!
「はぁ…はぁ…今のはヤバかったぜ…」
「中々やるじゃない。店長さん?」
「ぬわぁぁにぃぃ!?コイツ…生きているだと!!」
「そんな!あり得ない!だってあの拳のパワーは(以下略)」
せっかく話を聞いてあげようと思ったのに…とある力がタダの馬鹿力だったとはね。
想定外も想定外…期待外れとも言うべきか、もう決着を付けてしまおう。
世界最強の拳…とくと味わあわせてあげようじゃないの。
「アンタの拳、山を削るようね。」
「そ、そうだが…」
「私の拳はね………地球の命を削るのよ。」
「はぁぁぁあ!?」
「理解できない?…こういう事よ!!」
「うぶずわぁぁああ!?」
奴の顔面目掛けて、私はいつもより力を込めた拳を遠慮なしにぶちかました!
店長さんの頭部はドッパァァン!と弾けて飛び散り…部屋の中を汚す。
せっかくの接骨院が血濡れの大惨事だ…こういう場所は清潔にしないといけないのに。
さて…どうだろう…頭部を破壊すれば紙に色が付くはずだが…
「………付かないな。人違いだったか。」
「ああぁ…て、店長が…爆発…した……アハハ…アハハハハ!!」
「刺激が強すぎて狂ったか…まぁ良い、ちょっと肩揉んでよ。」
「ハイィィ!!」
さてと…まず最初の標的、接骨院「狂気賛歌」の店長は違うと。
名も知らぬ奴だったが…私に先制攻撃を行ったのが悪い…私は悪くない。
となると、また一から聞き直しか?面倒臭くてたまらないな。
しかし、報酬は貰える…行き詰ったら教会とやらに行ってみるか。
つづく
今は十七番街にて燭台の暗示を持つ者の行方を追っている。
適当に聞き込みでもしたいのだが…あまり派手に行くとマズい。
悟られると逃げられるかもしれないので、そこら辺で始めよう。
あの小汚い屋台なんて良さそうじゃないか、泥みたいな物を茹でてるし。
「ここ、開いてるよね。」
「ええどうぞ、客が居ないもんでね。」
店主が幽霊のこの屋台は…煮込み?とか言う料理を提供するらしい。
とりあえずそんな話は置いといて、さりげなく聞いてみるか。
「店主さ、私って人を探してるんだよね。」
「奇遇ですね。私も探しているんですよ、とある人を。」
「へぇ…それってどんな人?」
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「ご、ごめん…じゃあ適当に見繕って…」
私がそう言うと店主は「はい」と答え、ドロドロした汁の中から串に刺さった何かを数本、皿に盛りつけ、こちらへ出した。
「飲み物は?」とも聞かれたのでリンゴジュースと答えた。
こんな真昼間から酒を飲むつもりは無い。
「それで…お客さんが探してるって人は…見当が付きますけどね。」
「え?分かるの?」
「此処で人を聞く理由なんて大体がソレですから。」
流石は十七番街の住人と言うワケか…そう言う事は分かる様だ。
「この街の北にある接骨院、そこにとある按摩が居るんです。」
「按摩?なぜそんな人を…」
「彼にはとある力が有る。それ以外は分かりません。」
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知らない人の為に説明すると、按摩と言うのは腰や肩などを揉んで治す人だ。
その行為自体も按摩と言うのだが、この場合は職業の事を指す。
北の接骨院「狂気賛歌」にその按摩は居ると店主は言った。
「ところでお客さん…冷めてしまいますよ?折角の煮込みが。」
「そうだったそうだった…えーっと…これは何の串?」
「牛スジですね。牛さんのスジが入った部分…アキレス腱とかです。」
「アキレスか。足が速くなりそう。」
牛スジは不思議な食感をしてるが、独特の旨味があって美味しい。
串はあと2本…1つはビロビロの何か、もう1つは…肉?みたいな串だ。
私は前者のビロビロの方を取り、聞いてみた。
「これは?もしかして内臓系?」
「はい。牛の大腸です。」
「大腸か…草食動物の腸は長いと聞いた事があるよ。」
「ええ、そうですよ。一部を除いてですがね。」
この大腸は…とてもトロトロで食べやすい…けど、煮込み汁の味しかしないな。
そして残ったのが…なんだろう本当に…肉だろうけど…?内臓では無い。
豚の角煮を薄く切ったみたいな感じだ、四角い肉。
私は少し…恐れながらも店主へ聞いた。
「店主、これは…なんの肉?」
「……すみません、忘れてしまいました。」
「忘れた?店主が仕込んだんじゃないのか?」
「どうも最近、物忘れが激しくてですね…豚か牛か人間です。」
に、人間…人間の肉…なのか?これは…人間ってこんな感じに加工されるのか?
いやけど、豚か牛の可能性だってある、一概に決めるのは失礼だ。
「人間って…売って良いの?」
「ははは、お客さん。バカ言っちゃいけません。此処は十七番街…」
「………」
「人間を食わない奴の方が少ないですよ。貴方だって…そうでしょ?」
そうだった…此処は亡国の十七番街…マナーや常識なんて一切通用しないのだ。
悪魔の中には人間を食す者が居る、面倒くさい呪いによって、仕方なしに。
だけど人間はマズイ…なので味を濃く料理するのが基本である。
そういう点ではこの煮込みは理にかなっているな。
「私は悪魔じゃ無いわ。けど…人間でも無いわ。」
「そうでしょう。で、食べてみてくださいよ。分かりますか?」
「えーっと………これは…牛ね。この噛み心地は牛だと思う。」
「へへへ、ご名答。今朝の事でしたので忘れていました。」
確かにその串は牛肉だ、黒くて硬くて慣れ浸しんだ味。
私は煮込みを平らげるとジュースを飲み干し、会計した。
少し、お腹は重たいが…今すぐにでも北の接骨院へ行かなければ。
「お客さん、最後に1つ…」
「はぁ…何か?」
「この街に入ってから見られなかった者は居ない…貴方もね。」
「肝に銘じておくわ。」
「へい。またのご利用をお待ちしております。」
私は透けて怪しげな店主が営む店から離れ、例の接骨院を目指した。
しかしまぁ…この街は入り組んで歩きづらいったらありゃしない。
飛ぼうにも上は電線や洗濯物が張り巡らされているので上手く飛べない。
なので歩きで行くしか無い…けど目のやり場には困らないな。
「(アクセサリーにガラス細工…綺麗なものが多いなぁ。)」
他にも水槽が並んだ魚屋や、無骨な鉄の檻に入れられた動物が陳列されているペットショップ…一応刃物等を売っている武器屋もある。
ガンショップは流石に少ないようだが。
「なぁ…お嬢さん、巫女服のお嬢さん。」
「はん?私?私に何か御用でも。」
道中で突如として声を掛けて来たのは怪しい風貌の女性であった。
この世にインチキと言う言葉があるが、この人はまるでそれを具現化しようだ。
凄く怪しい…薬やマルチ商法の勧誘じゃ無いだろうな?
私は警戒しながらも話を聞くことにした。
「お嬢さん、占ってみないかい?今ならタダにするよ。」
「それはそれは気前の良いこと。良いよ、占って欲しいな。」
「ならそこにお座り。今から水晶に聞こう。」
どうやら占い師だった様だ、彼女は何処からか水晶を取り出すと机の上に置く。
そして…ザ・占い師と言った感じの手の動きをさせ、私を占う。
だが水晶は依然として何も変わらず、辺りの風景を反射しているだけ。
こんな道の端っこで座るというのも…中々恥ずかしい。
「おお!これはこれは…なんと不運な…」
「へぇー…で?壺や水でも買わそうっての?」
「いいえそんな事ではございません。水晶に出ているのは……貴方の死です!」
「………死?」
その瞬間、占い師の机の下からはガトリングガンが飛び出し!私を滅多打ちにし始める!辺りからは絶叫が聞こえ、まさに阿鼻叫喚!
それにしても…チックショウ!コイツ、これが目当てで…
「キャハハハハ!見えます!見えます!貴方がボロボロになって死ぬ運命が!!」
「………」
「どれ…流石にもう死んだだろう…」
「……おい。」
「!?」
服がボロボロだ…よくも私の事を殺そうとしてくれたな…痛いじゃないか。
もう許せないからな?そっちから始めたんだぞ?正当防衛だからな?
「な、なんで…生きて…」
「げっふ…アンタの占い、半々で当たってるわよ。」
「え?は、半々…?」
「そう。ボロボロになって死ぬのは……アンタってね。」
「うわぁぁああああ!!」
私は席を立ち、逃げようとする占い師の右腕を掴むと…
「ドウラァアアアア!!」
「キャァァ!?ばびゃ………」
無理やり一本背負いの様に硬い地面へ叩き付けた!!
占い師はなんとも間の抜けた断末魔で生き途絶え…地面へ色々飛び散らせる。
全く…油断も隙もありゃしない…誰の差し金だコイツは?
きっと以前の仕事で殺した奴の部下か何かだろうが…はぁ…疲れるよ。
「(胸の辺りが丸見えだ…これじゃ変態だよ…トホホ…)」
私は道の端っこで胸の辺りを抑え、服が再生するのを待った。
だが…その姿が乞食と間違われたのか…
「可哀想に…こんな歳の子供が…」
「ママー!見て!物乞いだよ!新しい女の物乞いだよ!」
【その歳で乞食とは…ロクな人間じゃ無いね。】
「じゃかぁしい!!ほっとけバカヤロー共!!」
クソぅ…あそこでくたばってるクソ占い師め…よくも私に恥を掻かせてくれたな…
ぶっ殺してるから責任を取らせられないのが残念だ。
それはさておき…服はまだ完全にでは無いが、最低限は再生した。
もう行こう…騒ぎで感付かれるとマズい。
もっとも…暗示を持つ者が私の事を知っているかどうかが疑問だがな。
「接骨院、狂気賛歌…此処か。」
遂に見つけたりは目的の接骨院、狂気賛歌…小さいビルの3階にあるのがそうか。
エレベーターは無いので茶色いタイルの階段を昇り、ガラスの扉を開けて入店した。
一応接骨院なので入店だ…受付の女性は…普通の人間だ、なんの変わりも無い。
「いらっしゃいませ。」
「残念だけど客じゃない。人を探してる…分かるよね?」
「………店長を読んで来ます。」
「悪いね、助かるよ。」
受け付けは何かを察したのか、奥へ行った。
荒い事をする前に分かってもらえて何よりだ…関係ないヤツは出来るだけ殺すのは控えよう…あくまでも自分に危害を加えたり、機嫌を損ねたりする奴には容赦しないけど。
そして数分後、それらしき大柄な男が現れた…悪魔じゃない、人間だ。
「お客さん…私の事を…お探しで?」
「アンタが店長ね。すごい力を持っている奴を探してる…知らない?」
「それはそれは…どうぞ奥で話をしましょうや…」
「そう。じゃあお邪魔させてもらうわ。」
「フッ……隙あり!!」
店長は私の首を後ろから強く掴み、そのまま上へ持ち上げる!
ビキビキと鳴りながら指は首へめり込んで行く…
「どこで俺の事を嗅ぎつけやがった…それとも組織の使いか?」
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だが…これは…治すのではない…殺すつもりだ!私を!
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「動ける…だと!ええい!こうなりゃ俺の拳を喰らいな!!」
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「そんな!あり得ない!だってあの拳のパワーは(以下略)」
せっかく話を聞いてあげようと思ったのに…とある力がタダの馬鹿力だったとはね。
想定外も想定外…期待外れとも言うべきか、もう決着を付けてしまおう。
世界最強の拳…とくと味わあわせてあげようじゃないの。
「アンタの拳、山を削るようね。」
「そ、そうだが…」
「私の拳はね………地球の命を削るのよ。」
「はぁぁぁあ!?」
「理解できない?…こういう事よ!!」
「うぶずわぁぁああ!?」
奴の顔面目掛けて、私はいつもより力を込めた拳を遠慮なしにぶちかました!
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せっかくの接骨院が血濡れの大惨事だ…こういう場所は清潔にしないといけないのに。
さて…どうだろう…頭部を破壊すれば紙に色が付くはずだが…
「………付かないな。人違いだったか。」
「ああぁ…て、店長が…爆発…した……アハハ…アハハハハ!!」
「刺激が強すぎて狂ったか…まぁ良い、ちょっと肩揉んでよ。」
「ハイィィ!!」
さてと…まず最初の標的、接骨院「狂気賛歌」の店長は違うと。
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