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序章 ミサキ
第1話 ミサキ、現る
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此処は亡国…世界から爪弾きにされたモノがやって来る場所。
亡国には至って単純な掟がある…それもたった1つの掟が。
勝った奴は強い、負けた奴は負け犬…この国の敗北は死よりも屈辱的だ。
しかしそれも…昔の話、今ではこの国がどうやって動いてるなんて誰も分からない。
私だって分からない…
「(今日は食料を買いに行かないと…)」
私の名はミサキ、亡国の端っこに暮らす…世界最強の力持つ女の子。
生まれた時からいつも1人で、その瞬間からこの姿…何年も経つけど成長しない。
だけど…私がこの大地に足を着いた時…聞こえた気がする。
『お前は最強の力を持っている、私利私欲の為に尽くせ…』と。
なので今は…適当に仕事をして暮らしている…仕事と言っても力仕事や害獣駆除、魑魅魍魎の排除や殺し屋なんかも引き受けている。
「ミサキィィ!見つけたぞ!!」
「(今日もかぁ…早く帰りたいんだけど…)」
「よくも兄貴をやってくれたな!」
職業柄、恨みを買う事は少なくない…なので人が少ない端っこに住んでいる。
だがしかし、たまに…いや、結構な頻度でわざわざ出向いてくる奴が居る。
殺すのだってあまり良い気はしないし、面倒くさいので…早く終わらせよう。
私は下に落ちていた…水切りをするなら対岸まで行きそうなくらい丁度いい平たい石を手に取ると、力を込めて相手目掛けてぶん投げた。
石は相手の顔面へブチュリと刺さり…死んでしまった。
さぁこれで買い物に行ける…死体は野犬か熊とかが食べるだろう。
「おい…見ろよ、ミサキが来たぞ…」
「マジかよ…」
「私、あの子を子供の時から知ってるけど…」
「全然変わって無いわよね…?」
「(うるせぇな…人が成長しないが何だろうと勝手だろう…)」
近くの集落まで買い物に来ると、いつもこれだ…陰口をヒソヒソと叩かれる。
人々は聞こえていないと思っているらしいが…私には丸聞こえだ。
ハッキリ言ってこんな集落、滅ぼすのは造作も無いこと…しかし、無いと困る。
なので今は…無視しよう…気にしない事も大切だ。
「(買う物は…油揚げと…チョコレートと…)」
今晩はチョコレート稲荷寿司を作りたいので、チョコと油揚げが必須。
お吸い物はカラスの肉…てんぷらは野草で良いか…漬物もあるし。
今日の買い物は直ぐに終わりそうだ…
「らっしゃい……なんだ、ミサキか。」
「何か文句でも?」
「長居はすんなよ、客が入らなくなる。」
「へいへい。」
小さい商店の店番をしているのは此処のせがれ、ラガード。
人間では無く、悪魔の一種なので…まぁ人外同士で交流はある。
この集落では数少ない、私と話すタイプだ。
接客態度は良くないが、誰に対してもこんな感じ…彼女以外には。
「これ、もらうわ。」
「あぁん?チョコと油揚げ?どんな組み合わせだよ。」
「個人の事にはあまり首を突っ込まないでくれる?」
「フン…まぁどうせ、チョコ稲荷とか作るつもりだろ。」
こんな奴でも、悪魔なので、他の生物の欲などを読むのは得意らしい。
心を見透かされるのはいけ好かない…だが無意識らしいので許してやろう。
会計を済ませると手提げに商品を入れ、商店を出ようとした…が。
私の退店と同時に客が入って来た…正体はリンヤ、私の一応友達。
「うげっ…ミサキ…」
「リンヤ、うげって何よ?まだ気にしてるの?」
「フン!ミサキとは絶交中って決めたもん!」
リンヤは首狩り族の少女であり、元々は南米の貴族の末柄だ。
数年前にここら辺へ移住してきて、それ以来…不本意だけど遊んでいる。
絶交中なのは私がリンヤの飼っていたエンペラーワームを殺したからだ。
アレは羽化すると大変な事になるので早めに始末しておいた方が良い。
だがリンヤには…絶交されている…7度目の絶交を。
「お前らさ、虫が死んだくらいで絶好すんのやめた方が良いぜ。」
「くらいって何よ!ゲペペペは私に懐いてたんだもん!大事な家族なのに!」
「リンヤ、何回も言うけどアレは貴方を溶かそうとしてたのよ。」
「ウソだウソだ!ゲペペペはそんな事しない!」
ゲペペペは虫の名前だ…リンヤはしないと言っているが…もう遅かった。
あの時、ワームの腹からは小さい手足が出て来たのだ…溶けたのものが…
つまりゲペペペは既に何処かの子供を1人食べてしまったのだ。
その数日前から行方不明者の張り紙があったので…多分だが…うん。
「リンヤ、もういいでしょ?仲直りしよ?」
「やだやだ!仲直りしてもあの子は帰ってこないよ!」
「絶好やめてくれたらアイス買ったげる。」
そう言うとリンヤはピタリと静まり…己の中で戦いを始めた。
ゲペペペの死を赦し、アイスを取るか…それとも赦さずに帰るか。
だがしかし、アイスというのは365日美味しい上に、今は秋の中旬。
食欲の秋なんて言うが一番美味しく感じるのは今頃では無いだろうか。
しかも無垢な子供は甘いものが大好き…
「…の……」
「何か言った?」
「三色のやつ…買ってくれたら…許す。」
「いつものね。良いよ。」
リンヤが言う三色のアイスはイチゴとバナナ、チョコが1本で食べられるやつだ。
1つのアイスで3つの味が食べられるのは究極の節約という理由で選んでいる。
一応彼女は貴族の末柄なのだが…妙にいやしいと言うか…庶民的な感じ。
ヨーグルトの蓋を舐めるし、食べる時だって、掬わずにスプーンに付いたのを舐め取る感じで食べている…
「やっぱこれこれ…ミサキ、明日ウチ来なよ。」
「切り替えが早いわね…けどアンタんちに行くと…迷惑かかるでしょ。」
「そんなもの気にしないよ。パパとママは悪口言ってるけど…私は平気だよ。」
「けど…明日は仕事だから。」
「そうなんだ…」
私はリンヤにアイスを買ってあげると、彼女の誘いを断り、帰路についた。
本当は明日、特に用事なんて無いし、仕事も無い。
彼女の両親は普通の人だ…だから私の事を嫌う…リンヤにもそうなってほしい。
私と関われば…危険にさらされる事になるから。
「(友達の誘いを断るのは…気が引けるなぁ…)」
これも仕方ないこと…最強の力は…使う機会こそ少ないが、それでも恐ろしい。
私だけではなく、関わった人も危険にさらされる事になるからだ。
リンヤはいい子だ…あの子には無事でいて欲しい…
「……?誰か倒れてる?」
帰り道を歩いていると、道の端っこに誰かが倒れているのが見えた。
寄ってみると…倒れている者に頭は無く…首からドクドクと血が地面へ垂れている。
死体を見るからに人間の様だが…首無しの死体…ドッペルゲンガーか?
いやしかし…最後の目撃情報からは遠い…誰の仕業だ?
「お嬢さん、死体に近付くのは不用心と言うものでっせ。」
「!?だ、誰…何時からそこに…」
私の後ろにはいつの間にか…老けた男が立っていた…コイツ、人間では無い。
人間なら独特の生気を感じる…しかし、この男から感じるのは不思議な感じ…
今まで出会った事の無い種族だ、魔族でも幽霊でも無い。
「わしゃ、しがない…武人でせぇ。」
「貴様…タダ者では無いな?何が目的だ?」
「これはこれは…かなりの手慣れ…殺気は抑えているつもりでせが…」
奴は白鞘を持っており、ブルブルとした手つきでそれを抜くと、構えた。
見た目は人間の老人だが…皮でも被っているのか?
「恨みは無いが…死んでもらおう!」
「…」
「なッ!刀が…効かないだと…!?」
「そんな物じゃ殺せないわよ。」
私の身体は大量の火薬を使っても、傷一つ付かない無敵に近い身体をしている。
だから刀ぐらいでは傷付くはずもなく、刀は刃こぼれを起こす…
次は…私の番で良いよね?正当防衛だから…ね?
「生まれた時から強力な拳…喰らうと良いわ。」
「何故だ…何故…ハッ!?ま、まさか…」
「ダリャアァァァアアッ!!」
私は右の握り拳に力を込めると…奴に向かって放った。
リーチでは明らかに届かないが、拳の風圧で相手の顔面は凹み…大穴が開く。
そして風圧はそのまま奥の林まで飛んで行き、バッサバッサと音を出す。
コレを使うのは久しぶりだ…最近は首を折るのが多い。
「がッびゃ!?」
「ふぅ…やっぱりこれに限るわ。」
2つの死体の横を通り過ぎた私は特に気にすることなく自分の小屋へ帰った。
何だったのだろうか…あの老人は…ただの辻斬りだったのだろうか?
そんな事を思いながら、今日のところは帰宅することが出来た…
私の家は…家と言うより小屋なのだが、もちろん元々は私の物では無い。
生まれた時からそこにあったから、此処に住んでいるだけ。
ぶっちゃけ夏は暑いし、冬は寒いので不便…しかも風呂もトイレも無し。
けど雨風凌げれば良い…病気にはならないし、排出等も外で済ませる。
住めば都なんて言うがアレは本当だったのだ。
「この服も大分くたびれて来たな…新しいの拾わないと。」
当たり前だけど普段着も全て買わずに拾って何とかしている。
服の買い方を知らないからだ…いつもは数枚をゴミ捨て場で拾っている。
そしてくたびれて来たら交換を繰り返す…服なんてほとんど使い捨て。
だけど…生まれた時に着ていた服だけは綺麗にとってある。
白い巫女服…なぜこれを着ていたかは不明…でも…知らなくても良いかな。
「なんか今日は変な気分…ご飯はまだ作らなくて良いし…昼寝でも…」
前述もしたがこの小屋は夏は暑くて、冬は寒い。
厳密に言えば…冬は囲炉裏を焚けば温かいのだが、面倒くさい。
自然の温度が一番心地よい…秋と春は…最高の季節だ…
【ア…アァァアアア…アア……】
「ッチ…(悪霊が入って来やがった…)」
家の前の盛り塩を取り換えていなかったので…悪霊が家に入って来てしまった。
家に入れたくない奴ベスト3に入る…ドラキュラは好きだけど。
それでも悪霊は…私へは何もしないが、居るだけ居心地が悪くなる。
退散してもらおう、あの世に。
「そこの幽霊。」
【アァァ?】
「私の家から…いや、この世から………去ね!!」
【アゥアァァアア!?】
私は寝そべりながらそう言い、睨むと悪霊は断末魔を発し、この世から消えた。
少し可哀想だが、私の機嫌を損ねたのが悪い…この力は私利私欲の為に使えと言われたからにはそうさせてもらう。
悪も善ともつかない…全てを壊す者として。
つづく
亡国には至って単純な掟がある…それもたった1つの掟が。
勝った奴は強い、負けた奴は負け犬…この国の敗北は死よりも屈辱的だ。
しかしそれも…昔の話、今ではこの国がどうやって動いてるなんて誰も分からない。
私だって分からない…
「(今日は食料を買いに行かないと…)」
私の名はミサキ、亡国の端っこに暮らす…世界最強の力持つ女の子。
生まれた時からいつも1人で、その瞬間からこの姿…何年も経つけど成長しない。
だけど…私がこの大地に足を着いた時…聞こえた気がする。
『お前は最強の力を持っている、私利私欲の為に尽くせ…』と。
なので今は…適当に仕事をして暮らしている…仕事と言っても力仕事や害獣駆除、魑魅魍魎の排除や殺し屋なんかも引き受けている。
「ミサキィィ!見つけたぞ!!」
「(今日もかぁ…早く帰りたいんだけど…)」
「よくも兄貴をやってくれたな!」
職業柄、恨みを買う事は少なくない…なので人が少ない端っこに住んでいる。
だがしかし、たまに…いや、結構な頻度でわざわざ出向いてくる奴が居る。
殺すのだってあまり良い気はしないし、面倒くさいので…早く終わらせよう。
私は下に落ちていた…水切りをするなら対岸まで行きそうなくらい丁度いい平たい石を手に取ると、力を込めて相手目掛けてぶん投げた。
石は相手の顔面へブチュリと刺さり…死んでしまった。
さぁこれで買い物に行ける…死体は野犬か熊とかが食べるだろう。
「おい…見ろよ、ミサキが来たぞ…」
「マジかよ…」
「私、あの子を子供の時から知ってるけど…」
「全然変わって無いわよね…?」
「(うるせぇな…人が成長しないが何だろうと勝手だろう…)」
近くの集落まで買い物に来ると、いつもこれだ…陰口をヒソヒソと叩かれる。
人々は聞こえていないと思っているらしいが…私には丸聞こえだ。
ハッキリ言ってこんな集落、滅ぼすのは造作も無いこと…しかし、無いと困る。
なので今は…無視しよう…気にしない事も大切だ。
「(買う物は…油揚げと…チョコレートと…)」
今晩はチョコレート稲荷寿司を作りたいので、チョコと油揚げが必須。
お吸い物はカラスの肉…てんぷらは野草で良いか…漬物もあるし。
今日の買い物は直ぐに終わりそうだ…
「らっしゃい……なんだ、ミサキか。」
「何か文句でも?」
「長居はすんなよ、客が入らなくなる。」
「へいへい。」
小さい商店の店番をしているのは此処のせがれ、ラガード。
人間では無く、悪魔の一種なので…まぁ人外同士で交流はある。
この集落では数少ない、私と話すタイプだ。
接客態度は良くないが、誰に対してもこんな感じ…彼女以外には。
「これ、もらうわ。」
「あぁん?チョコと油揚げ?どんな組み合わせだよ。」
「個人の事にはあまり首を突っ込まないでくれる?」
「フン…まぁどうせ、チョコ稲荷とか作るつもりだろ。」
こんな奴でも、悪魔なので、他の生物の欲などを読むのは得意らしい。
心を見透かされるのはいけ好かない…だが無意識らしいので許してやろう。
会計を済ませると手提げに商品を入れ、商店を出ようとした…が。
私の退店と同時に客が入って来た…正体はリンヤ、私の一応友達。
「うげっ…ミサキ…」
「リンヤ、うげって何よ?まだ気にしてるの?」
「フン!ミサキとは絶交中って決めたもん!」
リンヤは首狩り族の少女であり、元々は南米の貴族の末柄だ。
数年前にここら辺へ移住してきて、それ以来…不本意だけど遊んでいる。
絶交中なのは私がリンヤの飼っていたエンペラーワームを殺したからだ。
アレは羽化すると大変な事になるので早めに始末しておいた方が良い。
だがリンヤには…絶交されている…7度目の絶交を。
「お前らさ、虫が死んだくらいで絶好すんのやめた方が良いぜ。」
「くらいって何よ!ゲペペペは私に懐いてたんだもん!大事な家族なのに!」
「リンヤ、何回も言うけどアレは貴方を溶かそうとしてたのよ。」
「ウソだウソだ!ゲペペペはそんな事しない!」
ゲペペペは虫の名前だ…リンヤはしないと言っているが…もう遅かった。
あの時、ワームの腹からは小さい手足が出て来たのだ…溶けたのものが…
つまりゲペペペは既に何処かの子供を1人食べてしまったのだ。
その数日前から行方不明者の張り紙があったので…多分だが…うん。
「リンヤ、もういいでしょ?仲直りしよ?」
「やだやだ!仲直りしてもあの子は帰ってこないよ!」
「絶好やめてくれたらアイス買ったげる。」
そう言うとリンヤはピタリと静まり…己の中で戦いを始めた。
ゲペペペの死を赦し、アイスを取るか…それとも赦さずに帰るか。
だがしかし、アイスというのは365日美味しい上に、今は秋の中旬。
食欲の秋なんて言うが一番美味しく感じるのは今頃では無いだろうか。
しかも無垢な子供は甘いものが大好き…
「…の……」
「何か言った?」
「三色のやつ…買ってくれたら…許す。」
「いつものね。良いよ。」
リンヤが言う三色のアイスはイチゴとバナナ、チョコが1本で食べられるやつだ。
1つのアイスで3つの味が食べられるのは究極の節約という理由で選んでいる。
一応彼女は貴族の末柄なのだが…妙にいやしいと言うか…庶民的な感じ。
ヨーグルトの蓋を舐めるし、食べる時だって、掬わずにスプーンに付いたのを舐め取る感じで食べている…
「やっぱこれこれ…ミサキ、明日ウチ来なよ。」
「切り替えが早いわね…けどアンタんちに行くと…迷惑かかるでしょ。」
「そんなもの気にしないよ。パパとママは悪口言ってるけど…私は平気だよ。」
「けど…明日は仕事だから。」
「そうなんだ…」
私はリンヤにアイスを買ってあげると、彼女の誘いを断り、帰路についた。
本当は明日、特に用事なんて無いし、仕事も無い。
彼女の両親は普通の人だ…だから私の事を嫌う…リンヤにもそうなってほしい。
私と関われば…危険にさらされる事になるから。
「(友達の誘いを断るのは…気が引けるなぁ…)」
これも仕方ないこと…最強の力は…使う機会こそ少ないが、それでも恐ろしい。
私だけではなく、関わった人も危険にさらされる事になるからだ。
リンヤはいい子だ…あの子には無事でいて欲しい…
「……?誰か倒れてる?」
帰り道を歩いていると、道の端っこに誰かが倒れているのが見えた。
寄ってみると…倒れている者に頭は無く…首からドクドクと血が地面へ垂れている。
死体を見るからに人間の様だが…首無しの死体…ドッペルゲンガーか?
いやしかし…最後の目撃情報からは遠い…誰の仕業だ?
「お嬢さん、死体に近付くのは不用心と言うものでっせ。」
「!?だ、誰…何時からそこに…」
私の後ろにはいつの間にか…老けた男が立っていた…コイツ、人間では無い。
人間なら独特の生気を感じる…しかし、この男から感じるのは不思議な感じ…
今まで出会った事の無い種族だ、魔族でも幽霊でも無い。
「わしゃ、しがない…武人でせぇ。」
「貴様…タダ者では無いな?何が目的だ?」
「これはこれは…かなりの手慣れ…殺気は抑えているつもりでせが…」
奴は白鞘を持っており、ブルブルとした手つきでそれを抜くと、構えた。
見た目は人間の老人だが…皮でも被っているのか?
「恨みは無いが…死んでもらおう!」
「…」
「なッ!刀が…効かないだと…!?」
「そんな物じゃ殺せないわよ。」
私の身体は大量の火薬を使っても、傷一つ付かない無敵に近い身体をしている。
だから刀ぐらいでは傷付くはずもなく、刀は刃こぼれを起こす…
次は…私の番で良いよね?正当防衛だから…ね?
「生まれた時から強力な拳…喰らうと良いわ。」
「何故だ…何故…ハッ!?ま、まさか…」
「ダリャアァァァアアッ!!」
私は右の握り拳に力を込めると…奴に向かって放った。
リーチでは明らかに届かないが、拳の風圧で相手の顔面は凹み…大穴が開く。
そして風圧はそのまま奥の林まで飛んで行き、バッサバッサと音を出す。
コレを使うのは久しぶりだ…最近は首を折るのが多い。
「がッびゃ!?」
「ふぅ…やっぱりこれに限るわ。」
2つの死体の横を通り過ぎた私は特に気にすることなく自分の小屋へ帰った。
何だったのだろうか…あの老人は…ただの辻斬りだったのだろうか?
そんな事を思いながら、今日のところは帰宅することが出来た…
私の家は…家と言うより小屋なのだが、もちろん元々は私の物では無い。
生まれた時からそこにあったから、此処に住んでいるだけ。
ぶっちゃけ夏は暑いし、冬は寒いので不便…しかも風呂もトイレも無し。
けど雨風凌げれば良い…病気にはならないし、排出等も外で済ませる。
住めば都なんて言うがアレは本当だったのだ。
「この服も大分くたびれて来たな…新しいの拾わないと。」
当たり前だけど普段着も全て買わずに拾って何とかしている。
服の買い方を知らないからだ…いつもは数枚をゴミ捨て場で拾っている。
そしてくたびれて来たら交換を繰り返す…服なんてほとんど使い捨て。
だけど…生まれた時に着ていた服だけは綺麗にとってある。
白い巫女服…なぜこれを着ていたかは不明…でも…知らなくても良いかな。
「なんか今日は変な気分…ご飯はまだ作らなくて良いし…昼寝でも…」
前述もしたがこの小屋は夏は暑くて、冬は寒い。
厳密に言えば…冬は囲炉裏を焚けば温かいのだが、面倒くさい。
自然の温度が一番心地よい…秋と春は…最高の季節だ…
【ア…アァァアアア…アア……】
「ッチ…(悪霊が入って来やがった…)」
家の前の盛り塩を取り換えていなかったので…悪霊が家に入って来てしまった。
家に入れたくない奴ベスト3に入る…ドラキュラは好きだけど。
それでも悪霊は…私へは何もしないが、居るだけ居心地が悪くなる。
退散してもらおう、あの世に。
「そこの幽霊。」
【アァァ?】
「私の家から…いや、この世から………去ね!!」
【アゥアァァアア!?】
私は寝そべりながらそう言い、睨むと悪霊は断末魔を発し、この世から消えた。
少し可哀想だが、私の機嫌を損ねたのが悪い…この力は私利私欲の為に使えと言われたからにはそうさせてもらう。
悪も善ともつかない…全てを壊す者として。
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