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第1部【明暗の大魔導師】編
第25話 来訪、モース地方
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俺の名前はコォ…インとイワの3人で平原を行く冒険者だ。
昨日、山で色々あったが…何とかなった…俺は父さんの呪いを解くための旅と同時に造魔影という存在を探求しないといけなくなったが…良しとしよう。
とりあえず今は…イワが仲間になったことが嬉しい、3人で進める。
(しかし、それでも頼りないと言えば嘘に…ならない…)
【イン、あれなんだ。】
「バッタ。」
【じゃ、あれは?】
「どっかの馬。」
ずっと山で(とは言え自分達もそうだが)それも教育する者の居ないイワにとってこのモース大平原は発見の連続の様だ…しかし、自分も少し新鮮な気持ちだ。
ガトー地方とは違い、この平原は風が靡ていて気持ちが良い。
それに遠くに見える青い海も最高に綺麗だ。
「海って初めて見たけど…本当にデカい湖なんだな…」
「しょっぱいって聞いた事あるよ。」
【水がしょっぱいの?いつも飲んでる川の水は臭いけど。】
「じゃあ飲みに行ってみるか!…とは出来ないな。先を急ごう。」
そんな変な事をする場合ではないのだ、とにかく先へ…モース城へ向かわなければいけない…それにわざわざ水を飲みに海へ行くなんて…恥ずかしいかも?
だけど…しょっぱい水かぁ…気になっちゃうなぁ…干物ってしょっぱくないけど…干物の魚って海に居るんだよな?じゃあなんでしょっぱく無いんだ?
不思議だ…川の魚は滅茶苦茶臭いのに。
「モース城…思ったんだけど、イワは街に入れるかな?」
「鉄面をしてるじゃないか。」
「けど、それって逆に怪しくない?」
うーん…確かに、言われてみれば逆に怪しい…うん、かなり怪しい。
イワは貴重な人工魔族の一種、紫肌族の生き残りである、もし彼女の正体がバレたら、10人中9人は変な色だなぁ…と思うが…
そのうちの一人は死ぬ気で捕獲しに来るかもしれない。
「何か上手い言い訳をしないとな…」
「家無き子とか?」
「顔を隠す理由にはならんだろう。」
【じゃあ外で待ってようか?】
「それもダメだ、お前は1人にすると危ない。」
イワは非力だ、もし危ない人たちに1人でいるところを狙われたら…
そう思うと街の外で待たせるなんていう案は遥か彼方へすっ飛んだ。
自分達はどうしたものか…と色々な言い訳を考えながら大きな街、モース城へと向かったのであった。
・・・
「さて…此処が最初の村だな。長かった…」
「もうすっかり日暮れだよ…」
【デカい建物…】
何とか自分達は最初の村までやって来た…昨日は野宿したが、今日は暖かい布団で寝られそうだ。
宿屋で部屋を取ったが…しまった…人数が増えると料金が高くなるのか…
割引されているとは言え、頻繁に止まれなくなるな…いや、待てよ。
3人用の部屋だから高くなるんだ、2人用の部屋なら良いだろう。
「じゃあ俺は床に寝るからお前等2人でベッドで寝てくれ。」
「えぇ…寒いと思うけど。」
「毛布を余分に貰ったから平気だ。」
【このボワボワ…落ち着かない、ウチも床で寝る。】
イワは山育ちで年がら年中固い洞窟で寝ているので…布団やベッドでは落ち着いて寝られないらしい…今のうちにならさせておくべきだ。
「イン、一緒に寝てやれ。」
「はぁ!?冗談じゃないよ!なんでこんな奴と…コォが寝ればいいじゃん!」
「男女が同じベッドで寝るなんて駄目だよ。」
父さんが言っていた気がする…2段ベッドなら良いと言ってたけど。
【ウチは別に良いけど。】
「イン、イワと仲良くなるべきだ。一晩くらい…な?」
「仲良く無いと思ってんの?そりゃ…間違いだよ。だって私達めっちゃ仲良いし……その…大親友って感じ!」
「だったら一緒に寝てもいいじゃないか。」
「あぁクソ…(口は災いの元かぁ…)」
インは身体も…まぁ俺よりかは小さいのでイワと寝られるだろう。
それよりあの2人が中良さそうで良かった…これから旅をするので仲が悪いと大変だ…それに、インにも友達が出来て良かった。
明日はイワの武器を買って…そして色々と買い足したら城へ向かおう。
やることは山積みだ…
・・・
「で……イワ、どうだ?」
【イイ感じ。】
翌日、食料などの買い足しを行った後…イワへ武器を買い与えた。
買ったのは安くて軽い…暗器の針だ、相手の急所に刺して攻撃する武器。
喉に刺せば致命傷、目に突き刺せば目潰し、毒を塗ればさらに強力に。
大きさはペンほどだが…その先は酷く鋭利だ、縫い針の比じゃない。
「よし…じゃ、モース城まで歩いて行くぞ。」
「長くなりそうだね。」
【山とは段違い。】
「なにせ、ガトーヒルよりデカいんだよな…」
自分達は意気揚々と村を後にした。
正式にイワが仲間入りしたので3人で荷物をバランスよく持つことに。
うん、かなり楽になった…やっぱり仲間って良いのかも。
【大魔導師って…どんな奴だ?】
「そうだな…まだ会った事ないからな…良いも悪いも分からないな…」
「全員、パパみたいに優しかったら良いけど。」
【その人にもいつか会ってみたい。】
「旅が終わったら会えるさ。」
思ったが…もし旅が終わったら…イワはどうすれば良いのだろうか。
やはり、俺が面倒を見ることになるのか?一応、旅の後は約束があるので造魔影を探しに行かなければならなくなるので、一緒に居る事になる。
うーん…それって…ペットなのかな?ペットじゃないよな…友達?
よく分からない…
「そういえばコォ…私さ。」
「どうかしたのか?」
「将来、影の大魔導師になってみようかな…って。」
「うーむ……」
そう言えば、インは昔から父さんのような影の大魔導師になりたいと言っていたな。
確かにインの影魔法は強力だ…しかし、危険じゃないだろうか?
サイジィ一家とやらに狙われてしまうかもしれない、そう思うと…させたくない。
だがしかし、本人の望む道は歩ませてやるのが兄ってものだ…ほぼ同い年だけど。
「父さんに相談してみろよ。」
「うん…」
【ウチも大魔導師になれるかな?】
「アンタは…無理じゃない?頭が無さそうだし。」
「そんなこというなよ、意外となれるかも。」
「その暁には泣いて喜んであげる。」
イワは【言ったな、覚えてろ】と言った…まさか本当になるつもりか?
魔族が大魔導師か…人間じゃないとなれないみたいな決まりは聞いた事ないし…案外、イケるかも?
ほどほどに期待しておこう。
自分の将来………はもう決まっていたな…どうせならビーミス辺りで衛兵になろうかなと思ったが、自分にそんな力は無かった。
【ウチはコォ達と一緒に居たいな。将来も。】
「…何よ、アンタもしかしてコォが好きなの?」
「え?なんだよ、イン。呼んだか?」
「いや別に…趣味が悪いって話してたの。」
趣味が悪い…?まぁ確かにコレと言った趣味が無いので悪いもクソも無い。
だが…世界は広い、今からでも趣味は始められるかも。
やるべきことが全て終わったら…そう言う事に使える時間が来るだろうか。
「けど…アンタって歳とか取らなさそうだし…悲惨な事になるかも。」
【悲惨なこと?】
「そう。例えば、コォだけが先に死ぬとか。」
【………】
「な、なに…そんなに凹むこと無いじゃない…冗談よ。」
後ろでなにやらインとイワが楽しそうに喋っているな…インも仲間が出来て嬉しいのだろう。
思えば、彼女も明るくなったものだ、これも旅のおかげか?
前は無人の配達竜相手でもオドオドした喋り方だったと言うのに。
しばらく、何事も起きずに歩いていたが…その時、向こう側から別の冒険者たちが歩いて来た…すれ違う際に軽い会釈をお互いにしたが…
「(……ッ!!あ、あれは…)」
6人組の冒険者の中に…それは居た。
黒いローブを着た奴…そうだ、街の中にも居た…ローブを着た者が。
なんだ…流行っているのか?それにしては…数も少ない、きっと偶然だ。
何かしら軽い不安を覚えたが…気にする事も無いかと自分達はそのまま先へ進んだ。
世の中には知らなくても良い事がある…いや、次に知ってそうな人に出会ったら聞いてみるか…何かしら分かるかもしれない。
・・・
「どうして日は暮れるのだろうか…」
「哲学的だねコォ。」
【時間が…進むから?】
ハッキリ言って平原で夜を越すのは怖い…雲は無いが、雨が降ったらどうすれば良いのだろうか…テントとか持って無いな。
それにかさばりそうだ…しかし、今は3人…購入を考えてもいいかもしれない。
とは言え店も無い、村も遠いと言う事で近くの木にて夜を明かすことに。
いつも通りだ…薪が無いので暖は取れないけど…気温が丁度いいので不要だろう。
「ふぁぁ~…」
さて、インもイワも寝かしたし…自分は夜間の警備に専念するか…
暗く、風と植物の音しか響かない平原は…少し不気味だ。
「(そう言えば前に漫画で見た技があったよな…)」
こう…暇だとどうでも良い事を思い出してしまうのが俺という人間である。
随分と前にインの漫画で見た必殺技がカッコ良かったのをよく覚えている…なんていう技だったかな…
駄目だ、漫画に詳しくないから思い出せない。
インが起きたら聞いてみるか…
【……コォ?】
「おぅわ!?び、びっくりした…」
【ごめん…】
いつの間にイワが起きていた…全く…静かに起きるのは止めてもらいたい。
驚くと心臓がキュッ!と締まって寿命が縮まる。
そんな気がしてたまらない。
「どうかしたのか?寝れる時に寝ておかないと昼が大変だぞ?」
【ウチ…いつもあんまり寝ないから。】
「昨日は?」
【途中から起きてた。】
なるほど…だから一番最初に起きてたのか…魔族と言うのは便利な種族だなぁ。
そんなに寝なくて良いし、ご飯は食べなくて良いし、普通の人間より力が強い…
(もちろん最後の方はイワは別として…)
【ウチ…ずっと山に居て…こんなに綺麗な空、少ししか見れなかった…】
「確かに…山だと木が邪魔でこんなに見えないかも。」
ガトーヒルの野宿でも見たが…満点の夜空は別格に美しい。
山では山頂へ登らない限り、こんなに広く綺麗な夜空は見れないだろう。
寝そべればとても目いっぱいに星が広がり…不思議な感覚に陥る。
………いかんいかん!寝てしまうところだった…
【2人と一緒に居れて楽しい…もっと色んな人と会ってみたい。】
「これから会う事になるかも。」
俺はガトー地方で起こったことをイワへ話した…夜空を眺めながら。
野盗団の事やズラッソ達の事を…レオの事は…止めよう、思い出したくないし話す事でもない。
「イワ、星座って知ってる?」
【せーざ?】
「星を結んだ物語とかの事さ。」
星座は太古に創られ、それ以降何千年も今の時代まで語り継がれてきた。
それは古代の人間が星の位置を確認するために創ったものだ…いつしかそれ等には歴史に組み込まれた者達の物語が付け加えられた。
星座学は天文学者になるためには必須だ…自分には無関係だけど。
「イワ、生まれはいつだ…って分からないな。」
【4月19日だよ。】
「知ってるのか…どうして?」
【何となく…覚えてる。】
世の中には不思議な事もあるものだ…それはさておき、4月か。
4月生まれの星座はゴッダ座だ。
ゴッダはかつて大海原を泳ぎ渡った巨大なサメ…確か海賊を食い荒らしたクラーケンを殺すために連合軍と協力して仕留めたという伝承がある。
その後は…何処かへ泳いで行って…そのまま居なくなったんだっけな。
「――っていう話だ。」
【サメって…どんな魚?】
「俺も見た事ないけど鋭いキバがあって人間を襲うんだよ。」
【怖い…】
「確かにな。」
山の魚って変なのしか居ないし、海の魚も見てみたい。
タコ…っていう変な生き物とかナマコとかいうのも気になる。
【コォ…ウチ、もっとコォと仲良くなりたい。】
「仲良く?充分、仲は良いと思うけど。」
【うーん…だけど…やっぱりウチも分かんないや。】
「なんだそれ…ははは…」
イワは一緒に居て楽しい、別に話をしなくても、顔を合わせなくても…何というか傍に居るだけでうれしいって感じがする。
きっとインが起きてたら色々と言われそうだ…昔から仲間はずれが嫌いだからな。
ザッ…
「!?だ、誰だ!!」
【わー!お、お面お面…】
その時、自分達の背後から草が折れる音が一つ…直ぐに自分は振り返り、イワは鉄面を被った。
「どちら…様ですか…?」
「名乗る程でもない。ただの使いさ。」
居たのは…街や今日見かけた人と同じ…黒いフードを羽織った男…顔は見えないが声からして男だろう。
不気味に歪んだナイフを持っている…まさか…殺しに?
とにかく、武器を抜いている以上、穏やかな人間では無いのは確かだ。
インを起こすと、全員武器を抜いて構えた。
「だ、誰だ…何をしに来た…」
「言っただろう。使いさ、魔影団のな。」
「魔影団…!たしかあのチカって言う魔導師が言ってた…」
「イン、魔法の準備をしておけ。」
それを言った途端、相手は急にこちらへ襲い掛かって来た。
歪んだナイフの歯をメイスで防ぐと、ジャギィン!と不快な音が響き、火花が散った。
その後すぐに自分がタックルをして相手を仰向けに転倒させると相手の右手のナイフ目掛けてメイスをぶん回す!
ナイフは弾かれて何処かへ飛んで行く。
「くっそ!この…火ッ」
「雹球!!」
相手も火球を撃とうとしてきたが…直ぐにインが雹球をぶつけてかき消すとイワが奴の側頭部を蹴り上げて気絶させた…急所に当てれば非力でも気絶させられるのか…
「ね、寝起きに魔法なんて…キツイ…」
「すまないイン…だがしかし、よくやった。ありがとう。」
「うん…ちょっと寝る…」
【それにしても…この人…って一体…】
魔影団…どうやら奴らは俺達の事を知っており、敵対し始めたらしい。
この先、奴等との戦いも裂けられなくなるだろう…もっと用心しなくては…
その日は結局…俺とインは怖くてあまり寝付けなかった。
つづく
・・・
魔法とは何か
著者:エド教授(魔法学者) 引用:12ページ第一章
『魔法とは太古の時代から使われて来たものである。人間、魔族、魔物、稀に動物や植物も魔法を使う。その正体は万物に宿る魂の輝き、生命エネルギーだと考えられている。一体誰が最初に使い始め、どうやって認識されたのかは謎だが、まだ人間に鱗があった時代から存在していると発掘で証明された。近年、最もポピュラーなのは回復、球撃、肉体強化の魔法である。ハッキリ言って魔法は人間の言葉で説明するには大陸いっぱいの紙と湖の如きインク、永遠の命があっても尚、説明できないであろう。なのでこの本を買った諸君、薪にでもしてくれたまえ。』
昨日、山で色々あったが…何とかなった…俺は父さんの呪いを解くための旅と同時に造魔影という存在を探求しないといけなくなったが…良しとしよう。
とりあえず今は…イワが仲間になったことが嬉しい、3人で進める。
(しかし、それでも頼りないと言えば嘘に…ならない…)
【イン、あれなんだ。】
「バッタ。」
【じゃ、あれは?】
「どっかの馬。」
ずっと山で(とは言え自分達もそうだが)それも教育する者の居ないイワにとってこのモース大平原は発見の連続の様だ…しかし、自分も少し新鮮な気持ちだ。
ガトー地方とは違い、この平原は風が靡ていて気持ちが良い。
それに遠くに見える青い海も最高に綺麗だ。
「海って初めて見たけど…本当にデカい湖なんだな…」
「しょっぱいって聞いた事あるよ。」
【水がしょっぱいの?いつも飲んでる川の水は臭いけど。】
「じゃあ飲みに行ってみるか!…とは出来ないな。先を急ごう。」
そんな変な事をする場合ではないのだ、とにかく先へ…モース城へ向かわなければいけない…それにわざわざ水を飲みに海へ行くなんて…恥ずかしいかも?
だけど…しょっぱい水かぁ…気になっちゃうなぁ…干物ってしょっぱくないけど…干物の魚って海に居るんだよな?じゃあなんでしょっぱく無いんだ?
不思議だ…川の魚は滅茶苦茶臭いのに。
「モース城…思ったんだけど、イワは街に入れるかな?」
「鉄面をしてるじゃないか。」
「けど、それって逆に怪しくない?」
うーん…確かに、言われてみれば逆に怪しい…うん、かなり怪しい。
イワは貴重な人工魔族の一種、紫肌族の生き残りである、もし彼女の正体がバレたら、10人中9人は変な色だなぁ…と思うが…
そのうちの一人は死ぬ気で捕獲しに来るかもしれない。
「何か上手い言い訳をしないとな…」
「家無き子とか?」
「顔を隠す理由にはならんだろう。」
【じゃあ外で待ってようか?】
「それもダメだ、お前は1人にすると危ない。」
イワは非力だ、もし危ない人たちに1人でいるところを狙われたら…
そう思うと街の外で待たせるなんていう案は遥か彼方へすっ飛んだ。
自分達はどうしたものか…と色々な言い訳を考えながら大きな街、モース城へと向かったのであった。
・・・
「さて…此処が最初の村だな。長かった…」
「もうすっかり日暮れだよ…」
【デカい建物…】
何とか自分達は最初の村までやって来た…昨日は野宿したが、今日は暖かい布団で寝られそうだ。
宿屋で部屋を取ったが…しまった…人数が増えると料金が高くなるのか…
割引されているとは言え、頻繁に止まれなくなるな…いや、待てよ。
3人用の部屋だから高くなるんだ、2人用の部屋なら良いだろう。
「じゃあ俺は床に寝るからお前等2人でベッドで寝てくれ。」
「えぇ…寒いと思うけど。」
「毛布を余分に貰ったから平気だ。」
【このボワボワ…落ち着かない、ウチも床で寝る。】
イワは山育ちで年がら年中固い洞窟で寝ているので…布団やベッドでは落ち着いて寝られないらしい…今のうちにならさせておくべきだ。
「イン、一緒に寝てやれ。」
「はぁ!?冗談じゃないよ!なんでこんな奴と…コォが寝ればいいじゃん!」
「男女が同じベッドで寝るなんて駄目だよ。」
父さんが言っていた気がする…2段ベッドなら良いと言ってたけど。
【ウチは別に良いけど。】
「イン、イワと仲良くなるべきだ。一晩くらい…な?」
「仲良く無いと思ってんの?そりゃ…間違いだよ。だって私達めっちゃ仲良いし……その…大親友って感じ!」
「だったら一緒に寝てもいいじゃないか。」
「あぁクソ…(口は災いの元かぁ…)」
インは身体も…まぁ俺よりかは小さいのでイワと寝られるだろう。
それよりあの2人が中良さそうで良かった…これから旅をするので仲が悪いと大変だ…それに、インにも友達が出来て良かった。
明日はイワの武器を買って…そして色々と買い足したら城へ向かおう。
やることは山積みだ…
・・・
「で……イワ、どうだ?」
【イイ感じ。】
翌日、食料などの買い足しを行った後…イワへ武器を買い与えた。
買ったのは安くて軽い…暗器の針だ、相手の急所に刺して攻撃する武器。
喉に刺せば致命傷、目に突き刺せば目潰し、毒を塗ればさらに強力に。
大きさはペンほどだが…その先は酷く鋭利だ、縫い針の比じゃない。
「よし…じゃ、モース城まで歩いて行くぞ。」
「長くなりそうだね。」
【山とは段違い。】
「なにせ、ガトーヒルよりデカいんだよな…」
自分達は意気揚々と村を後にした。
正式にイワが仲間入りしたので3人で荷物をバランスよく持つことに。
うん、かなり楽になった…やっぱり仲間って良いのかも。
【大魔導師って…どんな奴だ?】
「そうだな…まだ会った事ないからな…良いも悪いも分からないな…」
「全員、パパみたいに優しかったら良いけど。」
【その人にもいつか会ってみたい。】
「旅が終わったら会えるさ。」
思ったが…もし旅が終わったら…イワはどうすれば良いのだろうか。
やはり、俺が面倒を見ることになるのか?一応、旅の後は約束があるので造魔影を探しに行かなければならなくなるので、一緒に居る事になる。
うーん…それって…ペットなのかな?ペットじゃないよな…友達?
よく分からない…
「そういえばコォ…私さ。」
「どうかしたのか?」
「将来、影の大魔導師になってみようかな…って。」
「うーむ……」
そう言えば、インは昔から父さんのような影の大魔導師になりたいと言っていたな。
確かにインの影魔法は強力だ…しかし、危険じゃないだろうか?
サイジィ一家とやらに狙われてしまうかもしれない、そう思うと…させたくない。
だがしかし、本人の望む道は歩ませてやるのが兄ってものだ…ほぼ同い年だけど。
「父さんに相談してみろよ。」
「うん…」
【ウチも大魔導師になれるかな?】
「アンタは…無理じゃない?頭が無さそうだし。」
「そんなこというなよ、意外となれるかも。」
「その暁には泣いて喜んであげる。」
イワは【言ったな、覚えてろ】と言った…まさか本当になるつもりか?
魔族が大魔導師か…人間じゃないとなれないみたいな決まりは聞いた事ないし…案外、イケるかも?
ほどほどに期待しておこう。
自分の将来………はもう決まっていたな…どうせならビーミス辺りで衛兵になろうかなと思ったが、自分にそんな力は無かった。
【ウチはコォ達と一緒に居たいな。将来も。】
「…何よ、アンタもしかしてコォが好きなの?」
「え?なんだよ、イン。呼んだか?」
「いや別に…趣味が悪いって話してたの。」
趣味が悪い…?まぁ確かにコレと言った趣味が無いので悪いもクソも無い。
だが…世界は広い、今からでも趣味は始められるかも。
やるべきことが全て終わったら…そう言う事に使える時間が来るだろうか。
「けど…アンタって歳とか取らなさそうだし…悲惨な事になるかも。」
【悲惨なこと?】
「そう。例えば、コォだけが先に死ぬとか。」
【………】
「な、なに…そんなに凹むこと無いじゃない…冗談よ。」
後ろでなにやらインとイワが楽しそうに喋っているな…インも仲間が出来て嬉しいのだろう。
思えば、彼女も明るくなったものだ、これも旅のおかげか?
前は無人の配達竜相手でもオドオドした喋り方だったと言うのに。
しばらく、何事も起きずに歩いていたが…その時、向こう側から別の冒険者たちが歩いて来た…すれ違う際に軽い会釈をお互いにしたが…
「(……ッ!!あ、あれは…)」
6人組の冒険者の中に…それは居た。
黒いローブを着た奴…そうだ、街の中にも居た…ローブを着た者が。
なんだ…流行っているのか?それにしては…数も少ない、きっと偶然だ。
何かしら軽い不安を覚えたが…気にする事も無いかと自分達はそのまま先へ進んだ。
世の中には知らなくても良い事がある…いや、次に知ってそうな人に出会ったら聞いてみるか…何かしら分かるかもしれない。
・・・
「どうして日は暮れるのだろうか…」
「哲学的だねコォ。」
【時間が…進むから?】
ハッキリ言って平原で夜を越すのは怖い…雲は無いが、雨が降ったらどうすれば良いのだろうか…テントとか持って無いな。
それにかさばりそうだ…しかし、今は3人…購入を考えてもいいかもしれない。
とは言え店も無い、村も遠いと言う事で近くの木にて夜を明かすことに。
いつも通りだ…薪が無いので暖は取れないけど…気温が丁度いいので不要だろう。
「ふぁぁ~…」
さて、インもイワも寝かしたし…自分は夜間の警備に専念するか…
暗く、風と植物の音しか響かない平原は…少し不気味だ。
「(そう言えば前に漫画で見た技があったよな…)」
こう…暇だとどうでも良い事を思い出してしまうのが俺という人間である。
随分と前にインの漫画で見た必殺技がカッコ良かったのをよく覚えている…なんていう技だったかな…
駄目だ、漫画に詳しくないから思い出せない。
インが起きたら聞いてみるか…
【……コォ?】
「おぅわ!?び、びっくりした…」
【ごめん…】
いつの間にイワが起きていた…全く…静かに起きるのは止めてもらいたい。
驚くと心臓がキュッ!と締まって寿命が縮まる。
そんな気がしてたまらない。
「どうかしたのか?寝れる時に寝ておかないと昼が大変だぞ?」
【ウチ…いつもあんまり寝ないから。】
「昨日は?」
【途中から起きてた。】
なるほど…だから一番最初に起きてたのか…魔族と言うのは便利な種族だなぁ。
そんなに寝なくて良いし、ご飯は食べなくて良いし、普通の人間より力が強い…
(もちろん最後の方はイワは別として…)
【ウチ…ずっと山に居て…こんなに綺麗な空、少ししか見れなかった…】
「確かに…山だと木が邪魔でこんなに見えないかも。」
ガトーヒルの野宿でも見たが…満点の夜空は別格に美しい。
山では山頂へ登らない限り、こんなに広く綺麗な夜空は見れないだろう。
寝そべればとても目いっぱいに星が広がり…不思議な感覚に陥る。
………いかんいかん!寝てしまうところだった…
【2人と一緒に居れて楽しい…もっと色んな人と会ってみたい。】
「これから会う事になるかも。」
俺はガトー地方で起こったことをイワへ話した…夜空を眺めながら。
野盗団の事やズラッソ達の事を…レオの事は…止めよう、思い出したくないし話す事でもない。
「イワ、星座って知ってる?」
【せーざ?】
「星を結んだ物語とかの事さ。」
星座は太古に創られ、それ以降何千年も今の時代まで語り継がれてきた。
それは古代の人間が星の位置を確認するために創ったものだ…いつしかそれ等には歴史に組み込まれた者達の物語が付け加えられた。
星座学は天文学者になるためには必須だ…自分には無関係だけど。
「イワ、生まれはいつだ…って分からないな。」
【4月19日だよ。】
「知ってるのか…どうして?」
【何となく…覚えてる。】
世の中には不思議な事もあるものだ…それはさておき、4月か。
4月生まれの星座はゴッダ座だ。
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その後は…何処かへ泳いで行って…そのまま居なくなったんだっけな。
「――っていう話だ。」
【サメって…どんな魚?】
「俺も見た事ないけど鋭いキバがあって人間を襲うんだよ。」
【怖い…】
「確かにな。」
山の魚って変なのしか居ないし、海の魚も見てみたい。
タコ…っていう変な生き物とかナマコとかいうのも気になる。
【コォ…ウチ、もっとコォと仲良くなりたい。】
「仲良く?充分、仲は良いと思うけど。」
【うーん…だけど…やっぱりウチも分かんないや。】
「なんだそれ…ははは…」
イワは一緒に居て楽しい、別に話をしなくても、顔を合わせなくても…何というか傍に居るだけでうれしいって感じがする。
きっとインが起きてたら色々と言われそうだ…昔から仲間はずれが嫌いだからな。
ザッ…
「!?だ、誰だ!!」
【わー!お、お面お面…】
その時、自分達の背後から草が折れる音が一つ…直ぐに自分は振り返り、イワは鉄面を被った。
「どちら…様ですか…?」
「名乗る程でもない。ただの使いさ。」
居たのは…街や今日見かけた人と同じ…黒いフードを羽織った男…顔は見えないが声からして男だろう。
不気味に歪んだナイフを持っている…まさか…殺しに?
とにかく、武器を抜いている以上、穏やかな人間では無いのは確かだ。
インを起こすと、全員武器を抜いて構えた。
「だ、誰だ…何をしに来た…」
「言っただろう。使いさ、魔影団のな。」
「魔影団…!たしかあのチカって言う魔導師が言ってた…」
「イン、魔法の準備をしておけ。」
それを言った途端、相手は急にこちらへ襲い掛かって来た。
歪んだナイフの歯をメイスで防ぐと、ジャギィン!と不快な音が響き、火花が散った。
その後すぐに自分がタックルをして相手を仰向けに転倒させると相手の右手のナイフ目掛けてメイスをぶん回す!
ナイフは弾かれて何処かへ飛んで行く。
「くっそ!この…火ッ」
「雹球!!」
相手も火球を撃とうとしてきたが…直ぐにインが雹球をぶつけてかき消すとイワが奴の側頭部を蹴り上げて気絶させた…急所に当てれば非力でも気絶させられるのか…
「ね、寝起きに魔法なんて…キツイ…」
「すまないイン…だがしかし、よくやった。ありがとう。」
「うん…ちょっと寝る…」
【それにしても…この人…って一体…】
魔影団…どうやら奴らは俺達の事を知っており、敵対し始めたらしい。
この先、奴等との戦いも裂けられなくなるだろう…もっと用心しなくては…
その日は結局…俺とインは怖くてあまり寝付けなかった。
つづく
・・・
魔法とは何か
著者:エド教授(魔法学者) 引用:12ページ第一章
『魔法とは太古の時代から使われて来たものである。人間、魔族、魔物、稀に動物や植物も魔法を使う。その正体は万物に宿る魂の輝き、生命エネルギーだと考えられている。一体誰が最初に使い始め、どうやって認識されたのかは謎だが、まだ人間に鱗があった時代から存在していると発掘で証明された。近年、最もポピュラーなのは回復、球撃、肉体強化の魔法である。ハッキリ言って魔法は人間の言葉で説明するには大陸いっぱいの紙と湖の如きインク、永遠の命があっても尚、説明できないであろう。なのでこの本を買った諸君、薪にでもしてくれたまえ。』
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