6 / 15
第1章 流星の如き転入生編
其の6 学園大脱走計画
しおりを挟む
さて……学園やって来たマオの生活とはサイテーなものであった…
他級生には嫌がらせを受け、同級生たちには陰口を叩かれる……オマケに部屋は欠陥だらけ、マオはもううんざりだとこの学校から抜け出すことを計画した…
「脱走するには夜よねぇ…」
【ワン、ウゥウ…】
「確かに…見回りなんかも厄介だよね。」
脱走を計画したからにはやはり立ちはだかるのは壁。
まず第一の壁として校内の見張りが上がる……彼らは夜8時から午前5時まで校内を見回っている…もちろん5時なんて遅すぎる…
だとしたら彼らのルートを探り、完全なる死角を見つけるしかない。
「探る方法かぁ…」
しかしそうなると探る方法が見つからないと来た。
この場合どうするかと思うが、逆転の発想が必要だ…彼らを探るのではなく、道を探れば良い。
つまり、見つからない道を探せばいいのだ……そしてそれは何処かと言うと…
「ダクト…!」
部屋の上部に備え付けられたダクトだ。
各部屋に十分な酸素量を運ぶため、大きく設計されたダクトの大きさは約縦30㎝、横50㎝……小柄な大人や子供なら何とか通れそうな幅。
しかしながらきちんと蓋はされている…
「これはドライバーでも……無理っぽいな。」
【アゥウ…】
「そんな落ち込まなくてもちゃんと方法はあるよ!明日探してみようよ。」
ダクトの蓋のネジ穴は独特過ぎる形をしており、並のドライバーでは開きそうにない。
それに専用のドライバーを持っていたとしても直ぐに足は付くだろう、どうにかこの扉を破壊する方法を探すしかないと、マオは眠りに就いた…
さて、翌日となり、何かいい方法を探してみるものの……これと言っていい案は浮かばない…
火薬で吹き飛ばす、高温の炎をで溶かし尽くす、凍らせてからハンマーで破壊なんて手段も浮かんだがやはり納得いかない…
そうやって廊下の片隅で悩んでいると…?
「そ、そこの1年生くん!ちょっと手伝ってくれませんかね!?」
「はい?」
【ワウ?】
横から話しかけられ、振り向いてみればそこに立っていたのは大量の箱や機材を抱えた白衣の教師であった。
彼は薬学と魔法学や植物学の担当教師であるリフィト・モダン先生。
「先生どうしたんですか…そんな大荷物…」
「新しい教材が届いたのですがね……おっと!…少々運ぶのに手間取っていまして…手伝ってくれませんかね?」
「まぁお安い御用だけど…」
「助かりますよ…皆さん知らんぷりですもの…」
どうやら新しい機材を一度に運ぼうとして手間取っているご様子。
マオは放っておけないと箱を幾つか持つとリフィトと共に理科室の倉庫まで向かった…
倉庫内は埃っぽい空気が充満しており、色あせた旧式の人体模型やモンスター等の剥製が不気味な場所である…そのほかにも薬品などが綺麗に棚へ並べられている…
彼の几帳面な性格が良く出ていると言ったところか。
「いやー…申し訳ない……こう言ったものは出来るだけ一度に運びたいものでしてねぇ…」
「確かにそうした方が面倒くさくないよね。」
理科室の倉庫を眺めていたマオだが、ふと奥の黒い棚に並べられた薬品に目が行った……並べられている瓶のラベルには【危険】や【取り扱い注意】のマークが書かれている。
「あぁー!!?ダメです!マオさん!そこは非常に危ない薬品が並べてあるんですよ!?大怪我しても知りませんよ!」
「ふーん……危険って?」
「例えばですね!一滴植物に垂らしただけでも周囲のものも含めて死滅させるようなものや、金属を簡単にドロドロにしてしまうモノだってあるんですからね!!」
「ッ!!ど、ドロドロ!?」
金属をドロドロにすると聞いたマオは目を輝かせ、棚を見回す。
そして見つけたのは皇酸と書かれた茶色い瓶……ラベルには【注意!非金属製の器具を使うべし】と書かれているので間違いないだろう…
「そうですよ!皇酸は非常に危険な薬品です!ですが建築や鋳造などでは活躍を………ってあれ?もう行ってしまいましたか………サイエンスに興味のある子が待ち遠しいです…」
「はぁ…!はぁ…!や、やった!」
【カゥウ!】
「え?盗みは良くない?……後で返すから良いじゃん。」
【アウ…】
マオは瓶を服に入れ、ザミと共に部屋まで戻ると、それをベッドの下へ隠した。
意外にも早くダクトを破る手段が見つかったが……問題はダクトが何処に繋がっているかである…
「一応見た限り、職員室の方を経由して屋上に行ける感じか…」
ダクトの方向はそのまま行くなら教員たちの事務部屋の方へと繋がっている事となる。
あまり大きな物音を立ててしまうとバレてしまいそうだ。
次にマオは紙とペンを持ちながら上のダクトを見上げ、先を追って行く……ダクトは複雑に入り組んでおり、どれがどの部屋へ通じているかを完璧に知る必要がある。
「なるほど……西側の廊下を経由して校舎裏の室外機に繋がっているのか…」
【ガゥウ。ワンッ?】
「確かに…此処から出れば直ぐに森の方に行けるなぁ…でもそうなると校外警備隊が厄介だぞ…」
校舎裏の100m先に広がるのはクシューカ大森林。
中に逃げ込めばとりあえず身を隠せるが校外警備隊と言う存在が居るらしく、迂闊に動くことが出来ないだろう……そしてそのまま朝になってバレると言うのが目に見ている…
どうしたものかとマオが悩んでいれば、「頼んでくれよ」と言わんばかりにザミはマオのズボンをピッピッと口で引っ張った。
「ザミ、あんたの探知範囲はどのくらい?」
【ガゥウ…?………ワンッ!!ガウガウ!】
ザミはどのくらいと聞かれ、表現方法に迷ったものの……突然走り出すと直径50メートルほどの大きな円を描くように走り出した…おそらくだがその円こそが「完璧な探知範囲」なのだろう。
ザミはスカベンジハウンドと呼ばれる猟犬モンスターの一種である、撃ち落とした獲物を探す際にこの完璧な探知範囲を使用するがそれとは別に「不確かな探知範囲」をも持っている。
それは完璧な物より倍広いがその名の通り、不確か……探知できるのは飽くまでもカタチのみだ。
「これだけあれば上出来!よしよし!!良いぞ!!」
【ハウッ!ハウッ!!】
ザミの頬や腹をひとしきり撫でたマオはいよいよ脱走が現実的になって来るのを感じた…
ザミの探知範囲を上手く使えば警備隊の目を掻い潜る事も可能だろう、あとはザミの脚力で柵を飛び越え、走り続ければいつか街に着くに違いない。
そう考えたマオは早速部屋へ戻り、計画を練った…
「よし!出来た!完璧なる計画だ!!……多分。」
【カゥ…】
計画は大雑把にそして雑に説明するとこのような感じ。
まずは午後8時以降、皇酸を使用してダクトの蓋を溶解。
次にダクトを辿りながら書いたマップを頼りに西側の通路を経由し、校舎裏の室外機まで向かう…そして室外機付近のダクト口も溶かして外へ出る…
最後はザミに乗っかり、森まで行くと彼に警備隊を探知してもらいながら進んでもらい……柵を飛び越え、道に出たら街まで向かう。
そして終わり!イエーイ!
「どうよ!」
【……………ハッ…】
「なによその反応?もしかして完璧じゃないって言いたいの?それは決行してからのお楽しみだかんね?」
【アゥワウワウ……】
マオはやる気満々だがザミは半ば呆れ模様。
主人の将来を案ずるならばこの学校に残って嫌でも授業を受ける事を勧めたいのだが、残念ながら彼にそう伝えるまでの脳は無い。
それに不幸せな彼女を見るよりかは多少不幸でも笑顔を見たいものである。
「そうと分かれば早速寝溜め……は出来ないね、うん。ちゃんと授業に出ないと…」
【ワン…】
という事でマオはこの素晴らしき計画(笑)を決行するため、その日の授業を含む一日を真面目に過ごした……マオも我ながらよくやったと言えるほどだ。
最後ぐらいは同級生や他級生の皆に挨拶でもしてやろうかと思ったが、無言が殆ど。
やっぱり可愛げもクソも無いものだ!マオは心底そう思いながら来る時までの待ちに待った…
そして……その時はやって来た。
「よし……いくよ、ザミ。」
【ガウ。】
時計が差す時間は午後8時、つまり作戦決行の瞬間だ。
マオはドアに耳を当て、最初の警備が過ぎ去るのを確認すると昼間に動かしておいたタンスに昇り、ダクトの蓋へくすねた薬品をタラッと接合部へ垂らす…
ジュワァッ…
「ひぃい…こんなんが身体にくっついたらヤバいんだろうなぁ…」
少し垂らせばじゅわりと音を立て、鉄は死んだようにボロボロに錆びる。
末恐ろしい物体だが、そんな液体を上手い具合にチョロチョロと垂らし、マオはダクトの蓋を溶かし外す……少し硬いが力を入れればガバッと外れた。
「よーぅし…ザミ、ライト。」
【ワンゥ。】
「うっし、サンキュゥ…」
ザミの咥えた懐中電灯を受け取ったマオはドロドロのタールのように暗い先を照らしながらゆっくりとダクト内を腹這いで進み始めた…
ダクト内は埃が積もり、ネズミのフンや死骸などが散乱していてお世辞にも居心地が良いとは言えない。
特にカビたネズミの死体を払いのける際は非常に嫌な気分になった…
「ぅうう……気持ち悪いなぁ…」
【カゥウ…アウ?】
「ダメ!戻らないかんね!」
しかし!どのような場所だろうが怯まずに進む事こそが勇者!マオは退かず、怯まず、無謀の精神で突き進む!
たとえどのような壁があっても進む者こそが真の勇敢なる者である。
だが…
ザサッ…!
「ひっ!?な、なにさっき音…?」
【ハゥウ………ガウ!ガウガウ!!】
「ど、どうしたの!?」
謎の物音にビクッと震えたマオだが、何かを感じ取ったザミはガウガウと威嚇するような声で鳴き始めた!
このままでは騒音でバレてしまいそうだが……それよりも恐ろしい存在が密かに忍び寄っていたのだ……
【ヂュゥ゛ーー!!】
「ね、ネズミ?ははっ……ただの小動物じゃん…」
マオの目の前に居たのは何とも可愛らしい害獣の一種、タイリクネズミ。
クリクリとした黒い目に病原菌を含みまくった灰色の毛皮……早い話が恐れるに足らない相手である、こんな奴如きゴミ溜めで散々相手にした小動物野郎。
マオは殴ってでもして追い払おうとしたが…
【ヂュウ!】【ヂュウ!】
「何よ……に、二匹くらい…」
【ヂュゥウ!】【ヂュッヂュ?】【ヂュヂュヂュ…】
「さ、三匹ぐらいなら…」
そう思っていたのも束の間、ネズミはどんどん角から姿を現わし…その量は5匹、8匹、10匹と着々と増えて行き……終いには巨大な1つの塊の様になってしまった。
流石にここまで来ればマオもドン引き……静かに下がろうとしたが…
「は、ははは!ごめんねぇ、ネズミさん…私直ぐに出て行くから…」
【カフカフ…】
【【【【【ヂュゥァアアアア゛ッ!!】】】】】
「うぎゃぁあああ!!?」
【ガゥウウ!!】
ネズミは集団でマオ達へ襲い掛かる!その量はまるでネズミの波!
夢の国も真っ青!マオ達は叫びながら複雑に入り組んだダクトをガタガタと騒々しく進んで行く!
一方その下部の職員室では…
「そうですねぇ……やはりあの子は向上心が問題に…」
「なるほどね…」
カタカタカタ…
「おや、ネズミが増えて来ましたね。そろそろ駆除剤を撒きましょうか?」
「そうね。明日の朝にでも発注して…」
ドガドガドガドガッ!!!!
「ッ!?…な、なんですか今の音は!?」
「今すぐ発注しましょう!熊とかも殺すやつ!!急いで!!」
「はぁ…はぁ……どうにか逃げられたっぽいなぁ…」
【ハァ…】
再びダクト内、マオはどうにかネズミの追手から逃れることに成功。
そしてオマケにたどり着いた先は偶然にも目指していた室外機付近のダクト……道筋に沿って行けば目的の場所までやって来た。
「さーて……トロトロォ…」
先ほどの皇酸の瓶を取り出し、またしても室外機のダクト口を溶かすと…
ドガァッ!!
思い切り蹴り飛ばし、外へ出た。
当たり前だが外は暗く、森の中には幾つかの光が見える……わざわざ照らすとはなんとおまぬけな事か、マオはザミに跨った。
「さぁ行くよ!頼りにしてるからね!!」
【ワンッ!!ガルルルルゥ……グハウッ!!】
「おぉ!は、速い速い!?」
ザミは全速力でギュンッ!!と空を切るかのように地を蹴り、走り出すと森の中へバサァ!と突っ込む…
そして何処かの器官で感じ取っているのか、巧みに至る場所を走り、追手の目を欺いて行く。
森の中は非常に複雑だがその分、身も隠れる……案外楽勝だ。
「ぶはぁ!……はぁ…すごいや…もう着いたの?」
【ガウッ。】
「へへ!いい子いい子…」
あっという間に森を抜け、目の前に立ちはだかったのは大きな鉄柵。
5分もしないうちに複雑で広大な森を抜けるなんてかなりの速さ……マオ本人もザミがこんな速度を出せるのかと少し拍子抜け。
しかしながら嬉しい誤算だ、マオは柵の高さが約5メートルと判断すればザミは問題なく飛べる事をアピールするため、マオを一旦おろしてからピョンピョンと柵の間を倍の高さで飛んで見せた。
「よしよし……じゃあ早いところ………痛ッ!?」
【ガウ!?】
マオがザミに跨ろうとしたその時だった……彼女の左手にズクッとした痛みが走り、見てみれば歯型のような物が付いていて血がタラ―ッと垂れていた…
虫刺されにしては痕が変だし、獣にしても気付くはず……それに辺りを見回してもそのような動物は見当たらない。
不思議に思いつつ、マオは再度ザミへ跨ろうとして見れば…
ピッーーーー!!
「ッ!!?な、なんだなんだ!?」
耳を劈くような高音……そう…これは……笛!笛の音!
そして目を音の方向に向けてみればそこに立って居たのは…
「マオ!こんな所で何をしている!!」
「せ、先生……なんで…」
そこに居たのは担任の教師、スケロクであった。
確かにマオは彼が校外警備隊の隊長である事は把握しており、警戒はしていたのだが全く気配が無かったのだ…
それになぜ急にバレたのかも不思議でならない……だがその正体は姿を現わした…
【ギュイギュィイ!】
「こ、コタチ…!なんで透明に…」
【ガルルルルゥ…】
【ギュィイ…】
ぞわーッと風が靡くように姿を現わしたのはスケロクの相棒、コタチであった。
なぜそのような小動物が透明になれるかは謎だが……とにかくピンチに変わりはない!コタチとザミは睨み合い、マオとスケロクも一触即発状態…
だが……諦めるわけにもいかないと先に動き出したのはマオだった!
「ザミ!そのパンダを無力化して!早く!!」
【ガゥウ!!】
【ギュゥ!?】
「くっ……タイニーパンダでは歯が立たないな…」
マオはザミへコタチを無力化するよう命令し、彼は命令通りに相手の首元へ軽く噛み付き、地面へ押し付けた…小動物と大型犬、力の差は歴然である。
だがそこへ笛の音を聞いた他の警備が駆け付けた。
「ど、どうかしましたか隊長!」
「私の生徒が脱走した!……ええい!コタチを進化させるからお前等は退け!!」
「やめてください!森が焼けてしまいますぅ!!」
「うるさい!!火事になったら俺が全責任を負う!」
「進化?………うッ!?ま、眩し…」
進化と聞き慣れない単語を聞いたマオは一瞬頭にハテナを浮かべたが、スケロクが右手に着けているグローブの宝石が青く光り出したのを見ると危険を察知。
直ぐにザミへパンダを話すように命令する…
「ザミ!!そのパンダを離して!!」
【ワンッ……クゥン!?】
コタチはスケロクの宝石の光に感化されるよう光り輝くと、閃光に照らされたそのシルエットはバキバキと形を変えて行く……まるで急速に違う生命体へ進化するように…
そしてコタチは…タイニーパンダとはかけ離れた生命体へと変貌を遂げた…
【ギュィ゛ィ゛イ゛ッ!!】
「ひぇっ……な、なにこれ…」
【ガルルルル…】
【ギュォオオオオ゛ッ!!】
小動物に分類されるその身体は熊のように大きく、フェレットのように細くなり…ぼうぼうと辺り一面を焼け野原にせんとの勢いで身体から炎を噴き出していた!
遠く離れた場所からでも汗が乾いてしまうような熱さ……近距離のザミはさらに苦しんでいるだろう…
しかしながら…なぜコタチは進化したのか?そのような疑問しかマオの脳内には浮かばなかった…
「コタチ!絶対に傷つけるな!そして無力化を図れ!」
【ギョ、ギョォオオ!!】
「ざ、ザミ!逃げ……!!」
【キャゥンッ!?】
相手の圧倒的威圧感……マオはザミへ逃げる様命令するも…時すでに遅し…
相手はザミへ拳を振り下ろすとバゴォンッ!!という音ともにザミは地面へ埋まる事となった……スケロクは傷つけずにって言ったよね?とマオは密かに思っていた…
「ザミ……そ、そんな…」
「もういいコタチ、元の姿に戻れ。」
【ギュォン!】
スケロクが命令すれば相手は青い光に包まれ……あっという間に先ほどの可愛らしい姿へと戻ってしまった…
まさに瞬殺……終始何が起きたのかすらもあまり理解できないまま、マオは地面に埋まっているザミを引っ張り出すと怪我が無いか確認。
幸いにも…と言うか計算上の攻撃だったのか…気絶をしているが全くの無傷である。
(気絶してるけど)
「マオ、事情を聴かせてもらおう。」
「……はぃ…」
マオの脱走計画は失敗に終わってしまった…
圧倒的戦力差、そしてモンスターの進化……全てが謎に包まれる中マオはスケロクに連れられ、学校へ戻る事になったとさ…
(ちなみに森はちょっと焼けたくらいで済みましたとさ)
つづく…
・・・
【ある日の学級新聞】(発行者:2年アムレ組、ロギィ)
『先日の深夜、我が校でにわかにも信じ難い事が起きた。それはついこの前入学してきたばかりの新入生、1年バラク組の【マオ】がなんと警備の厳しい森の中を掻い潜って校門付近の柵まで脱走した模様。彼女の部屋の中には計画書だと思われる書類や溶かされたダクト口が発見され、もはや変え難い事実だろう。この事に関して彼女の担任であり、校外警備隊長の【スケロク・タキヤマ】氏はこうコメントしている。「警備に穴があったとは思えない。この出来事に関しては完全に私達の想定外だ。」……まぁ良くも悪くも校内は彼女の噂話で持ちきりである。早く私の取材許可が下りないか待ち遠しいものだ。』
他級生には嫌がらせを受け、同級生たちには陰口を叩かれる……オマケに部屋は欠陥だらけ、マオはもううんざりだとこの学校から抜け出すことを計画した…
「脱走するには夜よねぇ…」
【ワン、ウゥウ…】
「確かに…見回りなんかも厄介だよね。」
脱走を計画したからにはやはり立ちはだかるのは壁。
まず第一の壁として校内の見張りが上がる……彼らは夜8時から午前5時まで校内を見回っている…もちろん5時なんて遅すぎる…
だとしたら彼らのルートを探り、完全なる死角を見つけるしかない。
「探る方法かぁ…」
しかしそうなると探る方法が見つからないと来た。
この場合どうするかと思うが、逆転の発想が必要だ…彼らを探るのではなく、道を探れば良い。
つまり、見つからない道を探せばいいのだ……そしてそれは何処かと言うと…
「ダクト…!」
部屋の上部に備え付けられたダクトだ。
各部屋に十分な酸素量を運ぶため、大きく設計されたダクトの大きさは約縦30㎝、横50㎝……小柄な大人や子供なら何とか通れそうな幅。
しかしながらきちんと蓋はされている…
「これはドライバーでも……無理っぽいな。」
【アゥウ…】
「そんな落ち込まなくてもちゃんと方法はあるよ!明日探してみようよ。」
ダクトの蓋のネジ穴は独特過ぎる形をしており、並のドライバーでは開きそうにない。
それに専用のドライバーを持っていたとしても直ぐに足は付くだろう、どうにかこの扉を破壊する方法を探すしかないと、マオは眠りに就いた…
さて、翌日となり、何かいい方法を探してみるものの……これと言っていい案は浮かばない…
火薬で吹き飛ばす、高温の炎をで溶かし尽くす、凍らせてからハンマーで破壊なんて手段も浮かんだがやはり納得いかない…
そうやって廊下の片隅で悩んでいると…?
「そ、そこの1年生くん!ちょっと手伝ってくれませんかね!?」
「はい?」
【ワウ?】
横から話しかけられ、振り向いてみればそこに立っていたのは大量の箱や機材を抱えた白衣の教師であった。
彼は薬学と魔法学や植物学の担当教師であるリフィト・モダン先生。
「先生どうしたんですか…そんな大荷物…」
「新しい教材が届いたのですがね……おっと!…少々運ぶのに手間取っていまして…手伝ってくれませんかね?」
「まぁお安い御用だけど…」
「助かりますよ…皆さん知らんぷりですもの…」
どうやら新しい機材を一度に運ぼうとして手間取っているご様子。
マオは放っておけないと箱を幾つか持つとリフィトと共に理科室の倉庫まで向かった…
倉庫内は埃っぽい空気が充満しており、色あせた旧式の人体模型やモンスター等の剥製が不気味な場所である…そのほかにも薬品などが綺麗に棚へ並べられている…
彼の几帳面な性格が良く出ていると言ったところか。
「いやー…申し訳ない……こう言ったものは出来るだけ一度に運びたいものでしてねぇ…」
「確かにそうした方が面倒くさくないよね。」
理科室の倉庫を眺めていたマオだが、ふと奥の黒い棚に並べられた薬品に目が行った……並べられている瓶のラベルには【危険】や【取り扱い注意】のマークが書かれている。
「あぁー!!?ダメです!マオさん!そこは非常に危ない薬品が並べてあるんですよ!?大怪我しても知りませんよ!」
「ふーん……危険って?」
「例えばですね!一滴植物に垂らしただけでも周囲のものも含めて死滅させるようなものや、金属を簡単にドロドロにしてしまうモノだってあるんですからね!!」
「ッ!!ど、ドロドロ!?」
金属をドロドロにすると聞いたマオは目を輝かせ、棚を見回す。
そして見つけたのは皇酸と書かれた茶色い瓶……ラベルには【注意!非金属製の器具を使うべし】と書かれているので間違いないだろう…
「そうですよ!皇酸は非常に危険な薬品です!ですが建築や鋳造などでは活躍を………ってあれ?もう行ってしまいましたか………サイエンスに興味のある子が待ち遠しいです…」
「はぁ…!はぁ…!や、やった!」
【カゥウ!】
「え?盗みは良くない?……後で返すから良いじゃん。」
【アウ…】
マオは瓶を服に入れ、ザミと共に部屋まで戻ると、それをベッドの下へ隠した。
意外にも早くダクトを破る手段が見つかったが……問題はダクトが何処に繋がっているかである…
「一応見た限り、職員室の方を経由して屋上に行ける感じか…」
ダクトの方向はそのまま行くなら教員たちの事務部屋の方へと繋がっている事となる。
あまり大きな物音を立ててしまうとバレてしまいそうだ。
次にマオは紙とペンを持ちながら上のダクトを見上げ、先を追って行く……ダクトは複雑に入り組んでおり、どれがどの部屋へ通じているかを完璧に知る必要がある。
「なるほど……西側の廊下を経由して校舎裏の室外機に繋がっているのか…」
【ガゥウ。ワンッ?】
「確かに…此処から出れば直ぐに森の方に行けるなぁ…でもそうなると校外警備隊が厄介だぞ…」
校舎裏の100m先に広がるのはクシューカ大森林。
中に逃げ込めばとりあえず身を隠せるが校外警備隊と言う存在が居るらしく、迂闊に動くことが出来ないだろう……そしてそのまま朝になってバレると言うのが目に見ている…
どうしたものかとマオが悩んでいれば、「頼んでくれよ」と言わんばかりにザミはマオのズボンをピッピッと口で引っ張った。
「ザミ、あんたの探知範囲はどのくらい?」
【ガゥウ…?………ワンッ!!ガウガウ!】
ザミはどのくらいと聞かれ、表現方法に迷ったものの……突然走り出すと直径50メートルほどの大きな円を描くように走り出した…おそらくだがその円こそが「完璧な探知範囲」なのだろう。
ザミはスカベンジハウンドと呼ばれる猟犬モンスターの一種である、撃ち落とした獲物を探す際にこの完璧な探知範囲を使用するがそれとは別に「不確かな探知範囲」をも持っている。
それは完璧な物より倍広いがその名の通り、不確か……探知できるのは飽くまでもカタチのみだ。
「これだけあれば上出来!よしよし!!良いぞ!!」
【ハウッ!ハウッ!!】
ザミの頬や腹をひとしきり撫でたマオはいよいよ脱走が現実的になって来るのを感じた…
ザミの探知範囲を上手く使えば警備隊の目を掻い潜る事も可能だろう、あとはザミの脚力で柵を飛び越え、走り続ければいつか街に着くに違いない。
そう考えたマオは早速部屋へ戻り、計画を練った…
「よし!出来た!完璧なる計画だ!!……多分。」
【カゥ…】
計画は大雑把にそして雑に説明するとこのような感じ。
まずは午後8時以降、皇酸を使用してダクトの蓋を溶解。
次にダクトを辿りながら書いたマップを頼りに西側の通路を経由し、校舎裏の室外機まで向かう…そして室外機付近のダクト口も溶かして外へ出る…
最後はザミに乗っかり、森まで行くと彼に警備隊を探知してもらいながら進んでもらい……柵を飛び越え、道に出たら街まで向かう。
そして終わり!イエーイ!
「どうよ!」
【……………ハッ…】
「なによその反応?もしかして完璧じゃないって言いたいの?それは決行してからのお楽しみだかんね?」
【アゥワウワウ……】
マオはやる気満々だがザミは半ば呆れ模様。
主人の将来を案ずるならばこの学校に残って嫌でも授業を受ける事を勧めたいのだが、残念ながら彼にそう伝えるまでの脳は無い。
それに不幸せな彼女を見るよりかは多少不幸でも笑顔を見たいものである。
「そうと分かれば早速寝溜め……は出来ないね、うん。ちゃんと授業に出ないと…」
【ワン…】
という事でマオはこの素晴らしき計画(笑)を決行するため、その日の授業を含む一日を真面目に過ごした……マオも我ながらよくやったと言えるほどだ。
最後ぐらいは同級生や他級生の皆に挨拶でもしてやろうかと思ったが、無言が殆ど。
やっぱり可愛げもクソも無いものだ!マオは心底そう思いながら来る時までの待ちに待った…
そして……その時はやって来た。
「よし……いくよ、ザミ。」
【ガウ。】
時計が差す時間は午後8時、つまり作戦決行の瞬間だ。
マオはドアに耳を当て、最初の警備が過ぎ去るのを確認すると昼間に動かしておいたタンスに昇り、ダクトの蓋へくすねた薬品をタラッと接合部へ垂らす…
ジュワァッ…
「ひぃい…こんなんが身体にくっついたらヤバいんだろうなぁ…」
少し垂らせばじゅわりと音を立て、鉄は死んだようにボロボロに錆びる。
末恐ろしい物体だが、そんな液体を上手い具合にチョロチョロと垂らし、マオはダクトの蓋を溶かし外す……少し硬いが力を入れればガバッと外れた。
「よーぅし…ザミ、ライト。」
【ワンゥ。】
「うっし、サンキュゥ…」
ザミの咥えた懐中電灯を受け取ったマオはドロドロのタールのように暗い先を照らしながらゆっくりとダクト内を腹這いで進み始めた…
ダクト内は埃が積もり、ネズミのフンや死骸などが散乱していてお世辞にも居心地が良いとは言えない。
特にカビたネズミの死体を払いのける際は非常に嫌な気分になった…
「ぅうう……気持ち悪いなぁ…」
【カゥウ…アウ?】
「ダメ!戻らないかんね!」
しかし!どのような場所だろうが怯まずに進む事こそが勇者!マオは退かず、怯まず、無謀の精神で突き進む!
たとえどのような壁があっても進む者こそが真の勇敢なる者である。
だが…
ザサッ…!
「ひっ!?な、なにさっき音…?」
【ハゥウ………ガウ!ガウガウ!!】
「ど、どうしたの!?」
謎の物音にビクッと震えたマオだが、何かを感じ取ったザミはガウガウと威嚇するような声で鳴き始めた!
このままでは騒音でバレてしまいそうだが……それよりも恐ろしい存在が密かに忍び寄っていたのだ……
【ヂュゥ゛ーー!!】
「ね、ネズミ?ははっ……ただの小動物じゃん…」
マオの目の前に居たのは何とも可愛らしい害獣の一種、タイリクネズミ。
クリクリとした黒い目に病原菌を含みまくった灰色の毛皮……早い話が恐れるに足らない相手である、こんな奴如きゴミ溜めで散々相手にした小動物野郎。
マオは殴ってでもして追い払おうとしたが…
【ヂュウ!】【ヂュウ!】
「何よ……に、二匹くらい…」
【ヂュゥウ!】【ヂュッヂュ?】【ヂュヂュヂュ…】
「さ、三匹ぐらいなら…」
そう思っていたのも束の間、ネズミはどんどん角から姿を現わし…その量は5匹、8匹、10匹と着々と増えて行き……終いには巨大な1つの塊の様になってしまった。
流石にここまで来ればマオもドン引き……静かに下がろうとしたが…
「は、ははは!ごめんねぇ、ネズミさん…私直ぐに出て行くから…」
【カフカフ…】
【【【【【ヂュゥァアアアア゛ッ!!】】】】】
「うぎゃぁあああ!!?」
【ガゥウウ!!】
ネズミは集団でマオ達へ襲い掛かる!その量はまるでネズミの波!
夢の国も真っ青!マオ達は叫びながら複雑に入り組んだダクトをガタガタと騒々しく進んで行く!
一方その下部の職員室では…
「そうですねぇ……やはりあの子は向上心が問題に…」
「なるほどね…」
カタカタカタ…
「おや、ネズミが増えて来ましたね。そろそろ駆除剤を撒きましょうか?」
「そうね。明日の朝にでも発注して…」
ドガドガドガドガッ!!!!
「ッ!?…な、なんですか今の音は!?」
「今すぐ発注しましょう!熊とかも殺すやつ!!急いで!!」
「はぁ…はぁ……どうにか逃げられたっぽいなぁ…」
【ハァ…】
再びダクト内、マオはどうにかネズミの追手から逃れることに成功。
そしてオマケにたどり着いた先は偶然にも目指していた室外機付近のダクト……道筋に沿って行けば目的の場所までやって来た。
「さーて……トロトロォ…」
先ほどの皇酸の瓶を取り出し、またしても室外機のダクト口を溶かすと…
ドガァッ!!
思い切り蹴り飛ばし、外へ出た。
当たり前だが外は暗く、森の中には幾つかの光が見える……わざわざ照らすとはなんとおまぬけな事か、マオはザミに跨った。
「さぁ行くよ!頼りにしてるからね!!」
【ワンッ!!ガルルルルゥ……グハウッ!!】
「おぉ!は、速い速い!?」
ザミは全速力でギュンッ!!と空を切るかのように地を蹴り、走り出すと森の中へバサァ!と突っ込む…
そして何処かの器官で感じ取っているのか、巧みに至る場所を走り、追手の目を欺いて行く。
森の中は非常に複雑だがその分、身も隠れる……案外楽勝だ。
「ぶはぁ!……はぁ…すごいや…もう着いたの?」
【ガウッ。】
「へへ!いい子いい子…」
あっという間に森を抜け、目の前に立ちはだかったのは大きな鉄柵。
5分もしないうちに複雑で広大な森を抜けるなんてかなりの速さ……マオ本人もザミがこんな速度を出せるのかと少し拍子抜け。
しかしながら嬉しい誤算だ、マオは柵の高さが約5メートルと判断すればザミは問題なく飛べる事をアピールするため、マオを一旦おろしてからピョンピョンと柵の間を倍の高さで飛んで見せた。
「よしよし……じゃあ早いところ………痛ッ!?」
【ガウ!?】
マオがザミに跨ろうとしたその時だった……彼女の左手にズクッとした痛みが走り、見てみれば歯型のような物が付いていて血がタラ―ッと垂れていた…
虫刺されにしては痕が変だし、獣にしても気付くはず……それに辺りを見回してもそのような動物は見当たらない。
不思議に思いつつ、マオは再度ザミへ跨ろうとして見れば…
ピッーーーー!!
「ッ!!?な、なんだなんだ!?」
耳を劈くような高音……そう…これは……笛!笛の音!
そして目を音の方向に向けてみればそこに立って居たのは…
「マオ!こんな所で何をしている!!」
「せ、先生……なんで…」
そこに居たのは担任の教師、スケロクであった。
確かにマオは彼が校外警備隊の隊長である事は把握しており、警戒はしていたのだが全く気配が無かったのだ…
それになぜ急にバレたのかも不思議でならない……だがその正体は姿を現わした…
【ギュイギュィイ!】
「こ、コタチ…!なんで透明に…」
【ガルルルルゥ…】
【ギュィイ…】
ぞわーッと風が靡くように姿を現わしたのはスケロクの相棒、コタチであった。
なぜそのような小動物が透明になれるかは謎だが……とにかくピンチに変わりはない!コタチとザミは睨み合い、マオとスケロクも一触即発状態…
だが……諦めるわけにもいかないと先に動き出したのはマオだった!
「ザミ!そのパンダを無力化して!早く!!」
【ガゥウ!!】
【ギュゥ!?】
「くっ……タイニーパンダでは歯が立たないな…」
マオはザミへコタチを無力化するよう命令し、彼は命令通りに相手の首元へ軽く噛み付き、地面へ押し付けた…小動物と大型犬、力の差は歴然である。
だがそこへ笛の音を聞いた他の警備が駆け付けた。
「ど、どうかしましたか隊長!」
「私の生徒が脱走した!……ええい!コタチを進化させるからお前等は退け!!」
「やめてください!森が焼けてしまいますぅ!!」
「うるさい!!火事になったら俺が全責任を負う!」
「進化?………うッ!?ま、眩し…」
進化と聞き慣れない単語を聞いたマオは一瞬頭にハテナを浮かべたが、スケロクが右手に着けているグローブの宝石が青く光り出したのを見ると危険を察知。
直ぐにザミへパンダを話すように命令する…
「ザミ!!そのパンダを離して!!」
【ワンッ……クゥン!?】
コタチはスケロクの宝石の光に感化されるよう光り輝くと、閃光に照らされたそのシルエットはバキバキと形を変えて行く……まるで急速に違う生命体へ進化するように…
そしてコタチは…タイニーパンダとはかけ離れた生命体へと変貌を遂げた…
【ギュィ゛ィ゛イ゛ッ!!】
「ひぇっ……な、なにこれ…」
【ガルルルル…】
【ギュォオオオオ゛ッ!!】
小動物に分類されるその身体は熊のように大きく、フェレットのように細くなり…ぼうぼうと辺り一面を焼け野原にせんとの勢いで身体から炎を噴き出していた!
遠く離れた場所からでも汗が乾いてしまうような熱さ……近距離のザミはさらに苦しんでいるだろう…
しかしながら…なぜコタチは進化したのか?そのような疑問しかマオの脳内には浮かばなかった…
「コタチ!絶対に傷つけるな!そして無力化を図れ!」
【ギョ、ギョォオオ!!】
「ざ、ザミ!逃げ……!!」
【キャゥンッ!?】
相手の圧倒的威圧感……マオはザミへ逃げる様命令するも…時すでに遅し…
相手はザミへ拳を振り下ろすとバゴォンッ!!という音ともにザミは地面へ埋まる事となった……スケロクは傷つけずにって言ったよね?とマオは密かに思っていた…
「ザミ……そ、そんな…」
「もういいコタチ、元の姿に戻れ。」
【ギュォン!】
スケロクが命令すれば相手は青い光に包まれ……あっという間に先ほどの可愛らしい姿へと戻ってしまった…
まさに瞬殺……終始何が起きたのかすらもあまり理解できないまま、マオは地面に埋まっているザミを引っ張り出すと怪我が無いか確認。
幸いにも…と言うか計算上の攻撃だったのか…気絶をしているが全くの無傷である。
(気絶してるけど)
「マオ、事情を聴かせてもらおう。」
「……はぃ…」
マオの脱走計画は失敗に終わってしまった…
圧倒的戦力差、そしてモンスターの進化……全てが謎に包まれる中マオはスケロクに連れられ、学校へ戻る事になったとさ…
(ちなみに森はちょっと焼けたくらいで済みましたとさ)
つづく…
・・・
【ある日の学級新聞】(発行者:2年アムレ組、ロギィ)
『先日の深夜、我が校でにわかにも信じ難い事が起きた。それはついこの前入学してきたばかりの新入生、1年バラク組の【マオ】がなんと警備の厳しい森の中を掻い潜って校門付近の柵まで脱走した模様。彼女の部屋の中には計画書だと思われる書類や溶かされたダクト口が発見され、もはや変え難い事実だろう。この事に関して彼女の担任であり、校外警備隊長の【スケロク・タキヤマ】氏はこうコメントしている。「警備に穴があったとは思えない。この出来事に関しては完全に私達の想定外だ。」……まぁ良くも悪くも校内は彼女の噂話で持ちきりである。早く私の取材許可が下りないか待ち遠しいものだ。』
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
0
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる