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第1章 流星の如き転入生編

其の4 サイテー!サイアク!ガクエン生活ッ!! その1

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 さて、いよいよ始まったマオの学園生活……特別な個室で愛犬ザミと共に一晩を過ごしたマオは早朝5時から鳴り響くけたたましい校内放送によって目を覚ました。

『起床ッ!!!30分で各自準備を整え、扉の前へ立つように!!』

「ぃいいっ!?な、なんだなんだ!?」
【ガゥウウ!?】

 起床のサイレンは誰が担当しているのか、耳を劈くような声量でマオとザミは堪らず飛び起きた…

「はぁ……まぁ起きれたなら良いかぁ…」
【ワンッ!アゥウウ!】
「うんうん分かってるって!今日から楽しみでしょうが無いんでしょ?」

 仰向けに寝転ぶザミの腹部をワシワシと撫でたマオは朝の身支度を整えることに。
 ボサボサになった髪の毛を薄いクシで梳かし、制服に着替えると部屋に備え付けられた(掃除用の)流しを使い、歯を磨いたり、顔を洗う…
 どうやら個室に流しが付いているのはここだけのようで、他の皆は共用の水道を使用している模様。
 破格の対応である。

「ぐっぅうう……!はぁ…ワクワクするなぁ!どんな人が居るんだろう!」

 扉の前に出てみれば他の部屋に住んでいる生徒たちは気だるげに扉の前で立っていた。
 同じクラスの生徒だろうと隣の少年にマオは声を掛けてみるも…

「おはよう!」
「………っす。」
「はぁ?」
「……っす…」

 小さい声で気だるげに挨拶するのみ。
 きっと朝に弱いのだろう、そう捉えたマオは「ははは…」と乾いた声で笑い、見回りの教師たちが来るのを待った………なんとも寂しいものだ…

 しばらく立っていればスケロクが元気溌剌と言ったように歩いて来る…

「よーし!みんな揃ってるな!1人1人名前呼ぶからな!ケイラン…モネモア…ダズロア………ダズロア?よし…ニュア、グリフ…」

 と言ったようにスケロクは生徒達の名前を呼んで行く…
 特別生徒クラスでも割と人数は多いようで、マオの名前が呼ばれるのには少しだけ時間を要した。
 にしてもこのクラスの生徒は……少しばかり日陰者が多く、年齢もバラバラの様子。

「ルミリィ…エスキー……そして最後は…マオ!」
「はーい!」
「よしよし!みんな元気が良いな!各自食堂で朝食を摂ったら7時までに教室へ来るように!」

 そう言い付けるとスケロクは何処かへ行き、生徒達は解放されたかのように食堂へ向かって行った。
 もちろんマオもどんなものが出るのだろうかとウキウキ気分で皆の後を付いて行き、食堂へ向かう…
 ちなみに残念ながらザミはお部屋で待機だ、フードは貰ったの大丈夫だろう。

 そして食堂……中は各クラスの生徒や上級生で溢れており、それぞれのクラスでテーブルが分けられているので座りやすくて良い構造だ。
 しかしながらこう見てみるとバラク組の生徒は多いと言ったものの、やはり他のクラスに比べると少しばかり少なく見えるものだと、マオは思いつつ食事を受け取りに行くが…

「えーっと……こ、これなに…?」
「ギャモンの乳がゆ。栄養価抜群で朝にピッタリさねぇ。」
「ぎゃ、ギャモンって…動物?」
「ギャモンはギャモンさ、だって豚は豚って言うだろ?」
「は、はぁ…?」

 配膳係の人から渡されたのはお椀一杯に入った……謎の物体。
 おかゆらしく、きちんとお米もそれなりに入っているのだが如何せん色が黄ばんだ白色をしており、おまけに匂いは乳臭い…
 ギャモンが何かは分からないが、きっとあまり考えない方が良いだろう。

「ねぇ!隣いい?」
「え……だ、だめ!!」
「えっ…」

 さらに同じくバラク組の少女の隣に座ろうとするも断れてしまった…
 何も大声で言わなくても良いが、マオはかなり傷付き、「ごめんね」と力弱く呟いた後に、隅っこの方でチビチビとおかゆを食べ始めるのだった…
 味はガボスのシチューと同じようなもので意外とイケたらしい。



 さて、食事が済んだのなら1時間ほどあさの自由時間が余る…
 この間に各々は部屋の掃除やらモンスターの世話を行うのだが、ザミのように一緒に住んでいる生徒やまだモンスターを連れていない生徒にとっては暇なもの。
 なのでこういう場合はまだ把握しきれていない校内を見て回るのがベストだろう。

「やっぱり広いなぁ…」

 ザミを引き連れ、長い廊下を歩いて行くマオだが…行けども行けども知らない部屋ばかり…
 厩舎にも繋がっている様だが、中々独特な匂いが漂っているので断念……しかしそれ以外にも見るべき場所は多い!例えば水槽部屋を見てみれば…

「……えーっと…此処は?」
「おいおいおい!!何処から入った!哺乳類は立ち入り禁止!」
「はい…」
「全く…配水管が幾つあっても足りなくなるんだからな!」

 中には巨大な水槽がありその中を泳ぐ蟹や恐竜のようなモンスターたち…
 水模様の反射などが中々に美しい場所だが……非水棲モンスターは立ち入り禁止らしく、管理人だと思われる上級生に追い出されてしまった。

 気を取り直して何処か面白そうな場所は無いか探してみるマオだが…
 後ろから「おい」と何者かに呼び止められた。

「落第野郎、その小汚い犬はお前のペットか?」
「あ!昨日のヤな奴!ザミはペットじゃない!相棒だよ!」
【ガウガウッ!!】
【ギュォオオッ!!】

 振り返ってみればそこに居たのは昨日、マオへ少し辛辣な態度を取った黒髪の少年ジョラスとその相棒と思わしき
タカのようなモンスター…
 しかもその後ろには腰巾着らしき2名の男女も立っている。
 バッジから見るに、2人共ジョラスと同じくグレタ組の生徒だろう…

「そんな野良犬がペット?雑種の犬畜生如きが相棒なんて哀れやねぇ?」
「ホントだな!兄貴のサンパチに比べればノミみたいなもんだぜ!」
「まぁまぁお前等そう言ってやるな、事実は変わらないけどな!」
「なーんて嫌な奴!!もう行こう!ザミ!!」
【ワンゥ!】
【キョッキョエェー!】

 ザミの悪口を言われ、すっかり頭に来たマオはザミを引き摺り、廊下を進む…
 一方でザミは少し名残惜しいような表情をしている。

【アゥウ?】
「え?鳥の方は良い奴だった?まぁ…モンスターの方はともかく……あのジョラスってヤツは超ムカつく!!いつか吠えズラかかせてやる!」
【ガゥゥゥ…】
「そのためにもザミ、頑張ってね?」
【カフッ!?】

 勝手な期待をされ、困惑するザミだが主人の命令ならば否定するわけにもいかない。
 とりあえず「任せておけ!」と言わんばかりに威勢だけは良く返事をすると引き摺られる身体を起こし、テクテクと歩き始めた。
 彼にとっては此処でのモンスターとの出会いは新鮮で楽しい物のようだ。


 その後も散歩を続けたマオとザミだが、特に収穫は得られないまま、朝七時を迎え…1人と1匹は自身の所属するクラスへと向かった…
 流石に授業となれば何人かモンスターを連れている生徒も居るようだ。

「席は……ここか…よっ!隣同士、よろしくね。」
「あぅう…」

 マオは自身の名札が貼られた机を見つければ、そこはオドオドした感じの雰囲気を放つ少女の横。
 女同士仲良くなれそうだと挨拶するも……相手はビクビク震えて小声でブツブツ言うのみ…

「具合でも悪いの?」
「は、はぁ……はなし…かけないで…」
「んっ…そっかぁ……」
【ワンゥ…】

 学園生活始まって早々に隣の席に座っている子から「話しかけないで」なんて言われてしまった……マオは少々沈みがちな気を抱え、机についていれば教師のスケロクが肩に奇妙な小動物を乗せ、教室へ入って来た。
 あのネズミと犬の中間みたいな生物がスケロクの相棒モンスターだろう。

「えーっと………よぅし!全員揃ってるな。もう既に全員知ってると思うが今日から…まぁ厳密には昨日から新しいお友達のマオが来ている、みんな仲良くするように!」
「へ、へへ!どうも…」

 生徒全員が一斉にマオへ視線を向ければ……特に何も言わずにまた前に戻した…
 あまり興味が無いのだろう、やはり寂しい思いに駆られるマオであった…
 そんな同級生だが幸いにも授業の方は字がニガテなマオに優しく、ノートを取らなくてもいいらしい……よく見りゃノートに取ってる奴の方が少ないものである。

「……つまり、この古文に書かれた財宝龍とは全てを踏み荒らし、大災害の比喩として…」

「(すごいや!何が何だかサッパリ分からない…)」

 いくらノートを取ろうが取らなくともマオには到底付いて行けないものだ。
 てっきりモンスターの調教法を教えてくれるのだと思っていたのだが、ここでは普通の学校と同じ授業も行う模様…

 隣に座る少女も部屋中見回してはたまに目が合い、逸らす…授業する気があるのか?と問いかけたくなるマオだが…それは自分も同じこと。
 脳みそが眠ってしまいそうな授業を右から左へと聞き流すマオは時計を何度も見ては針が動くのを待った…
 しかし……見ても見ても…針は動かず、長いようで短い時間だけが過ぎて行く…

 このままでは先が心配である。
 入学早々に不安や不満が募るマオであった…

つづく…



・・・



 キャラクタープロフィール

【スケロク・タキヤマ】
身長192㎝ 年齢:28歳 血液型:Y2 出身:東国ラガドガ 髪色:紺色
担当:1年バラク組担任、バトル学、ステルス学、校外監視隊長
相棒:【コタチ】(タイニーパンダ) 関係:良
テイマーランク:プロ(師範) 追従石ホロウストーンの有無:公式第4号アミラウ所持
所属宗教:ヴァシン教

『東国ラガドガ生まれの元プロテイマー。一級調教師の母親とプロテイマーの父親を持っており、自身も大々的なプロテイマーであったが諸事情で引退、その後はリセレアへ入隊して教師として就任。テイマーとしての腕もさることながら本人の戦闘能力も高く、校外の監視隊長としても働いている。相棒はタイニーパンダのコタチであり、この種のモンスターはラガドガでは割とメジャーな存在である。………実は忍者だったりする…?』


【ジョラス・J・アボブ】
身長155㎝ 年齢:12歳 血液型:不明 出身:不明 髪色:黒
学年:1年グレタ組 現在成績:極良 進路:不明
相棒:【サンパチ】(ゲートルバード) 関係:良好
テイマーランク:ルーキー(初段) 追従石ホロウストーンの有無:不明
所属宗教:不明

『1年グレタ組に属している少年。空輸会社の御曹司らしく、嫌な性格をしている。現在、マオとは犬猿の仲と言った感じ……』
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