月城副社長うっかり結婚する 〜仮面夫婦は背中で泣く〜

白亜凛

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◆私の夫 * 弥衣

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「……ん」

 お布団気持ちいい。ぬくぬくだぁ。

 抱き枕のウサギちゃん――。

 ――あれ?

 ウサギが動いた?

 目を開けると、私が抱えているのは、ウサギじゃなくて人の腕。

「えっ!」

 私、一俊と寝てるの?

 いくらなんでもいい大人が弟にくっついて寝るなんて!

 錯乱状態で体を捻ると、ゴンッと頭が何かにぶつかった。

「イテッ」
「あっ! た、尊さん?!」

 私を後ろから抱きかかえていたのは尊さんだった。

「ご、ごめんなさい」

 私に頭突きをされて、顎に手を当てた尊さんは苦悶の表情だ。

「おはよう……」
「おはようございます! だ、大丈夫ですか」

「ダメ」
「ええ、どうしよう」

 それもですけど、尊さん、裸。わ、私も、下着姿で。

「許さん」

 ヌッと起き上がった尊さんは、いきなり私を押し倒し、両手をベッドに押し付けるようにして馬乗りになる。

「昨夜ケーキ買ってきてあげたのに、どういうことだ」

「え?、ケーキ?」

「罰として君は一生俺に尽くせ」

「ええー? ケーキごときで?」

 クスッと笑った尊さんは、そのまま私の唇にキスをした。

「弥衣。言ってなかったけど、俺は君が好きだ」

 ――尊さん?

「あ、あの……、どこがですか?」

「うん。そうだな。それは追々」

 でも、そこ重要なんですよ。

 追々とか言ってないで今言ってくださいよと思うのに、尊さんは何かのスイッチが入ったようにキスを繰り返し、私を優しく撫でる。

 くすぐったくて、気持ちよくて……。

 そして、胸が熱い。

「なんで泣くんだよ」

 尊さんは少し困った顔をして、私の涙を拭う。

 だって、泣かずにはいられない。

 私も、尊さんが好きだから。いつのまにか、すごく好きになっていたから。

 繰り返すキスの合間に「好き」と言った。

 ハッとしたように動きを止めて、尊さんは微笑む。
 

「愛してるよ、弥衣。お前だけだ。――ずっと愛してる」
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