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◆嘘? 本当? * 弥衣

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「智子さんは入院する前に月城家に行ったらしい。あの男に土下座をして、金を貸してくれと頼んだそうだ」

「あの男って、尊さん?」

「あぁ、そうだよ。僕の患者に月城家の使用人だった人がいた。偶然その話になってね。つい最近亡くなったけど、直前に教えてくれたんだ。智子さんが気の毒だって。あの男は智子さんを追い返したんだ」

 耳を疑った。
 いくらなんでも、そんな。

「でも、尊さんはお母さんが月城家を出てから一度も会ってないって」

 優介さんは、呆れたようにハハッと笑う。
「そんな話信じるの? そもそも弥衣は、どうしてあの男と結婚することになったんだ?」

「それは……」

 なんて言ったら優介さんは納得してくれるの。

 一目惚れ? 玉の輿だから? 私は女優じゃないから、上手く言える自信はない。

 指輪の話はできない。
 尊さんは指輪が目当てだなんて言ったら、そらみろって言われるだろう。

「借金を肩代わりに何を代償にしたの? あの男に酷いことをされているのか?」

「何言ってるの。尊さんはそんな人じゃない」

「じゃあなんだ」

「た、尊さんが私に一目惚れしたらしくて。どうしても結婚してほしいって、あんまり熱心だから……、つい」

 あ……私ったら、嘘ついた。

 ズキッと心が痛む。
『嘘は自分の心を傷つけるのよ』と母がよく言っていたことを思い出す。

 でも、尊さんを誤解している優介さんに、本当の話はできない。

 真実がどうあれ、尊さんは根は優しい人だ。
 口は悪いし捻くれ者だし、嘘が上手だとしても、彼は私を傷つけたりしなかった。

 尊さんは――。

「俺だって。俺だって弥衣を」

 私だって、私だって優介さんを誰よりも……今だって好きだ。
 借金さえなければ、優介さんと幸せになるつもりだったんだもの。

「弥衣」
 ふいに優介さんの手が私の頬に伸びてきた。

「人妻だって構わない。俺はお前が」

 え? ――優介さん、何を言っているの?
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