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◆真実への一歩 * 弥衣
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しおりを挟むその先を聞きたかったのに、尊さんが部屋に戻ってきて話は終わってしまった。
「ちょっと疲れたわ」
「ああ、ごめんね。大丈夫?」
慌てて健さんが駆け寄る。
お祖母様は弱っていらっしゃるように見えた。
最後にひと口お茶を一口飲み、ため息をついたお祖母様を尊さんと私で、ベッドまで支えていって、
お祖母様はそのまま横になった。
病院からの帰り道。
車の中は静かだった。
私もなんとなく心が沈んでいたし、尊さんは瞼を閉じたまま腕を組んで、寝ているわけではなく、何か考え込んでいるようだった。
指輪は本物とわかったのに、心は少しもすっきりしない。
私の手を撫でるお祖母様の手はとても温かだったけれど、その手は何も教えてくれなかった。
『しかたがなかった……』
あれはどういう意味なんだろう。
その先が聞きたい。
でも、あんなふうに弱っているお祖母様には聞けない。
尊さんはなにを考えているんだろう。
お祖母様に指輪を見せられたから、これでひとまず責任は果たせたはず。
ホッとしているのかなと、振り向くと尊さんの電話が鳴った。
彼は「ああ」と、ひと言だけ答え、マンションに戻るとすぐに自室に籠り、そして出かけた。
「夕食はいらない。戻りは水曜になる。急な出張が入った」
「あ、そうですか。はい。いってらっしゃい」
尊さんは背中を見せたまま振り返ることもなく、玄関の扉を閉じた。
昨日の、楽しかった一日がとても遠い昔のよう。キスまでしたというのに、まるで幻だったみたいだ。
どこに出かけたんだろう?
別にどこでもいいが、尊さんは気づいているんだろうか。
電話の内容が私のほうまで響いたことに。
電話はとっても短くて、車の中はとても静かだったから相手の声が聞こえた。
『あさって、副社長はお休みですよね』
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