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◆鳴かぬなら鳴かせてみよう我が妻よ * 尊

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『もっとこう、わかりやすい方法はないのか、なにかこう形ある物とか』

『は? 物につられるような奥様なのですか?』

 そう言われると自信がない。

 弥衣は億の金でも指輪は渡さないと言ったくらいだ。プレゼントごときで、どうこうならないだろう。

『いや……まぁ、そういうタイプではないな』

『ですよね。一度しかお会いしていませんが、奥様はそこらの強欲女ではないでしょう。となれば、心で訴えるしかありません』

 そうは言ってもなぁ。


 起きだして廊下に出ると、香ばしいパンが焼ける匂いとミルクのような甘い香りがしてきた。

「おはようございます」
 挨拶する弥生は満面の笑みを浮かべている。
 相変わらず今日も朝から元気そうだ。

「おはよう。シャワー浴びてくる」

「はーい」

 シャワーだけで済まそうと思ったが、湯舟には湯が張ってあった。弥衣が気を利かせたのだろう。

 浸かっていると、残った疲れが吸い込まれていくようだ。

「はぁ」
 気持ちよさに声が漏れる。

 弥衣が来てから、楽なことが増えた。

 こんなふうに、俺の行動に合わせて湯舟にお湯は張ってあるし、朝は何もせずともうまい朝食が並ぶ。今まで不自由に感じたことはなかったが、楽だ。

 元はといえ青扇に通う令嬢なのに、意外と料理がうまい。

 卵焼きは絶品で、ふわふわ加減が絶妙だし出汁が効いていて味もちょうどいい。さっきの匂いは味噌汁じゃないから、今日はスープか。

 週末はパンがいいと思っていたが、期待どおり朝食はパンなのか?

 いやいや、そんなことはどうでもいい。

 とにかくあいつを速攻で落とさないと。
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