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◆鳴かぬなら鳴かせてみよう我が妻よ * 尊
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しおりを挟む「はぁ」
うんざりと重いため息をついた時、女子社員の話し声が聞こえてきた。
「ねぇねぇ、さっき副社長いたでしょ」
「いたっ、今日もかっこよかったぁ」
聞きたいわけじゃないが、聞こえてくるのだから仕方がない。
資料室は可動式で縦長の書庫が並んでいる。
入口からは奥が見えないので、こんな状況もありえるわけだが、それにしてもよく響く声に苦笑していると、女子社員たちの話はますます盛り上がっていった。
「結婚しちゃったのは残念だけど」
「ほんとー」
俺だってしたくなかったよ、結婚なんか。
「副社長ってその都度微笑んで『おはようございます』って言ってくれるのよね」
「そう、感じいいよねー。常務なんか目がバカにしてるのがわかるけど、副社長はそんなことないし」
めげずにあいさつした甲斐はあったとため息交じりに思う他ないが、その後もひとしきり続いた副社長賞賛の声を聞くうちに、ふと思った。
そうか。北風と太陽だ。
俺は女にモテる。
自信過剰云々前に、ステータスが高いのだからこれでモテないと言うほうが白々しいというものだ。
中身は関係ない。とりあえず穏やかに微笑んでさえいれば、それだけで大抵の女は頬を染めるし、見つめ返せばうっとりと瞳を潤ませる。
子供の頃からそうだ。
春海のようなLGBTは別として、本気になって口説けば心を掴める確率は相当高いはず。
弥衣も女、恋人とは別れたばかりで傷心中、優しさに弱い。
この前の夜だって、いくら男と別れた寂しさからとはいえ、俺を嫌いなら自分からキスをしたりはしないだろう。
無理に奪わなくても、自分から差し出させればいい。
暑さにコートを脱いでしまうように。
ピエロだってなんだってかまうもんか。
すべては指輪のためだ。
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