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◆ 妻という名の同居人 * 弥衣
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しおりを挟む挨拶するだけで少し気持ちが楽になる。朝から無視されたのでは一日がおもしろくないもの。
ホッとしたところでダイニングテーブルにランチョンマットを敷く。
並べるメニューは焼き鮭、厚焼き玉子、ひじきとちりめんじゃこをレタスに混ぜた和風サラダ。緑茶も用意する。
懐かしくなった。
父の事業がまだ順調だったころは、この定番メニューを家族揃って食べていた。
いつしかご飯とみそ汁だけになっていたけれど、この食卓を見るだけであの頃のみんなの笑顔が透けて見えるような気がする。
バスルームから出てきた尊さんは部屋着のスウェットに着替えていた。
朝のミュージックはクラシックらしい。穏やかなピアノの旋律が聞こえてくる。
「ご飯の用意できましたよー」
炊き立てのご飯を茶碗によそり、みそ汁を出して、私も向かいの席に腰を下ろした。
「いただきます」
彼はいただきますとは言わないらしい。まぁそれは別にいいけれど。
うちの卵焼きは出汁巻きなので甘くはない。甘い卵焼き派だったらどうしようと思ったけれど、彼は黙々と箸をすすめるのできっと大丈夫なのだろう。
静かに食事を済ませた後、お茶を飲みながら尊さんが私をジッと睨んだ。
「ん? なにか?」
「昨夜、覚えていないのか」
「うーん? なにかありましたっけ」
暴言は吐いたような気もするけれど、そこはしらばっくれるしかない。
キス云々は夢に違いないし。
素知らぬ顔でお茶を飲んだけれど、尊さんはため息をついただけでそれ以上何も言わなかった。
「いってらっしゃい」
「いってきます」
出勤する尊さんを見送り、掃除洗濯に勤しむ。
勧めてもらったスポーツクラブやサロンはもう少し生活が慣れてからいくことにして、まずは家事をこなすことが先決だ。
家が広いと掃除もなかなか大変だった。午前中はバタバタと過ぎ、簡単な朝食を済ませて午後は数日分のメニューを考え、買い物リストを作って夕ご飯の買い出しに出かけた。
帰ってから料理に取り掛かると、気づけば夕方、一日あっという間だった。
言われた通り冷蔵庫に作り置きを入れて、念のため今夜のメニューをマグネットでメモを貼っておいた。温めほしいものはそのように記入して、任務完了。
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