54 / 124
◆ 妻という名の同居人 * 弥衣
10
しおりを挟むため息をつきながら尊さんは私のグラスにワインを注ぐ。
私はその時点で結構いい感じに酔っていた。
普段お酒を飲む機会がないせいか、多分今立ち上がったらふらついてしまうかも、というくらいに。
「ありがとうございまーす。なんか、随分フレンドリーじゃないですかぁ、昨日はつんけんしていたくせに」
「まぁあれだ。なんだかんだ言っても結婚したわけだしな」
本当にそう思ってる? だといいですけどねぇ。
まるめこんで指輪を狙っているんじゃないですかぁ?
疑いの視線を向けると、尊さんはまたしてもムッと眉間にしわを寄せて睨む。
でもちっとも怖そうに見えなくて、つい笑ってしまう。
こちとら取り立て屋のガチ強面とやりあってきたのだ、そんな品のいい睨みじゃ、私の毛の生えた心臓はピクリとも驚かないんだぜ。へへへ。
内心ほくそ笑みながら、考えた。
最初から思っていたが、尊さんはそれほど嫌な人じゃない。意地悪を言ったり傲慢な態度もとるけれど、なぜか冷たさは感じないのだ。
本当に冷血人間だったり怖い人だったら、私だってこんなふうに言いたいことを言えない。
多分、優しい人だ。それを隠しているだけ。
「ふふ。そんな顔して、イケメンが台無しですよぉ? そうそう。私たちは家族なんですから、仲良くやりましょー」
「酔っ払いめ」
ほら、心から嫌そうな目をしていない。
「酔ってませんよぉー」
「まだ三杯しか飲んでないぞ? しょーがないなぁ」
ふいに彼は立ち上がって廊下へ出た。
もしかして、私、尊さんに悪いことしているのかな。
尊さんだって私と結婚なんてしたくないのに、私が指輪を離さないから仕方なく結婚したわけで。
一俊、尊さんはなにも悪くないかもよ?
そうかもね。私が悪いのかもね。
11
お気に入りに追加
99
あなたにおすすめの小説
羽柴弁護士の愛はいろいろと重すぎるので返品したい。
泉野あおい
恋愛
人の気持ちに重い軽いがあるなんて変だと思ってた。
でも今、確かに思ってる。
―――この愛は、重い。
------------------------------------------
羽柴健人(30)
羽柴法律事務所所長 鳳凰グループ法律顧問
座右の銘『危ない橋ほど渡りたい。』
好き:柊みゆ
嫌い:褒められること
×
柊 みゆ(28)
弱小飲料メーカー→鳳凰グループ・ホウオウ総務部
座右の銘『石橋は叩いて渡りたい。』
好き:走ること
苦手:羽柴健人
------------------------------------------
溺愛なんてされるものではありません
彩里 咲華
恋愛
社長御曹司と噂されている超絶イケメン
平国 蓮
×
干物系女子と化している蓮の話相手
赤崎 美織
部署は違うが同じ会社で働いている二人。会社では接点がなく会うことはほとんどない。しかし偶然だけど美織と蓮は同じマンションの隣同士に住んでいた。蓮に誘われて二人は一緒にご飯を食べながら話をするようになり、蓮からある意外な悩み相談をされる。 顔良し、性格良し、誰からも慕われるそんな完璧男子の蓮の悩みとは……!?
隠れオタクの女子社員は若社長に溺愛される
永久保セツナ
恋愛
【最終話まで毎日20時更新】
「少女趣味」ならぬ「少年趣味」(プラモデルやカードゲームなど男性的な趣味)を隠して暮らしていた女子社員・能登原こずえは、ある日勤めている会社のイケメン若社長・藤井スバルに趣味がバレてしまう。
しかしそこから二人は意気投合し、やがて恋愛関係に発展する――?
肝心のターゲット層である女性に理解できるか分からない異色の女性向け恋愛小説!
恋煩いの幸せレシピ ~社長と秘密の恋始めます~
神原オホカミ【書籍発売中】
恋愛
会社に内緒でダブルワークをしている芽生は、アルバイト先の居酒屋で自身が勤める会社の社長に遭遇。
一般社員の顔なんて覚えていないはずと思っていたのが間違いで、気が付けば、クビの代わりに週末に家政婦の仕事をすることに!?
美味しいご飯と家族と仕事と夢。
能天気色気無し女子が、横暴な俺様社長と繰り広げる、お料理恋愛ラブコメ。
※注意※ 2020年執筆作品
◆表紙画像は簡単表紙メーカー様で作成しています。
◆無断転写や内容の模倣はご遠慮ください。
◆大変申し訳ありませんが不定期更新です。また、予告なく非公開にすることがあります。
◆文章をAI学習に使うことは絶対にしないでください。
◆カクヨムさん/エブリスタさん/なろうさんでも掲載してます。
【完結】その男『D』につき~初恋男は独占欲を拗らせる~
蓮美ちま
恋愛
最低最悪な初対面だった。
職場の同僚だろうと人妻ナースだろうと、誘われればおいしく頂いてきた来る者拒まずでお馴染みのチャラ男。
私はこんな人と絶対に関わりたくない!
独占欲が人一倍強く、それで何度も過去に恋を失ってきた私が今必死に探し求めているもの。
それは……『Dの男』
あの男と真逆の、未経験の人。
少しでも私を好きなら、もう私に構わないで。
私が探しているのはあなたじゃない。
私は誰かの『唯一』になりたいの……。
冷酷社長に甘く優しい糖分を。
氷萌
恋愛
センター街に位置する高層オフィスビル。
【リーベンビルズ】
そこは
一般庶民にはわからない
高級クラスの人々が生活する、まさに異世界。
リーベンビルズ経営:冷酷社長
【柴永 サクマ】‐Sakuma Shibanaga-
「やるなら文句・質問は受け付けない。
イヤなら今すぐ辞めろ」
×
社長アシスタント兼雑用
【木瀬 イトカ】-Itoka Kise-
「やります!黙ってやりますよ!
やりゃぁいいんでしょッ」
様々な出来事が起こる毎日に
飛び込んだ彼女に待ち受けるものは
夢か現実か…地獄なのか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる