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◆みせかけの結婚 * 弥衣
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最上階は三十六階。
こう言っては何だが私は高所恐怖症だ。三十六階が地上何メートルなのか知らないけれど、私に言わせれば人間の住むところじゃない。
緊張と恐怖で足がすくみそう。エレベーターを降り、何も考えないように足早に内廊下を進み、目的の部屋の前に立ったときには喉がカラカラになっていた。
大きく深呼吸をしてインターホンを押すと――。
『はい』
若い女性の声だった。
「佐藤と言いますが……」
『はい。どうぞ』
扉からガチャッという鍵が開く重たい音がした。
「いらっしゃいませ」
声の主は二十代と思しき女性。ハイネックのライトブルーのブラウスがよく似合っている。
ハーフアップした髪は、肩より少し長い位置で毛先が緩くカールしている。艶やかな髪が印象的な、とても美しい人だった。
「どうぞ」
花のような笑顔で、女性がスリッパを出してくれた。
「すみません。ありがとうございます」
出されたスリッパに履き替えて、脱いだ靴をそろえて振り返り、彼女の後に付いていく。後ろ姿もきれいだ。
白いタイトスカートから伸びる足は細くて形がよく、折れそうに細い足首につい目が釘付けになってしまう。
彼女は一体何者なのか。
ともかく廊下を進みリビングに入と、まぁ素敵。高い天井の広いが広がって、南東に向いているらしく程よい光が射しこんでいる。
観葉植物は、深い切込みが入った大きな葉をつけているモンステラ。壁のような家具の中にはめ込まれた大きなテレビ。
「――あ」
月城さんがいた。
こう言っては何だが私は高所恐怖症だ。三十六階が地上何メートルなのか知らないけれど、私に言わせれば人間の住むところじゃない。
緊張と恐怖で足がすくみそう。エレベーターを降り、何も考えないように足早に内廊下を進み、目的の部屋の前に立ったときには喉がカラカラになっていた。
大きく深呼吸をしてインターホンを押すと――。
『はい』
若い女性の声だった。
「佐藤と言いますが……」
『はい。どうぞ』
扉からガチャッという鍵が開く重たい音がした。
「いらっしゃいませ」
声の主は二十代と思しき女性。ハイネックのライトブルーのブラウスがよく似合っている。
ハーフアップした髪は、肩より少し長い位置で毛先が緩くカールしている。艶やかな髪が印象的な、とても美しい人だった。
「どうぞ」
花のような笑顔で、女性がスリッパを出してくれた。
「すみません。ありがとうございます」
出されたスリッパに履き替えて、脱いだ靴をそろえて振り返り、彼女の後に付いていく。後ろ姿もきれいだ。
白いタイトスカートから伸びる足は細くて形がよく、折れそうに細い足首につい目が釘付けになってしまう。
彼女は一体何者なのか。
ともかく廊下を進みリビングに入と、まぁ素敵。高い天井の広いが広がって、南東に向いているらしく程よい光が射しこんでいる。
観葉植物は、深い切込みが入った大きな葉をつけているモンステラ。壁のような家具の中にはめ込まれた大きなテレビ。
「――あ」
月城さんがいた。
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