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◆みせかけの結婚 * 弥衣
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しおりを挟む月城家はとんでもない優秀な弁護士をつけてくるだろうし、あの指輪は、母が月城家からこっそり盗み出した指輪だなんて主張してくるかもしれない。
そうなったら私は負けるのは目に見えている。
裁判は時間がかかる。
彼は今すぐにでも指輪が欲しいし、実の母が指輪を盗んだと息子が訴えるなんて、週刊誌の格好の餌食だ。
【月城家御曹司、骨肉の争い。母の亡骸に鞭を打つ】
禍々しいスキャンダラスな見出しが週刊誌やネットのニュースを駆け巡るだろう。そうなったら、とんだイメージダウンだ。
多分そんな理由で、彼は裁判より結婚を優先したに違いない。
最後に、月城尊は、どうだとばかりに両手を広げ、王子様ばりの爽やかな笑顔で言ってのけた。
『君は借金生活から脱出して安定の生活を得る。俺は月城家の指輪を得る。ウィンウィンじゃないか』
眩しさにくらくらしそうになりながら、私はしっかりと条件を提示した。
『弟は医学部を受験するんです。卒業まで資金援助してくれますか?』
『ああ、もちろんだよ。君の弟と俺は半分血が繋がっているからね。喜んで提供させてもらおう』
私が指輪を持って嫁に行く対価として、彼は私の借金を肩代わりし、弟が無事卒業するまで資金援助を怠らず、私の一生の、生活の面倒をみる約束をしたのである。
というわけで、私たちは結婚することになった。
彼の言うウィンウィンの関係で。
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