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10.龍崎専務は誘惑する
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店の女の子にオーナーはどういう人なのかと聞いたら、『私たちを守ってくれる人』と言っていた。
『店長もあのオーナーだから安心して店長をやっていけるって言ってるわ。たまにいるのよ変なストーカーみたいな客が。でもお店の男性従業員が必ず家まで送ってくれるし、店長の手に負えないとオーナーがきちっと対応してくれるの。変な客は出禁にしてくれるから客層も待遇もいいし、本当にいいお店よ』
ガールズバーを辞めてすぐ、ホストクラブに実彩子ちゃんと行ってきた。
実彩子ちゃんも変装して、田舎から来た有閑マダムという設定で遊んだのだ。
跪いて接客されたりお姫様になった気分を味わって、それこそどんちゃん騒ぎをしてとっても楽しかった。
私たちよりももっと派手に盛り上がっているお客様がいたし、料金が高いのか安いのはわからなかったけど、実彩子ちゃんが良心的な会計だというのだからそうなんだろう。
今週からは銀座のクラブ。
今日で三日目だ。
お店でドレスに着替えると、早速櫻子さんに呼ばれた。
「ミア、ヘルプに出てくれるかしら」
「はーい」
新人の私は先輩たちの隣に座って、お酒の出し方などを勉強中。黒服さんに連れられて奥の席に行く。
「ミアです」
下げた頭をあげると――。
「あっ」
そこには龍崎専務がいた。
「あ、えっとぉ」
彼はなにも言わない。
振り返ったけれど、黒服さんは行ってしまったし、他の女性は誰も来ない。
仕方ないので、「失礼します」と腰を下ろした。
変装しているから他の人ならば騙せる自信はあるけれど、たぶん彼は気づいている。
たぶんじゃない、絶対気づいている。
案の定、「胸、開き過ぎだ」と睨まれた。
青いドレスはV字で肩と胸の谷間が見えるデザインだ。とはいってもほんの少しだし、そんなにエッチな感じではない。どちらかといえば地味なほうである。
「あはは、ええっと。なに飲みます?」
「ドンペリでもなんでも入れていいよ。それで、なにをしているんだ? ここで」
長い脚を組んだ彼は、ソファーで頬杖をつき、あきれたようにため息をつく。
「だってぇ」
「だってじゃない」
結局そのまま、私はお持ち帰りされた。
「私が知りたいって言っても教えてくれないし、足手まといになりたくなかったから、まずは色々ふさわしくなろうって思ったの」
怒ってるかなぁと、隣をチラリと見ると、眉をひそめて睨まれた。
怒っているのかもしれないけど、また彼に会えたことがうれしくて、頬が上がってしまう。
だってやっぱり素敵だから。
「田舎に帰るんじゃなかったのか?」
「帰らない。母にはこっちでいい人見つけて骨を埋めるからって言ったんですよ。だからもう大丈夫」
「なにが大丈夫だ」
車がマンションに到着する。
私はドレスに彼の上着を羽織って、おとなしくついていく。
「お邪魔します」と懐かしい彼の部屋に入った。とは言っても昨日も家政婦として来ているけれど。
さあ、なんて言われるのだろう。
帰れって言われるのだろうか。
不安な気持ちで靴を脱ぐと、フワッと体が浮いた。
「えっ」
「これからお仕置きだ」
肩に担がれて、連れていかれたのは寝室。
ドサリとベッドに降ろされた。
「専務?」
ネクタイを緩めた彼は、私に覆いかぶさるように馬乗りになる。
「どうする? まだ間に合うぞ? 帰るか?」
龍崎専務は誘惑する。
「ちゃんと言えば抱いてやる。そして一生お前を離さない」
「帰らない。ずっと一緒にいる」
彼はフッと微笑んだ。
そして、私に甘いをキスをして、
はじめて愛してるってささやいた。
―了―
最後までお付き合いありがとうございました!
白亜凛
『店長もあのオーナーだから安心して店長をやっていけるって言ってるわ。たまにいるのよ変なストーカーみたいな客が。でもお店の男性従業員が必ず家まで送ってくれるし、店長の手に負えないとオーナーがきちっと対応してくれるの。変な客は出禁にしてくれるから客層も待遇もいいし、本当にいいお店よ』
ガールズバーを辞めてすぐ、ホストクラブに実彩子ちゃんと行ってきた。
実彩子ちゃんも変装して、田舎から来た有閑マダムという設定で遊んだのだ。
跪いて接客されたりお姫様になった気分を味わって、それこそどんちゃん騒ぎをしてとっても楽しかった。
私たちよりももっと派手に盛り上がっているお客様がいたし、料金が高いのか安いのはわからなかったけど、実彩子ちゃんが良心的な会計だというのだからそうなんだろう。
今週からは銀座のクラブ。
今日で三日目だ。
お店でドレスに着替えると、早速櫻子さんに呼ばれた。
「ミア、ヘルプに出てくれるかしら」
「はーい」
新人の私は先輩たちの隣に座って、お酒の出し方などを勉強中。黒服さんに連れられて奥の席に行く。
「ミアです」
下げた頭をあげると――。
「あっ」
そこには龍崎専務がいた。
「あ、えっとぉ」
彼はなにも言わない。
振り返ったけれど、黒服さんは行ってしまったし、他の女性は誰も来ない。
仕方ないので、「失礼します」と腰を下ろした。
変装しているから他の人ならば騙せる自信はあるけれど、たぶん彼は気づいている。
たぶんじゃない、絶対気づいている。
案の定、「胸、開き過ぎだ」と睨まれた。
青いドレスはV字で肩と胸の谷間が見えるデザインだ。とはいってもほんの少しだし、そんなにエッチな感じではない。どちらかといえば地味なほうである。
「あはは、ええっと。なに飲みます?」
「ドンペリでもなんでも入れていいよ。それで、なにをしているんだ? ここで」
長い脚を組んだ彼は、ソファーで頬杖をつき、あきれたようにため息をつく。
「だってぇ」
「だってじゃない」
結局そのまま、私はお持ち帰りされた。
「私が知りたいって言っても教えてくれないし、足手まといになりたくなかったから、まずは色々ふさわしくなろうって思ったの」
怒ってるかなぁと、隣をチラリと見ると、眉をひそめて睨まれた。
怒っているのかもしれないけど、また彼に会えたことがうれしくて、頬が上がってしまう。
だってやっぱり素敵だから。
「田舎に帰るんじゃなかったのか?」
「帰らない。母にはこっちでいい人見つけて骨を埋めるからって言ったんですよ。だからもう大丈夫」
「なにが大丈夫だ」
車がマンションに到着する。
私はドレスに彼の上着を羽織って、おとなしくついていく。
「お邪魔します」と懐かしい彼の部屋に入った。とは言っても昨日も家政婦として来ているけれど。
さあ、なんて言われるのだろう。
帰れって言われるのだろうか。
不安な気持ちで靴を脱ぐと、フワッと体が浮いた。
「えっ」
「これからお仕置きだ」
肩に担がれて、連れていかれたのは寝室。
ドサリとベッドに降ろされた。
「専務?」
ネクタイを緩めた彼は、私に覆いかぶさるように馬乗りになる。
「どうする? まだ間に合うぞ? 帰るか?」
龍崎専務は誘惑する。
「ちゃんと言えば抱いてやる。そして一生お前を離さない」
「帰らない。ずっと一緒にいる」
彼はフッと微笑んだ。
そして、私に甘いをキスをして、
はじめて愛してるってささやいた。
―了―
最後までお付き合いありがとうございました!
白亜凛
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ななママさま、こちらまで😆
読みやすいと言って頂けて、とってもうれしいです。ありがとうございます~💕
龍崎専務、もとヤクザでもとっても素敵なので、親近感もってもらえてよかったです~🤭💕
面白かったです!ちょこちょこリンクしてる部分を見つけるのも楽しかったです!
きなこさん、ものすごい遅レスで、すみません😖
細かいところまで見てくださってうれしいです!
ありがとうございました🙇💕